■機甲師団の偵察部隊
ウクライナ戦争は当初無人機と対戦車ミサイルの活躍が報じられましたが開戦十日後からは攻撃前進に戦車の不足が指摘され今や戦いは機甲部隊のぶつかり合いとなっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/ae/0ba9eb638d26e4d12982bab411abb500.jpg)
今回は通信大隊と後方支援連隊、そして偵察隊の観閲行進です。全国の師団偵察隊もせめてこの規模があれば、機動戦闘車の戦闘中隊を加えて偵察戦闘大隊としても敵の正面を突破し主陣地防御の陣容を解明したり、敵機械化部隊の戦力を推し量れるのだと考える。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/e5/5768e7ea89fe551957882b8a5ad9068b.jpg)
機甲師団の偵察隊は凄いぞ、とは言われるところですけれども、もともと1962年の師団改編までは管区隊偵察中隊にM-24,狙撃銃ではなく軽戦車ですが、装備されていました。自衛隊の弱点は偵察、いや機械化全般の遅れが偵察にも反映されていると猛省すべきでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/aa/d7fa9a9445810eaa2c2fc08fd5dcf841.jpg)
第7偵察隊、74式戦車装備の当時は戦車10両と装甲車17両を装備していました、ただ、74式戦車は流石に第7師団では退役していまして現在は90式戦車が装備されている、C4I性能の優れた10式戦車が装備されず10式戦車は第71戦車連隊から配備されています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/4a/800c9880bf97930b33212ecad6748382.jpg)
戦車を装備する偵察隊というのは第7偵察隊のみとなっていますが、そもそも偵察の任務は敵の有無を図る斥候ではなく敵の戦闘力を図る事に在るのですから、戦車は必須、近年自衛隊は偵察戦闘大隊として16式機動戦闘車の中隊を配置しているのですが、すくない。
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90式戦車を装備している現代の第7偵察隊は、偵察隊本部、第1戦闘偵察小隊、第2戦闘偵察小隊、第3戦闘偵察小隊、斥候小隊、電子偵察小隊、以上を基幹としています。なお、近年全国に改編が始っている偵察戦闘大隊は戦車大隊の機能を兼ねていて不安が残ります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/32/5a5ed9d1d2e797dd4c9890504c3c9158.jpg)
偵察戦闘大隊は戦車大隊の機能を兼ねる、この問題は偵察部隊は精鋭部隊が集められている為に、一種の騎兵部隊として認識されるのですが、偵察専従部隊と騎兵部隊の相違は、逆襲部隊や予備戦力では無い点です、戦車大隊を兼ねるのはこの混同の懸念があるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/8f/c026ef2bde804dec12075e1f5b9f5391.jpg)
ウクライナ侵攻という現実を見ますと、戦車大隊は直ぐに方針転換する事は出来ないにしても、偵察戦闘大隊から戦車大隊と偵察大隊を分離させ近接戦闘能力を強化するか、近年50tクラスの装甲戦闘車が出始めていますが、その120mm機動砲型等が必要でしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/a5/9e99aa01069d69b14e00f6ac06e6e1a4.jpg)
戦闘偵察小隊、本題に戻します。戦闘偵察小隊は小隊本部と戦車分隊、装甲普通科分隊、迫撃砲分隊、以上を基幹としていまして90式戦車2両と73式装甲車4両、81mm迫撃砲2門などを装備しています、前の編成では小隊長も戦車に乗車し戦車は3両あったのですが。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/db/364189960045b7375c0fab307ff72d1e.jpg)
斥候小隊は87式偵察警戒車を装備していまして25mm機関砲は通常の師団偵察隊や旅団偵察隊では重要な威力偵察の手段ですが、第7師団では斥候に使うのが限度と考えている模様、確かに、25mm機関砲で威力偵察を行い戦車に反撃されたらば一溜りもありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/51/06243bb3d9c8aae4e5bce324fe389737.jpg)
偵察部隊、各国は様々な編成を試みているのですが、電子情報や無人偵察機などの情報収集に当る部隊と、実際に戦闘を介して攻撃軸や敵防御態勢など戦闘能力を推し量る部隊とは分けているようにも思えています、ここで参考までにフランス軍の編成を並べてみます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/f5/fccbeb929bb827761673c5b91b0c0c3a.jpg)
フランス軍の増強装甲偵察中隊という編成は、ある意味で自衛隊の理想型ではないかと考えました。その理由はながいのですが要点を示せばフランス軍の戦車定数は230両ほどでしかない、つまり自衛隊の90式戦車よりも少ないながら欧州最強を自称できる点です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/74/a6/37908d27a95e2d65a3341c90f74208d6.jpg)
増強装甲偵察中隊は常設部隊ではなくNATO即応部隊としてバルト三国などへ前方展開している部隊です。など、と曖昧に記すのは昨今のロシア軍ウクライナ侵攻を受けポーランドに増強されルーマニアにも新編されつつあるためで、現在進行形で増強されているため。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/89/102a8db5e4d3140344d5085509b0d422.jpg)
偵察隊と増強装甲偵察中隊、自衛隊の偵察隊は中隊でも大隊でもない隊というどうとでも解釈できる名称を付与していますが、NATO即応部隊の増強装甲偵察中隊も発想としては重なるものがある。ただフランス軍の編成をみますと中隊の1.5個分という規模なのですね。
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フランス軍増強装甲偵察中隊の編成は本部小隊を含め6個小隊と2個分遣隊を基幹としている、本部小隊と2個増強戦車小隊、機械化歩兵小隊、斥候小隊、工兵小隊、そして砲兵前進観測班と戦車回収車班が分遣隊として派遣される編成、戦車は9両配備されている。
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増強戦車小隊はルクレルク戦車4両とVBL軽装甲車4両に中型トラック1両で、兵員は小隊長以下23名です。ルクレルク戦車は自動装填装置を採用している90式戦車とほぼ同世代の戦車、1994年より運用が開始、初期のデータリンク装置を標準装備している戦車です。
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ルクレルク戦車は4両で戦車分隊、VBL軽装甲車も4両で装甲分隊を編成している。VBLは自衛隊が軽装甲機動車を設計するうえでドイツのウィーゼル空挺装甲車とともに参考とした装甲車となっていまして、2ドアの軽装甲機動車という印象ですが水陸両用車でもある。
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VBL軽装甲車は7.62mm機銃搭載の車両が2両と12.7mm機銃搭載の車両が2両、戦車小隊というには戦車に加えて軽装甲車が4両装備されていますので、小隊長はある程度の経験がなければ、なにしろかたや路上で110km/hの韋駄天、片や戦車ですので運用は熟練が。
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増強戦車小隊といいますと身構えてしまいますが、実際にはフランス軍は2個分隊に分けているものの、VBL装甲車は3両で分隊を構成するような運用が前提ですので、戦車4両を一つの分隊としているために身動きがとれにくそうにしているだけにも思えるのですね。
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戦車を2両で戦車分隊として、2個戦車分隊に1個軽装甲分隊と考えれば自然に見えます、そして人員規模は23名、VBLの指揮車は2名乗車といいますのでトラックに2名乗っているとしても、人員規模ではある意味で歩兵小隊と比べますと小振りともいえるのです。
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本部小隊は戦車指揮班がルクレルク戦車1両、指揮班がVBL軽装甲車2両とプジョーP-6小型車1両、このP-6というのは車格からみても自衛隊の1/2tトラック即ちパジェロと同規模、そして通信班がVAB軽装甲車通信型、VBLは本部に装甲救急車としても1両が。
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VBL装甲車は1975年に開発されたのですが、外見は82式指揮通信車が開発される際に小松が参考としたのだろうというくらいに似ているのです、ただ、模倣かというとそうではない、82式指揮通信車は1970年代初頭に小型装甲車として開発の車両の派生型でした。
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F7警備車として小型装甲車は三菱重工が試作車を警察庁の機動隊用に供給していますので写真をごらんになった方も多いでしょうか、この小型装甲車は全国高速道路網整備を背景に普通科部隊の緊急展開を念頭に開発したもの、オイルショックで量産中止となったもの。
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小松と三菱が試作車を開発していまして、試作車は四輪駆動、車体装備に砲塔などを追加した場合に六輪駆動とできるよう車体を共通化したものですが、肝心の原型が採用されず指揮通信車のみが全国に大量配備されたもの。それにしてもVABと似ている車両なのです。
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本部小隊もう一つの分隊は輸送分隊でルノー中型トラックを3両装備している、いずれも250kgトレーラ付だ。分隊は補給班が支援し補給班はプジョーP-6小型車に乗車する。そして前述のVBL装甲救急車は衛生班に配備される、本部小隊は小隊長含め22名とのこと。
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機械化歩兵小隊はVBCI装輪装甲戦闘車4両より成る。VBCIは3両が歩兵分隊用で1両が支援車両、支援車両ですが基本的に歩兵分隊の車両とおなじで小隊本部要員3名、つまり小隊長と小隊軍曹と通信軍曹が乗っている。VBCIという装甲車は不思議でおもしろい。
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VBCIは1990年代にフランスが日本へも共同開発を打診したというもの、装輪装甲車なのですが25mm機関砲を搭載していまして、もともとはAMX-10P装甲戦闘車というホッチキス20mm機関砲を搭載した装軌式装甲車の後継として開発、重量はAMX-10Pより重い。
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VBCIをおもしろい、と表現するのは25mm機関砲塔が一人用砲塔なのです、するとルノーBT戦車のように車長が砲手を兼ねるのかとおもわれるかもしれませんが、砲塔は砲手のみ、車長は兵員室からモニターを通じ車両を指揮、装甲戦闘車の弱点は下車歩兵の不足だ。
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フランスは、車長が下車戦闘に加わることで解決した。どこにゆく車長、とおもわれるかもしれませんが、VBCIはこの点で心得ていて、FVとAPCの違いを如実に記しているという。APCアーマードパーソナルキャリアーは、要するに運ぶだけが任務、砲弾から守る。
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FVことファイターヴィーグルは、敵陣目の前まで機関砲で射撃しつつのこる十数mという段階で下車戦闘、歩兵の任務は掃討が含まれますが敵前目前まで乗車できることで、言い換えれば"当面の敵を撃破する"から"戦果拡張"の再乗車まで短時間に短縮するのが狙い。
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APCでなくFVなのだから車長は下車戦闘に際しても車両を指揮できる位置に遷移する、そんなの無理だろうといわれるかもしれませんが、マリ介入サーバル作戦など実戦でVBCIはそこそこ成功している。もっともギリシャへの輸出仕様は二人用砲塔を採用しているが。
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斥候小隊はVBL軽装甲車を8両とルノートラック1両を装備、定員は24名です。VBLは2両ごとに装甲班を編成している、自衛隊と同じだ、とおもわれるかもしれませんが、そこは装輪装甲車先進国フランス、装甲班は機能別編成となっていて様々な班が協力します。
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VBL軽装甲車は指揮班が7.62mm機銃装備の2両、そして2個班がミサイル班といいましてミラン対戦車ミサイルを装備している、ミランはレーザー誘導方式の対戦車ミサイルで、実は自衛隊も昔小銃班用に検討したことが、パンツァーファウストⅢが採用されましたが。
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ミラン対戦車ミサイルを運用する対戦車班のほかに残る一班が12.7mm機銃搭載のスカウト班です、速度が速いものですから万一の際には一目さんに退却することもできるしミラン対戦車ミサイルの射撃位置を確保できれば戦車が相手でも防御戦闘は可能という編成だ。
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工兵小隊は28名、小隊本部はVBL軽装甲車に乗車し工兵機材などを輸送するルノートラックも1両おかれている、そして工兵分隊は3個で各分隊はVBL軽装甲車により機動します、専用の装甲ドーザーや架橋装備は配備されていませんがこの部隊は偵察隊、妥当です。
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ルクレルク戦車9両、VBCI装輪装甲戦闘車4両、VBL軽装甲車20両、VAB軽装甲車6両、P-6小型車2両にトラック7両、戦車回収車1両、なかなかの規模といえまして、NATO即応部隊は大隊戦闘群規模ですので偵察部隊としては、十分以上の規模といえるでしょう。
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第7偵察隊の話題を中心にお伝えしましたが、後方支援連隊には90式戦車回収車に交じり78式戦車回収車が残り、また戦車は更新されるものの73式装甲車が残るなど、機甲師団は強力ですが、唯一の機甲師団なのですから、支援部隊強化も今後の課題といえるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ウクライナ戦争は当初無人機と対戦車ミサイルの活躍が報じられましたが開戦十日後からは攻撃前進に戦車の不足が指摘され今や戦いは機甲部隊のぶつかり合いとなっている。
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今回は通信大隊と後方支援連隊、そして偵察隊の観閲行進です。全国の師団偵察隊もせめてこの規模があれば、機動戦闘車の戦闘中隊を加えて偵察戦闘大隊としても敵の正面を突破し主陣地防御の陣容を解明したり、敵機械化部隊の戦力を推し量れるのだと考える。
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機甲師団の偵察隊は凄いぞ、とは言われるところですけれども、もともと1962年の師団改編までは管区隊偵察中隊にM-24,狙撃銃ではなく軽戦車ですが、装備されていました。自衛隊の弱点は偵察、いや機械化全般の遅れが偵察にも反映されていると猛省すべきでしょう。
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第7偵察隊、74式戦車装備の当時は戦車10両と装甲車17両を装備していました、ただ、74式戦車は流石に第7師団では退役していまして現在は90式戦車が装備されている、C4I性能の優れた10式戦車が装備されず10式戦車は第71戦車連隊から配備されています。
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戦車を装備する偵察隊というのは第7偵察隊のみとなっていますが、そもそも偵察の任務は敵の有無を図る斥候ではなく敵の戦闘力を図る事に在るのですから、戦車は必須、近年自衛隊は偵察戦闘大隊として16式機動戦闘車の中隊を配置しているのですが、すくない。
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90式戦車を装備している現代の第7偵察隊は、偵察隊本部、第1戦闘偵察小隊、第2戦闘偵察小隊、第3戦闘偵察小隊、斥候小隊、電子偵察小隊、以上を基幹としています。なお、近年全国に改編が始っている偵察戦闘大隊は戦車大隊の機能を兼ねていて不安が残ります。
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偵察戦闘大隊は戦車大隊の機能を兼ねる、この問題は偵察部隊は精鋭部隊が集められている為に、一種の騎兵部隊として認識されるのですが、偵察専従部隊と騎兵部隊の相違は、逆襲部隊や予備戦力では無い点です、戦車大隊を兼ねるのはこの混同の懸念があるのです。
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ウクライナ侵攻という現実を見ますと、戦車大隊は直ぐに方針転換する事は出来ないにしても、偵察戦闘大隊から戦車大隊と偵察大隊を分離させ近接戦闘能力を強化するか、近年50tクラスの装甲戦闘車が出始めていますが、その120mm機動砲型等が必要でしょう。
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戦闘偵察小隊、本題に戻します。戦闘偵察小隊は小隊本部と戦車分隊、装甲普通科分隊、迫撃砲分隊、以上を基幹としていまして90式戦車2両と73式装甲車4両、81mm迫撃砲2門などを装備しています、前の編成では小隊長も戦車に乗車し戦車は3両あったのですが。
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斥候小隊は87式偵察警戒車を装備していまして25mm機関砲は通常の師団偵察隊や旅団偵察隊では重要な威力偵察の手段ですが、第7師団では斥候に使うのが限度と考えている模様、確かに、25mm機関砲で威力偵察を行い戦車に反撃されたらば一溜りもありません。
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偵察部隊、各国は様々な編成を試みているのですが、電子情報や無人偵察機などの情報収集に当る部隊と、実際に戦闘を介して攻撃軸や敵防御態勢など戦闘能力を推し量る部隊とは分けているようにも思えています、ここで参考までにフランス軍の編成を並べてみます。
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フランス軍の増強装甲偵察中隊という編成は、ある意味で自衛隊の理想型ではないかと考えました。その理由はながいのですが要点を示せばフランス軍の戦車定数は230両ほどでしかない、つまり自衛隊の90式戦車よりも少ないながら欧州最強を自称できる点です。
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増強装甲偵察中隊は常設部隊ではなくNATO即応部隊としてバルト三国などへ前方展開している部隊です。など、と曖昧に記すのは昨今のロシア軍ウクライナ侵攻を受けポーランドに増強されルーマニアにも新編されつつあるためで、現在進行形で増強されているため。
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偵察隊と増強装甲偵察中隊、自衛隊の偵察隊は中隊でも大隊でもない隊というどうとでも解釈できる名称を付与していますが、NATO即応部隊の増強装甲偵察中隊も発想としては重なるものがある。ただフランス軍の編成をみますと中隊の1.5個分という規模なのですね。
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フランス軍増強装甲偵察中隊の編成は本部小隊を含め6個小隊と2個分遣隊を基幹としている、本部小隊と2個増強戦車小隊、機械化歩兵小隊、斥候小隊、工兵小隊、そして砲兵前進観測班と戦車回収車班が分遣隊として派遣される編成、戦車は9両配備されている。
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増強戦車小隊はルクレルク戦車4両とVBL軽装甲車4両に中型トラック1両で、兵員は小隊長以下23名です。ルクレルク戦車は自動装填装置を採用している90式戦車とほぼ同世代の戦車、1994年より運用が開始、初期のデータリンク装置を標準装備している戦車です。
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ルクレルク戦車は4両で戦車分隊、VBL軽装甲車も4両で装甲分隊を編成している。VBLは自衛隊が軽装甲機動車を設計するうえでドイツのウィーゼル空挺装甲車とともに参考とした装甲車となっていまして、2ドアの軽装甲機動車という印象ですが水陸両用車でもある。
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VBL軽装甲車は7.62mm機銃搭載の車両が2両と12.7mm機銃搭載の車両が2両、戦車小隊というには戦車に加えて軽装甲車が4両装備されていますので、小隊長はある程度の経験がなければ、なにしろかたや路上で110km/hの韋駄天、片や戦車ですので運用は熟練が。
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増強戦車小隊といいますと身構えてしまいますが、実際にはフランス軍は2個分隊に分けているものの、VBL装甲車は3両で分隊を構成するような運用が前提ですので、戦車4両を一つの分隊としているために身動きがとれにくそうにしているだけにも思えるのですね。
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戦車を2両で戦車分隊として、2個戦車分隊に1個軽装甲分隊と考えれば自然に見えます、そして人員規模は23名、VBLの指揮車は2名乗車といいますのでトラックに2名乗っているとしても、人員規模ではある意味で歩兵小隊と比べますと小振りともいえるのです。
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本部小隊は戦車指揮班がルクレルク戦車1両、指揮班がVBL軽装甲車2両とプジョーP-6小型車1両、このP-6というのは車格からみても自衛隊の1/2tトラック即ちパジェロと同規模、そして通信班がVAB軽装甲車通信型、VBLは本部に装甲救急車としても1両が。
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VBL装甲車は1975年に開発されたのですが、外見は82式指揮通信車が開発される際に小松が参考としたのだろうというくらいに似ているのです、ただ、模倣かというとそうではない、82式指揮通信車は1970年代初頭に小型装甲車として開発の車両の派生型でした。
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F7警備車として小型装甲車は三菱重工が試作車を警察庁の機動隊用に供給していますので写真をごらんになった方も多いでしょうか、この小型装甲車は全国高速道路網整備を背景に普通科部隊の緊急展開を念頭に開発したもの、オイルショックで量産中止となったもの。
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小松と三菱が試作車を開発していまして、試作車は四輪駆動、車体装備に砲塔などを追加した場合に六輪駆動とできるよう車体を共通化したものですが、肝心の原型が採用されず指揮通信車のみが全国に大量配備されたもの。それにしてもVABと似ている車両なのです。
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本部小隊もう一つの分隊は輸送分隊でルノー中型トラックを3両装備している、いずれも250kgトレーラ付だ。分隊は補給班が支援し補給班はプジョーP-6小型車に乗車する。そして前述のVBL装甲救急車は衛生班に配備される、本部小隊は小隊長含め22名とのこと。
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機械化歩兵小隊はVBCI装輪装甲戦闘車4両より成る。VBCIは3両が歩兵分隊用で1両が支援車両、支援車両ですが基本的に歩兵分隊の車両とおなじで小隊本部要員3名、つまり小隊長と小隊軍曹と通信軍曹が乗っている。VBCIという装甲車は不思議でおもしろい。
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VBCIは1990年代にフランスが日本へも共同開発を打診したというもの、装輪装甲車なのですが25mm機関砲を搭載していまして、もともとはAMX-10P装甲戦闘車というホッチキス20mm機関砲を搭載した装軌式装甲車の後継として開発、重量はAMX-10Pより重い。
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VBCIをおもしろい、と表現するのは25mm機関砲塔が一人用砲塔なのです、するとルノーBT戦車のように車長が砲手を兼ねるのかとおもわれるかもしれませんが、砲塔は砲手のみ、車長は兵員室からモニターを通じ車両を指揮、装甲戦闘車の弱点は下車歩兵の不足だ。
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フランスは、車長が下車戦闘に加わることで解決した。どこにゆく車長、とおもわれるかもしれませんが、VBCIはこの点で心得ていて、FVとAPCの違いを如実に記しているという。APCアーマードパーソナルキャリアーは、要するに運ぶだけが任務、砲弾から守る。
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FVことファイターヴィーグルは、敵陣目の前まで機関砲で射撃しつつのこる十数mという段階で下車戦闘、歩兵の任務は掃討が含まれますが敵前目前まで乗車できることで、言い換えれば"当面の敵を撃破する"から"戦果拡張"の再乗車まで短時間に短縮するのが狙い。
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APCでなくFVなのだから車長は下車戦闘に際しても車両を指揮できる位置に遷移する、そんなの無理だろうといわれるかもしれませんが、マリ介入サーバル作戦など実戦でVBCIはそこそこ成功している。もっともギリシャへの輸出仕様は二人用砲塔を採用しているが。
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斥候小隊はVBL軽装甲車を8両とルノートラック1両を装備、定員は24名です。VBLは2両ごとに装甲班を編成している、自衛隊と同じだ、とおもわれるかもしれませんが、そこは装輪装甲車先進国フランス、装甲班は機能別編成となっていて様々な班が協力します。
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VBL軽装甲車は指揮班が7.62mm機銃装備の2両、そして2個班がミサイル班といいましてミラン対戦車ミサイルを装備している、ミランはレーザー誘導方式の対戦車ミサイルで、実は自衛隊も昔小銃班用に検討したことが、パンツァーファウストⅢが採用されましたが。
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ミラン対戦車ミサイルを運用する対戦車班のほかに残る一班が12.7mm機銃搭載のスカウト班です、速度が速いものですから万一の際には一目さんに退却することもできるしミラン対戦車ミサイルの射撃位置を確保できれば戦車が相手でも防御戦闘は可能という編成だ。
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工兵小隊は28名、小隊本部はVBL軽装甲車に乗車し工兵機材などを輸送するルノートラックも1両おかれている、そして工兵分隊は3個で各分隊はVBL軽装甲車により機動します、専用の装甲ドーザーや架橋装備は配備されていませんがこの部隊は偵察隊、妥当です。
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ルクレルク戦車9両、VBCI装輪装甲戦闘車4両、VBL軽装甲車20両、VAB軽装甲車6両、P-6小型車2両にトラック7両、戦車回収車1両、なかなかの規模といえまして、NATO即応部隊は大隊戦闘群規模ですので偵察部隊としては、十分以上の規模といえるでしょう。
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第7偵察隊の話題を中心にお伝えしましたが、後方支援連隊には90式戦車回収車に交じり78式戦車回収車が残り、また戦車は更新されるものの73式装甲車が残るなど、機甲師団は強力ですが、唯一の機甲師団なのですから、支援部隊強化も今後の課題といえるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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