■無駄ではない事前投資
戦争と違ってくる方角や規模などが分っているとともに"まだ来ていない"という点は大きな強みです。
南海トラフ連動地震、非常に大きな被害を覚悟せねばならないのですが、今幸いなのはまだ“発災前”ということです。“発災前”ということは必然的に“被害を受ける前”でもあり、いわばまだ対策は間に合う、という。しかし東日本大震災の被害の多くが津波で在った通り、南海トラフ連動地震の被害想定で津波規模を考えると一筋縄ではいきません。
津波被害について、日本は大陸外縁弧状列島という地形上、津波被害の及ばない内陸部へ居住地を移転するのは無理です、逆に平野部が沿岸部の沖積地に広がっているために人口が集中しているのですから、盆地には限界がありますし、大陸外縁弧状列島の形成が火山により形成された火山地形ですので、山間部には火山性土壌による土砂災害の懸念がある。
防波堤を、太平洋の壁、という規模で造成する選択肢もあるにはあるのですが、結局のところ防波堤は、津波の原理が波浪ではなく津波、連続した海水の衝力が原動力ですので防波堤も連続して押し寄せる波には、楔形とすることで左右に逸れさせない限り、後ろから押す衝力により乗り越えられてしまいますゆえに津波の高さよりも高い標高へ遡上します。
垂直避難の方が安全である、上昇した海面に吞まれる懸念がありますので安易に低層建築物で行うべきではありませんし、日照量に左右されることなく海に対して正面を向かない、オーシャンビューを敢えて避ける方向で建築する必要がありますが、東日本大震災でも七階よりも上まで浸水した事例はありません、すると耐震性の高い中層建物は有用です。
沿岸部に中層以上の建物を建設する場合の免税措置などがあれば、意外と沿岸部を津波に強い街とすることは簡単なのかもしれません、それは無理に高台移転するよりも地域コミュニティを維持しやすいものですし、沿岸部に一定間隔で津波避難施設となりうる10階前後の中層建築物があれば、居住しない方々にも避難場所を提供できる事となるでしょう。
一億総タワーマンション、なんてことを要求するものではありません、特にタワーマンションの場合は沖積地では地盤の問題がありますし、長周期振動被害を受けやすい構造です。しかし海岸線に対して正面を向かない、つまり津波が直撃せず逸れさせる構造の10階前後の中層建築物に免税措置を行う、公営住宅として整備を励行する枠組みがあれば、と思う。
消防団官舎のような、一見荒唐無稽な対策があってもいいと思う。消防団は消防吏員のなかでも非常勤消防吏員を示すものですが、一応総務省からは俸給と出動手当が支給されているものの、その内実が不明瞭である事例が多いようです、実際聞いてみた範囲内でも多い。例えば消防団と水防団の吏員が自衛隊官舎並の費用で利用できる建物があってもよい。
バイパス道路も、思い切って盛り土により高くできるところは高くして、高架化できる部分は高架道路へと改修すべきです。阪神大震災の阪神高速のように倒壊しないよう耐震構造の確実な励行は必要なのですし、なにより費用が大きいために公共事業費を削減し続けている現状、コンクリート原料にも限りがある現状では難しいのは理解していますが。
公共事業、しかし日本の低成長は、かつて公共事業依存の経済が批判されていたところを財政再建とともに大幅に減額し見直している一方、これにより廃業する土木建築業者が多く、結果として既存インフラ維持にも限界を来しています。他方で、土木建築は確実な雇用を生み、なにより災害によりインフラは確実に損傷する現実を無視し削減していないか。
少子高齢化が叫ばされるわが国ではありますが、少子化の要因には不安定な雇用と見通せない将来があり、そして行政基盤そのものが少子化を見通して将来投資を渋っているのですから、一般論が少子化前提へ収斂するのはある種当然といえます。それならば、思い切った公共投資は経済活性化に繋がらないか、実際問題、これで成功した事例もあるのです。
大阪市の一部区では、所謂日雇い労働者が多かった地域において、東日本大震災後に大きな人口移動があった、その背景には福島第一原発事故に伴う除染という労働需要が特需として生まれ、高齢者を除けばかなりの労働力が福島復興を支援したのち、別の地域で安定居住している、こうした研究がありまして、なるほど復興特需は大阪にも、と思ったもの。
公共事業頼りの経済に戻るのか、こういう批判はあるでしょう、しかし考えてみてほしいのは、不況に際しては公共事業でインフラを整備し、好景気に際してはインフラ維持に留め民間製造業への労働力移動を柔軟に行う、こうした原始的な施策を行っていた頃の日本経済の方が、経済成長も少子化対策も、比較で実はしっかり行えていたように思うのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
戦争と違ってくる方角や規模などが分っているとともに"まだ来ていない"という点は大きな強みです。
南海トラフ連動地震、非常に大きな被害を覚悟せねばならないのですが、今幸いなのはまだ“発災前”ということです。“発災前”ということは必然的に“被害を受ける前”でもあり、いわばまだ対策は間に合う、という。しかし東日本大震災の被害の多くが津波で在った通り、南海トラフ連動地震の被害想定で津波規模を考えると一筋縄ではいきません。
津波被害について、日本は大陸外縁弧状列島という地形上、津波被害の及ばない内陸部へ居住地を移転するのは無理です、逆に平野部が沿岸部の沖積地に広がっているために人口が集中しているのですから、盆地には限界がありますし、大陸外縁弧状列島の形成が火山により形成された火山地形ですので、山間部には火山性土壌による土砂災害の懸念がある。
防波堤を、太平洋の壁、という規模で造成する選択肢もあるにはあるのですが、結局のところ防波堤は、津波の原理が波浪ではなく津波、連続した海水の衝力が原動力ですので防波堤も連続して押し寄せる波には、楔形とすることで左右に逸れさせない限り、後ろから押す衝力により乗り越えられてしまいますゆえに津波の高さよりも高い標高へ遡上します。
垂直避難の方が安全である、上昇した海面に吞まれる懸念がありますので安易に低層建築物で行うべきではありませんし、日照量に左右されることなく海に対して正面を向かない、オーシャンビューを敢えて避ける方向で建築する必要がありますが、東日本大震災でも七階よりも上まで浸水した事例はありません、すると耐震性の高い中層建物は有用です。
沿岸部に中層以上の建物を建設する場合の免税措置などがあれば、意外と沿岸部を津波に強い街とすることは簡単なのかもしれません、それは無理に高台移転するよりも地域コミュニティを維持しやすいものですし、沿岸部に一定間隔で津波避難施設となりうる10階前後の中層建築物があれば、居住しない方々にも避難場所を提供できる事となるでしょう。
一億総タワーマンション、なんてことを要求するものではありません、特にタワーマンションの場合は沖積地では地盤の問題がありますし、長周期振動被害を受けやすい構造です。しかし海岸線に対して正面を向かない、つまり津波が直撃せず逸れさせる構造の10階前後の中層建築物に免税措置を行う、公営住宅として整備を励行する枠組みがあれば、と思う。
消防団官舎のような、一見荒唐無稽な対策があってもいいと思う。消防団は消防吏員のなかでも非常勤消防吏員を示すものですが、一応総務省からは俸給と出動手当が支給されているものの、その内実が不明瞭である事例が多いようです、実際聞いてみた範囲内でも多い。例えば消防団と水防団の吏員が自衛隊官舎並の費用で利用できる建物があってもよい。
バイパス道路も、思い切って盛り土により高くできるところは高くして、高架化できる部分は高架道路へと改修すべきです。阪神大震災の阪神高速のように倒壊しないよう耐震構造の確実な励行は必要なのですし、なにより費用が大きいために公共事業費を削減し続けている現状、コンクリート原料にも限りがある現状では難しいのは理解していますが。
公共事業、しかし日本の低成長は、かつて公共事業依存の経済が批判されていたところを財政再建とともに大幅に減額し見直している一方、これにより廃業する土木建築業者が多く、結果として既存インフラ維持にも限界を来しています。他方で、土木建築は確実な雇用を生み、なにより災害によりインフラは確実に損傷する現実を無視し削減していないか。
少子高齢化が叫ばされるわが国ではありますが、少子化の要因には不安定な雇用と見通せない将来があり、そして行政基盤そのものが少子化を見通して将来投資を渋っているのですから、一般論が少子化前提へ収斂するのはある種当然といえます。それならば、思い切った公共投資は経済活性化に繋がらないか、実際問題、これで成功した事例もあるのです。
大阪市の一部区では、所謂日雇い労働者が多かった地域において、東日本大震災後に大きな人口移動があった、その背景には福島第一原発事故に伴う除染という労働需要が特需として生まれ、高齢者を除けばかなりの労働力が福島復興を支援したのち、別の地域で安定居住している、こうした研究がありまして、なるほど復興特需は大阪にも、と思ったもの。
公共事業頼りの経済に戻るのか、こういう批判はあるでしょう、しかし考えてみてほしいのは、不況に際しては公共事業でインフラを整備し、好景気に際してはインフラ維持に留め民間製造業への労働力移動を柔軟に行う、こうした原始的な施策を行っていた頃の日本経済の方が、経済成長も少子化対策も、比較で実はしっかり行えていたように思うのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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