北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】フィリピン軍,ブラモス地対艦ミサイル準備とシャルダグ級ミサイル艇導入状況,ACV-300装甲車

2023-03-21 20:00:52 | 国際・政治
■特報:世界の防衛,最新論点
 今月もフィリピン軍の防衛力整備最新情報を見てゆきましょう。ミサイル艇増強や地対艦ミサイル導入準備に装甲車改良と無人機導入など。

 フィリピン陸軍はセイバー機関砲塔を備えたACV-300装甲車改修型の受領を開始しました。この改修型はフィリピン軍が保有するM-113装甲車に関する近代化改修RAFPMP-Horizon2計画として進められているものです。M-113装甲車はフィリピン軍がアメリカ軍のヴェトナム戦争終了後の余剰車両を取得し永らく運用してきました装甲車だ。

 M-113装甲車は優れた装甲車ですが旧式化とともに老朽化が目立ち、フィリピン軍は2010年にトルコよりM-113の能力向上型であるACV-300装甲車6両を取得しています。ただ、フィリピンでは実運用を通じて従来の12.7mm機銃では市街戦において威力不十分であることから25mm機関砲の導入を行う必要性を認識、セイバー機関砲塔を採用します。

 セイバー機関砲塔はトルコのFNSS社製、25mm機関砲や40㎜自動擲弾銃12.7mm機銃砲塔型などが開発されています、ACV-300装甲車改修型はM-113に砲塔を載せたというだけにとどまらず、エンジン出力を300hpに強化しており、オランダが開発したAIFV装甲車に近い装備といえるかもしれません、フィリピンはこの車両を32両調達する計画です。

 フィリピン陸軍はイスラエルのエルビットシステムズ社製ヘルメス90VTOL無人機受領を開始しました。エルビットシステムズ社はアジア地域での販路拡大に注力しており、アジア地域全体では1000機以上の各種無人機に関する1憶5300万ドル規模の新規契約を結んでいるとのことです。ただ、その顧客となる国について詳細は発表されていません。

 ヘルメス90VTOL無人機は四基の回転翼を有するいわゆるクワッドドローンであり、偵察部隊向けに開発された小型無人機です、その搬送は折りたたんでバックパックに収容し、2分以内に展張し離陸できるとされています。3㎏以内の物資を輸送するTHOR型と10㎏もの物資を輸送するUAS型があり、センサーや物資のほか、爆薬の輸送も可能という。

 ヘルメス90VTOL-THORの飛行性能は連続飛行時間75分、航続距離は10㎞で高度600mまで上昇が可能とされています。フィリピン軍の導入機数については発表されていませんが、今回導入したのは10㎏を輸送するヘルメス90VTOL-UASとされていて、市販の民生用無人機よりも妨害に強く、強風や高温多湿地域など各種環境を想定した機体です。

 フィリピン海軍は4月に新しい2隻のシャルダグ級ミサイル艇を受領する計画です。シャルダグ級ミサイル艇はイスラエルのハイファにおいて建造されている小型ミサイル艇で、フィリピン海軍近代化プログラムとして進められる海軍水上打撃力整備の一環です。フィリピン海軍は長らく周辺情勢の安定により大規模な海軍力はなくとも平和を維持できた。

 南沙諸島問題、1992年にフィリピンのミスチーフ環礁が中国により不法占拠され、これに対してフィリピンは対処することができなかったばかりか、その事態把握が自国による発見ではなく第三国商船からの通報により発覚するという後手を経験しています。しかし国防近代化を行うにもフィリピンは慢性的財政難にあり、30年以上目処が立ちません。

 シャルダグ級ミサイル艇はスパイクNLOSミサイルを搭載した高速哨戒艇であり、エクゾセミサイルやハープーンミサイルほどの打撃力はありませんが127mm艦砲よりも威力と射程は大きな装備です、今回の計画では100億ペソを投じ、イスラエルにおいて6隻を建造するとともにフィリピン国内でも3隻をライセンス生産、水上打撃力を整備します。

 フィリピン海軍はインドでのブラモス超音速地対艦ミサイルのシステム教育を完了しました。フィリピン海軍は沿岸防備能力強化へインドよりブラモス超音速地対艦ミサイル取得計画を進めており、今回は2023年1月23日から2月11日までの期間、フィリピン海兵隊の士官一名が参加し、ミサイルシステムのオペレータ養成教育が行われています。

 ブラモス地対艦ミサイル輸出はインドにおける東南アジア諸国との防衛力強化交流の要諦でもあり、そのオペレータ教育修了式にはインド海軍参謀総長であるダクリシュナンハリ クマール提督が臨席し、ミサイル士官徽章を授与しました。インド政府はフィリピンのほか、ヴェトナム軍に対してもブラモス超音速地対艦ミサイルの輸出準備を進めています。

 超音速地対艦ミサイルはソ連製ヤホント超音速対艦ミサイルを基にインドが独自改良を加えて開発したもので射程は290㎞、マッハ3.5以上の高速で目標に接近するため相手に対処時間猶予を与えない点が特色です。フィリピン政府は3億7500万ドルを投じ3個中隊分のブラモスを導入する計画、各中隊は統制装置と3連装発射装置3基を装備しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:滋賀長浜-第3戦車大隊廃止改編をビールで受け止める

2023-03-21 18:28:48 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 岸田総理は今まさにウクライナを訪問すべく移動中との事ですが是非、充分な戦車と火砲が無ければ国土が蹂躙される現実を見て頂きたい。

 第3戦車大隊が廃止改編となってしまいました、護衛艦の自衛艦旗返納行事も寂寥感の強いものですが、第3戦車大隊は日本でも最も古い戦車部隊の一つであり、ウクライナでは戦車と砲兵が大活躍し、戦車の時代とまで言われている最中の廃止改編は、と嘆息する。

 今津駐屯地、しかし翌日に新編されました第3偵察戦闘大隊は千僧駐屯地で廃止された第3偵察隊を元に偵察中隊を編成し今津駐屯地へ移駐、第3戦車大隊と比べますと中隊旗も三振り並びまして、規模も若干ながら大型化しているという。それでも戦車廃止は寂しい。

 ビールだ、こういう時は呑むしかありません。今津駐屯地の高台からは琵琶湖が良く見えるのですが、対岸は長浜市、泳いでいくのは大変ですがボートを借りて漕ぐか、若しくは今津港から長浜港まで船舶航路が伸びている、鉄道でも湖西線から北陸本線経由ですぐ。

 長浜市、滋賀県湖北の城下町です。いや城下町なのですが江戸時代には彦根藩の所領となっていましたので、駅前に広がる長浜城というのは安土桃山時代の城址であり、実のところこのころの城下町気風を街の繁栄として維持して継承し今に至る歴史の街なのですが。

 城下町には様々な文化があるのですが、もう一つこの長浜は鉄道の街でもあり、北陸本線がここから要港敦賀港とを結び、京阪神都市圏へ琵琶湖の水運という交通で結んだことで明治時代に長浜は重要な交通要衝となり活気ある、それは安土桃山時代を受け継いだゆえ。

 ビール、いやなぜ唐突にと思われるかもしれませんが、長浜は琵琶湖湖畔の街であり、その周囲は美しい山の稜線に囲まれています、故に降り注いだ雨が長年をかけて地下水と琵琶湖を醸成しまして、要するに美味しいビールをつくるための洗練された水が、わき出す。

 浪漫ビール、長浜駅から少し南の方へ歩み進めますと、これは思い切った古さだなあ、と感心させられる重厚な建物がありまして、ここがビール醸造所としましてクラフトビールを湛えている。長浜、ちょっと遠い街という印象でしたけれども最近親しむ街のひとつ。

 長浜、そして琵琶湖の、まわりというのは古刹も近江は大津京と奈良時代に行われた遷都の余韻を受け継ごうという気風を感じられますし、なにしろ歩いていて楽しい場所が多いわりに、コロナ前でもそれほど混雑していない場所はさらに静けさを湛えていて心地よい。

 カレーチキン、金曜日ではないけれどもカレー風味を楽しむ。これ、食べてみておいしさに驚いた、外はカリッと中はシットり、というなにかコマーシャルめいた表現がよくあうのですが、大きなものですのでビールをごくごくいただくとともによく肴としてつき合う。

 チキンというのも、これほど柔らかくなるものなのかあ、オーブン使っているのだろうなあ、と考え、しかしもう一口いただく。ビーフやポークですとここまで柔らかくするというのは大変かもしれません、もっともここはビーフもまた美味しいのでおすすめなのです。

 無数に刻まれた木皿にピザの終わりを感じる、そう物事には終わりが有るものだけれど、戦車大隊廃止、なあ。偵察戦闘大隊といいますが、実質規模を考えると嘆息するもので、フランスの偵察任務に当る軽戦車連隊はAMX-10RC装甲偵察車を72両集中配備している。

 AMX-10RCは相手の前衛が後悔する程105mm砲弾を撃ち込みます、せめてあの規模は欲しい、とおもう。店を出まして空を見上げる、琵琶湖の対岸では有事に備えての訓練が続く、その向こうには舞鶴基地があり、日本海の対岸は北朝鮮とロシア、また嘆息しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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MiG-29戦闘機駆使するウクライナ空軍-ポーランドとスロベニアのMiG-29供与発表は干天の慈雨

2023-03-21 07:01:20 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 MiG-29戦闘機は双発双尾翼のF-15戦闘機やSu-27戦闘機と共通点がありますが小型で多用途戦闘機として設計されたもの、いつか友好国のMiG-29が来日してくれれば、と思うのですが。

 ポーランド軍とスロベニア軍がウクライナへ供与するMiG-29戦闘機は最大で30機近くになる可能性があります、ロシア政府は旧型機の在庫処分だと揶揄していますが、なにしろMiG-29はロシア空軍でも主力戦闘機の一つですので、要するにロシア軍は活用できていないことを示すのかもしれません。この戦闘機、世界中で用いられる高性能戦闘機です。

 MiG-29戦闘機はウクライナ空軍における主力戦闘機の一つで、ソ連から継承したSu-27戦闘機とともに空軍の主力を構成しています。ただ、元々多くない機体の内、保管されていた45機が2014年のロシア軍クリミア侵攻の際にクリミア半島内で鹵獲されており、開戦後の航空戦闘やミサイル攻撃により、MiG-29戦闘機は既に11機が喪失したとされます。

 鹵獲、とは残念に思われるかもしれませんが、元々前線戦闘機として開発されたMiG-29戦闘機は最高稼働率が50%を超えることはありませんが、普通に運用していると一定以下の数字まで稼働率が下がらない戦闘機として設計されています。ただ、開戦時に装備されていたMiG-29は43機であり、このうち11機が撃墜されたのですから残るのは32機だ。

 2022年10月に無人機迎撃中のMiG-29戦闘機が、撃墜した無人機の破片により墜落し操縦士が脱出した事例があり、これが喪失11機目とされます。一方で、ウクライナ空軍はMiG-29の性能を最大限活かしている点が特筆されます、その一例としてアメリカから供与されたAGM-88HARM対レーダーミサイルの運用能力を付与したという点があります。

 AGM-88HARM対レーダーミサイルは、レーダー電波を逆探知し地対空ミサイルや防空レーダーを破壊するミサイルで、アメリカから供与されロシア軍の地対空ミサイル部隊が攻撃を受け麻痺したのですが、どこから発射したのかが謎でした。それがウクライナ軍はMiG-29のシステムにHARMをR-77ミサイルと誤認させ発射したまさに力業でした。

 グラスコックピットではない旧型計器が並ぶウクライナのMiG-29ですが、なんとタブレット端末を直に貼り付けて操作盤として用いているという更なる力業も行われているといい、無論破損の危険はありますが民生品である故に消耗品のように交換することも可能です。東欧から供与されるMiG-29戦闘機、使い慣れた戦闘機の増援といえるでしょう。

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