◆横浜港には初の自衛隊向けAAV-7が到着
南西諸島に関する軍事的圧力についての具体的な脅威が顕在化している昨今ですが、自衛隊の防備はかなりの部分で強化されています。
先ほど入ったNHK報道によれば、陸上自衛隊が導入する水陸両用強襲車AAV-7について、その最初の4両がアメリカより横浜港へ到着したとのことです。同車は海上から沿岸部への上陸へ用いる装甲車両で、アメリカ海兵隊向けに開発されたものですが、我が国周辺では韓国海兵隊や台湾海兵隊、東南アジアではタイ海兵隊とインドネシア海兵隊が運用しています。
AAV-7は横浜港に到着したのち、近く陸上自衛隊駐屯地へ搬入され、佐世保の相浦に創設される水陸両用団用の両用装甲車両での使用に向け試験に供されることとなります。更に中期防衛力整備計画では52両が増強されることとなっており、陸上自衛隊は2000年代に入って以降整備してきた島嶼部防衛能力の総仕上げとなる装備の一つと言えるでしょう。
このほど朝雲新聞は島嶼部防衛に関する一連の訓練を14日付の更新として紹介しました。この中では、九州沖縄を防衛警備管区とする西部方面隊が実施した鎮西25演習に呼応し、旭川第2師団より一個連隊戦闘団が九州へ展開、東北方面隊第6師団より一個連隊が訓練検閲を九州にて実施、第1空挺団も離島防衛訓練を実施した模様が紹介されました。
これは11月の自衛隊統合演習として北大路機関ではその実施を昨年の10月31日付記事において紹介しています。したがって朝雲新聞の掲載は今月14日ですが、演習は昨年11月に行われたものです。西部方面隊HPなどではその模様が紹介されていますので、参考までに。
第2師団は、平成25年度協同転地演習の一環として行われ、1400kmの距離を一挙に南下し、高速船による重装備の展開や陸路を高速道路などを多用しての緊急展開、一部は航空機による展開を実施しています。重装備には90式戦車や99式自走榴弾砲といった九州には装備されていないものも含まれるとのこと。
師団は一個連隊戦闘団編成の部隊を展開、第2師団の連隊戦闘団は本土師団の連隊と比較し軽装甲機動車などは情報小隊に装備されるなど限られているものの、96式装輪装甲車化された中隊を有しており、戦車連隊を有しているため本土師団の連隊戦闘団は戦車小隊を有するのみですが、第2師団は戦車中隊を配置できます。
第2師団は90式戦車や99式自走榴弾砲等の優秀装備を保有していますが、年度末に近代化改編を受け、10式戦車などの新装備を受領します。新防衛大綱では機動師団へ改編されることとなっているため、重装備が全自衛隊として縮小傾向にある中、機動力の増強への必要な施策を続けてゆくことでしょう。
第6師団隷下の第20普通科連隊は第四次師団訓練検閲に際し、所属する東北南部を担当する第6師団管区より陸路を中心として九州へ展開しました。訓練検閲は所属する師団管区内で行われるものが基本ですが、今回は東北から大きく展開、大分県の日出生台演習場において実施されました。
神町に駐屯する第20普通科連隊は、新潟県の高田駐屯地、兵庫県の伊丹駐屯地、山口県の山口駐屯地を経由し九州へ展開しました。第6師団も機動師団への改編が計画されている師団の一つで、こうした訓練検閲の長距離展開が今後ほかの師団や旅団においても実施されるのか、注視してゆきましょう。
第1空挺団は九州鹿児島県の大隅半島沖において会場への水上降下訓練を実施しています。水上降下を目的とした訓練はこれまでもかなり以前より実施されてきましたが、主として航空機からの緊急離脱などの海上着水を念頭においたものであったのに対し、近年では島嶼部防衛を念頭に陸上降下が困難な地域への強襲手段として行われています。
CH-47輸送ヘリコプターより24名の連続効果が訓練、島嶼部防衛における第一波を務める空挺部隊として、必要な能力の整備を急いでいます。このほか、那覇の第15旅団は年度末改編に備え装備を充実させていると伝えられ南西諸島における防衛はその圧力増大に対応し、万全なものを目指して進んでいるようです。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)