■特報:世界の防衛,最新論点
今月もフィリピン軍の防衛力整備最新情報を見てゆきましょう。ミサイル艇増強や地対艦ミサイル導入準備に装甲車改良と無人機導入など。
フィリピン陸軍はセイバー機関砲塔を備えたACV-300装甲車改修型の受領を開始しました。この改修型はフィリピン軍が保有するM-113装甲車に関する近代化改修RAFPMP-Horizon2計画として進められているものです。M-113装甲車はフィリピン軍がアメリカ軍のヴェトナム戦争終了後の余剰車両を取得し永らく運用してきました装甲車だ。
M-113装甲車は優れた装甲車ですが旧式化とともに老朽化が目立ち、フィリピン軍は2010年にトルコよりM-113の能力向上型であるACV-300装甲車6両を取得しています。ただ、フィリピンでは実運用を通じて従来の12.7mm機銃では市街戦において威力不十分であることから25mm機関砲の導入を行う必要性を認識、セイバー機関砲塔を採用します。
セイバー機関砲塔はトルコのFNSS社製、25mm機関砲や40㎜自動擲弾銃12.7mm機銃砲塔型などが開発されています、ACV-300装甲車改修型はM-113に砲塔を載せたというだけにとどまらず、エンジン出力を300hpに強化しており、オランダが開発したAIFV装甲車に近い装備といえるかもしれません、フィリピンはこの車両を32両調達する計画です。
フィリピン陸軍はイスラエルのエルビットシステムズ社製ヘルメス90VTOL無人機受領を開始しました。エルビットシステムズ社はアジア地域での販路拡大に注力しており、アジア地域全体では1000機以上の各種無人機に関する1憶5300万ドル規模の新規契約を結んでいるとのことです。ただ、その顧客となる国について詳細は発表されていません。
ヘルメス90VTOL無人機は四基の回転翼を有するいわゆるクワッドドローンであり、偵察部隊向けに開発された小型無人機です、その搬送は折りたたんでバックパックに収容し、2分以内に展張し離陸できるとされています。3㎏以内の物資を輸送するTHOR型と10㎏もの物資を輸送するUAS型があり、センサーや物資のほか、爆薬の輸送も可能という。
ヘルメス90VTOL-THORの飛行性能は連続飛行時間75分、航続距離は10㎞で高度600mまで上昇が可能とされています。フィリピン軍の導入機数については発表されていませんが、今回導入したのは10㎏を輸送するヘルメス90VTOL-UASとされていて、市販の民生用無人機よりも妨害に強く、強風や高温多湿地域など各種環境を想定した機体です。
フィリピン海軍は4月に新しい2隻のシャルダグ級ミサイル艇を受領する計画です。シャルダグ級ミサイル艇はイスラエルのハイファにおいて建造されている小型ミサイル艇で、フィリピン海軍近代化プログラムとして進められる海軍水上打撃力整備の一環です。フィリピン海軍は長らく周辺情勢の安定により大規模な海軍力はなくとも平和を維持できた。
南沙諸島問題、1992年にフィリピンのミスチーフ環礁が中国により不法占拠され、これに対してフィリピンは対処することができなかったばかりか、その事態把握が自国による発見ではなく第三国商船からの通報により発覚するという後手を経験しています。しかし国防近代化を行うにもフィリピンは慢性的財政難にあり、30年以上目処が立ちません。
シャルダグ級ミサイル艇はスパイクNLOSミサイルを搭載した高速哨戒艇であり、エクゾセミサイルやハープーンミサイルほどの打撃力はありませんが127mm艦砲よりも威力と射程は大きな装備です、今回の計画では100億ペソを投じ、イスラエルにおいて6隻を建造するとともにフィリピン国内でも3隻をライセンス生産、水上打撃力を整備します。
フィリピン海軍はインドでのブラモス超音速地対艦ミサイルのシステム教育を完了しました。フィリピン海軍は沿岸防備能力強化へインドよりブラモス超音速地対艦ミサイル取得計画を進めており、今回は2023年1月23日から2月11日までの期間、フィリピン海兵隊の士官一名が参加し、ミサイルシステムのオペレータ養成教育が行われています。
ブラモス地対艦ミサイル輸出はインドにおける東南アジア諸国との防衛力強化交流の要諦でもあり、そのオペレータ教育修了式にはインド海軍参謀総長であるダクリシュナンハリ クマール提督が臨席し、ミサイル士官徽章を授与しました。インド政府はフィリピンのほか、ヴェトナム軍に対してもブラモス超音速地対艦ミサイルの輸出準備を進めています。
超音速地対艦ミサイルはソ連製ヤホント超音速対艦ミサイルを基にインドが独自改良を加えて開発したもので射程は290㎞、マッハ3.5以上の高速で目標に接近するため相手に対処時間猶予を与えない点が特色です。フィリピン政府は3億7500万ドルを投じ3個中隊分のブラモスを導入する計画、各中隊は統制装置と3連装発射装置3基を装備しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今月もフィリピン軍の防衛力整備最新情報を見てゆきましょう。ミサイル艇増強や地対艦ミサイル導入準備に装甲車改良と無人機導入など。
フィリピン陸軍はセイバー機関砲塔を備えたACV-300装甲車改修型の受領を開始しました。この改修型はフィリピン軍が保有するM-113装甲車に関する近代化改修RAFPMP-Horizon2計画として進められているものです。M-113装甲車はフィリピン軍がアメリカ軍のヴェトナム戦争終了後の余剰車両を取得し永らく運用してきました装甲車だ。
M-113装甲車は優れた装甲車ですが旧式化とともに老朽化が目立ち、フィリピン軍は2010年にトルコよりM-113の能力向上型であるACV-300装甲車6両を取得しています。ただ、フィリピンでは実運用を通じて従来の12.7mm機銃では市街戦において威力不十分であることから25mm機関砲の導入を行う必要性を認識、セイバー機関砲塔を採用します。
セイバー機関砲塔はトルコのFNSS社製、25mm機関砲や40㎜自動擲弾銃12.7mm機銃砲塔型などが開発されています、ACV-300装甲車改修型はM-113に砲塔を載せたというだけにとどまらず、エンジン出力を300hpに強化しており、オランダが開発したAIFV装甲車に近い装備といえるかもしれません、フィリピンはこの車両を32両調達する計画です。
フィリピン陸軍はイスラエルのエルビットシステムズ社製ヘルメス90VTOL無人機受領を開始しました。エルビットシステムズ社はアジア地域での販路拡大に注力しており、アジア地域全体では1000機以上の各種無人機に関する1憶5300万ドル規模の新規契約を結んでいるとのことです。ただ、その顧客となる国について詳細は発表されていません。
ヘルメス90VTOL無人機は四基の回転翼を有するいわゆるクワッドドローンであり、偵察部隊向けに開発された小型無人機です、その搬送は折りたたんでバックパックに収容し、2分以内に展張し離陸できるとされています。3㎏以内の物資を輸送するTHOR型と10㎏もの物資を輸送するUAS型があり、センサーや物資のほか、爆薬の輸送も可能という。
ヘルメス90VTOL-THORの飛行性能は連続飛行時間75分、航続距離は10㎞で高度600mまで上昇が可能とされています。フィリピン軍の導入機数については発表されていませんが、今回導入したのは10㎏を輸送するヘルメス90VTOL-UASとされていて、市販の民生用無人機よりも妨害に強く、強風や高温多湿地域など各種環境を想定した機体です。
フィリピン海軍は4月に新しい2隻のシャルダグ級ミサイル艇を受領する計画です。シャルダグ級ミサイル艇はイスラエルのハイファにおいて建造されている小型ミサイル艇で、フィリピン海軍近代化プログラムとして進められる海軍水上打撃力整備の一環です。フィリピン海軍は長らく周辺情勢の安定により大規模な海軍力はなくとも平和を維持できた。
南沙諸島問題、1992年にフィリピンのミスチーフ環礁が中国により不法占拠され、これに対してフィリピンは対処することができなかったばかりか、その事態把握が自国による発見ではなく第三国商船からの通報により発覚するという後手を経験しています。しかし国防近代化を行うにもフィリピンは慢性的財政難にあり、30年以上目処が立ちません。
シャルダグ級ミサイル艇はスパイクNLOSミサイルを搭載した高速哨戒艇であり、エクゾセミサイルやハープーンミサイルほどの打撃力はありませんが127mm艦砲よりも威力と射程は大きな装備です、今回の計画では100億ペソを投じ、イスラエルにおいて6隻を建造するとともにフィリピン国内でも3隻をライセンス生産、水上打撃力を整備します。
フィリピン海軍はインドでのブラモス超音速地対艦ミサイルのシステム教育を完了しました。フィリピン海軍は沿岸防備能力強化へインドよりブラモス超音速地対艦ミサイル取得計画を進めており、今回は2023年1月23日から2月11日までの期間、フィリピン海兵隊の士官一名が参加し、ミサイルシステムのオペレータ養成教育が行われています。
ブラモス地対艦ミサイル輸出はインドにおける東南アジア諸国との防衛力強化交流の要諦でもあり、そのオペレータ教育修了式にはインド海軍参謀総長であるダクリシュナンハリ クマール提督が臨席し、ミサイル士官徽章を授与しました。インド政府はフィリピンのほか、ヴェトナム軍に対してもブラモス超音速地対艦ミサイルの輸出準備を進めています。
超音速地対艦ミサイルはソ連製ヤホント超音速対艦ミサイルを基にインドが独自改良を加えて開発したもので射程は290㎞、マッハ3.5以上の高速で目標に接近するため相手に対処時間猶予を与えない点が特色です。フィリピン政府は3億7500万ドルを投じ3個中隊分のブラモスを導入する計画、各中隊は統制装置と3連装発射装置3基を装備しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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