■進化するM-1と交代の90式
最新戦車M-1A2C-SEP-V3の話題です。最強の戦車を開発する事は簡単ですが各国が新型を発表し続ける中に最強であり続ける事は難しい。
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M-1A2C-SEP-V3戦車、M-1エイブラムス主力戦車の最新型が第1騎兵師団へ配備開始されたとのこと。が第1騎兵師団は最近映画で話題です、BS放送でグラントリノが放映されクリントイーストウッドが元第一騎兵師団の退役兵を演じプラトーンでエリアスさんが元第一騎兵師団でイア-ドランの戦いに参加した事が明かされた、その第1騎兵師団です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/3a/f02b516b1a579f505cf748a84fcad4d4.jpg)
戦車の近代化改修、アメリカの事例を見ますと、日本のように改修は最小限度にとどめ、さっさと次の戦車を開発する日本の90式戦車と10式戦車の関係とは対照的であるようにおもえます。ただ、注目する視点が多いものでして、手元につかえるM-1A2C-SEP-V3戦車の写真はありませんが、90式戦車の写真で代用しつつ、同盟国戦車情勢を視てみます。
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90式戦車とM-1A1戦車を比較した場合はどちらが強いか、こう一時期関心が集まった事がありました。90式戦車は自動装填装置と目標自動追尾装置の採用による高い打撃力と車長用独立外部視察装置の採用など、M-1A1よりは優れた戦車といえました、が、M-1A2では車長用外部視察装置が追加、車体間データリンク装置が追加され90式戦車を凌駕します。
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最新戦車M-1A2C-SEP-V3は師団の第3旅団戦闘団3/8大隊のB中隊へ配備となったもよう。グレイウルフ旅団の愛称で知られるこの重旅団戦闘団、現在は機甲旅団戦闘団と称される旅団にあって3/8大隊は第8騎兵連隊第3大隊を示す。機甲旅団戦闘団は三個の諸兵科連合大隊を基幹としており、これは2個戦車中隊と2個機械化歩兵中隊を基幹とします。
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M-1A2C-SEP-V3、最大の識別点はRWS遠隔操作銃搭を搭載し、近接した歩兵制圧や敵脅威下での外部視察にも資する。またC4I系統の電子機器も新型に置換えており、車両状況管理システムVHMSによる自己診断能力による整備の自動化とLRMライン交換可能モジュール採用による野外整備の迅速化、またこの為の車体発電能力の強化と配電網更新など。
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M-1戦車は元々高い防御力を誇りますが、M-1A2C-SEP-V3はトロフィアクティヴ防御システムを車体側面に追加しました、これは戦車用ミサイル迎撃システムというべきもので、ミリ波レーダーによりミサイルの接近を感知すると迎撃用擲弾を発射し撃墜します。攻撃力も強化され、ADL弾薬データリンクが搭載、主砲弾の空中炸裂が可能となりました。
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ただ、M-1A2C-SEP-V3は工場で新造されたのではなく既存の戦車を再度組み立てた際に最新の部品を組み込みました、鉄道でいうタネ車だ。M-1戦車は大量に生産されましたが普段はオハイオ州のデポに分解された状況で保管されています。米軍は戦車を部品単位で分解保管するのです。第一線の戦車も定期的に分解し、また組み立てて配備してゆくもの。
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米軍がM-1戦車を連綿と改良できるのはデポに大量の戦車が部品単位で保管され、例えば戦闘情報装置や暗視装置に装甲材で新型が開発されると、組み立てに際しその部位だけを最新型とし素早く完成させられる故です。これは輸出に際しても、2007年にオーストラリアへ輸出されたM-1A1-AIMもこの手法で再生、2016年よりM-1A2Cへ改修されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/44/4c/d76202a26eab7ee135e610a551a67264.jpg)
進化する戦車、これがM-1戦車の特色といえるのかもしれません。しかし、安易に近代化改修を行っている努力を評価するのではなく、車体そのものを分解して近代化改修をさせるという、つまり第一線が必要とする戦車よりも遥かに多い戦車を配備する事で、第一線部隊が使わない戦車を敢えて確保し、車輛を中心に改良する独特の手法を評価すべきやも。
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M1A2D-SEP-V4。M-1戦車の改良計画は当然ですがM-1A2C-SEP-V3では終わりません、2021年よりM1A2D-SEP-V4として最新型の改良が開始される計画で、主砲照準器及び車長独立潜望鏡への第三世代FLIRが採用され、画面がカラー化され識別性が向上します。また主砲をXM-1147多目的戦車砲への換装も予定され、2030年代を担う戦車となるもよう。
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大量生産できるからこそ、また十分な余裕を持って配備したからこそ、こうした近代化改修の手法もあるのですね。もっとも、こうした視点からまだ新型とせずとも改良で対応できるとして、例えばM-1戦車の同世代ソ連戦車はT-80でしたが、これがT-90と設計が全く一新したT-14と進む中で、アメリカがなかなか次の戦車を開発できない背景でもある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/00/e371295152434a73e6d7485e51c61c12.jpg)
ただ、日本も戦車600両体制の時点で、教育所要と更に別に補給処管理の戦車を含め800両程度量産し、第一線部隊が使っていない戦車を対象に装甲強化や火器管制装置改良に動力系統の刷新等を続けていれば、費用面で抑えられたのでしょうか、それともこうした施策を採れば戦車量産は停止し産業喪失は必至で、問題の方が大きかったのでしょうか、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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最新戦車M-1A2C-SEP-V3の話題です。最強の戦車を開発する事は簡単ですが各国が新型を発表し続ける中に最強であり続ける事は難しい。
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M-1A2C-SEP-V3戦車、M-1エイブラムス主力戦車の最新型が第1騎兵師団へ配備開始されたとのこと。が第1騎兵師団は最近映画で話題です、BS放送でグラントリノが放映されクリントイーストウッドが元第一騎兵師団の退役兵を演じプラトーンでエリアスさんが元第一騎兵師団でイア-ドランの戦いに参加した事が明かされた、その第1騎兵師団です。
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戦車の近代化改修、アメリカの事例を見ますと、日本のように改修は最小限度にとどめ、さっさと次の戦車を開発する日本の90式戦車と10式戦車の関係とは対照的であるようにおもえます。ただ、注目する視点が多いものでして、手元につかえるM-1A2C-SEP-V3戦車の写真はありませんが、90式戦車の写真で代用しつつ、同盟国戦車情勢を視てみます。
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90式戦車とM-1A1戦車を比較した場合はどちらが強いか、こう一時期関心が集まった事がありました。90式戦車は自動装填装置と目標自動追尾装置の採用による高い打撃力と車長用独立外部視察装置の採用など、M-1A1よりは優れた戦車といえました、が、M-1A2では車長用外部視察装置が追加、車体間データリンク装置が追加され90式戦車を凌駕します。
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最新戦車M-1A2C-SEP-V3は師団の第3旅団戦闘団3/8大隊のB中隊へ配備となったもよう。グレイウルフ旅団の愛称で知られるこの重旅団戦闘団、現在は機甲旅団戦闘団と称される旅団にあって3/8大隊は第8騎兵連隊第3大隊を示す。機甲旅団戦闘団は三個の諸兵科連合大隊を基幹としており、これは2個戦車中隊と2個機械化歩兵中隊を基幹とします。
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M-1A2C-SEP-V3、最大の識別点はRWS遠隔操作銃搭を搭載し、近接した歩兵制圧や敵脅威下での外部視察にも資する。またC4I系統の電子機器も新型に置換えており、車両状況管理システムVHMSによる自己診断能力による整備の自動化とLRMライン交換可能モジュール採用による野外整備の迅速化、またこの為の車体発電能力の強化と配電網更新など。
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M-1戦車は元々高い防御力を誇りますが、M-1A2C-SEP-V3はトロフィアクティヴ防御システムを車体側面に追加しました、これは戦車用ミサイル迎撃システムというべきもので、ミリ波レーダーによりミサイルの接近を感知すると迎撃用擲弾を発射し撃墜します。攻撃力も強化され、ADL弾薬データリンクが搭載、主砲弾の空中炸裂が可能となりました。
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ただ、M-1A2C-SEP-V3は工場で新造されたのではなく既存の戦車を再度組み立てた際に最新の部品を組み込みました、鉄道でいうタネ車だ。M-1戦車は大量に生産されましたが普段はオハイオ州のデポに分解された状況で保管されています。米軍は戦車を部品単位で分解保管するのです。第一線の戦車も定期的に分解し、また組み立てて配備してゆくもの。
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米軍がM-1戦車を連綿と改良できるのはデポに大量の戦車が部品単位で保管され、例えば戦闘情報装置や暗視装置に装甲材で新型が開発されると、組み立てに際しその部位だけを最新型とし素早く完成させられる故です。これは輸出に際しても、2007年にオーストラリアへ輸出されたM-1A1-AIMもこの手法で再生、2016年よりM-1A2Cへ改修されています。
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進化する戦車、これがM-1戦車の特色といえるのかもしれません。しかし、安易に近代化改修を行っている努力を評価するのではなく、車体そのものを分解して近代化改修をさせるという、つまり第一線が必要とする戦車よりも遥かに多い戦車を配備する事で、第一線部隊が使わない戦車を敢えて確保し、車輛を中心に改良する独特の手法を評価すべきやも。
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M1A2D-SEP-V4。M-1戦車の改良計画は当然ですがM-1A2C-SEP-V3では終わりません、2021年よりM1A2D-SEP-V4として最新型の改良が開始される計画で、主砲照準器及び車長独立潜望鏡への第三世代FLIRが採用され、画面がカラー化され識別性が向上します。また主砲をXM-1147多目的戦車砲への換装も予定され、2030年代を担う戦車となるもよう。
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大量生産できるからこそ、また十分な余裕を持って配備したからこそ、こうした近代化改修の手法もあるのですね。もっとも、こうした視点からまだ新型とせずとも改良で対応できるとして、例えばM-1戦車の同世代ソ連戦車はT-80でしたが、これがT-90と設計が全く一新したT-14と進む中で、アメリカがなかなか次の戦車を開発できない背景でもある。
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ただ、日本も戦車600両体制の時点で、教育所要と更に別に補給処管理の戦車を含め800両程度量産し、第一線部隊が使っていない戦車を対象に装甲強化や火器管制装置改良に動力系統の刷新等を続けていれば、費用面で抑えられたのでしょうか、それともこうした施策を採れば戦車量産は停止し産業喪失は必至で、問題の方が大きかったのでしょうか、ね。
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