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陸上防衛作戦部隊論(第六九回):装甲機動旅団再検討日本版機甲支隊案,陸上自衛隊の中隊長

2018-01-30 20:08:03 | 防衛・安全保障
■富士学校が練成する中隊長
 装甲中隊戦闘群、小回りの利く編成ですが多種多様の装備で複雑、諸外国の初級将校が担う若い歩兵中隊長では指揮しきれないでしょう。

 陸上自衛隊だからこそ、装甲中隊戦闘群という編成はその能力を最大限発揮できるのかもしれません。こう言いますのも一つは、自衛隊には富士学校があるため、普通科と機甲科部隊の統合指揮に演練した指揮官を養成できる。もう一つは中隊長へ初級指揮官を経てAOCや進んでCGSやFOC等高等教育を受けた高い能力の指揮官が補職される為です。

 富士学校は、普通科学校と機甲科学校に特科学校を自衛隊草創期に統合創設した研究教育機関です、通常各国は歩兵学校と戦車学校を別々に置き、上級指揮官を養成していますが自衛隊は富士学校により各職種協同を重視し指揮官を養成してきました、故に戦車部隊と機械化普通科部隊に軽装甲部隊を包括指揮する要員は富士学校でなければ養成できません。

 富士教導団には機甲科と普通科や特科が装備するほぼすべての装備が揃い、このため、装甲中隊戦闘群を構成する戦車3両、装甲戦闘車7両、軽装甲機動車9両、96式装備車輪装甲車1両、重迫撃砲2門、迫撃砲3門、中距離多目的誘導弾2両、高機動車5両、1/2tトラック4両、3t半トラック2両, 3t半燃料車2両、重レッカー車1両、全ての種類が揃う。

 中隊長の能力、装甲中隊戦闘群は戦車戦闘梯隊と機械化戦闘梯隊に戦闘群支援部隊、増強中隊というよりも小型大隊に近い部隊数を隷下に置く編成案です、しかし元々自衛隊の普通科中隊は諸外国の歩兵中隊よりも編成が大きく高度な指揮官が求められ養成してきた。幹部上級課程AOC,指揮幕僚課程CGSか幹部特修課程FOCを修了した中隊長、そしてAOCを修了した中隊幹部を幕僚とできるだけの、高度な人材が陸上自衛隊には揃っており、人材は活用すべきです。

 陸上自衛隊だからこそ装甲中隊戦闘群、という視点には戦車300両時代を迎えての機甲部隊運用の変化も起きく反映されます、装甲中隊戦闘群は普通科中隊長も戦車中隊長も補職される試案、装甲機動部隊が機甲部隊の略称であることを踏まえれば、装甲中隊戦闘群は一種の装甲機動部隊であり、普通科機甲科の中隊長は総員、装甲機動部隊の指揮官となる。

 戦車と装甲戦闘車で10両を指揮、普通科と機甲科の幹部が中隊長へ補職される事が同時に少なくとも航空機動旅団と装甲機動旅団に類別する前提である以上、半数の中隊長が装甲機動部隊の指揮官を任される前提で、運動戦や部隊運用を念頭とするならば、戦車300両への縮小で戦車削減と共に将来必ず顕在化する機動運用部隊指揮官の不足、経験不足の戦車部隊が能力を発揮出来ない、という厳しい問題点を払拭する事も可能となるでしょう。

 新しい脅威に対して装甲中隊戦闘群は有事即応の体制を執る事が可能です。島嶼部防衛や邦人救出任務、潜在的に重要影響事態に際しての海外派遣、緊急展開が必要な任務は多々ありますが、装甲中隊戦闘群は装甲機動旅団隷下に最大12個、各方面隊に編成すべきとしている広域師団、即ち5個広域師団で60個装甲中隊戦闘群を編成できることを意味します。

 緊急展開を考える場合、装甲戦闘車両及び支援装甲車両各種20両、砲迫ミサイル等搭載車両7両、支援車両14両、合計41両、輸送艦おおすみ型1隻に全て搭載可能ですし、C-2輸送機の配備が軌道に乗れば、理論上は車両と弾薬1基数をC-2輸送機1個航空隊の2往復と10式戦車に関してはC-17輸送機等友好国支援2機により空輸展開が可能となります。

 これは、広域師団として航空機動旅団の緊急展開を支える重装備部隊の増強派遣という方式、多国間訓練への参加など防衛協力強化、離島などへの重装備予防展開、新しい選択肢を切り開くものとなるでしょう。無論大前提として、この政策提案には防衛計画の大綱に盛り込まれた戦車縮小を補う、装甲戦闘車の増勢と、師団体制の再編が前提になります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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