北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南海トラフ連動地震と十二年目の東日本大震災【6】道路は何時復旧するか-重要な被害把握

2023-03-30 20:23:43 | 防災・災害派遣
■想定される広大な被災地
 南海トラフ連動地震の課題は被災地が非常に広大であり後方拠点から被災地までが遠くなることです。

 被災地への道路復旧見積もりをどのように考えるか、これにより救援物資輸送は空輸から陸送に転換できます、また貨物列車の運行が可能となれば、救援拠点への物資輸送能力は大幅に増大するのですが。この場合、長周期振動による本州四国連絡橋の倒壊がどの程度免れるかも大きな要素となるのかもしれません、倒壊してしまうと対処計画は破綻する。

 本州四国連絡橋倒壊の懸念、耐震性は十分確保されているのでしょうけれども、設計当時に長周期振動をどこまで想定していたかは未知数であり、一方で本州四国連絡橋完工と同時に本四連絡船の多くが廃業しており、もちろんオリーブラインやオレンジラインなどいくつかのフェリーは運行されていますが、かつての規模とは輸送力が比較になりません。

 安全確認のための通行止め、もっとも懸念するのは一部損壊した状況で通行可能と見えるのだが念のため止めることで災害初動の通行が不能となる懸念です。もちろん管理者としては安全第一、被災地救難だから通せといわれても被災地救助は橋梁管理者の所掌外です、そして問題は遅発性連動地震、つまり半割れとして次の発災が懸念される状況でしょう。

 半割れという、南海トラフ連動地震は、南海地震、東南海地震、東海地震、この三つの地震が連動することを示すのですが、過去連動しているのですが連動は必ずしも同時発生を意味することではなく、数時間から数年の間隔が開くことをしめします、1944年東南海地震と1946年南海地震は2年間離れていました、二度目で倒壊する懸念も十分あります。

 本四連絡橋はその象徴的な事例として提示しましたが、南海トラフ地震ではどの程度、道路網や橋梁と埠頭などが被害を受けるかが全く未知数です、津波被害も想定されますし山岳崩壊による道路寸断、盛り土崩壊や高架崩落も懸念しなければなりません、ただ、懸念してう回路を探すばかりでは輸送計画を立てられないことも確かで、するとどうすべきか。

 MQ-9無人偵察機とAH-64D戦闘ヘリコプター、MQ-9は導入計画がまだ成立していませんしAH-64Dについては用途廃止が見込まれているために、例示でしかないのですが、まず、修復が必要な道路網は、被害の把握が必要です。しかし現段階では情報収集の手段が十分にない、という点と、広域被害を確認するための研究さえ今はまだ不十分という。

 スキャンイーグル無人機を、例えば集中投入することはどの程度できるのか、発災当日はあらゆる航空機が飛行します、救難ヘリコプターに防災ヘリコプターと消防ヘリコプターに報道ヘリコプターと輸送ヘリコプター、こうした過密空域において同じ飛行高度を飛ぶ無人機をどのように安全に運用するかという技術研究は、十分行われているのでしょか。

 情報収集能力についても未知数の段階があり、例えばスキャンイーグルは監視航空機で、長時間にわたる滞空能力はありますが、第14情報隊が善通寺駐屯地から発進させて四国山地を超え高知県沿岸部を監視させるほどの進出能力はありません、通信管制能力が100㎞、高知市はなんとか範囲内ですが南部までは中継装置をもう少し進出する必要があります。

 MUM能力構築が不可欠となる、今回AH-64D戦闘ヘリコプターを例示しましたが、この機体には無人航空機の管制能力があり、MUM能力、つまり有人航空機と無人航空機の連携能力があるのです。とにかく、無計画に物資さえ送ればよい、という災害規模ではありません、必要な物資を必要な時間帯に輸送する、広範囲が被災するため、無駄な物資はない。

 スキャンイーグルと遠距離偵察能力、特に道路運用をどの程度、限定的に通行できるのか、数時間施設科部隊による障害除去により通行可能なのか、完全寸断しているのか、そして激甚被害地域とある程度地域防災能力が維持されている地域とを把握し、救助計画を立てなければなりません、すると必要なのは道路輸送計画、通行可能な交通量と経路選定です。

 南海トラフ連動地震は、非常に大きな規模ではあるのですが、悪意はありません、これが軍事行動であれば物資集積所や橋梁だけをピンポイントで破壊する、または交通結節点というその一か所が破壊されると迂回路へ移動できない要衝などが重点的に破壊されるのですが、地震は無差別であるものの悪意はない、被害予想に絶望する必要性はないのですね。

 輸送計画は、自衛隊はもちろん、自治体と協力企業や消防救急の輸送も調整することとなります、どれだけの規模が集まれるのか、どの程度の道路網に被害が及ぶのかは、実際発災するまで不明ではあるものの、先ず情報収集を行う、そのうえで割り振る、幸いIT化された現代ですので、システムさえ構築してしまえば計画交付は短時間で実施可能でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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イギリスTPP環太平洋包括協力協定加盟へ各国11か国の合意見通し,日英次期戦闘機開発へも好影響

2023-03-30 07:01:03 | 国際・政治
■世界GDP15%の規模へ
 TPPがまた一歩前進するようです。そしてこの協定はF-2戦闘機とユーロファイター戦闘機後継機を目指す国際共同開発にも影響する可能性があるのです、

 29日のロイター通信報道によれば、イギリス政府が要請しているTPP環太平洋包括協定加入について、その加入手続き上必要とされている加盟国11か国の合意が間もなく得られる事となる見通しという。これによりイギリスはTPP12か国目の参加国となります。TPPのイギリス加入は、同時に今後本格化する日英伊の戦闘機共同開発にも好影響があります。

 TPP環太平洋包括協定、日本が主導する事になってしまった環太平洋地域での総合的な協力関係で、これは非関税協定のような経済分野は勿論、投資枠組の制度共通化や知的財産権管理、法手続き制度の共通化、紛争解決枠組などが盛り込まれており、また未発効の枠組みとしては電気通信などの共通化など、より踏み込んだ内容も交渉されているものです。

 日本が主導する事となってしまった、という背景には、これは元々アメリカのオバマ政権時代に進められた施策であり、しかしトランプ政権が成立した際、政権公約としてTPP離脱を表明、その協定には署名したものの加盟は凍結したままであり、これは同じ民主党政権であるバイデン政権でも継承され、結果的に日本の位置づけが重くなったというもの。

 イギリスのTPP加盟交渉は、イギリスジョンソン政権時代のEU欧州連合イギリス離脱とともにイギリスの巨財経済圏へのアクセス喪失に伴う代替案として提示されたもので、TPPは欧州共通市場の代替という位置づけです。イギリスは環太平洋諸国かとの問いですが、海外領土として南太平洋にピトケアン諸島という人口数十人規模の領土を有している。

 イギリスTPP加盟により、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ヴェトナム、この加盟国にイギリスが加わる、これによりTPP参加国は全世界のGDP15%に達する事となり、これはEUの25%ほどではないがアメリカも中国も参加しない経済協力としては特筆できる規模です。

 EU欧州連合のような共通安全保障枠組機能を有するものではありません、しかし単なる非関税協定よりも包括協力の名の通り深い分野での協力が盛り込まれ、これは必然的に現在進める戦闘機共同開発など防衛装備品開発に伴う知的財産権保護などの問題にも対応することとなります。そして加入国増大は、アメリカ復帰など別の波及効果も期待できるものです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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