北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【2】マグニチュード9双子の地震が及ぼす日本国家後退の懸念

2023-03-16 20:02:55 | 防災・災害派遣
■二度に分かれる巨大地震
 南海トラフ地震は直視しなければならない現実の脅威なのですが、大災害ではあるものの対処の処方箋とともにその対処方式により失われた活力など再興の道筋は存在します。

 二度の地震に対応できない、この点はこのところ指摘されている点です、これは南海トラフ連動地震が同時に発生するのではなく、熊本地震のように二度に分けて襲来するというものです。専門家の間ではこうした状況を“半割れ”という表現で、断層帯の割れが半分ごとに、マグニチュード8から9の規模で二度襲来することを示すそうです。ただし。

 二度の地震は、東北地方太平洋沖地震と南海トラフ連動地震、このように考える必要はないのか、ということです。これは東日本大震災の時に揺れた首都圏の高層建築物が南海トラフ地震で、というような物理的な被災というものではなく、社会的及び経済的な影響についてです。実際問題で、産業シェアや競争力、日本は3.11から復興をはたしていません。

 3.11東日本大震災の大きな影響は、電力価格の高騰です。日本で生活する場合には電力価格の比較はせいぜい新電力と電力会社の比較までですので、実感はわかないところです。もっとも、今比較しようとしますと、ロシアウクライナ戦争に伴うロシア産天然ガス取引制限による世界規模のLNG液化天然ガス価格高騰という問題から霞がちな視点ですが。

 原子力発電所の全国規模の停止により、日本国内の電力価格は大幅に上昇しており、これがあらゆる工業製品や農業製品にまで価格転嫁しています、その価格競争力の低下は否めず、製造業の世界的拠点はもはや日本ではなく中国である、特に再生エネルギー買取価格を高く設定したことで太陽光発電量だけは増大しましたが、その分の費用は消費者負担だ。

 再生エネルギー普及は気候変動対策という視点からはある程度評価されるのかもしれませんが、しかし電力価格が高騰したことで、あげようにも上げられない小売価格を祖会えるために人件費などが唯一削られる分野として削られ、これが正規雇用などを強く圧迫、非正規雇用での技術教育や研修機会の少なさが日本の労働力高度化を阻害し、悪循環する。

 原発をいまから動かせばいい、という単純な問題ではありません。制度的に非正規雇用依存、続いて高齢者労働力依存の体系が確立してしまいましたので、いったん定まった制度は大きな変容でも生じない限り脱構築はできません、いわば法学上の無法状態に近い“例外状態”というべき状態で成立した枠組みは平時の制度では転換するコストが大きすぎる。

 ジェネレーションギャップ、というものはこういうことを言うのでしょうか、例えばこの数年間のCOVID-19新型コロナウィルス感染症に伴う行動制限、強制力は日本の場合はほぼ無いにしてもです、こうした状況に若い世代はよく耐えている、これは言い換えれば3.11世代以降、日本は耐えることに慣れさせる社会基盤を醸成しているのかもしれません。

 ただ、再度東日本大震災やCOVID-19のような状況を、更に労働者に対して耐えることを要求できるのかという疑問がある、具体的にはもう少し安く働いてくれとか、サービス残業で何とかやってほしい、というような、いわば非合理の強要を受け入れる寛容さを、再度発揮できるものでしょうか。南海トラフ連動地震は、こうした点に脅威があるのです。

 他方で、エネルギーコストの面で原発を一例に出しましたが、価格競争力は重要で、もう一つ重要なのは納期です。災害による事業継続計画、しかし事業所の多くは低地にある中小企業など、いまさら大阪から京都の綾部あたりに工場移転、という事も難しいでしょう。それでも一旦災害により事業が停止すれば、競合他社にシェアを奪われる懸念があります。

 阪神大震災と神戸港を例にとればわかるのですが、1995年のあの日まで、神戸港は貨物取扱量世界一の港湾でした、もちろん港湾施設は震災よりも強靭に復興しました、唯一の例外はメリケン波止場の震災遺構くらいです、しかし施設が復興すると世界一の貨物取扱量が戻ってくるのかと問われれば、もう代替港に移管した後、神戸港は世界では港湾の一つ。

 一旦事業が停止した場合、元通りの生産量に戻すことは難しくはないのですが、その間に失ったシェアを取り戻すのは、神戸港の事例を見る通りよほど代替できないものでなければ難しいのです。東北地方太平洋沖地震と南海トラフ連動地震、二度目となりますと日本の経済成長は大幅な後退期に入り、経済大国からアジアの一中堅国に下がることでしょう。

 ただ、対策を行うことでかなりダメージコントロールは可能となります。この為には日本のリソースの少なくない部分をつぎ込み、また外国人労働力などを受け入れる、いわば社会基盤の変容が必要となるでしょう。一方、費用面は負担ではなく、いわば復興特需の先取りと見ることも可能です。すなわち対策に費用を投じることで経済が活性化するのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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FFM多機能護衛艦の後期型計画に着手-もがみ型護衛艦は12番艦まで,13番艦から22番艦は改良型か新型艦

2023-03-16 07:00:00 | 先端軍事テクノロジー
■榛名防衛備防録-次のFFM
 FFM-Xというべきなのでしょうか。順調に量産がすすむ画期的な新世代護衛艦は第二世代へさっそく発展を始めるもよう。

 海上自衛隊はFFM多機能護衛艦の後期型計画に着手します。これは22隻が整備されるFFM多機能護衛艦について、もがみ型護衛艦を12番艦まで建造したうえで、13番艦から22番艦までは新型艦となることを示しています。当初はバッチ2というべき改良型や後期型へいずれかの時点で転換すると考えられていましたが、新型となる可能性もでてきた。

 もがみ型護衛艦、後期型となるのか別型となるのかは、現在もがみ型護衛艦を建造しているのがすべて三菱重工となっている点で、仮に三菱重工が本型の改良型を提示した場合は採用される可能性がありますし、護衛艦かが建造で知られるジャパンマリンユナイテッドや、支援船を建造している今治造船などが新型艦を提案し採用される可能性もあります。

 みくま。もがみ型護衛艦は3月7日に三菱重工業長崎造船所にて4番艦みくま竣工式が行われたばかりです。みくま配備は佐世保基地第13護衛隊、第13護衛隊には既に2022年に竣工した同型艦のしろ配備中であり、横須賀の護衛艦もがみ、くまの、は掃海隊群直轄艦であるのにたいし、もがみ型は掃海隊群に配備される護衛隊という運用を撮ります。

 海上自衛隊は護衛艦もがみ型に搭載するUSV水上無人艇を公開しました。もがみ型護衛艦後部には多目的区画があり、ウェルドック方式ではないもののハッチを展開するとともに海上をスロープにより滑り出す構造を採用し、舟艇などを迅速に展開させる能力を有しています。もがみ型護衛艦は複数の舟艇を搭載可能で、機雷戦対処能力を有しています。

 USV水上無人艇、防衛装備庁は無人機雷排除システムとして12億円にて取得しています。もともと護衛艦もがみ型はFFM多機能護衛艦として建造されており、FFMのMは機雷戦を示すものとされています。水上戦闘艦へ機雷戦能力を付与するのはオーガニック方式と呼ばれる方式なのですが、アメリカの沿海域戦闘艦などが採用した機雷掃討方式です。

 もがみ型護衛艦の機雷戦方式は、護衛艦に搭載する機雷探知装置などのセンサーにより機雷を探知しますと、USV水上無人艇を無人で展開、磁気や音響特性で護衛艦を再現し、少なくとも護衛艦が航行した場合でも触雷しないことを確認したうえで、USV水上無人艇には機雷処分弾薬を搭載、一種の自爆用機雷処分器具により機雷そのものを無力化します。

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