■追悼:3.11東日本大震災
本日は三月十一日、あの2011年東北地方太平洋沖地震が引き起こした東日本大震災からの慰霊の日です。
南海トラフ連動地震、東日本大震災の発災から12年となる本年ですが、当時の民主党菅政権がその発災がひっ迫していると警鐘を鳴らして以来、12年目ともなる一方、実のところ抜本的な対策が進んでいないという状況があります。3.11追悼の話題とは間接的にしか関係のない話題ですが、防衛と危機管理の一環として、改めて考えてみましょう。
四国南部と紀伊半島を中心に阪神地区と中京地区の大阪名古屋の大都市が激震に襲われ、静岡県から九州南部までの一帯を津波が襲うとされる巨大災害、大袈裟と反論があるでしょうが過去に周期的に発生しており、日本列島が大陸外縁弧状列島というプレートの影響を最も受けやすい立地にある以上、地球物理学上必ず再来するという巨大地震です。
名古屋と大阪が同時に被災する、極めて重大な点ですが、1995年阪神大震災では神戸市が大打撃を受けたものの大阪市などの周辺都市が支える形で被害局限という要諦を為しました、大阪市も被害を受けましたが負傷者を大阪市が引き受けることができましたし、広域消防支援は神戸市や芦屋市の消防を周辺都市が支援できましたが、今度ばかりは違う。
大阪と名古屋、この二つの巨大都市は医療機能一つとっても巨大なものがあり、ここが被災地となる場合には支えられる受け手がありません、東京の医療機能は大きいのですが、大阪から東京まで緊急搬送を行うには航空機でも厳しく、ヘリコプターでは航続距離の問題もあり、往復6時間は見ておく必要があります、しかも防災ヘリは空中給油ができない。
東海道沿岸部が津波被害を受ける、この実情は東海道本線と東海道新幹線の寸断、東名高速道路被災、新東名高速道路など一部の例外を除けば日本の東西交通の大動脈を遮断されることとなり、また大量物資移動手段である鉄道は、日本海側の路線、いわゆる“日本海縦貫線”が第三セクター化でJR路線から切り離されており、迂回路線が限られるのです。
四国や紀伊水道沿岸津波被害は甚大な規模となり、しかも被災地を襲う津波は30m規模、これだけの規模の災害に地域の防災力で対応しろというには、平時から四国だけでいまの1個旅団を2個師団に拡大改編し、九州も冷戦時代の北海道並に4個師団程度を置かなければ、その地域にある防災能力だけで対応するという選択肢は現実的ではありません。
32万という想定死者数、しかし、これを受け入れろというにはあまりに無理があります、何故ならば32万という数字を受け入れるには、それだけの労働力を失ったうえでの地域復興をどこから持ってくるのか、という根本的な問題が生じますし、そしてこれだけの犠牲を看過するという事は、政府想定通りの産業基盤被害も看過するとなる、復興できない。
産業基盤破壊の看過というのは、32万という数字は対策が何も行われない状況ではそれだけの死者数がでるとした警鐘です、この場合は四国と紀伊半島の主要道路網及び鉄道網を一から再建することを筆頭にあらゆるインフラを子細した後に作り直すということとなり、復興計画は仮に年間30兆円規模の予算を組んだとしても半世紀以上を要するでしょう。
復興を断念すべきか、これは意味がありません、東海道の津波被災地や四国南部と紀伊半島南部、それに名古屋や大阪が無くとも日本は成り立つのか、と問われれば、それは日本企業の多くは世界規模のサプライチェーン網に在って地位を有しており、この中間部分を根こそぎ持っていかれるのは、出入口のない工場や飛行場のない滑走路のようなものです。
ダメージコントロールを地震発生前に確保する必要がある、これはよく防災備蓄などで指摘されるところですが、問題があるのは、この南海トラフ連動地震のリスクは津波災害を伴うものであり、防災倉庫そのものが被災する懸念がある、ということです。また、広域避難や事前の高台移転などの選択肢もあるにはあるのですが、その費用は捻出が難しい。
費用捻出の問題は、家屋が倒壊してしまえば否応なく建て替え費用を捻出せざるを得ないものですし、銀行などの金融機関も政府特例措置や支援と呼応した積み替えは可能でしょう、しかし、今から新築するための場所を探すならば別ですが、いつか起こる地震のために特例措置を申請するには限界があります。こうした現実と想定の均衡点が重要という。
しかし、安全保障と防衛を主たる論点として考えてゆきますと、南海トラフ巨大地震は激甚災害ではあるものの、太平洋戦争の戦災ほどではない。そして地震には悪意はないため、対策を構築することへの妨害などはありません。そして対策の中には防衛力との関連性がある視座も含まれるため、その日が来るまでに出来ることは多いようにも、思うのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
本日は三月十一日、あの2011年東北地方太平洋沖地震が引き起こした東日本大震災からの慰霊の日です。
南海トラフ連動地震、東日本大震災の発災から12年となる本年ですが、当時の民主党菅政権がその発災がひっ迫していると警鐘を鳴らして以来、12年目ともなる一方、実のところ抜本的な対策が進んでいないという状況があります。3.11追悼の話題とは間接的にしか関係のない話題ですが、防衛と危機管理の一環として、改めて考えてみましょう。
四国南部と紀伊半島を中心に阪神地区と中京地区の大阪名古屋の大都市が激震に襲われ、静岡県から九州南部までの一帯を津波が襲うとされる巨大災害、大袈裟と反論があるでしょうが過去に周期的に発生しており、日本列島が大陸外縁弧状列島というプレートの影響を最も受けやすい立地にある以上、地球物理学上必ず再来するという巨大地震です。
名古屋と大阪が同時に被災する、極めて重大な点ですが、1995年阪神大震災では神戸市が大打撃を受けたものの大阪市などの周辺都市が支える形で被害局限という要諦を為しました、大阪市も被害を受けましたが負傷者を大阪市が引き受けることができましたし、広域消防支援は神戸市や芦屋市の消防を周辺都市が支援できましたが、今度ばかりは違う。
大阪と名古屋、この二つの巨大都市は医療機能一つとっても巨大なものがあり、ここが被災地となる場合には支えられる受け手がありません、東京の医療機能は大きいのですが、大阪から東京まで緊急搬送を行うには航空機でも厳しく、ヘリコプターでは航続距離の問題もあり、往復6時間は見ておく必要があります、しかも防災ヘリは空中給油ができない。
東海道沿岸部が津波被害を受ける、この実情は東海道本線と東海道新幹線の寸断、東名高速道路被災、新東名高速道路など一部の例外を除けば日本の東西交通の大動脈を遮断されることとなり、また大量物資移動手段である鉄道は、日本海側の路線、いわゆる“日本海縦貫線”が第三セクター化でJR路線から切り離されており、迂回路線が限られるのです。
四国や紀伊水道沿岸津波被害は甚大な規模となり、しかも被災地を襲う津波は30m規模、これだけの規模の災害に地域の防災力で対応しろというには、平時から四国だけでいまの1個旅団を2個師団に拡大改編し、九州も冷戦時代の北海道並に4個師団程度を置かなければ、その地域にある防災能力だけで対応するという選択肢は現実的ではありません。
32万という想定死者数、しかし、これを受け入れろというにはあまりに無理があります、何故ならば32万という数字を受け入れるには、それだけの労働力を失ったうえでの地域復興をどこから持ってくるのか、という根本的な問題が生じますし、そしてこれだけの犠牲を看過するという事は、政府想定通りの産業基盤被害も看過するとなる、復興できない。
産業基盤破壊の看過というのは、32万という数字は対策が何も行われない状況ではそれだけの死者数がでるとした警鐘です、この場合は四国と紀伊半島の主要道路網及び鉄道網を一から再建することを筆頭にあらゆるインフラを子細した後に作り直すということとなり、復興計画は仮に年間30兆円規模の予算を組んだとしても半世紀以上を要するでしょう。
復興を断念すべきか、これは意味がありません、東海道の津波被災地や四国南部と紀伊半島南部、それに名古屋や大阪が無くとも日本は成り立つのか、と問われれば、それは日本企業の多くは世界規模のサプライチェーン網に在って地位を有しており、この中間部分を根こそぎ持っていかれるのは、出入口のない工場や飛行場のない滑走路のようなものです。
ダメージコントロールを地震発生前に確保する必要がある、これはよく防災備蓄などで指摘されるところですが、問題があるのは、この南海トラフ連動地震のリスクは津波災害を伴うものであり、防災倉庫そのものが被災する懸念がある、ということです。また、広域避難や事前の高台移転などの選択肢もあるにはあるのですが、その費用は捻出が難しい。
費用捻出の問題は、家屋が倒壊してしまえば否応なく建て替え費用を捻出せざるを得ないものですし、銀行などの金融機関も政府特例措置や支援と呼応した積み替えは可能でしょう、しかし、今から新築するための場所を探すならば別ですが、いつか起こる地震のために特例措置を申請するには限界があります。こうした現実と想定の均衡点が重要という。
しかし、安全保障と防衛を主たる論点として考えてゆきますと、南海トラフ巨大地震は激甚災害ではあるものの、太平洋戦争の戦災ほどではない。そして地震には悪意はないため、対策を構築することへの妨害などはありません。そして対策の中には防衛力との関連性がある視座も含まれるため、その日が来るまでに出来ることは多いようにも、思うのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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