北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車の普通科連隊、基盤的防衛力の動的運用をめざして

2014-02-01 23:04:13 | 防衛・安全保障
◆四輪駆動機動装甲車で普通科三個中隊を充足
 機動装甲車/装甲高機動車、昨年に普通科中隊の高機動車を置き換える四輪駆動装甲車として、提案したもの。
Limg_0122 記事としては2013-10-15日付“榛名防衛備忘録:提案、装甲化新段階に暫定装備“装甲高機動車”を高機動車の後継へ導入”と、2013-11-03日付“榛名防衛備忘録:普通科部隊完全装甲化を目指す高機動車後継装甲車を考える”が当たります。軽装甲機動車の車体を基本とする案やウニモグの車体を応用して准国産装甲車を目指す方向、フランスのVAB軽装甲車あたりを想定していましたが、この軽装甲車を大量配備する方策、現在新防衛大綱に提示されている機動師団や機動旅団の目指す方向性と、かなりの部分で合致するやもしれません。これは即ち、基盤的防衛力の動的運用を目指す、ということ。
Limg_1048 それは、戦車300両という状況下で、普通科連隊の機動力を強化させ、105mm砲を搭載する機動戦闘車と連携する機動連隊を創設する、という方針が示されているためで、新防衛大綱では師団と旅団併せて7個を機動師団と機動旅団へ改編する方針が示されています。機動運用部隊という方式ではなく、管区連隊を基幹とするようですから、今回もこれまでの沿岸配備師団や装甲近代化師団のように名称先行の改編ではありますが、装甲車両の集中による防衛力の動的運用への改編、という部分では合致することとなります。
Limg_1136 普通科連隊に四輪駆動機動装甲車を大量配備する、これにより、本部管理中隊・第1中隊・第2中隊・第3中隊・第4中隊・重迫撃砲中隊、という運用のなかで、現在1・2・3中隊が高機動車、4中隊が軽装甲機動車を装備する体制が多くの普通科連隊で観られるのですが、1・2・3中隊に四輪駆動機動装甲車を配備することで、全普通科中隊を装甲化可能となります。重迫撃砲中隊にも余裕があれば重迫装甲牽引車が欲しいところではありますが、以上の改編を以て、全普通科部隊の装甲化が完結するわけです。
Limg_3669 この四輪駆動機動装甲車を装備した普通科連隊は、攻撃前進に際しては機動力が高い軽装甲機動車の4中隊を本部管理中隊の情報小隊と共に先行させ、緊要地形確保と防御線構築や小規模部隊制圧を四輪駆動機動装甲車を装備する1・2・3中隊が担い、各中隊は対戦車小隊の中距離多目的誘導弾、これも高機動車よりは四輪駆動機動装甲車の車体後部に搭載したいところですが、必要な対戦車火力や対陣地戦闘の重火力を担い、各中隊の81mm迫撃砲小隊、これも高機動車よりは四輪駆動機動装甲車の車内から投射する自走方式を検討してほしいところですが、火力支援を行います。戦車と火砲の支援を充分受けられない状況であっても、一定の機動打撃力を展開可能で、機動運用が可能となるでしょう。
Limg_3768 また、攻勢ではなく防御の場合、連隊を広範囲に展開させる場合には中隊戦闘団を組むことが出来ます。四輪駆動機動装甲車を運用する1・2・3中隊へ、第4中隊の軽装甲機動車を小隊ごとに分散させ、中隊の装甲車の機動力を強化する選択肢があります、第4中隊本部と対戦車小隊に迫撃砲小隊は連隊本部管理中隊直轄の一種予備部隊的な運用となりますが、軽装甲機動車小隊を引き受けた1・2・3中隊は、四輪駆動機動装甲車が一個中隊所要中隊本部2両と三個小銃小隊所要が14両という編制に小銃班が分散し乗車することから車両数が大きな軽装甲機動車7両が加わります。既存の普通科連隊でこれを行いますと高機動車では軽装甲機動車の相互支援が特に防御力の面で充分行えません。
Limg_7725 我が国土へ侵攻を企てる勢力には、この即座に機動展開する四輪駆動機動装甲車を装備する連隊は脅威以外何物でもありません。何より、三個に分散した場合での中隊の火力だけをみても軽装甲機動車7両と四輪駆動機動装甲車14両に迫撃砲と対戦車誘導弾が付いてきますし、連隊戦闘団編成時には機動戦闘車4両と火力戦闘車4~6両が付いてきます。機動運用も容易で具体的には。管区に隣接する連隊は他方面からの着上陸を警戒するのであれば、前述の中隊戦闘団編成を組み、初動小隊を中心に先ず一個中隊戦闘団を編成し増援に充て、隣接師団・旅団管区からの後詰めの部隊か予備自衛官部隊が展開すれば、連隊主力を以て増援に当たることが出来ます。
Limg_3854 四輪駆動機動装甲車、この車両は過度な不整地突破能力や防御力を断念し、純粋に軽装甲機動車に随伴可能で火砲の至近弾や小型地雷に正面の耐機関砲と側面の対小銃弾防御力を有する程度に抑え、兎にも角にも調達費用と維持費用を抑える装甲車両、という定義の下で提案していまして、これを現在の普通科連隊に三個普通科中隊分と本部管理中隊分に所要50両程度、広く装備すること、求められるのはこのあたりでしょう。主眼は、一個連隊に50両、一個師団の三個普通科連隊と施設大隊や特科隊/特科連隊に後方支援連隊の所要を併せれば200両程度必要となるため、如何にしても取得費用を5000万円以下、出来れば軽装甲機動車の二割増し程度の3500万円程度としなければならない訳で、費用という結論先行のもの。
Limg_8938 当方の私見は戦車部隊を機甲師団と方面隊直轄部隊に集約する、という観点から持論を展開しています。そこで、既存の師団と旅団の任務区分を考えたうえで、軽装甲車を、という話に至りました。機械化大隊については別の記事にて、方面機械化混成団、2014-01-15日付“新防衛大綱と我が国防衛力の課題⑥ 戦車定数300両縮小改編は機動防衛力整備の好機”、2013-11-16日付“榛名防衛備忘録:第1機械化大隊編成の参考点と戦車の陸上装備体系における位置づけ”、2013-11-10日付“榛名防衛備忘録:第一機械化大隊と機械化大隊という編制、滝ヶ原駐屯地祭の写真とともに”等をご覧いただければ幸い。
Limg_7847 軽装甲車部隊は、上記機械化大隊が戦車と装甲戦闘車をもっての機動打撃力を主管する部隊であるのに対し、軽装甲車を既存の管区普通科連隊に対して大量配備する意義に、機動打撃部隊が整備補給体系との連携を確立しその能力を発揮する時間的空隙へ初動部隊を展開させ、任務にあたる、というもので、限られた戦車を有効利用するために各個撃破と戦力逐次投入を回避するためには方面隊規模で集約し、装甲戦闘車による支援を必要とする、言い換えれば戦車部隊の配置間隔が大きくなる、その状況下で、補完的に、初動では主体的に運用する、という想定です。 
Limg_9595 VAB装甲車、と提示しましたが、これはフランス軍が1976年より5000両を大量配備した装甲車で、四輪駆動の車体に装甲の箱を載せた装甲車、NATOの訓練資料等を視ますとNATO諸国の高度な装甲車、四輪駆動や砲塔を備えた装甲車に装甲戦闘車と比べれば当然見劣りするのですが、アフリカ大陸などでの旧植民地地域での騒乱へ介入を求められた際の展開では、機動力を発揮し、装甲部隊の威力を見せつけます。昨年実施されたフランス軍マリ介入サーバル作戦でも軽装甲部隊の中核を担い、F2ニュースによれば三日間で700kmもの攻撃前進を達成しました。
Limg_8085 我が国の防衛を考えた場合、仮にこのVABのような軽装甲車を普通科中隊の普通科部隊が機動展開に用いる高機動車の代替へ多数を配備できたならば、まず我が本土は海洋を隔てて周辺国と離れているため、武力攻撃事態が発生する際には着上陸か空挺強襲を以て侵攻が始まります。この点、陸上国境を隔てた諸国における第一波が機甲師団というような状況よりは防衛上恵まれた環境にあるといえるところで、着上陸から六時間以内に第一撃を加えることが出来れば軽装甲部隊であっても、十分に任務を果たす事は出来るでしょう。ただ、航空優勢を確保され、非正規戦闘部隊等により道路網や橋梁が破壊された場合は、中隊毎に分散し拡大阻止の防御体制へ移行し、機動戦闘車と特科火砲で対応するか、駄目ならば、戦車部隊の支援を待つこととなります。基盤的防衛力の動的運用、とはこのように多様に運用できる部隊を充足する、これによって達成できるのではないでしょうか。
北大路機関:はるな

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