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【日曜特集】横須賀地方隊伊勢湾展示訓練2010【8】US-1と艦隊機動(2010-08-21)

2018-01-14 20:09:19 | 海上自衛隊 催事
■伊勢湾展示訓練艦隊行動
 US-1A救難飛行艇、最後の一機が2017年に除籍されUS-2へ大任を譲りました、この飛行展示の後に背湾展示訓練は展示訓練この日最後の艦隊行動展示へと進みます。

 伊勢湾展示訓練、横須賀地方隊が実施する海上自衛隊展示訓練です。近年は海上防衛への関心の高まり、それ以上に一般でも応募し当選すれば艦隊を撮影する事が出来るという情報のインターネットでの流通により非常に多くの方々の関心を集めることとなりました。

 横須賀地方隊の伊勢湾展示訓練という事で横須賀地方隊の歴史を振り返る内容を中心に写真特集を掲載してきましたが、展示訓練という夏に執り行われます洋上で展開される我が国海上防衛力を見学にて、どのように眺めるかについて、ちょっと振り返ってみましょう。

 今回お世話になったのは、多用途支援艦えんしゅう、ひうち型多用途支援艦です。観艦式程ではないものの展示訓練となりますと、どうしても艦隊行動をしっかりと撮影したいものですが、その為には撮影位置というものが重要です、まず洋上に出る事が先決ですが。

 艦隊の先頭を往く先導艦に乗艦できれば、これに勝るものはありませんが、そもそも乗艦する艦艇は応募の時点で選ぶことはできません。希望艦艇等を聞いてくれればよいのですが、艦隊行動の観点から防衛上、長期的に示す事が出来ない部分もあるのかもしれません。

 艦名を視て、恐らく観閲部隊の後方だな、とか、受閲部隊の先頭に違いない、とか一喜一憂するのも、この展示訓練の一つの姿なのかもしれませんが、まずは乗艦する際に寝坊して遅れないことが肝要です。出港順は各艦に違いがありますので、早い艦もあるのです。

 整備旗、といいまして艦艇の出港準備完了と共に掲げられる旗があります。展示訓練等では流石は海上自衛隊の模範と実力を見せる為に、出航準備が完了しない艦艇というものあありませんが、遅刻すると乗せてもらえません。時間にゆとりを持つ事が大事ですよね。

 自衛隊、余り団体行動で時間を守れない人を揶揄する言葉に、整備旗、という呼び方がありまして、即ち、その人が集合地点に居るのならば他の人は全員そろっているだろう、という事で、おう整備旗も来ているな、という言葉もある模様、成程気をつけねばならない。

 しかし、展示訓練、興奮してと言いますか、乗艦する場合は何故か目が覚めているものでして、遅刻する、という話はあまり聞かないのですよね。もっとも、日曜日と云いますと、日朝キッズアニメの影響で元々早起きする、という人もここ数年は多いようですけれども。

 乗艦に際して、いや、先んじてお弁当はどうするか悩むところです。お弁当はかつて当方、観艦式に焼き肉弁当を準備し、横須賀地方隊の方に、これ、艦上まで持っていくのですか、と笑われた事もありますが、確かに考えるとコンビニ系弁当箱は食べた後の処理が面倒ではある。

 駅弁で、名古屋名物とり飯、日本SF界の巨匠である小松左京氏が小説“首都消失”の冒頭で駅弁として主人公に絶賛させていた駅弁でもあれば、あれはコンパクトであるものの中味がしっかりと入っているだけに満足感が大きいのですが、名古屋駅でしか売っていない。

 とり飯、薄く切った名古屋コーチンの味付け鶏肉が、山菜五目御飯の上に数枚まぶせられており、沢庵の漬物と共に厚紙ごと木籠細工の弁当箱に収まる。“首都消失”では主人公が新幹線名古屋駅にて東京への帰路購入し、道中三河安城付近から謎の濃霧に襲われます。

 横濱しうまい弁当、とも名古屋とり飯は重なるものがありまして、首都圏で当方の一押しは横濱しうまい弁当なのですが、多くの弁当が華美と荘厳さに併せて価格高騰に突き進む中、弁当の素朴さと手軽な価格帯を維持しているという意味で別格の駅弁といえましょう。

 閑話休題。艦上に上がりましたらば、やはり撮影位置というものは大きな関心事です。なにしろ、陸上自衛隊駐屯地祭や航空自衛隊航空祭は年がら年中日本のどこかで行われているものですが、海上自衛隊の展示訓練となると全国で各地方隊が一回だけ、貴重そのもの。

 撮影位置で慌てて右舷左舷を間違え、何も来ない側に陣取っては折角血税で動く護衛艦や支援艦艇に広報というご厚意に頼る身の上、乗せて貰うからにはしっかりと海上防衛力の現状を把握し、2010年の写真を2017年に掲載するにしてもしっかり報じる義務も生じる。

 気概はそんなもので、撮影位置を選ぶのですが、なにしろ撮影位置というものは状況次第でどんどん変わってきます。しかし人口密度はそれなりにあるのですからそう簡単に観閲行進は正面から見たうえで訓練展示は戦車の前へ、陣地変換、という訳にもいきません。

 一方、当方が撮影位置を陣地変換せずとも艦は動いているのですから陸の上で戦車や戦闘機を撮影するとは訳が違うのです。ここだな、と撮影位置を決めましても艦隊行動によっては、いや、此処だと見えるものも見えなくなるのか、という状況、多々生じかねない。

 展示訓練案内パンフレットというものはこうした状況でかなり重要です。観閲部隊なのか受閲部隊なのかで、観てもらう艦隊なのか観る艦隊なのかが違ってきますし、艦隊が単縦陣、つまり艦が全部一列に航行する際に前の方を行くのか後ろを進むのかでも違ってくる。

 単縦陣で艦隊が航行する際に、乗艦する艦が先頭の先導艦ならば間違いなく撮影適地は後部甲板、後続する艦艇が単縦陣で進む様子を先導艦から撮影すれば、艦隊が一列に進む様子をしっかり撮影する事が出来ます。艦隊行動は単艦の体験航海ではやはり見られません。

 単縦陣は外国の留学生で徴兵にて海軍の取られた連中の話を聞くとかなり難しいらしい、それも一隻二隻、一隻では陣形は取れませんが、少数ではなく十隻単位で、しかも艦型が違い、護衛艦から掃海艇まで単縦陣を組むというのは、もう練度が相当の必要とのこと。

 艦隊行動は、一見行進の技量を誇るだけの陸軍の様相で時代錯誤と誤解しがちですが、船団護衛やミサイル戦闘では死活的に重要で、洋上補給等の基礎にもつながる部分です。これが出来ないと、外国艦艇の某国艦の如く日本の国際観艦式へ向かう途上座礁しかねない。

 撮影位置で単縦陣の後方にいる場合は、前甲板か艦橋付近が撮影適地です。艦橋は操艦の邪魔にならないよう一部立ち入りが制限されていますが、艦長航海長等と機関長や飛行長に砲術長とのテレトーク会話等きびきびとした行動が雰囲気として体験できる航海となる。

 単縦陣後方にいる場合の撮影場所ですが、もう一つ、上部構造物付近で搭載艇等日影となる位置も撮影適地となります。この位置ですと、観閲部隊であっても受閲部隊であっても、先を往く艦艇と、対向するもう一方の単縦陣を一枚に収める事が出来、すると迫力が凄い。

 伊勢湾展示訓練2010ですが、当方は多用途支援艦えんしゅう艦上にて、上部構造物の搭載艇とファンネル付近、煙突と書くべきか、この位置にて撮影する事としました。右舷と左舷を往復しやすい位置にありまして、搭載艇が真夏の伊勢湾の直射日光を防いでくれます。

 横須賀地方隊の展示訓練のみならず、真夏に行われる展示訓練は灼熱の太陽との戦いです。雨天の場合は中止もあり得るので、雨天との戦いでもあるのですが、直射日光を多少避けられて、しかし見晴らしの良い場所を確保する選定も、撮影の一つの技巧といえましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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