北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【3】最大の強みは"発災前"だ-都市計画単位の事前対策が必要

2023-03-18 20:23:36 | 防災・災害派遣
■無駄ではない事前投資
 戦争と違ってくる方角や規模などが分っているとともに"まだ来ていない"という点は大きな強みです。

 南海トラフ連動地震、非常に大きな被害を覚悟せねばならないのですが、今幸いなのはまだ“発災前”ということです。“発災前”ということは必然的に“被害を受ける前”でもあり、いわばまだ対策は間に合う、という。しかし東日本大震災の被害の多くが津波で在った通り、南海トラフ連動地震の被害想定で津波規模を考えると一筋縄ではいきません。

 津波被害について、日本は大陸外縁弧状列島という地形上、津波被害の及ばない内陸部へ居住地を移転するのは無理です、逆に平野部が沿岸部の沖積地に広がっているために人口が集中しているのですから、盆地には限界がありますし、大陸外縁弧状列島の形成が火山により形成された火山地形ですので、山間部には火山性土壌による土砂災害の懸念がある。

 防波堤を、太平洋の壁、という規模で造成する選択肢もあるにはあるのですが、結局のところ防波堤は、津波の原理が波浪ではなく津波、連続した海水の衝力が原動力ですので防波堤も連続して押し寄せる波には、楔形とすることで左右に逸れさせない限り、後ろから押す衝力により乗り越えられてしまいますゆえに津波の高さよりも高い標高へ遡上します。

 垂直避難の方が安全である、上昇した海面に吞まれる懸念がありますので安易に低層建築物で行うべきではありませんし、日照量に左右されることなく海に対して正面を向かない、オーシャンビューを敢えて避ける方向で建築する必要がありますが、東日本大震災でも七階よりも上まで浸水した事例はありません、すると耐震性の高い中層建物は有用です。

 沿岸部に中層以上の建物を建設する場合の免税措置などがあれば、意外と沿岸部を津波に強い街とすることは簡単なのかもしれません、それは無理に高台移転するよりも地域コミュニティを維持しやすいものですし、沿岸部に一定間隔で津波避難施設となりうる10階前後の中層建築物があれば、居住しない方々にも避難場所を提供できる事となるでしょう。

 一億総タワーマンション、なんてことを要求するものではありません、特にタワーマンションの場合は沖積地では地盤の問題がありますし、長周期振動被害を受けやすい構造です。しかし海岸線に対して正面を向かない、つまり津波が直撃せず逸れさせる構造の10階前後の中層建築物に免税措置を行う、公営住宅として整備を励行する枠組みがあれば、と思う。

 消防団官舎のような、一見荒唐無稽な対策があってもいいと思う。消防団は消防吏員のなかでも非常勤消防吏員を示すものですが、一応総務省からは俸給と出動手当が支給されているものの、その内実が不明瞭である事例が多いようです、実際聞いてみた範囲内でも多い。例えば消防団と水防団の吏員が自衛隊官舎並の費用で利用できる建物があってもよい。

 バイパス道路も、思い切って盛り土により高くできるところは高くして、高架化できる部分は高架道路へと改修すべきです。阪神大震災の阪神高速のように倒壊しないよう耐震構造の確実な励行は必要なのですし、なにより費用が大きいために公共事業費を削減し続けている現状、コンクリート原料にも限りがある現状では難しいのは理解していますが。

 公共事業、しかし日本の低成長は、かつて公共事業依存の経済が批判されていたところを財政再建とともに大幅に減額し見直している一方、これにより廃業する土木建築業者が多く、結果として既存インフラ維持にも限界を来しています。他方で、土木建築は確実な雇用を生み、なにより災害によりインフラは確実に損傷する現実を無視し削減していないか。

 少子高齢化が叫ばされるわが国ではありますが、少子化の要因には不安定な雇用と見通せない将来があり、そして行政基盤そのものが少子化を見通して将来投資を渋っているのですから、一般論が少子化前提へ収斂するのはある種当然といえます。それならば、思い切った公共投資は経済活性化に繋がらないか、実際問題、これで成功した事例もあるのです。

 大阪市の一部区では、所謂日雇い労働者が多かった地域において、東日本大震災後に大きな人口移動があった、その背景には福島第一原発事故に伴う除染という労働需要が特需として生まれ、高齢者を除けばかなりの労働力が福島復興を支援したのち、別の地域で安定居住している、こうした研究がありまして、なるほど復興特需は大阪にも、と思ったもの。

 公共事業頼りの経済に戻るのか、こういう批判はあるでしょう、しかし考えてみてほしいのは、不況に際しては公共事業でインフラを整備し、好景気に際してはインフラ維持に留め民間製造業への労働力移動を柔軟に行う、こうした原始的な施策を行っていた頃の日本経済の方が、経済成長も少子化対策も、比較で実はしっかり行えていたように思うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】ワイドビューひだ時代の終焉-特急ひだ号はキハ85系からHC85系時代へ世代交代完了

2023-03-18 14:10:44 | コラム
■JR高山線世代交代
 ワイドビューひだ、とは正式名称を外れているのですがキハ85系の車両の展望の良さから愛称の様にワイドビューひだ愛称は用いられていたように思います。

 キハ85置換え、あっという間だったなあ、というのが率直な印象です。HC85系、この車輛を初めて見たのは試運転が開始された頃に名古屋の車両基地に泊まっている様子を見たのですが、これは2020年、つまりCOVID-19が日本に上陸してまもないころでした。

 JR東海は何年かかけて置換える、ということでしたが、元々の本数が少なかったのか、JR西日本の特急置換えと比べますともうあっという間、という印象でしたか。183系や485系の置き換えとは比較にならないところで、ちょっとさびしくなると共に驚きがあります。

 ワイドビューひだ、特急ひだ、という名称になったのですが、長い名称が北海道の特急スーパーかむい号を特急かむい、としたように見時亜区する風潮で正式名称は皮ていましたけれども、キハ85系についてはワイドビューの名の通り、視界が開けていた列車という。

 氷菓、京都アニメーションのアニメーション作品の影響を受けて高山市を探訪したのはもう十年以上前でしょうか、京都駅の視点から見ますと、ちょうどブルートレインが運行されていた時代にはブルートレインの到着時刻前後に、高山行ひだ号が到着していました。

 京都から高山まで特急で一本、いや一本という割には四時間近くかかるようですけれども、旅情というものを感じさせるには十分な時間で、ダイヤ的には、昼過ぎに到着し数時間観光してホテルにチェックイン、一泊して次の日の後に帰路へ、という考えなのでしょう。

 バブル時代に搭乗した一群の列車、つまり移動そのものに価値を見い出した列車だとも言えた車両が、徐々に耐用年数を迎え我慢の列車、バリアフリーだから我慢しろ、環境にやさしい為に我慢しろ、列車の移動は我慢の時代へ戻ってゆくようで寂しく思います。

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【京都幕間旅情】特急ひだ-キハ85系気動車ラストラン,3.18ダイヤ改正により新旧交代で通常運行終了

2023-03-18 07:01:44 | コラム
■特急ひだ-大阪と高山結ぶ
 ワイドビューひだ号として親しまれた特急ひだ号のお別れへ京都駅へ行って参りました。

 ひだ号、大阪や名古屋と岐阜県北部の高山を結ぶ特急です。大阪と高山は一往復のみで、主力は名古屋と高山を結ぶ特急ですが、大阪行きの一往復は京都駅を通りまして、この珍しいJR東海の流線型に配慮し、展望室さえ備えた特急を見る事が出来るのですね。

 ひだ36号大阪行きは高山1533時発、飛騨萩原1609、下呂1619、美濃太田1718、岐阜1744、大垣1754、米原1823、草津1902を経て1917時に京都駅に到着します。京都からは25号、京都0831時発、草津0851、米原0922、大垣0947、そして岐阜1011時に。

 岐阜基地への移動で多少利便性があるのですが岐阜駅で名古屋からの列車ひだ5号と連結し、鵜沼1022、美濃太田1032時、白川口1057、飛騨金山1111、下呂1134、飛騨萩原1142、飛騨小坂1157、久々野1212、そして終点高山へ1224時に到着するというダイヤです。

 キハ85による特急ひだ号の運用が昨日17日を以て終了し、本日のダイヤ改正からは新型のHC85系に切り替わる事となります、新型特急はハイブリット方式のディーゼルエレクトリック方式を採用しているのですが、座席や眺望というサービスは劇的に低下しました。

 ワイドビューひだ、ひだ号はもともとこの呼称で呼ばれました背景としてJRが旧型の82系気動車の後継に展望を大幅に向上させたものなのですが、展望重視の為に座席の一部が高く、バリアフリーには適していない車輛でした。新型車両は展望を犠牲にした構図だ。

 新型車両、昔はどんな車両が来るのかとわくわくしたものですが、まいづる号287系や近鉄特急ひのとり、くらいを例外としてどちらかというと改良型は簡略化されていることのほうが多く、ワイドビュー、移動を快適に、という様な気概が欲しいとも思うのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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