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【京都幕間旅情】藤森神社,帝国陸軍第十六師団本営跡地隣は流鏑馬神事と神功皇后由来の社殿

2020-06-03 20:04:06 | 写真
■菖蒲の節句は尚武の願い
 京阪線からJR京都駅へいつもの東福寺駅よりも宇治寄りから乗り換えるとの言い分で少し散策してみました。

 藤森神社、京都の南は伏見区深草、伏見稲荷大社の南、京阪線からJR奈良線へと歩みを進めると共に山並みが程近い風景にふと木々が宅地に茂る涼やかな一角に気付かされます。ここは藤森天王社ともいいまして、紫陽花園広がり菖蒲の節句として有名な神域が広がる。

 神功皇后摂政年間の西暦203年に創建を遡る事が出来るこの社殿は、本殿に素盞嗚命に別雷命と日本武命に応神天皇と神功皇后そして武内宿禰とに仁徳天皇を祀り、東殿は天武天皇と舎人親王崇道尽敬皇帝、西殿は崇道天皇と伊予親王に井上内親王を祀られています。

 神功皇后が有名な三韓征伐の勝利を経て凱旋の軍旗を打ち立て、神剣宝塔を収め戦死者を祀った、藤森は歴史を遡ればこうした由来があります。これが創建の神功皇后摂政年間の西暦203年に当るとされ、しかし創建当初の社殿は現在の伏見稲荷大社近くに在ったとも。

 藤尾社と創建当初は冠せられていましたが永享年間の1438年に後花園天皇に勅令より室町将軍足利義教が伏見稲荷大社を創建しますと、藤尾社は藤森へ遷座し、藤森神社となる。ただ此処には当時真幡寸神社があり、併せて遷座、梅園で名高い城南宮となったという。

 本殿に当る中殿と西殿に東殿と並ぶ社殿は永享年間の1438年に遷座した当時の建物が維持されており、合祀を経て神域を広めてきました。中殿は正徳年間の1712年に中御門天皇より下賜された宮中内侍所の移築社殿であり、現存する賢所としては日本最古ともいう。

 弓兵政所とも呼ばれる神社は毎年流鏑馬神事を奉納しています、その為に鳥居を本殿へ歩みを進めますと成程流鏑馬に相応しい参道が広がります。この流鏑馬神事は三韓征伐の武勲を讃える神事であると共に、もう一つの戦勝祈願、早良親王戦勝祈願が由来といわれる。

 光仁天皇治世下の天応年間781年、蒙古軍の日本侵攻という危急があり、早良親王を総大将として討伐軍を送った際の戦勝祈願が行われたという。ただ、これは有名なチンギス-ハーンの出生は1162年故に所謂文永弘安の役とは前、少々歴史上の些事となった事例ですが。

 蒙古塚というものが参道に在りまして、この際の戦勝を祀ったとも言いますが、天応年間は平安遷都前の長岡京遷都時代であり、天武天皇曾孫による氷上川継の乱等騒擾もあり、紫糸威鎧阿古陀形二十八間筋兜大袖付等武具も奉納され、重要文化財に指定されています。

 尚武の地、菖蒲の節句として有名な社殿ではあるのですがこれが転じて尚武の地ともなり、また流鏑馬神事の駆け馬が躍動と併せ昨今では競馬関係者の崇敬と競馬愛好家の祈念を集めていますが、一世紀前から終戦までは騎兵部隊の戦勝祈念にと、崇敬を集めていました。

 陸軍第十六師団、垣師団としまして、この本営は深草にあったのですね。そして藤森神社の神域はその周りが師団駐屯地となっていまして、師団司令部庁舎は今日でも現存し、赤レンガの瀟洒で荘厳な風情と共に学校法人聖母女学院本館として活用されていたりします。

 第十六師団は1905年に創設されまして、これは日露戦争と共に前陸軍師団が満州へ展開し、本土防衛が空き家同然となった為の新設四個師団として急遽京都に創設されました。一時大阪へ移駐しましたが1908年に深草移駐、京都師管区を衛戍地として終戦まで在りました。

 師団は京都歩兵第九連隊、福知山歩兵第二〇連隊、久居歩兵第三三連隊、野砲兵第二二連隊、捜索第一六連隊等を基幹とし、日中戦争南京攻略戦や徐州大会戦と武漢作戦、戦勝を重ねまして復員、太平洋戦争ではマニラ攻略に活躍しましたが藤森神社の御利益もここまで、レイテ決戦に玉砕しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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