goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:四輪駆動機動装甲車、その配備後の96式装輪装甲車・高機動車たち

2014-02-15 22:38:32 | 防衛・安全保障

◆装輪装甲車とは別任務、高機動車は重宝
 四輪駆動機動装甲車、VABのような安価な装甲車の大量配備という話題を紹介していますが、今回は既存車両体系との区分という話題を。
Limg_1001  四輪駆動機動装甲車は軽装甲機動車との連携において、四輪駆動機動装甲車中隊は三個で軽装甲機動車中隊を一個とした普通科連隊編成の案を提示していますが、防衛出動と機動打撃や攻撃前進に際して、軽装甲機動車が機動力を活かし先鋒中隊の役割を担い、四輪駆動機動装甲車は軽装甲機動車中隊の戦域情報を元に主力としての運用を担う、という形を提案し、防御戦闘などで部隊が広く展開する必要がある際には軽装甲機動車中隊を小隊ごとに三個の四輪駆動機動装甲車中隊に分散し、中隊毎に機動可能で側面を叩けるな火力拠点と装甲車両と降車戦闘能力を活かした機動防御が可能、と記しました、つまり四輪駆動機動装甲車と軽装甲機動車は相性は良い。
Limg_0537  それならば、高機動車はどうなるのでしょうか。高機動車の代替に四輪駆動機動装甲車を提示したわけなのですが、四輪駆動機動装甲車が配備された際には高機動車はそのまま用途廃止とするべきなのでしょうか、理論上からは安易に高機動車の代替とした訳なのですから普通に置き換えてしまう、という結論に達するのでしょうが、中隊本部や連隊本部の汎用車両として維持する必要性は大きいと考えます。また、迫撃砲小隊や対戦車小隊の汎用車両と牽引車両としての運用維持は必要です。81mm迫撃砲を車載して自走迫撃砲に、中距離多目的誘導弾を四輪駆動機動装甲車に車載するという方策を行った際にも、弾薬輸送等の補給物資輸送は装甲車だけでは不可能です。
Limg_1644_1  高機動車は四輪駆動機動装甲車の可動維持に必要な維持物資などの空輸に当たりますし、整備用の資材輸送や連絡任務等、四輪駆動機動装甲車や軽装甲機動車では大きすぎる任務があります。そのまま四輪駆動機動装甲車に置き換えた場合、燃料消費等で問題が大きくなりますし、通信機材の輸送や中隊が戦闘を行う上での策源地構築等にその必要性は変わりません。当たり前ですが3t半トラック、かつての73式大型トラックも必要な車両で、維持する必要があります。もちろん、防弾板などの追加は必要ではりますが、連携して攻撃前進するのではなく、後続の梯団を組みますので防御力については、そこまで懸念する必要はありません。
Limg_2590  96式装輪装甲車との関係はどうなるのか。四輪駆動機動装甲車は10名の普通科隊員を機動する装甲車両ですが96式装輪装甲車も同じく10名の普通科隊員を輸送する装甲車両です。四輪駆動とすることで四輪駆動機動装甲車は96式装備装甲車の半分以下、可能であれば三分の一強程度の取得費用に抑える事を企図し、これを以て大量配備を構想していますので、言い換えれば96式装輪装甲車が毎年百両単位で配備できるのであれば、必ずしも四輪駆動機動装甲車を大量配備する必要はないのですが、量産により取得費用が下がっているとはいえ96式装輪装甲車の取得費用は9000万円程度ありますので、なかなか大量配備はかなわないでしょう。
Limg_2179  しかし、96式装輪装甲車を広範に取得できるような防衛費の増額が行われた場合、どうするべきでしょうか。この点について考えなければならないのは四輪駆動機動装甲車について、装甲施設車・自走軽迫撃砲・重迫撃砲装甲牽引車・装甲救急車・装甲近距離地対空誘導弾発射車両・装甲多目的誘導弾発射車両・装甲レッカー車、等といった汎用車体にも応用できる部分があり、少なくとも一個師団所要に各普通科連隊へ三個中隊と連隊本部管理中隊所要等するとして50両が必要で、これを三個普通科連隊と施設大隊などに装備する場合、少なくとも師団で200両、旅団でも各普通科連隊に二個中隊所要を充当し施設中隊に装備することを考えれば120両が必要となるため、全自衛隊で2000両以上が必要となり、如何に財政上余裕があっても全て96式装輪装甲車で充足することは、少々厳しいのではないでしょうか。
Limg_2536  四輪駆動機動装甲車は、四輪駆動ですので八輪駆動式の装甲車とでは不整地突破能力で96式装輪装甲車に及びません、しかし、四輪駆動機動装甲車の必要性の背景には戦車の縮減に伴う、戦車に依存しない普通科連隊の運用を念頭として考え出した提案ですから、軽装甲機動車に随伴できる程度の機動力があれば問題は無い訳です。一方で、既存の高機動車による乗車戦闘能力では機動力で軽装甲機動車に随伴できても防御力で高機動車は軽装甲機動車に随伴できませんので、四輪駆動機動装甲車は必要になる。
Limg_6463_1  また、四輪駆動機動装甲車は四輪駆動ということで整備の必要性と負担度合いが96式装輪装甲車と比較し、低いことが挙げられるでしょう。整備負担が大きすぎると稼働率維持に必要な支援が大きくなりすぎ、場合によっては後方支援連隊の普通科直接支援中隊の支援を拡大しなければ稼働率を維持することが出来なくなるわけであり、その分の人員負担が大きくなれば、部隊充足率や戦闘要員の確保に問題が出てきますし、なによりも後方支援部隊が大きくなりすぎますと梯団が大きくなります。戦車部隊のような打撃力の大きな舞台であれば梯団が大きくなってもこれを補う打撃力を発揮できるのですが、装甲車主体の普通科部隊には梯団が大きくなりすぎる事は脆弱性に繋がります。
Limg_8587  すると、96式装輪装甲車は不整地突破能力の高さが求められる部隊、機動戦闘車との連携を行う部隊や戦車部隊の支援、機動戦闘車は普通科連隊戦闘団にも配属されますが、配備部隊は小隊規模ですので機動戦闘車主体の戦闘ではなく機動戦闘車は火力支援と対戦車戦闘に充当される程度となります、中央即応連隊や重装備がる程度維持されるという北部方面隊の普通科連隊一部へ配備するという程度にとどめるのは現実的な選択肢と言えるでしょう。戦車部隊に直協する普通科部隊にも配備する選択肢は、戦車を支援できる程度の機関砲と火器管制装置と共に搭載するならば選択肢に含まれるかもしれませんが、やはり装輪装甲車では装軌式車両である戦車に匹敵する機動力は発揮できるか、疑問があり、この点は真剣に検討されるべきでしょう。
Limg_9011_1  四輪駆動機動装甲車の配備を行ったとしても、既存の装備体系と連携する際に軽装甲機動車については相互の能力を補完し合う意味で必要性はなお高いまま維持されます。高機動車は汎用車両ですので、その運用の必要性は人員輸送から戦闘支援へと転換しますが、その必要性の大きさは変わりません、96式装輪装甲車については、任務が重なりますが整備の必要水準が効率的であり取得費用も現実的ですので、必要不要ではなく棲み分けしている、ということになります。装輪装甲車とは別任務、高機動車は重宝、こういうことになります。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする