◆核兵器国は絶対に我が国を核攻撃できない
東京都知事選が何故か原子力発電の可否を争点化し、昨日、維持漸減を掲げた舛添氏が当選を果たしました。
この原子力発電、福島第一原子力発電所事故後は存廃が常に大きな討議の論題となってきています。当方所感としては、今世紀中に常温核融合発電等の次世代エネルギー開発が進むことを見越し、その上で今世紀中に廃止を目指す、という方向が最も望ましい姿と考えています。
一方、憲法に明示された我が国の国是である平和主義は石油というエネルギーの確保を目的として展開された太平洋戦争を繰り返さない手段として武力を国家の選択肢より省くことを志したもので、我が国に原子力発電用燃料が搬入された際には進歩系新聞さえも平和の火として歓迎していますので、我が国の対外政策ともエネルギーの自給は重要な要素を占めるといえるでしょう。
他方、日本全土に位置する原子力発電所は、我が国に対する周辺国の核恫喝、具体的には山東省通化のDF21ミサイル基地等の核兵器、主として対日用とされているのですが、この核攻撃から、我が国を防護する最後の盾として機能している部分が、甚だ不本意で不快ではあるのですが、果たしているのかもしれません。
当方のように吐き気を覚える方も多い論理でしょうが、現実としての話です。核兵器が我が国に対し使用されれば、広範囲に核電磁パルスEMPによる電子機器への深刻な影響が発生し、特に原子力施設は保安設備など、一部を除きNBC防護管理棟さえ建設されていないのですからEMP耐用機能が十分とは言えません。完全に原子炉が制御不能となった場合、福島第一原発とは比較にならない事故に発展します。
原子炉が完全に制御不能となったチェルノブイリ原発事故では350km半径にホットスポットが分布し、放射性降下物は北半球全域にばら撒かれました。仮に我が国周辺国が我が国に対し核攻撃を行った場合、約50基の原子炉が暴走し、福島第一原発のような事故対策はもちろん、チェルノブイリのような被害局限化措置も行えないでしょう。
この場合、どれだけの被害が生じるかは全く想像できないものですが、北半球は核攻撃により破壊された日本の原子炉と使用済み燃料棒の気化と大気中放出により、ほぼ壊滅すると考えられます。日本は全域が居住不可能となるでしょうが、DE-21を発射した施設も、その国の首都も、全滅は免れないのではないでしょうか。
原子力白書には日本の濃縮ウラン保有総量は17000t、プルトニウムは113t、2003年の数字で情報が古くて恐縮ですが、我が国土は平和主義の手段としてのエネルギーの自給を目指した結果、これだけの核物質を保有する事となったわけです、が、平和に反する周辺国の核恫喝に対し、これら平和用の核物質が一種の盾、となっている。
皮肉な話ですが、濃縮ウラン17000tとプルトニウム113tの発電用燃料が核攻撃で破壊され拡散した際の状況は想像できないほどであり、日本の核物質は核兵器を持たない発電用でありながら、その平和な国に対して核兵器が使用された場合、周辺国を巻き込む疑似相互確証破壊の情勢を構築してしまっているように見えてなりません。
カールセーガンの核の冬理論と異なり、対日核攻撃による原子力設備総暴走は、全面核戦争による熱核爆発火災による粉塵による寒冷化の被害こそ考えられないため、南半球の一部は生き残ることが出来るでしょうが、核の冬理論が提唱された1986年当時の全核兵器国核弾頭数が7万発、弾頭の核物質を合計しても日本の発電用濃縮ウラン17000tとプルトニウム113tには及ばないでしょう。
もっとも、核の冬が到来するような状況では全面核戦争により熱核兵器が多数投射され世界中の原子力施設も破壊されますので、日本以外の原発も同様の状況に陥るので、この当方の着眼点は片手落ちであるようにも感じるのですけれども。
EMP攻撃、高高度核爆発による相手国の電子継戦能力破壊措置に対しても、日本の原子力発電所は、その選択肢を実行させない重要な手段となります。核兵器国は全て北半球にありますので、何れも我が国を攻撃すれば、着実且つ確実に我が国から放射性降下物が不可逆の摂理として浸透してくる、非常に悍ましい。
もちろん、これは結果論として生じたもので政策的に我が国防衛の一手段となり得るものではありません、核攻撃でわが国民が殺されるならば相手国も含めて全滅させる、というものは核兵器国の核兵器依存と並ぶエゴでしか無く、自国民の安全を第一に考える政府の義務は周辺国の核兵器廃絶か、それまでの弾道ミサイル防衛に他ならないからです。
ただ、その一方で我が国防衛力は通常兵器による侵攻に備えたものであり、核抑止は核兵器だけの面では同盟国に依存せざるを得ません。疑似相互確証破壊機能等不愉快以外に感じるものが無い論理ですが、その反撃手段を持たない我が国に対し核兵器を指向する国に対してはそれ以上の不快感を持たずにはいられないところ。
当然ですが、我が国は核兵器を保有するべきではありません、核恫喝に対しては弾道ミサイル防衛の強化充実と巡航ミサイルなどの精密誘導兵器等通常兵器で構築する抑止力にて対抗すべきです。しかし、仮に周辺国が我が国を核恫喝した場合、我が国には仮に堅持し続けた平和主義に殉じるとしても、相手国には不可抗力の報復が及んでしまう、という認識は持ってほしいもの。
ただ、こう論理を展開しますと冒頭に示した今世紀中の原発廃止を目指す代替エネルギー開発という当方視点に反対される方がいるかもしれません、が、それは大丈夫でしょう、その頃には弾道ミサイル防衛技術が大きく進歩し、ある程度の傘の役割を果たしているでしょうから、ね。
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