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航空防衛作戦部隊論(第五三回):航空防衛再論,F-15後継必要と戦闘機増勢の厳しい選択肢

2018-01-07 20:02:28 | 防衛・安全保障
■F-35戦闘機毎年6機調達
 航空祭へ展示し、国民に防衛力を証明し将来の自衛官へ広報する航空機が、実任務増大を背景に減少しています、それ程に現状は厳しい。

 日本の防空へ、350機の戦闘機、航空自衛隊には冷戦時代と同数の350機を目処として、戦闘機部隊を再整備する必要はないか、現在の定数よりも70機程度を増強させる必要はないか、上記脅威を総合的に考えた場合、こうした強硬的な視点はあって行いのではないでしょうか。もちろん、現在の財政状況では戦闘機の70機増強はそれ程簡単ではありません。

 軍事力は経済力との均衡を維持できなければ長期的に破綻する、大日本帝国やソ連の教訓で、下手に増強し国庫破綻となっては長期的に防空を維持できなくなります。更に安易に数だけ増強してもよいというものではありません。しかし、中国とロシアの二方面からの脅威、そしてその増強を前に280機で充分、とはなかなか言い切れないものがあるのです。

 それでも、何らかの手法で戦闘機350機体制へ戻す必要がある、中国戦闘機の日本を戦闘行動半径に収める航空機の急速な増大とともに日本の南西諸島から九州と西日本までを含め接近する異常な防空識別圏内への侵入増大、そして米ロ対立を端緒とした北日本から東日本と首都圏にかけて接近増大、この現状に対し戦闘機は現在の280機では対応できない。

 装備不足は根性ではどうにもなりません、無理を重ねれば器材消耗で事故の連続や既存機体の消耗で早期除籍となる。仮に短期的に対応できたとしても、緊急発進は平時における任務の一部であり、この対応で有事へ訓練と装備体系更新が停滞しては有事の際の制空権確保能力に問題が生じかねず、戦闘機は冷戦時代の防衛大綱定数であった350機が必要だ。

 ただ、現在配備を進めていますF35戦闘機を中心に増強し350機体制を目指すには、少々難しい点があります。航空自衛隊が現在導入を進めているF35戦闘機は42機、141機を導入したF4EJ戦闘機の残る機体の後継として2個飛行隊分を導入する計画で進められています。航空自衛隊のF35導入計画はこのF-4EJ後継機42機で終わるとは,考えられません。

 三菱FACO等多額の先行投資を行っているのですから、F-35の調達は、ここにF15戦闘機の初期型、段階近代化改修へ対応しないPre-MSIP機の90機程度が加わり概算で将来的には132機程度が導入されることとなるでしょう。場合によっては、これは調達が長期化した場合という意味ですが、さらに現行のMSIP機の代替ともなる可能性が,否定できません。

 F-15戦闘機Pre-MSIP機の後継機を含むならば132機の導入が将来的に予想されるF35,特にF15戦闘機は航空自衛隊が導入開始となり初号機が岐阜基地へ到着したのが1981年となっていますので、F4EJは旧式化と老朽化が非常に進んでいますが、F-15Jの老朽化も無視できません。そこで132機のF35が必要となるわけですが、調達数が非常に少ない。

 F-35、現在の毎年6機の調達では22年を要します。これはF35の取得費用が高い為に多数を取得したくともできないという厳しい財政事情が影響しているのですが、F35の調達状況から仮に132機が揃うとしますと2036年まで要します。2036年まで中国の経済成長が維持できているか未知数ですが、おそらく脅威度の頂点に間に合いません、後手に回る。

 現状維持だけでも厳しい状況ですが、ここに数字の上だけで70機のF35を上乗せすることは、202機でF-15戦闘機並の数を揃えるという意味ですが、長期的には実現しましょうが短期的な取得は財政上かなり厳しいといわざるを得ないでしょう。すると、中古航空機導入か超老朽化戦闘機延命改修、安価な新型戦闘機の導入などの選択肢が必要となる訳です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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