■第82空挺師団首都近傍に駐屯
本日6月4日は天安門事件追悼の日であり平和的デモを人民解放軍が武力鎮圧した31年目の日です。しかし今驚く事にアメリカで危機が広がっています。
ワシントンDCでの大規模デモ及び便乗しての破壊行為に対し、トランプ大統領は治安維持のための連邦軍派遣を示唆しました。実のところ今年に入りコロナウィルスCOVID-19感染拡大を除けば一番驚かされる報道でした。こう言いますのもアメリカの陸軍機構は現役の連邦軍と各州知事下、予備役の州兵陸軍が在り、治安維持は州兵の管轄である為です。
ミネソタ州ミネアポリスにて2020年5月25日、ジョージフロイド氏が警察官に拘束された際に過剰な暴力が振るわれ公衆の面前で死亡した事件を契機として暴動が、ミネアポリス警察メダリアアラドンド警察署長の事件を煽るともとれる発言などから抗議集会が5月27日にロサンゼルス、5月28日オハイオ州コロンバス、と瞬く間に全米に飛び火しました。
ジョージフロイド暴動と呼ばれる一連の騒擾は、オハイオ州コロンバスとコロラド州デンバーでの抗議集会に警察が非致死性を大量使用し制圧を試みた事で暴動に発展し、5月29日にはワシントンDCにて発生の暴動がモールに迫った事からトランプ大統領がホワイトハウス地下退避シェルターへ避難する一幕があり、ここから連邦軍投入が示唆されてゆく。
トランプ大統領の各州知事への州兵動員提案。トランプ大統領は6月2日、州兵動員による事態早期収拾を図る提案に従わなかったとしてニューヨーク州やミネソタ州など各州州知事を非難しました。ニューヨーク州ではクオモ州知事が州兵動員に反対しており、しかし州知事により州兵1万3000名が待機体制にあると、ニューヨーク市長が発言しています。
第82空挺師団。トランプ大統領の発言と共にワシントンDC近傍の連邦軍陸軍部隊として一番最初に思い浮かんだのは、ノースカロライナ州フォートブラッグに師団本営を置く空挺師団です。今年一月に千葉県で第1空挺団と共に降下訓練始めへ参加した部隊ですね。大統領は数千名を派遣する指針を示しましたので隷下旅団一個丸ごと、という規模となる。
天安門事件のアメリカ版となりかねない為に出動は有り得るのか。ワシントンDCの治安維持に空挺師団、それも世界有数の実戦経験を有する空挺部隊を参加させるなど、ここはエルサルバドルでもパナマでも天安門広場でもありません。しかしワシントンDC付近には既に連邦軍が集結しており、これを巡りエスパー国防長官との軋轢も報じられています。
エスパー国防長官とトランプ大統領の軋轢は本日午後に報道各社が報道しましたが、これはワシントンDC近郊に集結した連邦軍200名を基地へ帰営するようエスパー国防長官が命令、これにトランプ大統領が撤回を要求したという一幕があり、連邦軍を動員してでも暴動鎮圧を早期に実現させたい大統領と、連邦軍投入に慎重な長官の軋轢と云えましょう。
さて。日本に暮らしていますと、連邦軍と州兵という制度について、少し馴染みが無い為に理解できないかもしれません。また、州兵というとどの程度の装備を持っているのか、また、連邦軍を投入する事がなぜそこまで国防長官を含め慎重なのか、という点が分り難いのです。叛乱法を適用する事で制度上、連邦軍の治安出動は不可能ではないのですが。
アメリカ陸軍の戦闘部隊基本単位は大中小の旅団戦闘団となっています。M-1A2戦車等を中心に重戦力で高い打撃力を誇る機甲旅団戦闘団、装輪装甲車体系により機動力を高めたストライカー旅団戦闘団、ハンヴィー高機動車と105mm野砲により軽量ながら機動力を最大限まで高めた歩兵旅団戦闘団、これらを組み合わせて師団と構成する、という運用です。
連邦軍には10個機甲旅団戦闘団、7個ストライカー旅団戦闘団、14個歩兵旅団戦闘団、と配備されています。歩兵旅団戦闘団はヘリコプターの集中運用部隊である航空旅団と連携する事でAH-64DやUH-60Lを駆使して空中機動作戦に資するとともに、空挺部隊などもこの歩兵旅団戦闘団の範疇に含まれます。この31個旅団は現役で、即応体制を執っている。
州兵。ナショナルガードと称される部隊は連邦軍とは別に全米50州の州知事指揮下にありまして、国家非常事態宣言などの状況に際しては大統領の指揮下に含める事が可能なのですが、基本的に予備役の、年間50日間をパートタイムで訓練し、装備や戦術能力を維持している部隊があります。そして州兵の基本単位も上記の旅団戦闘団と同じものなのですね。
州兵の旅団戦闘団は5個機甲旅団戦闘団と2個ストライカー旅団戦闘団に20個歩兵旅団戦闘団、以上27個旅団です。全米50州と旅団数が合いませんが、これは全米各州で人口が違う為で、州人口の多いカリフォルニア州では1万3846名、テキサス州兵陸軍などは1万7270名もいますが、ニューハンプシャー州は1625名。ワイオミング州は1508名です。
ミネソタ州兵、今回の警察官による暴力致死行為が行われたミネソタ州をみますと州兵陸軍1万0927名、そして州兵空軍が2305名となっています。ミネソタ州ローズマウントには州兵第34歩兵師団司令部が置かれています。この第34歩兵師団は隷下に第1機甲旅団戦闘団、第2歩兵旅団戦闘団、第32歩兵旅団戦闘団、第35航空旅団などを有している。
第34歩兵師団を視ますと、M-1A2戦車を87両とM-2A3装甲戦闘車を152両も有する機甲旅団戦闘団がありますので、これは自衛隊の中部方面隊よりも強力にみえてくるものですが実は全てがミネソタ州兵ではなく、師団はミネソタ州兵にウィスコンシン州兵とアイオワ州兵及びアイダホ州兵から編成されていまして、ミネソタ州兵はこの一部、という。
ミネソタ州兵はこのうち、第1機甲旅団戦闘団と第35航空旅団、となっています。他方でこの他に州兵空軍が第148戦闘航空旅団としてF-16C戦闘機2個飛行隊を有し、第133空輸航空団としてC-130H輸送機等を運用しています。暴徒をM-1A2戦車で、しかしそういう訳でもなく、現実的にはMOOTW任務対処訓練に基づく治安維持任務を行うでしょう。
MOOTW任務、非戦争軍事作戦とも呼ばれ、例えばPKO国際平和協力任務等において現地での騒乱事案が発生した際に致死性武器を使用せず、つまり銃器を使わず、防具装着し盾等により暴動の放火や略奪行為を抑止する任務等が挙げられます。ただ、騒擾は一部で基本はデモです。連邦軍投入、第二の天安門事件となりかねず、慎重であるべきでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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本日6月4日は天安門事件追悼の日であり平和的デモを人民解放軍が武力鎮圧した31年目の日です。しかし今驚く事にアメリカで危機が広がっています。
ワシントンDCでの大規模デモ及び便乗しての破壊行為に対し、トランプ大統領は治安維持のための連邦軍派遣を示唆しました。実のところ今年に入りコロナウィルスCOVID-19感染拡大を除けば一番驚かされる報道でした。こう言いますのもアメリカの陸軍機構は現役の連邦軍と各州知事下、予備役の州兵陸軍が在り、治安維持は州兵の管轄である為です。
ミネソタ州ミネアポリスにて2020年5月25日、ジョージフロイド氏が警察官に拘束された際に過剰な暴力が振るわれ公衆の面前で死亡した事件を契機として暴動が、ミネアポリス警察メダリアアラドンド警察署長の事件を煽るともとれる発言などから抗議集会が5月27日にロサンゼルス、5月28日オハイオ州コロンバス、と瞬く間に全米に飛び火しました。
ジョージフロイド暴動と呼ばれる一連の騒擾は、オハイオ州コロンバスとコロラド州デンバーでの抗議集会に警察が非致死性を大量使用し制圧を試みた事で暴動に発展し、5月29日にはワシントンDCにて発生の暴動がモールに迫った事からトランプ大統領がホワイトハウス地下退避シェルターへ避難する一幕があり、ここから連邦軍投入が示唆されてゆく。
トランプ大統領の各州知事への州兵動員提案。トランプ大統領は6月2日、州兵動員による事態早期収拾を図る提案に従わなかったとしてニューヨーク州やミネソタ州など各州州知事を非難しました。ニューヨーク州ではクオモ州知事が州兵動員に反対しており、しかし州知事により州兵1万3000名が待機体制にあると、ニューヨーク市長が発言しています。
第82空挺師団。トランプ大統領の発言と共にワシントンDC近傍の連邦軍陸軍部隊として一番最初に思い浮かんだのは、ノースカロライナ州フォートブラッグに師団本営を置く空挺師団です。今年一月に千葉県で第1空挺団と共に降下訓練始めへ参加した部隊ですね。大統領は数千名を派遣する指針を示しましたので隷下旅団一個丸ごと、という規模となる。
天安門事件のアメリカ版となりかねない為に出動は有り得るのか。ワシントンDCの治安維持に空挺師団、それも世界有数の実戦経験を有する空挺部隊を参加させるなど、ここはエルサルバドルでもパナマでも天安門広場でもありません。しかしワシントンDC付近には既に連邦軍が集結しており、これを巡りエスパー国防長官との軋轢も報じられています。
エスパー国防長官とトランプ大統領の軋轢は本日午後に報道各社が報道しましたが、これはワシントンDC近郊に集結した連邦軍200名を基地へ帰営するようエスパー国防長官が命令、これにトランプ大統領が撤回を要求したという一幕があり、連邦軍を動員してでも暴動鎮圧を早期に実現させたい大統領と、連邦軍投入に慎重な長官の軋轢と云えましょう。
さて。日本に暮らしていますと、連邦軍と州兵という制度について、少し馴染みが無い為に理解できないかもしれません。また、州兵というとどの程度の装備を持っているのか、また、連邦軍を投入する事がなぜそこまで国防長官を含め慎重なのか、という点が分り難いのです。叛乱法を適用する事で制度上、連邦軍の治安出動は不可能ではないのですが。
アメリカ陸軍の戦闘部隊基本単位は大中小の旅団戦闘団となっています。M-1A2戦車等を中心に重戦力で高い打撃力を誇る機甲旅団戦闘団、装輪装甲車体系により機動力を高めたストライカー旅団戦闘団、ハンヴィー高機動車と105mm野砲により軽量ながら機動力を最大限まで高めた歩兵旅団戦闘団、これらを組み合わせて師団と構成する、という運用です。
連邦軍には10個機甲旅団戦闘団、7個ストライカー旅団戦闘団、14個歩兵旅団戦闘団、と配備されています。歩兵旅団戦闘団はヘリコプターの集中運用部隊である航空旅団と連携する事でAH-64DやUH-60Lを駆使して空中機動作戦に資するとともに、空挺部隊などもこの歩兵旅団戦闘団の範疇に含まれます。この31個旅団は現役で、即応体制を執っている。
州兵。ナショナルガードと称される部隊は連邦軍とは別に全米50州の州知事指揮下にありまして、国家非常事態宣言などの状況に際しては大統領の指揮下に含める事が可能なのですが、基本的に予備役の、年間50日間をパートタイムで訓練し、装備や戦術能力を維持している部隊があります。そして州兵の基本単位も上記の旅団戦闘団と同じものなのですね。
州兵の旅団戦闘団は5個機甲旅団戦闘団と2個ストライカー旅団戦闘団に20個歩兵旅団戦闘団、以上27個旅団です。全米50州と旅団数が合いませんが、これは全米各州で人口が違う為で、州人口の多いカリフォルニア州では1万3846名、テキサス州兵陸軍などは1万7270名もいますが、ニューハンプシャー州は1625名。ワイオミング州は1508名です。
ミネソタ州兵、今回の警察官による暴力致死行為が行われたミネソタ州をみますと州兵陸軍1万0927名、そして州兵空軍が2305名となっています。ミネソタ州ローズマウントには州兵第34歩兵師団司令部が置かれています。この第34歩兵師団は隷下に第1機甲旅団戦闘団、第2歩兵旅団戦闘団、第32歩兵旅団戦闘団、第35航空旅団などを有している。
第34歩兵師団を視ますと、M-1A2戦車を87両とM-2A3装甲戦闘車を152両も有する機甲旅団戦闘団がありますので、これは自衛隊の中部方面隊よりも強力にみえてくるものですが実は全てがミネソタ州兵ではなく、師団はミネソタ州兵にウィスコンシン州兵とアイオワ州兵及びアイダホ州兵から編成されていまして、ミネソタ州兵はこの一部、という。
ミネソタ州兵はこのうち、第1機甲旅団戦闘団と第35航空旅団、となっています。他方でこの他に州兵空軍が第148戦闘航空旅団としてF-16C戦闘機2個飛行隊を有し、第133空輸航空団としてC-130H輸送機等を運用しています。暴徒をM-1A2戦車で、しかしそういう訳でもなく、現実的にはMOOTW任務対処訓練に基づく治安維持任務を行うでしょう。
MOOTW任務、非戦争軍事作戦とも呼ばれ、例えばPKO国際平和協力任務等において現地での騒乱事案が発生した際に致死性武器を使用せず、つまり銃器を使わず、防具装着し盾等により暴動の放火や略奪行為を抑止する任務等が挙げられます。ただ、騒擾は一部で基本はデモです。連邦軍投入、第二の天安門事件となりかねず、慎重であるべきでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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