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【京都幕間旅情】相国寺,相国元々のその意味と足利直義と夢窓疎石の対談"夢中問答集"の世界が至った禅の世界

2023-07-12 20:22:42 | 写真
■春屋妙葩と夢窓疎石
 学校教育の日本史では小国いという名前は出てきてもそもそもそれがどういった意味なのかまでは踏み込まない故にほう、と実際の拝観の際には驚きが有る。

 相国寺の相国とは、そもそも論となるのですが足利義満は禅寺を望んだもののその名を悩んだという、その際に禅の師である春屋妙葩は、大陸では左大臣に当たる官職を相国とする故に相国寺としてはどうか、と提案し受け入れられた実に政治的な寺院なのでした。

 夢窓疎石を開山に招いた相国寺、ここを散策の際に拝観しました背景には地下鉄今出川駅からの近さを挙げましたが、そしてもう一つ、ものすごい日本史における焦点の一つを為している寺院であり、伽藍も見事なのに対して何故か修学旅行生も観光客も少ない。

 金閣寺や銀閣寺に観光客や修学旅行生は行ってしまうよ、こう返されるかもしれないけれども、実は鹿苑寺と慈照寺、つまり金閣寺と銀閣寺はここ相国寺の塔頭寺院の一つでしかなく、落ち着いて伽藍の大きさを見れば相国寺法堂の方がはるかに巨大だと気付く。

 春屋妙葩、足利義満が禅の師と仰ぐ高僧が相国寺の名を提案したのは前述の通り、開祖に足利義満は春屋妙葩を望んだということですが春屋妙葩自身がその師たる夢窓疎石の開山を望み、二代住職ならば引き受けるとし、寺院は造営は始まる、建設は意外に長引く。

 禅寺がここまで大きくなるというのは少し不思議だと考える背景はまさにここにあり、しかし伽藍を大きくすることで長引いた工期により、実は春屋妙葩はこの相国寺の完成を見ることなくこの世を去っていますが、その壮大さ故、今日にも活況を残すのでしょう。

 禅寺を拝観しますと驚くほどに夢窓疎石の名と親しむことになりますが、夢窓疎石は臨済宗の禅に天台宗や真言宗と親和を重んじた新しい禅宗の広がりを試み、これが調和を生むという事から武家にも公家にも崇敬を集め、一種日本の価値観の一つを育みます。

 夢中問答集という足利尊氏の実弟足利直義と夢窓疎石の対談集などが記されていまして、もっとも足利直義は最後、非常に残念なこととはなりますがこうした中間となる人物を介して、いわば権力者の価値観へも影響を及ぼしていたのが、中世の日本でした。

 無畏堂とも呼ばれる法堂、相国寺は幾度も火災に見舞われ、実は最初の相国時は完工から三年ほどで失火により全焼、足利義満もその火災の様子を目の当たりにしており、実に落胆した様子が当時の伝承に伝わるのですが、改めて七重塔などを含め再建します。

 蟠龍図という龍が天井から見守る現在の法堂は慶長10年こと西暦1605年に豊臣秀頼が寄進したもので、なるほど花の御所とそして御霊神社にほど近く、いや中世の時代には寺域が隣接していたという。故にその地で勃発した応仁の乱で最初に焼け落ちている。

 鳴き龍という、堂宇の中心で柏手を叩けば幾度か共鳴するという法堂の天井絵は狩野光信の手によるものなのですが、同時にここは釈迦如来坐像と脇持の阿難尊者像という運慶彫像の仏像が奉じられた本堂であり、実はいま仏殿や本堂がないことを示しています。

 三門と仏殿は応仁の乱において焼失してしまい、とうとう再建されずに今に至るという。それではいつ再建するのか、と問われますと明治の廃仏毀釈に際して寺域が格段に狭くなり、同志社大学や同志社女子、一時は京都第一高女や鴨沂高校も跡地に建設されている。

 仏殿はいまの法堂よりもはるかに大きく、また堂々たる山門が御所の北辺に在ったことを再建することが叶えば浪漫を感じるものなのですが、それは同志社大学が全部京田辺に移転でもしなければ不可能という、こうして変わりゆく京都を見る寺院なのでしょうね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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