■週報:世界の防衛,最新の論点
防衛情報の週報としまして日本の防衛に参考となる幾つかの話題を幾つか列挙してゆきます。まずは先日も紹介したNATOの続報を。
ドイツ駐留米軍大規模縮小はアジア転進計画を改め欧州域内への再配置に切替える、エスパー国防長官が発表した。事の始まりはアメリカトランプ大統領がドイツ政府の国防努力不足を大統領就任前から問題視しており、6月にドイツ駐留米軍3万5000名のうち1万2000名を削減すると発表したが、当初は1万2000名をアジア地域に転地するとしていた。
ドイツ連邦軍は陸軍6万6000名と戦車225両、海軍はフリゲイト10隻と潜水艦6隻で揚陸艦などは無し、空軍はユーロファイター戦闘機141機とトーネード攻撃機68機などを装備している。冷戦時代は西ドイツだけでも陸軍36万名と戦車3800両を配備しており、大幅な減少だが、新戦闘機F/A-18E選定に装輪装甲車やトラック調達等一応の近代化は進む。
在欧米軍司令部は現在ドイツシュトゥッツガルドに置かれているが、ベルギーブリュッセルに移動するとし、ドイツから転地する1万2000名の内5400名はイタリアなどに移駐する。なお移駐には数年間を要する見込み。残る6600名の動静は発表されていないが、欧州域外へ転地するという方針は変っておらず、米本土再配置かアジア転地等が考えられよう。
■アパッチ二五〇〇号機完成
AH-64の話題。旅客機事業が737MAX問題とコロナ航空不況で苦境のボーイングに少し明るい話題です。
ボーイング社は同社が生産するAH-64戦闘ヘリコプターの2500号機を完成させたとのこと。2500号機は2020年7月に完成、最新のAH-64Eとのこと。AH-64Aとして最初のアパッチヘリコプターが完成したのは1983年、当時はボーイングとは別会社であったマクダネルダグラス社により完成、1991年湾岸戦争において別格の戦闘能力を発揮しました。
アパッチガーディアンとして生産されるAH-64Eは、AH-64Dアパッチロングボウに無人機管制能力と空対空戦闘能力を追加したもので、自衛隊仕様のAH-64D-Jモデルに無人機管制能力を付与したもの。日本ではミサイル防衛など優先事業や錯綜地形でのロングボウレーダー性能に難点が指摘されますが、統合型ミサイル開発など本家では進化が続きます。
■オスプレイ四〇〇号機
ボーイング社にもう一つ明るい話題。アメリカ軍と共に自衛隊へも配備開始となったオスプレイも思えば数が多くなりましたね。
七月、ベル社と共同生産するV-22オスプレイティルトローター機の400号機を完成させたとのこと。記念すべき第400号機はアメリカ空軍特殊作戦軍団配備の機体とボーイング社により発表されている。V-22はアメリカ海軍及び空軍と海兵隊に加え陸上自衛隊でも運用されている機体で陸上自衛隊配備の機体は六月より木更津駐屯地で訓練を実施中となっている。
V-22、その最大の特色はティルトローター構造として回転翼航空機と固定翼航空機の双方の特性を持つ点で極めて高い巡航速度と戦闘行動半径を有するが、ティルト機構の制御で実に21年間と開発が難航した事で知られます。現在は安全性が確保され高性能機として運用が続くが取得費用が高い点が難点、しかし現在もインドネシア等が導入を希望している。
■米海兵隊AAV-7事故
水陸両用作戦の代名詞的装備で世界各国で運用されるとともに自衛隊にも配備されたAAV-7の気になる話題です。
残念なニュース。AAV-7両用強襲車サンクレメンテ島沖で沈没、15MEU-第15海兵遠征群所属車輛が訓練中に沈没したとのこと。事故は7月30日に発生、沈没時点でAAV-7には16名が乗車しており、8名が行方不明という、沈没から100時間、生存は絶望的と思われる。サンクレメンテ島はカリフォルニア州のキャンプペンドルトンから沖合100kmに位置する離島である。
15MEU訓練は揚陸艦から発進し戻る最中の事故という、事故現場の水深は1000m以上。事故発生とともに当該車輛からは浸水が始まったと救助を求める通信が入っており、近傍で訓練中のAAV-7が2両、また海軍の高速艇も救助に当たった。これにより脱出した8名は救助されたが、内1名は搬送先の病院で死亡し更に2名が集中治療室で加療中とのこと。
AAV-7は水陸両用の両用強襲車であり、24名の海兵を乗せ洋上を17km/hで航行するが上陸後は地上を72km/hで機動し内陸部へ進攻可能、海岸橋頭堡を確保する為の性能だが2003年のイラク戦争では第2海兵師団が内陸600kmのバクダッド攻略に参加しており、大型装甲車としても活躍する。アルミ合金製だが浸水した場合には沈没の危険などもある。
■海底の沈没AAV-7
アメリカ海兵隊ではAAV-7の沈没原因究明を進めているとのことで自衛隊でも運用の装備故にその去就に注目も。
AAV-7,沈没した車両について、8月3日、行方不明となっていた海軍水兵と海兵隊員のご遺体が回収されたとのことです、ご遺体はデラウェア州のドーバー空軍基地へ移送されご家族と対面、19歳から23歳という若者でした。これは米海軍のチャーター船ドミネーターによりサルベージされたとのことで、AAV-7は110mの海底に沈んでいたと発表しました。
アメリカ海兵隊ではAAV-7の沈没原因究明を進めている最中であり、一時的に外洋での航行訓練も中断していますが、AAV-7は原型車の開発から絶え間ない改良が進められており、防弾性能は強化されパワーパックもブラッドレー装甲戦闘車のものと同型に改められ、その分重くなっている。この原因調査の支援へドック型揚陸艦サマセットも協力しています。
■CATV計画BvS.10導入
連載記事にて特集中の自衛隊にも導入すべきと考えているBvS.10、写真はイギリス海兵隊のものですがあの国も導入へ。
BvS10,アメリカ陸軍が遂に全地形車両を導入へ。アメリカ陸軍は7月19日、CATV 計画としてイギリスのBAE社よりBvS10全地形車両の非装甲型であるベーオウルフを導入するとのこと。このCATV計画というのはCold Weather All-Terrain Vehicleを示しまして、要するに雪上車として導入されるようです。当面は試験用にまず2両を取得するとのこと。
ベーオウルフはイギリス文学最古の英雄譚叙事詩における主人公を示し、紅蓮の焔を操るグレンデルのドラゴンを破ったという。ただ、アメリカ陸軍のCATV計画はドラゴンを退治するのではなく、近年ロシア軍が急速に進める北極圏での全地形車両部隊による戦闘団編成へ対抗の意味合いがある。従来アメリカ軍は極地戦をヘリボーンに依存していました。
■ストライカーにジャベリン
ストライカー装甲車、日本ではやたら人気です。七年ほど前に初の国内日米合同演習に参加した際に工兵型がいきなりスタックして私はちょっと一歩引いてみていますが。
ストライカー装甲車の話題です。写真は96式で代用。ジャベリンウェポンシステム、アメリカ陸軍が本格試験を開始。これはストライカー装甲車に装備するコングルベルク社製遠隔操作銃搭RWSに歩兵携帯式のジャベリン対戦車ミサイルを一体化させるもので、RWS操作端末画面上に目標となる戦車等の装甲車両や航空機と照準カーソルを合わせる事でRWSに連装されたミサイルの射撃を可能とするもの。
ジャベリン対戦車ミサイルは射程2000m、タンデム弾頭により爆発反応走行を備えた戦車を破壊し、トップアタック弾道により戦車上面を狙えます。画像認識した目標へ飛翔し命中する完全撃ち放し式のミサイルです。ジャベリンウェポンシステムの試験へは2023年8月末日までが見込まれており、初期のフル生産へアメリカ陸軍は4724万ドルを支出します。
現在、ストライカー装輪装甲車にはTOW対戦車ミサイル搭載型や105mm機動砲型が存在しますが、歩兵機動用のストライカーには12.7mm機銃か40mm自動擲弾銃のみ、戦車と不期遭遇の際には対戦車特技兵にジャベリン対戦車ミサイルを携行させ下車戦闘を行う以外打つ手なしという状況がありましたが、今後は、自衛隊戦車戦闘が可能となるでしょう。
■ストライカードラグーン
ストライカー装甲車にドラグーン砲塔を搭載する計画が。105mm機動砲型はありますが諸兵科連合大隊での運用でも各車の火力は重要なのでしょうね。
ストライカー装甲車用XM-813/30mm機関砲新型弾薬開発進む。ストライカー装甲車は2004年に配備開始となり、ミディアム旅団構想として軽歩兵主体の軽旅団戦闘団と戦車や装甲戦闘車を備えた重旅団戦闘団の中間を担う旅団体系として具現化しましたが、いざ、運用してみますと、イラク等での警戒任務以外では、特に火力不足が痛感されています。
そこでM-1296ストライカードラグーン、30mm機関砲を搭載する改造が。重量は2t増大し、同時に大量配備される予定であった105mm砲搭載型のストライカーMGS機動砲の配備縮小を補う施策でもあり、これは明らかに泥縄的配備ではありますが、実用性は高いとされた。構想は2014年より開始されていますが、部隊配備は2022年からとされています。
XM-813/30mm機関砲新型弾薬は空中炸裂信管を採用したものでレーザーレンジファインダーでの測距とともに、任意距離で作動、塹壕や射撃陣地の制圧に用いる他、戦闘ヘリコプターや小型無人機に対しても威力を発揮する。M-1296ストライカードラグーンは試験配備として81両がドイツ駐留の第2騎兵連隊ストライカー旅団戦闘団へ配備されています。
■米軍XM-913/50mm機関砲
アメリカ陸軍ALAS-MC計画,昔は装甲戦闘車用火力として89式の35mmが世界最大口径でしたが、最近は更に大口径化の流れが。戦車砲でもこの頃この流れも。
装甲戦闘車用XM-913/50mm機関砲の実証砲が7月に完成したとのこと。ALAS-MCは高精度中口径機関砲システムを示し、現在M-2ブラッドレー装甲戦闘車に搭載されているブッシュマスター25mm機関砲の後継を想定しているとのこと。ロシア新型装甲戦闘車に57mm機関砲が搭載され各国では対抗する機関砲開発が進む。
XM-913機関砲の開発はジェネラルダイナミクスオーディナンス社が主契約企業で、砲架部分の開発はノースロップグラマンが担当、弾薬としてXM-1203-APFSDS-T装弾筒付安定徹甲弾とXM-1204-HEAB-T多目的空中炸裂榴弾の開発も並行する。HEAB-Tは現在の装甲戦闘車用HE多目的榴弾の後継として、歩兵制圧や陣地攻撃に多用される構想ともいう。
50mmは第三世代戦車側面も貫徹し得る大口径機砲であるが、ブラッドレー装甲戦闘車のM-242ブッシュマスター機関砲と同程度の規模に設定され、火器管制システムは目標自動追尾能力に加え対人や対人地と対車両を射撃管制機能の一環として識別し有効弾幕や制圧射撃を行う計画であり、空中炸裂は近年課題となる小型無人機制圧にも威力を発揮しよう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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防衛情報の週報としまして日本の防衛に参考となる幾つかの話題を幾つか列挙してゆきます。まずは先日も紹介したNATOの続報を。
ドイツ駐留米軍大規模縮小はアジア転進計画を改め欧州域内への再配置に切替える、エスパー国防長官が発表した。事の始まりはアメリカトランプ大統領がドイツ政府の国防努力不足を大統領就任前から問題視しており、6月にドイツ駐留米軍3万5000名のうち1万2000名を削減すると発表したが、当初は1万2000名をアジア地域に転地するとしていた。
ドイツ連邦軍は陸軍6万6000名と戦車225両、海軍はフリゲイト10隻と潜水艦6隻で揚陸艦などは無し、空軍はユーロファイター戦闘機141機とトーネード攻撃機68機などを装備している。冷戦時代は西ドイツだけでも陸軍36万名と戦車3800両を配備しており、大幅な減少だが、新戦闘機F/A-18E選定に装輪装甲車やトラック調達等一応の近代化は進む。
在欧米軍司令部は現在ドイツシュトゥッツガルドに置かれているが、ベルギーブリュッセルに移動するとし、ドイツから転地する1万2000名の内5400名はイタリアなどに移駐する。なお移駐には数年間を要する見込み。残る6600名の動静は発表されていないが、欧州域外へ転地するという方針は変っておらず、米本土再配置かアジア転地等が考えられよう。
■アパッチ二五〇〇号機完成
AH-64の話題。旅客機事業が737MAX問題とコロナ航空不況で苦境のボーイングに少し明るい話題です。
ボーイング社は同社が生産するAH-64戦闘ヘリコプターの2500号機を完成させたとのこと。2500号機は2020年7月に完成、最新のAH-64Eとのこと。AH-64Aとして最初のアパッチヘリコプターが完成したのは1983年、当時はボーイングとは別会社であったマクダネルダグラス社により完成、1991年湾岸戦争において別格の戦闘能力を発揮しました。
アパッチガーディアンとして生産されるAH-64Eは、AH-64Dアパッチロングボウに無人機管制能力と空対空戦闘能力を追加したもので、自衛隊仕様のAH-64D-Jモデルに無人機管制能力を付与したもの。日本ではミサイル防衛など優先事業や錯綜地形でのロングボウレーダー性能に難点が指摘されますが、統合型ミサイル開発など本家では進化が続きます。
■オスプレイ四〇〇号機
ボーイング社にもう一つ明るい話題。アメリカ軍と共に自衛隊へも配備開始となったオスプレイも思えば数が多くなりましたね。
七月、ベル社と共同生産するV-22オスプレイティルトローター機の400号機を完成させたとのこと。記念すべき第400号機はアメリカ空軍特殊作戦軍団配備の機体とボーイング社により発表されている。V-22はアメリカ海軍及び空軍と海兵隊に加え陸上自衛隊でも運用されている機体で陸上自衛隊配備の機体は六月より木更津駐屯地で訓練を実施中となっている。
V-22、その最大の特色はティルトローター構造として回転翼航空機と固定翼航空機の双方の特性を持つ点で極めて高い巡航速度と戦闘行動半径を有するが、ティルト機構の制御で実に21年間と開発が難航した事で知られます。現在は安全性が確保され高性能機として運用が続くが取得費用が高い点が難点、しかし現在もインドネシア等が導入を希望している。
■米海兵隊AAV-7事故
水陸両用作戦の代名詞的装備で世界各国で運用されるとともに自衛隊にも配備されたAAV-7の気になる話題です。
残念なニュース。AAV-7両用強襲車サンクレメンテ島沖で沈没、15MEU-第15海兵遠征群所属車輛が訓練中に沈没したとのこと。事故は7月30日に発生、沈没時点でAAV-7には16名が乗車しており、8名が行方不明という、沈没から100時間、生存は絶望的と思われる。サンクレメンテ島はカリフォルニア州のキャンプペンドルトンから沖合100kmに位置する離島である。
15MEU訓練は揚陸艦から発進し戻る最中の事故という、事故現場の水深は1000m以上。事故発生とともに当該車輛からは浸水が始まったと救助を求める通信が入っており、近傍で訓練中のAAV-7が2両、また海軍の高速艇も救助に当たった。これにより脱出した8名は救助されたが、内1名は搬送先の病院で死亡し更に2名が集中治療室で加療中とのこと。
AAV-7は水陸両用の両用強襲車であり、24名の海兵を乗せ洋上を17km/hで航行するが上陸後は地上を72km/hで機動し内陸部へ進攻可能、海岸橋頭堡を確保する為の性能だが2003年のイラク戦争では第2海兵師団が内陸600kmのバクダッド攻略に参加しており、大型装甲車としても活躍する。アルミ合金製だが浸水した場合には沈没の危険などもある。
■海底の沈没AAV-7
アメリカ海兵隊ではAAV-7の沈没原因究明を進めているとのことで自衛隊でも運用の装備故にその去就に注目も。
AAV-7,沈没した車両について、8月3日、行方不明となっていた海軍水兵と海兵隊員のご遺体が回収されたとのことです、ご遺体はデラウェア州のドーバー空軍基地へ移送されご家族と対面、19歳から23歳という若者でした。これは米海軍のチャーター船ドミネーターによりサルベージされたとのことで、AAV-7は110mの海底に沈んでいたと発表しました。
アメリカ海兵隊ではAAV-7の沈没原因究明を進めている最中であり、一時的に外洋での航行訓練も中断していますが、AAV-7は原型車の開発から絶え間ない改良が進められており、防弾性能は強化されパワーパックもブラッドレー装甲戦闘車のものと同型に改められ、その分重くなっている。この原因調査の支援へドック型揚陸艦サマセットも協力しています。
■CATV計画BvS.10導入
連載記事にて特集中の自衛隊にも導入すべきと考えているBvS.10、写真はイギリス海兵隊のものですがあの国も導入へ。
BvS10,アメリカ陸軍が遂に全地形車両を導入へ。アメリカ陸軍は7月19日、CATV 計画としてイギリスのBAE社よりBvS10全地形車両の非装甲型であるベーオウルフを導入するとのこと。このCATV計画というのはCold Weather All-Terrain Vehicleを示しまして、要するに雪上車として導入されるようです。当面は試験用にまず2両を取得するとのこと。
ベーオウルフはイギリス文学最古の英雄譚叙事詩における主人公を示し、紅蓮の焔を操るグレンデルのドラゴンを破ったという。ただ、アメリカ陸軍のCATV計画はドラゴンを退治するのではなく、近年ロシア軍が急速に進める北極圏での全地形車両部隊による戦闘団編成へ対抗の意味合いがある。従来アメリカ軍は極地戦をヘリボーンに依存していました。
■ストライカーにジャベリン
ストライカー装甲車、日本ではやたら人気です。七年ほど前に初の国内日米合同演習に参加した際に工兵型がいきなりスタックして私はちょっと一歩引いてみていますが。
ストライカー装甲車の話題です。写真は96式で代用。ジャベリンウェポンシステム、アメリカ陸軍が本格試験を開始。これはストライカー装甲車に装備するコングルベルク社製遠隔操作銃搭RWSに歩兵携帯式のジャベリン対戦車ミサイルを一体化させるもので、RWS操作端末画面上に目標となる戦車等の装甲車両や航空機と照準カーソルを合わせる事でRWSに連装されたミサイルの射撃を可能とするもの。
ジャベリン対戦車ミサイルは射程2000m、タンデム弾頭により爆発反応走行を備えた戦車を破壊し、トップアタック弾道により戦車上面を狙えます。画像認識した目標へ飛翔し命中する完全撃ち放し式のミサイルです。ジャベリンウェポンシステムの試験へは2023年8月末日までが見込まれており、初期のフル生産へアメリカ陸軍は4724万ドルを支出します。
現在、ストライカー装輪装甲車にはTOW対戦車ミサイル搭載型や105mm機動砲型が存在しますが、歩兵機動用のストライカーには12.7mm機銃か40mm自動擲弾銃のみ、戦車と不期遭遇の際には対戦車特技兵にジャベリン対戦車ミサイルを携行させ下車戦闘を行う以外打つ手なしという状況がありましたが、今後は、自衛隊戦車戦闘が可能となるでしょう。
■ストライカードラグーン
ストライカー装甲車にドラグーン砲塔を搭載する計画が。105mm機動砲型はありますが諸兵科連合大隊での運用でも各車の火力は重要なのでしょうね。
ストライカー装甲車用XM-813/30mm機関砲新型弾薬開発進む。ストライカー装甲車は2004年に配備開始となり、ミディアム旅団構想として軽歩兵主体の軽旅団戦闘団と戦車や装甲戦闘車を備えた重旅団戦闘団の中間を担う旅団体系として具現化しましたが、いざ、運用してみますと、イラク等での警戒任務以外では、特に火力不足が痛感されています。
そこでM-1296ストライカードラグーン、30mm機関砲を搭載する改造が。重量は2t増大し、同時に大量配備される予定であった105mm砲搭載型のストライカーMGS機動砲の配備縮小を補う施策でもあり、これは明らかに泥縄的配備ではありますが、実用性は高いとされた。構想は2014年より開始されていますが、部隊配備は2022年からとされています。
XM-813/30mm機関砲新型弾薬は空中炸裂信管を採用したものでレーザーレンジファインダーでの測距とともに、任意距離で作動、塹壕や射撃陣地の制圧に用いる他、戦闘ヘリコプターや小型無人機に対しても威力を発揮する。M-1296ストライカードラグーンは試験配備として81両がドイツ駐留の第2騎兵連隊ストライカー旅団戦闘団へ配備されています。
■米軍XM-913/50mm機関砲
アメリカ陸軍ALAS-MC計画,昔は装甲戦闘車用火力として89式の35mmが世界最大口径でしたが、最近は更に大口径化の流れが。戦車砲でもこの頃この流れも。
装甲戦闘車用XM-913/50mm機関砲の実証砲が7月に完成したとのこと。ALAS-MCは高精度中口径機関砲システムを示し、現在M-2ブラッドレー装甲戦闘車に搭載されているブッシュマスター25mm機関砲の後継を想定しているとのこと。ロシア新型装甲戦闘車に57mm機関砲が搭載され各国では対抗する機関砲開発が進む。
XM-913機関砲の開発はジェネラルダイナミクスオーディナンス社が主契約企業で、砲架部分の開発はノースロップグラマンが担当、弾薬としてXM-1203-APFSDS-T装弾筒付安定徹甲弾とXM-1204-HEAB-T多目的空中炸裂榴弾の開発も並行する。HEAB-Tは現在の装甲戦闘車用HE多目的榴弾の後継として、歩兵制圧や陣地攻撃に多用される構想ともいう。
50mmは第三世代戦車側面も貫徹し得る大口径機砲であるが、ブラッドレー装甲戦闘車のM-242ブッシュマスター機関砲と同程度の規模に設定され、火器管制システムは目標自動追尾能力に加え対人や対人地と対車両を射撃管制機能の一環として識別し有効弾幕や制圧射撃を行う計画であり、空中炸裂は近年課題となる小型無人機制圧にも威力を発揮しよう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)