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【防衛情報】アメリカ海兵隊ARV高度偵察車両とコットンマウス装甲偵察車,CH-53K重輸送ヘリコプター

2023-02-21 20:22:47 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 自衛隊は浮航能力を持つパトリアAMV装甲車を採用しましたが、これを起点に本格的な水陸両用装甲車の充実を考えてはどうかと考えていたところにアメリカから興味深い話題です。

 アメリカ海兵隊では将来揚陸体系への無人哨戒艇の有用性について評価試験を実施しています。この一環として海軍は2023年の時点で7隻の大型ないし中型の無人軍艦を運用試験中です。この中でアメリカ海軍は沿岸に近づきすぎる事により将来の水陸両用作戦では厳重に防護された海域での多数の乗員の乗る揚陸艦を損害から守ろうとしているのです。

 ノーマッドとレンジャー、アメリカ海軍が試験しているのはコンテナモジュール数十基を搭載可能である無人艦艇です、これは有人での運用も可能ですが、地対艦ミサイルなどによる脅威が見込まれる海域では無人運用し、船体後部のコンテナスペースに複数の無人舟艇や無人航空機の搭載区画とし、沿岸偵察や沿岸からの艦砲射撃等を目指すという。

 無人哨戒艇については、RWS遠隔操作銃搭や射程10km前後のグリフィンミサイルを搭載し、海岸線付近の敵を攻撃すると共に、AAV-7などの水陸両用車に先立ち、敵の攻撃を引き受けるという用途も想定されています。これは従来、敵の所持する地域への水陸両用作戦で見込まれたような人的損耗が最早許されない時代での両用作戦の模索ともいえます。

 アメリカ海兵隊は2022年12月23日、新しくARV高度偵察車両を導入しました。これはジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が開発している八輪式装輪装甲車で、フォースデザイン2030構想として進められる将来のアメリカ海兵隊偵察車両として具体化が進められていたもの、具体的には老朽化していたLAV-25軽装甲車を置き換えるものです。

 ARV高度偵察車両は競争試作の方式が採られており、ジェネラルダイナミクスランドシステムズ社のほかにテイストロンシステムズ社も試作車両を開発してます。今回提出された車両は同社が2017年にプライベートベンチャーにより開発していたもので、基本車体には各種センサーが搭載されていますが、30mm機関砲塔の搭載型も開発されている。

 海兵隊はARV高度偵察車両に対して水陸両用性能、特にありきたりな浮航性能ではなく外洋の波浪に耐える両用作戦能力を求めており、さらにネットワーク戦に対応し高度な防護力と輸送力を求めています。LAV-25は車幅2.5mと非常にコンパクトな設計となっていましたが、ARVは高い防護力と両用性能を有している分、車体は大型化しました。

 アメリカ海兵隊は2022年12月1日、テキストロンシステムスコーポレーション社からコットンマウス装甲偵察車試作車の納入を受けました。ARV高度偵察車両の候補の一つとして開発されているのがコットンマウスで、この年末の12月にはジェネラルダイナミクスランドシステムズ社もARV高度偵察車両の試作車を納入、評価試験が本格化します。

 コットンマウスは六輪式の装輪装甲車で車体全体を競合するジェネラルダイナミクスランドシステムズ社の試作車よりもかなり小型のものとして完成させています。小型であることはARV高度偵察車両が求める水陸両用性能のなかで特に外洋での航行能力には適したものではありませんが、コットンマウスは充分な性能をもつと自信を示している。

 ARV高度偵察車両は30mm機関砲と対戦車ミサイルの搭載能力や充分な収容能力を求めていますが、コットンマウス試作車両は12.7mm重機関銃と対戦車ミサイルを搭載したRWS遠隔操作銃塔を備えており、必要に応じてより大型のRWSを搭載可能としています、これは2023年に評価試験が行われますが選定されれば78億ドル規模の契約が見込まれている。

 アメリカ海兵隊はシコルスキー社との間でCH-53K重輸送ヘリコプターのフルレート生産承認を発表しました。CH-53K重輸送ヘリコプターは通称キングスタリオン、海兵隊に長らく主力重輸送ヘリコプターとして運用されているCH-53Eスーパースタリオンの後継機として開発され、海兵隊のほかイスラエル空軍への輸出実績を積んでいる航空機です。

 CH-53K重輸送ヘリコプターは低量量産が開始されていて、アメリカ海兵隊では強襲揚陸艦での運用試験を含め、第461海兵重輸送ヘリコプター飛行隊などに先行配備し、実戦運用への試験とともに取得費用などを調査し、また生産体制の調査などが完了したことを受け、IOT&E実運用評価が完了、これをうけてのフルレート生産へ移行することとなります。

 計画では2029年にも初度作戦能力獲得が見込まれているとのこと。海兵隊では200機のCH-53Kを250億ドルで取得する計画です。基本的にCH-53Eの改良型ではありますが、つり上げ空輸能力の強化と機内容積の拡充による車両輸送能力の強化などが大きな改良点で、シコルスキー社では日本の海上自衛隊とドイツ空軍の採用も期待しているようです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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