北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

沖縄国民保護図上訓練の課題【3】台湾有事は着上陸事案まで拡大すれば年単位の長期化-避難生活基盤の課題

2023-03-04 20:18:07 | 国際・政治
■島嶼部防衛の原点回帰を
 三宅島火山災害に福島第一原発事故帰還困難区域と非難というものは生活基盤を全て捨ててゆく過酷なものです。

 台湾有事の拡大か、それとも台湾有事に先立つ策源地確保へ南西諸島を確保するという南西有事先行型かという想定とともに、国民保護法制に基づく住民避難を都道府県と市町村単位で立案しているところですが、やはり輸送手段には相当な苦労があるようです、仮に遠く瀬戸内海航路のフェリーをすべてチャーターしたとしても、やはり大変な人数だ。

 浮流機雷と地対空ミサイルの脅威というものを真剣に考えれば、船会社としては、何しろ前回の第二次世界大戦が大量の補償金に税率100%をかけられ、船舶が沈没した場合に建造費と弔慰金は潤沢に支給され、そののちに同額を税金で持っていかれるのでは、今でいえば10万円給付金の手数料10万円、というようなもの。政府は信用できない、となります。

 今度こそしっかり船団護衛を行うから、というような説明でも、そのために十分な護衛艦部隊があるのか、と問われれば、手元の艦艇でなんとかします、というような変投資家できないものですから、大丈夫か、となります。そして、県民を避難させるとして、政府は九州を退避先に考えているようですが、どの程度の期間退避を考えているのか、疑問符が。

 ウクライナ戦争を見れば、二週間で終戦という思惑は、ウクライナ軍の踏ん張りで何とか回避されましたが、五月の対独戦勝記念日までに戦火が上がらなければロシア軍は撤退するのではないかという当初の予想は覆され、じゃあ八月の対ファシスト戦勝記念日までに撤退の目処が、という予測も外れまして、戦争は二年目に入りました、長期化している。

 南西有事も、台湾有事の拡大か、それとも台湾有事に先立つ策源地確保へ南西諸島を確保するという南西有事先行型かという想定するか、いずれにせよ特に台湾有事の場合は、台湾本土上陸前の海上封鎖開始から考えれば年単位の展開が懸念されます。すると先島諸島から避難した場合は、二年三年は戻れない、想定で退避先を確保しなければなりません。

 宣戦布告も最後通牒もない時代、特に全面戦争ではなく限定戦争という地域を区切った武力紛争の場合は、グレーゾーン自体から始まります、この場合は長期化する恐れがあるのですね、すると避難先ではどのように生活するのかを考える必要がある、ホテルを借り上げるのか、公務員官舎の空きを全国に十数万戸確保か、みなし官舎のように家賃給付か。

 硫黄島、難しいのは1944年に小笠原兵団が置かれた際、硫黄島などいくつかの離島は戦闘地域となる懸念から住民を疎開させてしまい、その後戦闘が集結したのちも島民は戻れなかった、という事例があります、いや沖縄でこそ事例が、普天間飛行場や嘉手納基地は沖縄戦前に住宅地や学校がありましたが、接収され今なお戻れていないという歴史がある。

 住民を数万退避させるよりは、着上陸阻止部隊に限定して部隊を配備し、戦闘させない必要があるのではないか。いま政府は射程2000㎞の反撃能力を沖縄県にも配備する方針を示しています、これは明言されているものではありませんが、88式地対艦誘導弾と12式地対艦誘導弾の光景が反撃能力となる為、これらが配備されている離島にも置かれる事となる。

 一発でも島に打ち込まれれば、上海でも北京でも届くのだぞ、という声は威勢がいいように見えるのですが、それはキューバ危機におけるアメリカが感じた圧迫感を中国が感じることとなります、キューバ空爆かキューバ直接侵攻による脅威排除が真剣に検討されたあの1962年キューバ危機です、それよりは純粋な島嶼部部防衛部隊を十分置いては、と思う。

 島嶼部防衛部隊は原点回帰が必要だ、対馬警備隊型の部隊だけでは不足ですが、スウェーデンがゴトランド島にレオパルド2戦車を派遣したように、戦車と装甲戦闘車あわせて10両程度の機械化部隊を置き、対艦ミサイルは置いても相手本土を叩く装備は置かない、要するにこちらから本土攻撃の拠点にはしないが、上陸させないし、しても徹底抵抗する、という姿勢の誇示だ。

 実のところ、シェルターを建設するとともに総員避難ではなく、自衛隊は専守防衛に徹して、上陸させないし、上陸させた場合は最後まで覚悟を突き付ける、こうした運用を先島防衛については強調すべきではないでしょうか。そして仮に非戦闘員が一人でも、掠り傷でも負傷したならば徹底的に世界へ訴え、犬猫負傷でも動物愛護団体国際会議を招集する。

 無理に避難させないという選択肢と、非戦闘員を巻き込まない体制の確立、そしてなにより簡単に上陸させない強力な機械化部隊の駐屯、考えるべきではないでしょうか。中国本土、中国内陸部を叩ける反撃能力に防衛予算がかなりつぎ込まれるようですが、憲法上専守防衛維持するならば、わたしは防衛は戦車師団と護衛艦に戦闘機が中心であるべきとおもうのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】鞍馬寺,毘沙門天と観世音菩薩と護法魔王尊並ぶ金堂から天台宗-三尊尊天信仰に至る壮大な哲学

2023-03-04 14:45:51 | 写真
■日本の信仰の多様性
 寛容といますか多彩といいますか雑多といいますか日本の宗教観は実はその成り立ちに影響され、それだけ社会や個人の価値観に影響していると思うのですが鞍馬はその一つとおもう。

 鞍馬の信仰、単純化しますとわかりやすいのですが時系列や歴史、特に日本宗教史とともに並べますとわかりやすい説明の方が矛盾が多くなり逆にわかりにくいのです。しかしもともとは当地に鑑真の弟子鑑禎が毘沙門天を安置したところが、お寺の始まりという。

 尊天信仰という鞍馬弘教は昭和中期に天台宗から独立しましたので、若干新興宗教のような印象があるのですが、そもそものこの尊天信仰というものをたどりますと、昭和中期ではなく桓武天皇の治世下までさかのぼりますので、変な話密教真言宗のほうが新興となる。

 三位一体、キリスト教の聖母マリアをふくめたほうではなく、鞍馬弘教の考え方が三位一体という認識とともにありまして、本堂の毘沙門天と千手観世音菩薩と護法魔王尊の三体は一つの神である、というものが尊天の考え方であり、尊天信仰というものです。ここは。

 藤原伊勢人、造東寺長官を務めた奈良時代末期の官僚が千手観音像をつくり、もともとあった毘沙門天とともに安置したことが鞍馬寺を創建に起因しています、すると尊天信仰における毘沙門天と千手観世音菩薩というものこそ、鞍馬寺始まり、二つの神というゆらい。

 延暦15年こと西暦796年に毘沙門天と千手観世音菩薩を並べて信仰したという歴史がありますので、昨日今日や百年二百年の信仰なんていうあさいものではなく、このように1227年も経ていますと尊天信仰というものはある程度、いや着実に体系だっているといえる。

 山岳信仰の寺院、いや鞍馬寺のあります鞍馬山そのものが山岳信仰の寄る辺というところですけれども一時期密教寺院でもありました、これは9世紀末の寛平年間に東寺の峯延が入寺しまして、鞍馬寺は真言宗寺院となっています。真言宗は多様性の宗派でもある。

 空海、真言宗を広めた空海は晩年の入定に際し教王護国寺は実慧、金剛峯寺は真然、神護寺は真済、安祥寺を恵運、醍醐寺は聖宝、円成寺は益信、と高弟に住持を譲り、この寺院はすべて年分度者、国公認僧侶養成機関という格付けを受けています、分散したのですね。

 真言宗は、分散するとともに、ここに仁和寺も加えまして独自の僧侶養成を行うことで天台宗の延暦寺のような画一化した総本山を持たない事とはなりますが、宗教哲学の多様性を生んでいます。この流れが峯延により鞍馬寺にも伝わるのですが、寺の格付けもあがる。

 由岐神社、もう一つ格を上げたのはケーブルカーに隣接する鞍馬寺の鎮守社である由岐神社でして、しかし元々は宮中にありました。ここが朱雀天皇時代の10世紀中期に京都での大地震をうけ天皇の勅令により鞍馬寺の鎮守社となり、由岐大明神三つ目の神が並んだ。

 北方鎮護という詔勅を受けての遷座となりましたが、有名な鞍馬の火祭も由岐大明神を迎えるための神事というものですから寺の格にもつながるものです。ただ、平安時代末期の保延年間、鞍馬寺はあっさり天台宗寺院に改宗し、洛中近い青蓮院の管理下となります。

 延暦寺の重怡が鞍馬寺に来たためなのですが、鎌倉時代の寛喜元年の1229年から青蓮院門跡座主が鞍馬寺検校職を兼務することとなり、これが昭和中期に鞍馬弘教成立まで、厳密には天台宗の影響も色濃いのですが、より三位一体的な信仰につながるまで続きます。

 三尊尊天という毘沙門天と千手観世音菩薩と護法魔王尊を奉じる本殿金堂は昭和の1971年再建ですので、それではかつての本堂はどのように信仰を安置していたのか、と興味深いところなのですが、一拝観者のたちばでは、なかなか謎という他ないのが実情なのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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南海トラフ地震-救助隊は被災したあなたの元へたどり着けないかもしれない

2023-03-04 07:00:11 | 防災・災害派遣
■追悼-東日本大震災12年
 南海トラフ地震-救助隊は被災したあなたの元へたどり着けないかもしれない、という論題のNHK特集を視まして来ないというよりもそこで検討を放棄する専門家の視点に危機感を覚えました。

 今年も3.11東日本大震災慰霊の日が近づいてまいりました、12年目となる慰霊の日ですが、NHK特集記事などをみますと、やはり単に地震の話題に触れるのではなくつぎの地震への備えを以て慰霊とする、こうした論調として“南海トラフ連動地震への備え”を提示しています、只気になる論調が、南海トラフ連動地震は非常に規模が大きい点の協調です。

 南海トラフ連動地震あ過去に数回襲来していますが、この再来を考えた場合、“被災地が広大過ぎて72時間以内に救助開始は間に合わないかもしれない”という点から“救助隊が来ない前提で地域のたすけあい”というような、非常に消極的な論点が多いのです。安全保障を研究し論点とするものにとり、こうした対策の放棄的な理念は全く理解できません。

 日本海側は直接被害を受けない、現状ではどうにもならないならば先ず対策を考えるべきです、そして重要なのはダメージコントロール、東日本大震災の通り、復旧着手が一時間遅れれば復旧完了は一日遅れ、復旧から復興への移行を遅らせる、復興着手が一週間遅れれば復興完了は一年遅れる、ということです。それならば先ず、国主導で対策をすべきだ。

 広域救助を行う場合でも被災地が広すぎて現場に到達できないというのであれば、“ヘリコプターをどれだけ増強すれば可能なのか”“輸送機をどれだけ増強すれば可能なのか”というような、いまの体制である消防は被災地まで自走し救助活動における補給は現地のインフラに頼る、という枠組みを見直す点からまず着手すべきだ。幸い日本は造る能力がある。

 防衛費増額の指針が示されたのですから、という部分が大きいのですが、政府は“C-2輸送機の輸送力増大を受け飛行隊定数を削減し調達計画を26機から18機へ大幅削減する”という指針を示しています、これは単純に“他に必要なミサイル等を買う予算が無いので辻褄を併せた”だけではないのか、と考えつつ、災害対応にも18機で大丈夫なのか、となる。

 むらさめ型護衛艦、例えば現在運用している護衛艦後継艦をもう一回り大型化し、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦程度まで航空機運用能力を高めれば、これは政府が進める無人機作戦能力整備にも重なるしトマホークを導入する政府指針には多数のVLSを備えた新型汎用護衛艦が不可欠だ、こうした点で護衛艦の作戦能力に災害対応能力も強化できます。

 輸送機部隊定数を8機から従来の12機に戻し、入間、美保、小牧の3飛行隊に加え、例えば千歳、浜松、新田原に新たな飛行隊を置き、C-2輸送機を6個飛行隊80機体制としてはどうか、木更津のヘリコプター団と同規模の部隊を西部方面隊と中部方面隊に増強できないか、ヘリコプター団であれば1500名救助要員か物資240tを一度に1000km先へ運べる。

 災害派遣は自衛隊の主任務ではない、自衛隊の輸送力などの災害派遣での重要性を説けば詳しいという自称の方から一部こうした反論が来ます、しかしそこで問い返したいのは、南海トラフ連動地震規模の災害で、国としてリソース投入を渋れるほど被害は小さいと考えてよいのか、ということ。想定死者数32万名とされています、日本はリソース投入を渋れるほど国力に余裕があるのでしょうか考えるべきです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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