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【京都幕間旅情】伏見稲荷大社,五穀豊穣司る宇迦之御魂大神に手を合せ日本の飢餓の歴史を思い返す

2022-06-08 20:00:02 | 写真
■方丈記に記された飢饉
 ロシア軍ウクライナ侵攻は世界に穀物危機という危険な飢餓の懸念を現実のものとさせつつあります。

 伏見稲荷大社。京都市伏見区深草藪之内町に鎮座します稲荷山を御神体とする壮大社殿が広がります。宇迦之御魂大神を祀る社殿は豊穣を司り、創建は8世紀初頭の和銅年間、豊穣の豊かさ転じて商売繁盛祈念の社殿として京阪神筆頭に広く崇敬を集める神域です。

 宇迦之御魂大神に手を合せたいところは、ここのところ穀物不足という報道が、今は食品価格と資源価格高騰という段階ではありますが、先進国日本でこうした状況ですので、そのまま日本で忘れかけられた問題、飢饉、これが世界の広範囲に及ぶ懸念があるためです。

 飢饉、日本の歴史を振り返りますと幾度も飢饉が国土を蹂躙しています。1993年の冷夏による日本のコメ騒動は社会科の教科書でも眺めなければ思い出す事も無いのかもしれませんが、その直前の1991年フィリピンのピナトゥボ火山噴火が影響しているのでしょう。

 ロシア軍ウクライナ侵攻による世界的な穀物不足は、しかしどのくらい深刻となるのでしょうか、忘れてはならないのがもう一つ、1648年のドイツ三十年戦争で、農民まで動員し総力戦を行った結果、秋になって誰も畑を耕していない事に気づき飢饉となっています。

 ドイツ三十年戦争ではドイツ人口が半減しているのですが、ウクライナもロシアも世界有数の穀倉地帯、ここに2021年のトンガにおけるトンガフンガフアパイ火山噴火が、短期間で異常な夕焼けが世界中で観測される程の火山性エアロゾルを成層圏に昇らせているのだ。

 穀倉地帯での戦争と大規模火山噴火、もう少し後者の方の影響を見極めてから開戦を考えて欲しかったものですが、開戦を決意した隣国の大統領が自国軍隊の弱さと隣国軍隊の精強な改編を見極められないのだから、歴史的な飢饉と戦争に火山の関係は見抜けない訳で。

 気象庁長期予報ではこの夏は例年よりも若干暑くなるとの予報が出ています、すると気候変動の影響もあるのでしょうが、火山の冬を皮肉にも温室効果ガスが緩和しているという事になるのか、それとも気象庁の長期予報は火山を正確に反映していないのか、気になる。

 五穀豊穣を司る伏見稲荷大社に平穏を祈りたいのは、日本の飢饉の歴史は生々しい様子まで古典文学に記されていまして、そもそもこうした歴史を再来させぬよう努力を重ねてきたものの、穀倉地帯での戦争と大規模火山噴火の重なりは如何とも不安を惹起させるため。

 天永の飢饉は西暦1111年、長承保延の飢饉が1134年から実に26年間、治承養和の飢饉が1180年から三年間、寛喜の飢饉が1230年から三年間、元徳の飢饉が1330年、応永の飢饉が1420年から翌年まで、寛正の飢饉が1459年から三年間、そしてそして、と続きます。

 方丈記。豊穣と方丈記は音韻が似ていますが、この鴨長明が著した古典文学には治承養和の飢饉について具体的な記述があるのですね。1180年から三年間という飢饉の期間には、平安朝末期の日本の統治機構が源平合戦の最中で機能不随となっていました時代でした。

 朝廷の飢饉対策は総力を挙げて祈祷を行いましたが、悲しい程に効果が在りません。日本史では祈祷は危機の際に執り行われますが、重ねて大法など寺社の法要は費用を要し、要するに増税を招く。この結果、農民の離散、土地を捨てて逃げる事例が数多あり、荒廃へ。

 鴨川などは、物乞いで生き残ろうとする膨大な飢餓難民流入となりましたが、当時の朝廷は後の鎌倉幕府や室町幕府のような救民政策は採られず、結果燦々たる情景がその河原に広がったという。古典文学には説話のように飢饉への備えの重要性をこう、説いています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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