北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大災害,次の有事への備え 19:高浜原発で万一の事態には舞鶴市民は京都市へ避難する

2018-01-09 20:10:09 | 防災・災害派遣
■危機管理と危機回避
 舞鶴展示訓練の際、若狭湾沿岸の福井県高浜原発が見えまして特徴ある原子炉建屋の形状が何か印象的なものを感じさせました。

 舞鶴市北部の避難先は京都市東山区と神戸市東灘区、先日護衛艦撮影へと歩みをすすめました舞鶴市の海水浴場ちかくにて広報表示を見て考えさせられるものがありました。京都市東山区は清水寺始め風光明媚な街並みが広がり共に舞鶴市からは100km以上隔てています。神戸市東灘区についても阪神基地が程近く舞鶴市からやはり100km以上離れている。

 津波被害の想定ではありません、舞鶴市は海上自衛隊舞鶴基地が置かれ、新日本海フェリーが北海道と結ぶ日本海有数の港湾都市ですが、舞鶴湾は西舞鶴東舞鶴と深く内に入り、東日本大震災の松島の様に津波の速度はかなり減殺されます。そして日本海沿岸についても高台が多く、100km逃げずとも1km逃げれば標高は100m近く上るところが殆どです。

 舞鶴市には標高650mの青葉山や標高620mの三国岳始め600m級の山々が十数山並び、300mちかい愛宕山など入り組んだ地形です。そもそも舞鶴基地のもととなった帝国海軍舞鶴鎮守府がこの地に置かれた事由が、入り組んだ地形が対岸のロシア太平洋艦隊の艦砲射撃から艦隊を護り、海軍歩兵の上陸から舞鶴要塞が守りやすい地形故にほかなりません。

 舞鶴市北部の避難先は京都市東山区と神戸市東灘区、この意味することとは何か、それは高浜原発を想定しているのでしょう。福井県大飯郡高浜町に位置する高浜原発は加圧水型軽水炉四基を有し、2011年初頭にはMOX燃料によるプルサーマルの営業運転を実施しています。福井県の原発ですが京都府の舞鶴市中心部まで実に35km程の距離にあるのです。

 高浜原発が仮に事故を起こした場合、30km県内の災害救助法に伴う避難命令が発令された場合舞鶴市の中心部は辛うじて30km圏外となりますが、舞鶴市の北部地域と東部地域は30km圏内に入る、舞鶴市は京阪本線でいえば37kmといえば淀屋橋から中書島、京都市の中書島までの距離になる。避難先の京都市東山区と神戸市東灘区はこれを示すのでしょう。

 広域避難の準備としまして、避難先として提示された京都市東山区と神戸市東灘区では地区ごとに京都市内の廃校となった小学校等が充てられており、一応準備を行っている事が見て取れます。もっとも、舞鶴市北部は交通難所であると共に移動販売車が展開するほどに過疎化が進んでおり、情報の徹底や避難へ交通手段確保、道路整備には課題も多々残る。

 舞鶴基地があるのですから、過疎地域の退避には海上自衛隊、また敦賀と舞鶴はじめ第八管区海上保安本部や京都府警の警備船に新日本海フェリーを筆頭とする協力企業による退避支援も当然行われるでしょう。しかし、純粋に視ますと先発接岸施設を持たない地域での海上移動には専用の上陸用舟艇型の交通船や輸送艇と水陸両用車に頼るほかありません。

 日本の原子力発電所は、人口密集地域から一定程度の距離を置いて建設される事例が多いのですが、同時にこうした地域は原子力発電所の周辺地位個だけを見れば原子力関連産業などにより人口が増大し、必然的に地域が活性化すると共に鉄道設備整備や道路整備等が実施されます。しかし、事故を想定する30km圏内まで視野を広げた場合はどうでしょう。

 原子力事故を十分想定した上で、この対処への能力構築を考えた場合、原子力事業者や自治体には想定を超えるものがあります。勿論、こうしたものへ対応策は過度に防衛力に依存する体制を構築すべきではないでしょうが、原子力事業者が多数の揚陸艦や輸送ヘリコプターを整備するには法的にも事業的にも難しい部分があり、広い議論が必要と考えます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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