北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

横須賀地方隊伊勢湾展示訓練2010 参加艦艇名古屋港へ入港

2010-08-21 01:57:33 | 海上自衛隊 催事

◆伊勢湾マリンフェスタ速報!名古屋港の自衛艦

 金曜日の正午過ぎ、名古屋港ガーデン埠頭、四日市港霞ヶ浦地区へ伊勢湾展示訓練参加部隊が続々と入港しました。

Img_6528  イージス艦こんごう。海上自衛隊初のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦として1993年に就役した護衛艦で、こんごう、就役を以て海上自衛隊の艦隊防空能力は飛躍的に向上する事となりました。満載排水量は9500㌧と、しらね型の7200㌧を大きく上回っており、城郭を想わせる艦橋にはイージスシステムの能力を最大限発揮するSPY-1レーダーが備えられています。

Img_6598  砕氷艦しらせ、掃海母艦うらが。砕氷艦しらせ、は先代の初代しらせ、後継艦として建造された砕氷艦で、南極観測支援任務を筆頭に任務に当たっています。掃海母艦うらが、は掃海艇に対する補給や支援、掃海ヘリコプターの運用支援から機雷敷設に当たる掃海隊群直轄艦です。

Img_6572  護衛艦しらゆき。先日ネームシップが除籍された、はつゆき型護衛艦の二番艦で、満載排水量4000㌧、対空・対水上・対潜の各種装備を搭載し、哨戒ヘリコプターの運用能力を備えたガスタービン推進艦ですが、遠からず一番艦に続き自衛艦旗を返納することとなるのでしょうか。しらゆき、だけ少し離れた場所に停泊していました。

Img_6583  この日は夕刻には一際風が強くなり、艦尾に掲げられた自衛艦旗が風に棚引いていました、こういう写真が良いですね。本日の伊勢湾展示訓練では、しらせ、を除く三隻が参加、四日市港霞ヶ浦地区に入港した艦船とともに伊勢湾の中央部において各種訓練を展示する事となっています。

Img_6557  名古屋港ポートタワーと砕氷艦しらせ、掃海母艦うらが。明日は電灯艦飾が行われる予定で、普段は1700時に閉館となるポートタワーは夏休み期間という事もあり2100時まで開かれているとのことです。展望台の入場料は300円、俯瞰風景に電灯艦飾、というのもなかなか見られない光景といえるかもしれません。

HARUNA

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平成二十二年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報4

2010-08-20 23:23:27 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

猛暑熱暑酷暑といわれた今年の夏です が、夕方には少しだけ不快度指数が下がり始めた、という印象でしょうか。そんな今週末は航空祭と展示訓練が行われます。

Img_4649 今週末ですが、ブルーインパルス50周年松島基地航空祭、在日米軍横田基地日米フレンドシップデイ2010、横須賀地方隊展示訓練伊勢湾マリンフェスタ2010が行われるほか、下関港で護衛艦いそゆき一般公開、宮崎県細島港では来週中にヘリコプター護衛艦ひゅうが、が一般公開されることとなっています。

Img_34121 宮城県松島基地は教育部隊である第4航空団が展開している基地であるとともに、ブルーインパルスの拠点基地でもあります。東北地方にある松島基地は冷戦時代、ソ連軍戦闘爆撃機の戦闘行動半径外にある基地という位置づけから、三沢基地や千歳基地が航空攻撃にて破壊された場合にこの松島基地を拠点として北海道上空の航空優勢を確保するという運用を想定していた基地。

Img_4611.超音速のT2練習機が配備されていた時代にはT2を補助戦闘機として運用するという構想があったことも思い出します。その第4航空団には練習機として複座型のF2Bも配備されていて、T4練習機とともに迫力の機動飛行展示を期待したいです。そしてなによりも今年はブルーインパルス創設50周年。

Img_0431 浜松基地で空中戦を展開するための機動飛行研究班として発足したのがブルーインパルス、F86戦闘機を運用していたブルーインパルスはその後に超音速のT2練習機、そして現在のT4練習機と機種を換え、現在では航空自衛隊の顔として数多くの行事に参加する部隊となっています。過去には事故という厳しい記憶とともに今日に至ります。

Img_4598 ブルーインパルスの高い飛行能力というのは、言い換えれば航空自衛隊のパイロットとして選抜された要員の能力の高さと、こうした部隊運用を継続的に行う組織力、確実な飛行展示を支える地上要員の練度の高さ、そして極度の激しい飛行展示に使用される国産機の高い完成度を示すものとなっています。

Img_4497  結果、ブルーインパルスの飛行展示は広報としての位置づけとともに日本の防衛力の高さを諸外国に見せつけるという意味合いもあるわけです。実戦で培ったという能力ではなく、こうした形で見せつける抑止力というのは、日本らしい抑止力の一つの形といえるのではないでしょうか。

Img_2994 そんな松島基地へは、JR仙石線矢本駅かた徒歩15分。仙石線の輸送能力には限界があるので、ちょっとだけ不安ものこるのですが、鉄道ということで確実な交通手段なのかな、と。このほか駐車場も一定数、基地の外にもうけられていてこちらは0600から開放されるとのことです。かなり渋滞するので、鉄道の方が安全策なのかもしれませんね。駐車場から基地まではシャトルバスが運行されるとのことです。

Img_8933  横田基地日米友好祭フレンドシップデイ2010、今年も土曜日と日曜日に行われます。昨年の横田フレンドシップデイは嘉手納基地に前方展開していたF22戦闘機が二機、地上展示の為に参加しましたので来場者もF22に併せて22万(多分数字は無関係)とものすごい動員数を誇りました。

Img_8618  この分で行くとF35が日本で公開されるときには35万、・・・、いや海兵隊に配備されて岩国でF35が飛行展示するのでしたら35万というのもあながち冗談ではないか、・・・。閑話休題。昨年はF22に加えて在韓米軍烏山空軍基地かたU2偵察機が飛来しまして、上空を航過飛行を行い、会場を沸かせました。

Img_7455 F22戦闘機が二機も展示されるとあって、完全武装の空軍兵士が自動小銃を構え、緊張感が一瞬も途切れることがない地上展示でしたが、22万という膨大な来場者にたいして横田基地が余りにも広いことから人口密度はF22正面をのぞいてそこまで混雑したものではありませんでした。飛行展示もC130輸送機からの空挺降下やUH1の救難飛行等が行われた程度で航空祭のように最前列が最前線、という緊迫した状況もありませんでしたし、ね。

Img_9674 横田基地ですが、とにかく広いです。地上展示機がおかれている会場までも距離があるのですが、地上展示機がおかれているエリアも広い場所でして、そこにズラリと各種航空機が展示されます。米本土、グアム、ハワイ、韓国と所属する航空基地の広さから米軍の規模について深く考えさせられるとともに、A10攻撃機やF16戦闘機からC5戦略輸送機など並び、航空自衛隊、海上自衛隊、陸上自衛隊の機体も並びます。

Img_7644 最終日には花火打ち上げも予定されており、夜の空軍基地という非日常風景を花火が演出する、なかなかみれるものではありません。F22が飛来するのか、気になるところですが、小さな三脚とカメラ、三脚がなければ地面においた鞄の上で動かないようにカメラを固定してセルフタイマーで撮影すれば、意外と良く夜景写真が撮影できるでしょう。

Img_9242 入場はお早めに、午前中か午後一のあたりまでにいかないと地上展示機がみれないことがあります。エプロン地区の航空機展示地区は夜間、立ち入り禁止となりまして模擬店が並ぶ区画から撮影することとなります。天候によっては早めに地上展示機地区が閉鎖されることもあるので要注意ですね。一方で照り返しが厳しい基地内では熱中症にも要注意です。

Img_9409 米軍基地といえば、アメリカ風の食事で、横田基地ピザ、横田友好祭ステーキ、色水とは、というようなキーワードでこちらのブログへ来られる方も多いようです。ピザはかなり大きなものが12ドル、基地内では円高円安に関わりなく1ドル100円換算されているので1200円なのですが、無数に販売されています。かなりの行列なのに完売、という言葉がないのが米軍なのでしょうか、シンプルです。

Img_8417 ピザ、サラミとチーズがピザソースの敷かれたパイ生地の上でこんがりとしている。米軍ピザに慣れるといかにCMで流されているピザが邪道か、と思わされるのですが、横田基地のピザを基地見学の第一目的として、朝一に足を運んでたんまり購入してホクホク顔で帰路に就かれる方もいらっしゃいます。

Img_19080  そして米軍ステーキもボリュームがあって、ちょっとプラスチックのナイフとフォークでは切るのに厳しいこともありますが、おいしいです。・・・、が焼き手には得手不得手があり、堅すぎるものも焦げすぎもありますので、幾つかあるステーキ店を厳選して選ぶ必要があります。

Img_18956  色水とはスポーツドリンクのゲータレート。ゲータレートは日本でも自販機やコンビニでも売られているのですが、ほかの多くのスポーツドリンクと同じ薄い乳白色の飲料です。しかし、米軍基地で売られているゲータレードには色が付いているのですね、どうも日本では使えない着色料でもつかわれているようで、ケネディ大統領の時代以来あの食品に厳しいアメリカで売られているので問題はないのでしょうが、ちょっとびっくり、しかも色が違っても味は同じでさらにびっくりです。

Img_9552_1 そんな横田基地へはJR青梅線牛浜駅から徒歩20分です。20分も歩いて迷子にならないか心配やもしれませんが、実際に行くとわかるのですが、明らかに基地へ行く方が延々と続いているので、続いて歩いてゆけば、迷うことはないのでは、と思います。迷った場合は近所の方に聞いてみてください。西武新宿線拝島駅からも徒歩20分とのこと。そうとしらずに当方、昨年は西武線からJR線に乗り換えて行きました。横田基地では手荷物検査がありますので、ステーキを食べるためにとはいえ刃物は持ち込まないように。身分証があると便利です。

Img_7558  伊勢湾展示訓練。横須賀地方隊が行う展示訓練ですが、明日、伊勢湾上で実施され、明後日は艦艇一般公開が行われます。参加艦艇は名古屋港と四日市港に既に入港していて、名古屋港は金山総合駅乗り換えで地下鉄名古屋港駅からほど近いガーデンふ頭、四日市港は霞ケ浦地区に入港します。こちらは明日の展示訓練がチケット必要、日曜日の一般公開が自由見学です。

Img_7567  地方隊展示訓練とは、地方隊が管理する基地の所属部隊を中心に洋上で各種任務遂行能力の展示を行い、主権者たる国民へ海上自衛隊の能力の高さを理解してもらう事と、その任務の意義や装備する護衛艦を始めとした艦艇、哨戒機を始めとした航空機を展示することが目的です。

Img_7577  展示訓練に参加する艦艇は、名古屋港に砕氷艦しらせ、護衛艦こんごう、護衛艦しらゆき、掃海母艦うらが。四日市港に護衛艦ひゅうが、護衛艦しらね、掃海艦つしま、多用途支援艦えんしゅう、特務艇はしだて、試験艦くりはま、掃海艇すがしま、掃海艇のとじま、輸送艇2号となっています。

Img_7582  明日の体験航海は7月20日締め切りの応募抽選制なのですが、日曜日にはこれら艦船を一般公開する伊勢湾マリンフェスタが行われます。四日市会場はJR富田浜駅か近鉄霞ケ浦駅が最寄りでシャトルバスが運行されるようですので、日曜日午前中にこちらを見学して、ここから名古屋まで不通と急行を乗り継いで35分、名古屋から金山まで5分、金山から名古屋港駅まで15分、午後に名古屋港の艦船を見学、というのがいいかもしれません。

Img_7597  しかし展示訓練、今年は横須賀地方隊が実施するのみのようなのですが、舞鶴地方隊の新潟展示訓練、呉地方隊の大阪湾展示訓練、大湊地方隊の石狩湾展示訓練、佐世保地方隊の博多湾展示訓練、ともに事業仕分の広報予算縮減という影響を受けたようです。ううむ、公務員人気で倍率は上昇していても艦船乗り組みといった厳しい現場に名乗りを上げる方は減っているようで、そういう人材を発掘するのも展示訓練ですから、ね。

Img_7638  このほか下関港で護衛艦いそゆき一般公開が予定されていて、広島宇品港では訓練支援艦てんりゅう体験航海。護衛艦ひゅうが、は伊勢湾展示訓練終了とともに、月曜日に名古屋港を出航、今度は宮崎県へ一般公開の為、向かうとのことです、口蹄疫で大打撃を受けた宮崎、日向の地を護衛艦ひゅうが、が激励に行く、という印象ですね。こちらについての詳しい情報は、リンク先の地方協力本部HPの情報をごらんください。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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陸海空三自衛隊合同離島防衛訓練 12月に九州・南西諸島で実施

2010-08-19 23:47:09 | 防衛・安全保障

◆硫黄島三自衛隊合同演習以来の規模

 北大路機関コメント欄でお教えいただいたのですが、読売新聞に今年12月に行われる三自衛隊合同の離島防衛訓練の実施が報じられていました。1998年の硫黄島三自衛隊合同演習以来の統合演習という規模のものです。

Img_6092  近年、中国軍が急速に近代化を行うとともに特に日本周辺海域での軍事演習が目立つようになってきています。この為、陸海空自衛隊に米軍を加えた合同演習が行われる事となったのですが、離島奪還訓練は陸上自衛隊においてかなり研究され、海上自衛隊も沖縄周辺海域での対水上対潜訓練をかなり積み、航空自衛隊も対艦攻撃の訓練を実施してきています。しかし、合同演習となると頭上を除き中々実施できず、記憶によれば1998年以来のものではないかと思います。

Img_9374  1998年11月16日入間基地を発進した五機のC-1輸送機がE-2C早期警戒機の警戒支援を受けつつ硫黄島に展開、井戸が浜海岸へ0630時に150名の空挺隊員を降下させました。続いて島の反対側、擂鉢山の麓に広がる二ツ浜海岸へ0800時、輸送艦おじか、がイージス艦こんごう、を始めとした護衛艦部隊の支援下で接岸し、輸送艦三隻が次々と着上陸を開始、普通科部隊と高射特科部隊が揚陸。

Img_0961  60式無反動砲、64式対戦車誘導弾、82式指揮通信車、81式地対空短距離誘導弾をそれぞれ展開させました。海上自衛隊硫黄島航空基地周辺に展開した81式短SAMは0930、展開を完了し終わるころに突如仮設敵のF-4EJから航空攻撃を受け、これに対し対空戦闘訓練を実施しました。

Img_4828  この演習には第1空挺団より150名、第1師団第34普通科連隊、第12師団第12高射特科大隊より81式地対空短距離誘導弾1セット、60式無反動砲2門、64式対戦車誘導弾1基、82式指揮通信車1両を中心に28両と人員150名が参加。航空自衛隊からはF-4EJ改4機、C-1輸送機5機、E-2C早期警戒機2機が参加しました。

Img_6163  海上自衛隊からは護衛艦くらま、こんごう、やまぎり、うみぎり、しまゆき、の五隻、輸送艦おじか、さつま、みうら、の三隻が参加。横須賀から硫黄島までP-3C哨戒機、SH-60J哨戒ヘリコプター10機とともに対潜哨戒訓練を併せて実施しています。参加部隊は海上自衛隊1800名、陸上自衛隊300名、航空自衛隊150名。

Img_9487  北方機動演習(現協同転地演習)と比べ参加部隊は少ないですが、実際に本土から1200km離れた硫黄島へ展開して訓練する、という意味ではかなり大規模な、そして意義のある訓練でした。しかし、残念ながら硫黄島三自衛隊合同演習は、この後定期的に行われる演習とはなりませんでした。

Img_7067 自衛隊が離島奪還訓練、南西諸島想定し12月・・・ 防衛省が今年12月、新たに策定した沖縄・南西諸島の防衛警備計画に基づき、陸海空自衛隊による初の本格的な離島奪回訓練を、大分・日(ひ)出生(じゅう)台(だい)演習場などで実施することが、18日、明らかになった。 東シナ海における中国海軍の勢力拡大をけん制するのが狙いとみられる。

Img_6744_1 訓練は日米共同統合演習の一環として行われ、米海軍第7艦隊が支援する。 訓練は、青色(味方)軍と赤色(敵)軍に分かれ、大分県内の陸上自衛隊日出生台演習場の一部を離島に見立てて行われる。 まず、赤色軍が自衛隊の配備されていない離島に上陸、占拠し、島内に対空ミサイルなどを備え付けるとともに、周辺海域に海軍艦艇を集結させているという状況から始まる。

Img_9128  すぐさま防衛出動が発令され、防衛省は、対地、対艦攻撃能力の高い空自F2戦闘機と海自P3C哨戒機を出動させる。赤色軍の対空兵器を弱体化させるとともに、陸自空挺(くうてい)団員など約250人が乗り込んだ8機の空自C130輸送機が、空自F15戦闘機の護衛を受けながら離島に接近する。空挺団員らは次々にパラシュートで降下し、海空自の援護射撃を受けながら赤色軍を制圧、島を奪い返すというシナリオだ。 訓練は同演習場のほか、沖縄・南西諸島周辺の訓練海域も使って行われる。

Img_0864  これまで防衛省は、周辺国への政治的な配慮などから、離島を想定した大規模な訓練を控えてきた。だが今年3、4月の2度にわたって、中国海軍の艦隊が同諸島の周辺海域で大がかりな訓練や挑発行動を繰り返すなど、ここ数年、中国海空軍の活動は活発化しており、日本にとって相当な脅威となってきていた。

Img_0282  防衛省幹部は「中国に対し、日本は南西諸島を守りきる意思と能力があることを示す。それが抑止力となる」と訓練の目的を説明する。同省は訓練の一部を公開する予定という。(2010年8月19日03時05分  読売新聞>引用は以上です。http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100819-OYT1T00023.htm

Img_6869  実施されるのは大分県の日出生台演習場を離島と見立てた訓練であって、九州への着上陸を想定したものでは無いようですが、陸海空自衛隊に加えて米軍も参加したかなり規模の大きな演習、という事になります。実動演習でここまで陸海空が一体となり統合運用を行う演習は1998年の硫黄島三自衛隊合同演習以来ではないでしょうか。

Img_2802  こうした演習を行う事は、実際に演習が想定するような状況が生じた時に備える、という目的に加えて、日本はこうした状況を想定して対処する準備を行っているのだから、怪我人がでないように日本の島々に対して演習を実戦で確認させるというようなことは行わないように!、と政治的にメッセージを送る事になります。しかし、こうした演習は実地で行ってほしかったです。

Img_6283  演習を離島に見立てた内陸部の日出生台で行うという事なのですが、これは必然的に輸送艦を用いての本格的な上陸訓練は行われず、ヘリコプターによる機動を第一に考えての訓練となるのでしょうが、しかしヘリコプターで空輸できる能力には限度があり、輸送艦から輸送された、という想定で西部方面隊管区の部隊が陸路展開する、ということになるのでしょうか。何れにせよ、有事の際には今回の演習参加部隊を輸送できる程度の輸送能力を整備する必要は出てくるでしょう。

Img_9020  記事を見る限り、米軍も参加しての本格的な演習である事は理解できるのですが、しかし離島防衛を想定するのならば、何故南西諸島の島々での実地演習を検討しなかったのか、という事が気になります。実際にヘリコプターを派遣してみなければ洋上飛行の難しさは分からないでしょうし、AH-1S対戦車ヘリコプターの能力の限界とAH-64D戦闘ヘリコプターの必要性は分からないでしょう。

Img_4186  また、実際に一定数の規模の部隊を海上輸送してみなければ、現在の、おおすみ型輸送艦3隻と、地方隊の輸送艦/輸送艇による輸送能力でどの程度対応できるのか、ということも分からない事です。稼働数が足りず演習できない、というのならば、演習計画以上に非常時というものは突如としてやってきますので輸送艦定数そのものの再考を促す必要も出てきます。

Img_6905  日出生台では無く南西諸島か小笠原諸島で行うべき、という当方の提案、実際に南西諸島周辺で行う事には一部市民団体からの反発もあるかもしれませんが、しかし、自衛隊が演習の為に揚陸演習を行わなければ、沖縄近海で示威行動を繰り返す国が上陸して演習では無く実戦を始める可能性があるためにやっている演習であって、このあたりの説得は政治の責務でしょう。

Img_2471  しかし、こうした演習を通じて、現在ある装備とともに、輸送艦や空中機動能力、後方支援、長距離打撃能力を再点検し、次に伝えてゆく、という事は不可欠でしょう。硫黄島三自衛隊合同演習から十二年を経ての演習ですが、可能ならばなんとか毎年、せめて隔年実施するように調整し、島嶼部防衛能力を高めるよう、願いたいです。

HARUNA

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中国瀋陽近郊に国籍不明機墜落 北朝鮮空軍の戦闘機か?

2010-08-18 23:17:00 | 国際・政治

◆旧式戦闘機の侵入を許した中国の防空網

 北朝鮮空軍の戦闘機とみられる国籍不明機が中国の瀋陽近郊で墜落しているのが発見されました。

Img_2304  かつて、中国は中華民国空軍のU-2偵察機多数を地対空ミサイルで撃墜した事例がありましたが、レーダーによる防空監視体制が完成したのが新世紀に入ってから、まだまだ課題が大きいという事を想わせる事例がありました。中国:新華社報道「北朝鮮の飛行機か」 国籍不明機墜落で・・・ 中国東北部の遼寧省撫順県拉古郷で17日、北朝鮮空軍機とみられる国籍不明機が墜落、戦闘機で脱北しようとしたのかと憶測を呼んでいる。新華社通信は18日に「北朝鮮の飛行機とみられる」と伝えただけだが、香港紙・文匯報などは周辺住民が撮影したとみられる墜落機の写真を報じた。しかし、脱北ならば中国上空を通過する危険をおかさず南を目指す方が自然であり、訓練中の事故だった可能性も指摘されている。【北京・浦松丈二、ソウル西脇真一http://mainichi.jp/select/world/news/20100819k0000m030097000c.html

Img_1491  事件があったのは瀋陽軍区司令部が置かれた瀋陽市から東へ30km、北朝鮮との国境から200kmの距離で、日本で言えば稚内から旭川の距離に相当します。中国当局の発表が状況発生から遅れていて、しかも緊急発進を行った、という記載もありません。国籍不明機ということで、第一報があった際にはロシアのステルス機やアメリカの偵察機では、という憶測もあったようなのですが墜落機の写真が発表されていました。写真が実物であればという前提なのですが、北朝鮮空軍の表示があり、垂直尾翼の形状を見る限りMiG-21か中国でコピーされたJ-7のように見えます。MiG-21はソ連が1955年に開発した超音速戦闘機で、北朝鮮空軍にはJ-7と併せて約120機が配備されており、現在は対地攻撃に充当されている、と考えられています。取得から40年近い機体もあり、設計はF-4の1958年よりも古い航空機です。大きくは報じられていませんが、これはかなり重要な意味を持ちます、それは中国空軍の防空網がMiG-21のような旧式戦闘機に対して、緊急発進などの対応を採る事が出来ないほど、まだ途上段階にある、という事を示してしまったためです。日本であれば領空から離れている場合でも洋上に防空識別圏が設定されていて、この防空識別圏に接近した航空機に対しては航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し、領空侵犯を未然に防止します。

Img_1674  中国空軍はロシアからSu-27/30戦闘機を多数取得していて、デットコピーまで開発しています。もっとも、ロシアの看板戦闘機を違法コピーした中国の行為はロシアからこれまでにない不信感を買い、戦闘機が第一に離陸するために不可欠の戦闘機用エンジンの供給を停止する、という警告を行っているのですが、とにかく数が揃ってきていまして、対岸の日本としては旧式化したF-4戦闘機の後継にどの機体を選定して中国の新鋭戦闘機にどう対処するのか、ということが焦眉の課題となっている事は既報の通りです。しかし、中国空軍は戦闘機の数は揃えているのですが、北朝鮮空軍が運用する第一世代機がやすやすと侵入できる、という状況から考えるに、中国本土の防空体制、という肝心な体制については防空監視網、対領空侵犯措置実施という面から、もしかしたらば問題があるのかもしれません。

HARUNA

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アデン湾海賊対処任務 護衛艦むらさめ艦載機が不審船に対処!

2010-08-17 22:47:20 | 防衛・安全保障

◆現在も続くソマリア沖海賊対処任務

 海上自衛隊からソマリア沖アデン湾海賊対処任務へ出動している護衛艦の搭載機が、海賊容疑船に対処した、と発表されました。

Img_1359 1 発生日時平成22年8月16日 14時19分頃(現地時間8時19分頃)

2 発生場所アデン湾

3 対応した部隊名等護衛艦「むらさめ」搭載ヘリコプター

4 対応の概要14時19分頃、護衛船団の周辺を航行中の船舶からの不審な小型船舶に関する情報に基づき、護衛活動中に周囲を警戒監視していた護衛艦「むらさめ」搭載ヘリコプターが捜索を実施したところ、護衛対象船舶の南西約20海里に、「はしご」を積んだ不審な小型船舶を視認。「むらさめ」搭載ヘリは当該小型船舶の監視を継続するとともに、関係国、関係機関に情報の提供を行った。その後、当該情報を受けたオランダ艦艇が現場に向かうとともに、搭載ヘリコプターを発艦させ対応。

Img_1315 5 対応クロノロジー14時00分頃 護衛船団の周辺を航行中の船舶から不審な小型船舶に関する情報を入手。
14時19分頃 <護衛活動中に周囲を警戒監視していた「むらさめ」搭載ヘリが、情報に基づき周囲を捜索したところ、護衛対象船舶の南西約20海里に、「はしご」を積んだ不審な小型船舶を視認。国際VHFにより付近の艦艇に情報提供するとともに監視を実施。
14時59分頃 情報を受けたオランダ艦艇搭載ヘリが現場に到着。
15時06分頃 「むらさめ」搭載ヘリはオランダ艦艇搭載ヘリに対応を引き継ぎ、警戒監視任務に復帰

http://www.mod.go.jp/j/press/news/2010/08/16c.html

Img_9942  ソマリア沖海賊対処任務は、護衛艦と哨戒機が出動して対処しているのですが、その任務の最中、海賊容疑船が接近し、搭載している哨戒ヘリコプターが対処する、という一幕があったようです。そもそも、海賊船、というと大阪天保山埠頭の海賊船型遊覧船を思い浮かべるのですが、実際には数人乗りの動力付きボードが海賊船として使われています。怪しい船は片端から取り締まれば、と思われる方もいるやもしれませんが、現地では漁船とほぼ同型の船が使われており、見分けるのが困難なのです。何故、漁船と同型の船が、と考えられる方もいるでしょうが、理由は簡単で、漁民が海賊を行っている、もしくは中古漁船を海賊船として使っているという事例が多いからです。漁船と同型の船で武装している船もあるので、これを取り締まれば、という考えもあるようですが、漁船が武装している場合というのは、漁船が海賊船に船を奪われないように自動小銃などで武装している事例があるので、一概に武装漁船が海賊船である、という訳ではありません、海賊容疑船というのは漁業に不要な、しかし海賊行為を行うために商船に乗り移る際に使う梯子が、海賊船か武装漁船か、見分ける重要なポイントとなるそうです。

Img_6450  ソマリア沖海賊対処には海上自衛隊のほか、海上自衛隊が派遣される前よりNATO加盟国海軍と米海軍が参加して取り締まりを行っていて、ここに沿岸国であるインド海軍を始め、今日では中国海軍と韓国海軍も参加し、中東や欧州とアジア地域を結ぶ重要なシーレーンの防衛にあたっています。この中で各国海軍は特定海域を巡回して、不審な船舶を片端から対処してゆくという哨戒方式を対処しているのですが、海上自衛隊は特定地域に商船を集合させて、その船舶を以て船団を組ませ、その前後を護衛艦で警備する、という方式をとっているのですね。何かあった場合は船団の周囲に護衛艦が展開していますので、即座に対処することができる、というのがこの方式の強みなのですが、一方で船団の集合に参加できない船舶は護衛対象外となり、護衛船団からエンジン故障などで落伍してしまうと、可能な限りヘリコプターで警備支援は行うのですが、海賊に襲撃されるリスクが増えてしまいます。

Img_7414  海上自衛隊は護衛している船団でなかったとしても必要に応じて周辺海域に出没した不審船舶にはヘリコプターを出動させて対処していますし、船団に無関係な商船であっても不審船が接近した、というような状況であれば救援します。僅か二隻の護衛艦と三機の航空機が参加している海上護衛任務ですけれども、これは海上自衛隊の巨大な護衛艦隊や航空集団の規模から見た場合の規模であって、海賊対処任務には不可欠な地位を担っているのが海上自衛隊の派遣部隊なのですが、確実に護衛を達成している船団護衛、この護衛船団に不審な船舶が接近して、これを護衛艦むらさめ(DD101)の哨戒ヘリコプターが派遣して対処した、という訳です。護衛艦が周辺で警備しているのならば、普通の海軍であれば通商破壊を行っている場合でも、考えるものですが、海賊は護衛艦が近傍に展開しているとは知らず、接近した、というのが実情なのでしょう。

Img_6268  このように、海賊側には対水上レーダーも無い訳ですから、護衛艦の展開は想定せずに接近する、という事はあります。他方でこれを見逃せば商船が海賊に襲われる、という事もあり得る訳でして、一度梯子で海賊の乗りこまれてしまえば自衛能力が無い船舶は簡単に占拠されてしまい、占拠された商船に対処する、というかたちで主導権は海上自衛隊から海賊側に移ってしまいます。こうした事態は海上自衛隊の努力と高い練度に支えられ、起こってはいないのですが、海賊は今だ跳梁跋扈しているという状況で、常に緊張を強いられ、任務が継続している、という状況です。日本では大手メディアにこうした緊張はあまり報じられることはないのですけれども、今この瞬間でも派遣された部隊は任務に当たっている事は主権者たる選挙民として知っておく必要があるでしょう。

HARUNA

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選定先延ばしは限界とされたF-X選定と黄色信号灯った政府専用機B-747の運用

2010-08-16 22:39:18 | 国際・政治

◆F-Xの話題と政府専用機の話題

 本日はF-X問題について、そして国内の運用基盤の重要性について、それぞれ朝雲新聞の記事を引用して、少し考えてみたいと思います。

Img_6844 8月の朝雲ニュース 8/12日付 ニュース トップ :FXで安保研 欧州機採用を提言 「選定先延ばしは限界」・・・ 財団法人平和・安全保障研究所(西原正理事長)は8月5日、空自の次期主力戦闘機(FX)の機種選定についての提言をまとめた「次期戦闘機の調達機種提案」を公表した。  安全保障問題を研究している松村昌廣桃山学院大学教授によるもので、米F22戦闘機の輸出禁止などさまざまな制約から防衛省が次期戦闘機の調達機種に関する決定を先延ばしにしている点について、中国軍の軍拡や日本国内の防衛産業保護・育成などの観点を踏まえ、これ以上の先延ばしは許されないと強調。性能や価格、ライセンス国産の可能性など多角的な検討の結果、欧州共同開発のユーロファイター戦闘機の早期導入が適切と提言。さらに戦術面や日米関係などの点から、ユーロファイター3~4飛行隊(60~80機)のほか、米が開発中のF35戦闘機を1~2飛行隊(20~40機)導入するよう提案している。

Img_6928   提案は現状分析として、急速な経済成長と軍事費増加を背景に中国空軍が多数の旧式戦闘機に加えて第4世代戦闘機を約350機保有する一方、日本はF15戦闘機約140機、F2戦闘機約60機と第4世代機を200機余り保有しているに過ぎないと指摘。  2004年の米印合同軍事演習の格闘戦でSu30にF15が完敗したことや、中国が旧式戦闘機を含めて一斉攻撃を仕掛けてきた場合は有視界内での格闘戦が予想され、F15を主力とする空自の防空体制には疑問が生じるため、「戦術的な視点から見ると、これ以上わが国が次期戦闘機の選定・調達を先延ばしすることはできない」としている。  さらにF2戦闘機の生産ラインが平成23年度で終了し、技術者と技能の散逸、関連企業の撤退による生産技術基盤の弱体化・喪失が危惧されることを挙げ、「抑止効果やバーゲニング・パワーを失い、経済的、商業的国益を損なう」と懸念を表明。  当初、防衛省が導入を目指したF22戦闘機については、ステルス・モードで搭載できるミサイル数が限られており、有効な戦力となるのは小規模な防空戦が散発する戦術環境や、敵地に先制攻撃を仕掛ける場合などで、しかも衛星や各種センサーを含む巨大な軍事通信情報ネットワークがなければ性能を十分発揮できず、技術移転に関しても米側からの提供の見込みはないと指摘。

Img_7214   その上で、F35とユーロファイターに焦点をあて、次期戦闘機を選定する際に鍵となる①ステルス性②レーダー及びセンサー③運動性④兵器搭載能力⑤価格⑥運用リスク⑦技術移転⑧戦闘機の産業基盤⑨対米同盟――について考察。  ユーロファイターは格闘戦と多任務戦闘(空対地、空対艦攻撃)の両機能を持ち、価格面ではF35の約2分の1、F22の約3分の1の価格であり、調達機数の増加やAWACS、空中給油機などへの追加投資で総合的に日本の防空戦力を高めることができ、広範かつ包括的な技術移転が望めるとして、「ユーロファイターこそが性能、価格、技術移転の点から選択肢となる」と提言。  さらに、日米同盟の維持やステルス性が必要な戦術環境も想定されることから、作戦毎に投入する艦載機などとしてのF35の小規模、限定的な配備を求めている

Img_7008_1  F-X選定において、ステルス機が必須なのであるならばF-35を一定数導入するとしたうえで、制空戦闘に高い能力を発揮することが出来るタイフーンの導入を検討してはどうか、と本日お昼頃に書いてみたのですが、今回朝雲新聞に出ていた記事も同様の論調がある事に驚きました。一見理想的な提案、と見えるのですが、難しいのは本日のコメント欄で少し書きましたけれども、運用する機種が多くなりすぎる、という一点です。F-2支援戦闘機は2030年代後半まで運用が続きますし、F-15JもMSIP機については近代化改修を重ねて2025年以降までは運用が続けられるでしょう。タイフーンとF-35を導入すると決定した場合、F-4EJ改二個飛行隊所要と近代化改修に機体の配線が対応していないF-15J PreMSIPと呼ばれる初期の機体を含めて六個飛行隊所要を置き換える訳で、F-2支援戦闘機三個飛行隊、F-15J要撃機四個飛行隊、タイフーン要撃機四個飛行隊、F-35支援戦闘機二個飛行隊、という編成を目指す事となります。航空祭に行く楽しみが増えるぞ♪、というような素朴な換装以外には、いくらなんでも機種が多すぎるのではないか、という正直な印象がある訳です。一時的、という事でしたらF-2とF-1が混在していた時代にはF-15とF-4EJで四機種あったわけなのですが、三機種への統合を前提に暫定的に運用されていた訳でして、他方で今回の提案が通りますと相当長期間この状況が続く訳になります。

Img_7106  “選定先延ばし限界”という論調については全くその通りで、実際問題、2007年頃に選定結果が出ていて、今頃F-X初号機が岐阜基地での運用試験が終了しつつあって、百里基地あたりで部隊運用試験が開始、そして三菱重工小牧南工場においてライセンス生産された機体が小牧基地の滑走路を経て飛行試験を繰り返している、というのが2010年頃のあるべき姿でした。しかし、結局航空自衛隊が切望していたF-22の導入計画がアメリカ側の機密保護という壁に阻まれ、実現せずに、F-22以外の航空機という事を視野に入れていなかったので長引いている、という状況にあります。別の理想的な機体ならば幾つかあるのですが、防衛大綱に戦闘機定数が明記されていて、周辺国の空軍力増大を背景に幾度も防衛大綱の戦闘機定数を縮小できたのはF-XにF-22のような第五世代戦闘機を導入する、という前提があったからであって、第4.5世代戦闘機の導入が念頭にあればもう少し多数の戦闘機を導入するべく画定していただろう、といえるからです。それならば、防衛大綱が本年末に改訂されるのだから反映すれば、とも思うのですが、何分、防衛費を縮小することこそが民意、と考えている政府ですから、これはこれで難しそうです。

Img_6896  提言内容では、“2004年の米印合同演習の格闘戦でSu30にF15が完敗”という部分では、そもそも遠距離の視程外戦闘を念頭に重くとも強力なレーダーと射程の大きいミサイルを搭載して早期警戒管制機と協同する事が念頭のF-15について、そもそも有事の際に格闘戦に展開する可能性はどのくらいあるのか、元々大型戦闘機に高い機動性を与えるべく最強のエンジンを搭載している設計のF-15ですが、F-15Jに搭載するAAM-5のような高機動目標を追尾することが可能な短射程(といっても60km)ミサイルで、果たしてそこまで不利な状況はありえるのか、という一点。“中国が旧式戦闘機を含めて一斉攻撃を仕掛けてきた場合”というのですが、そもそも専守防衛の日本において南西諸島沖縄周辺空域等中国大陸から離れた空域での要撃戦を想定するのですから、多くの燃料を消費する空中戦を念頭に日本側のレーダーへ捕捉されないよう燃費の悪い低空飛行を行って進出することは旧式戦闘機に可能なのか、という一点等少々疑問点はあるのですけれども、いつまでもF-4に頼れる状況ではない、という事は確かです。

Img_4803_1 8月の朝雲ニュース 8/12日付  ニュース トップ :政府専用機 日航のジャンボ機撤退で 委託整備が“視界不良”・・・ 空自特別航空輸送隊(千歳)が運航する政府専用機B747―400型ジャンボ・ジェット機の定期整備が委託会社の経営事情で先行き不透明となっており、防衛省は対応を迫られている。整備を委託している日本航空が経営再建策の一環として燃費効率の悪いジャンボ機の年度内退役を決定、整備用機材や要員を中型機に振り向けるためで、防衛省は日航と引き続き協議しているが、日航が契約更新に応じるかどうか微妙な段階だ。全日空も同型機からの撤退が取りざたされていることから、国内での整備を断念するか、場合によっては政府専用機の機種変更といった問題にも発展しかねない状況となっている。    

Img_4793_1 海外委託や最悪機種変更も・・・ 特輸隊が運航するB747―400型機は昭和62年、先進国の例にならって総理大臣等の輸送のため政府専用機として購入を決定。平成3年9月と11月に当時の総理府が2機を取得し、4年4月、防衛庁(当時)に所属替えとなった。  約1年間の運用試験などを経て基本的な運用体制を整備し、5年6月、空自千歳基地に特別航空輸送隊を新編、任務運航を開始。任務運航は7月末現在、約220回に達している。  日常的な整備は特輸隊整備隊で実施し、5年に1回行う重整備(M整備)や1年毎のC整備、8週間毎のA整備はいずれも日航に委託している。M整備は機体やエンジンを分解して部品に不具合がないか精密な点検を行うもので、不具合があれば部品を交換し、その後の試験も実施して部隊に引き渡す。防衛省ではこれらの整備に年間約25億円を手当てしている。

Img_4786_1   日航は4月に策定した経営再建のための「2010年度路線便数計画」で保有機材の削減を決め、B747―400型機とA300―600型機の年度内の退役を決めた。このため防衛省との23年度以降の整備委託契約交渉では国による整備機材の買い取りの可能性や整備チームの人件費をどうするかといった問題が話し合われた。  日航とは引き続き協議中だが、来年3月で契約打ち切りとなれば政府専用機の運航は困難で、国内で整備が出来なくなれば製造元の米ボーイング社や同機を使用している外国の航空会社への委託、あるいはジャンボ以外の機種に変更せざるを得なくなる。機種を変更する場合、北米まで給油なしで飛べる性能がなければならないなど、選択肢は限られている。  防衛省では「政府専用機は民航機と比べて使用頻度が少ない上に、3年前に改修したばかりで、そう簡単には機種変更はできない」としているが、整備を継続するにしても委託先を変更するにしても、厳しい財政事情の中で新たな予算措置が必要とあって、対応に苦慮している

Img_2875  政府専用機がだめならな輸送機で空輸、というのも難しいでしょうし、困りました。もっとも、それ以上に政府専用機B-747の実機を撮影する機会に恵まれず、浜松基地に隣接する航空自衛隊広報館で撮影した模型の写真で代用したので、この写真を探す方が大変だったのですが。閑話休題、運用基盤が航空自衛隊に無い場合、外因的な影響で装備の寿命に関わらず運用が制限される事がある、というのがこの政府専用機の問題ではないでしょうか。民間機を利用すればいいのではないか、と問われれば国策企業としての歴史をもつ日本航空の旅客機が、航空自衛隊に政府専用機が導入されるまでは専用機の運用をお願いしていたのですけれども、緊急事態への対応では民間会社という形を採っている日本航空に毎回依頼するという時間が無い場合もあり、加えて緊急時には邦人救出に使う、という場合には航空自衛隊が運用した方が即応性が高い、という一点を元にB-747を航空自衛隊が導入しました。しかし整備基盤は外側にあった、ということでまだまだB-747を運用する計画の航空自衛隊としては整備基盤の喪失という危機を前に苦労している、という状況である訳です。旅客機として長距離飛行する747と比べて航空自衛隊のB-747は訓練飛行でもそこまで長時間長距離を飛行している訳ではありませんので、まだまだ使える訳です。しかし、整備は民間委託だったので、と。

Img_8205  B-747については、民間軍事会社に委託すれば整備支援を受けることは可能でしょう。日本では補給艦の運用や航空機の整備などは全て自衛隊が行っているのですけれども、米軍では補給艦は軍属の民間人にかなりの部分を依存していますし、戦闘機整備のような専門知識が必要な業務について民間軍事会社に委託している、という部分があります。もっとも、日本航空にどの程度の費用で業務委託しているかは浅学にして知らないのですけれども、新千歳空港に整備基盤がある関係でその延長線から航空自衛隊の同型機である747を整備してもらっている、という状況と、航空自衛隊機の整備の為だけに海外から専門の要員を、という場合では相当費用では変わってくるようにも思う訳です。自前で航空自衛隊が整備していたのならば、こういう事にはならなかったのだろう、と言える訳で、これは海外の機体をそのまま有償軍事供与にて入手した場合のリスクを如実に示している、とも言える訳です。

Img_1002  M整備についてはアメリカのボーイング社に委託すれば、後部の隔壁あたりに心配は残りますが、何とか運用できるのではないか、といえるのですが国内で出来ない、というのは問題です、何となれ予備機を含め二機で運用する政府専用機は二機しか無いので長期間海外で整備して運用を維持できるのか、という問題が残りますからね。日本航空の747全部下請けしてPKO支援に運用すれば一石二鳥、U-4とKC-767をVIP輸送に使えばもう747は用途廃止に出来るのでは、エンジンの艦形状航空自衛隊でも整備は出来る筈、という対処療法はいくつか提示出来る訳なのですけれども、運用基盤が国内に整備されているのか否か、というものを真剣に考えさせられるのが今回の提示でしょう。

HARUNA

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8.15 第二次世界大戦・太平洋戦争終戦65周年記念日

2010-08-15 23:29:40 | 北大路機関特別企画

◆本日は終戦記念日

 本日は八月十五日、太平洋戦争が終わった終戦記念日です。終戦と現在の安全保障問題を兼ねた記事を予定していたのですが、少々逸脱する内容となり、転換しました。

Img_2228  終戦、というのですが終戦後六十五周年ともなれば、先の大戦に参加していた方は本当に少なく、六十五年という時の長さを感じさせるというところでしょうか。BBCによればイギリス国内で第一次世界大戦に従軍経験のある方で生存しているのは今年の時点で僅かに三名、とのことでした。

Img_2170  日本の場合、第二次大戦から戦後の年数を数えた場合、あと二十数年も経てば日本でも第二次世界大戦に従軍経験のある語り部、という方は相当少なくなっているやもしれません。他方で、この事実を掲げたうえで日本にとって戦争は遠い過去のものである、とする考えがあるとすれば同委は出来ません。

Img_2283_1  さて、戦後六十五年、日本は国家として戦争を経験していないのですけれども、戦後六十五年ということで日本国民の間で戦争を完全に過去のものとしようとしているような論調が報道にあるわけなのですが、難民認定を受けたうえで日本に帰化された方の中には、第二次世界大戦以降の戦争を経験された方も多くいる訳です。

Img_2284  太平洋戦争が最後の戦争ではありません、戦争の悲惨さ、というものを報じたいならば、いの一番に尋ねるべき方々の話がメディアに報じられない、ということには少々違和感がありまして、そもそも戦争を過去のものとすることで同胞の方々の多くは諸国での現実問題としての武力紛争には目を瞑っているようにも。

Img_2376_1  現在の戦争を諸国民の自己責任としてその犠牲を必然視しようとしているようにもみえるのですが、例えばカナダ、スウェーデン、フィンランドのように世界平和の実現へ積極的に乗り出す国々と、世界から軍事安全保障の面で鎖国を試みて在日米軍基地を出島とする選択肢を選んだ日本、諸外国は日本の姿勢を御都合主義的で打算的、とみられているのではないか、とも思う次第です。

Img_2284_2  戦争を解決するために日本はどうするべきか、という論調はここ二十年ほどで多く出ているのですが他方で、積極的に紛争調停に自衛隊を、という論調にもどうしてもなれないのですよね。人道的介入という概念もあることは念頭に置いた上で、部隊や人員、装備という以前の問題で違和感がある訳です。

Img_2449  そういいますのも我が国は志願制で徴兵制ではありません。徴兵制を勧める訳ではないのですけれども、選挙民である主権者の中で直接海外へ武力紛争調停の為に足を進める任を負う方の割合は非常に少なく、一種他人事として政治に反映されてしまうのでは、と危惧する訳です。

Img_2749  そもそも、日本周辺情勢でさえも積極的に情報を集めない方とそうでない方とでは事実関係の把握からして、どうも個々人の間にかなりの隔たりがあるようなので、如何とも言い難いのですが、しかし、戦争というものを過去のもの、非日常と割り切ってしまっている日本では、こうした問題も出てくるのだろう、と。

Img_2857  もうひとつ、戦争という問題を考えてゆきますと、しかし、今後日本が巻き込まれないという証拠はどこにもないのだ、という事実を無視するわけにはいきません。欧州では第一次世界大戦の苦しい教訓から極力戦争や対立を避けようとした宥和政策のなかでドイツが台頭して、結果的に破綻点を超えてしまい、第二次世界大戦へと発展しました。

Img_2303  日本がどれだけ平和を望んでいたとしても、フランスやイギリスがドイツに対して望んだ平和の希求が歴史でどうなったのか証明しているのです。諸国家には護るべき諸国民とその利益があり、この為に日本にとり非常に絶望的な対応を採る場合もあるのだ、という事は一つの現実です。

Img_2539  無抵抗を掲げれば戦争にはならないのではないか、という考え方や問いも日本ではあるかもしれません。非武装平和主義や無抵抗主義という論調が日本ではこれにあたります。額面通り行うならば、この問いに対する答え、実はその通りですが、視点を切り替えるととんでもない事になります。

Img_2698  一つのたとえです。日中戦争で日本は中国大陸へ侵攻しましたが、あの時に中国で今の日本と同じような非武装平和主義運動が盛んに展開されて政府がこれに応じ、日本軍に対して無抵抗を行った場合はどうなったでしょうか、戦争は起きないでしょうが中国大陸は日本に占領されていたでしょう。

Img_2774  再び視点を日本に戻して、日本が無防備無抵抗を掲げれば戦争は起きないのでしょうけれども、日本国土を占領する意図、日本周辺の海域に価値を見出す思念を諸国の何れかが持てば、戦争は起きなくとも蹂躙はされ、占領はされてしまう訳です、外国に占領されても命さえあれば、という視点もあるかもしれませんが、日本が国家として消滅して併合されてしまえば、その併合した国が徴兵制を採っていた場合否応なく編入されますのでこれもナンセンスな議論です。

Img_2952  太平洋戦争での戦没者への祈念とともに、他方で日本が今後戦争に巻き込まれないようにするためにはどのような外交政策と安全保障政策、防衛政策が必要なのか、という議論も必要でしょう。終戦というと様々な考えが去来するのですけれども、今年の終戦記念日は、特にこうした事が思い浮かびましたので長々と書いてみました。

HARUNA

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防衛省、次期戦闘機選定(F-X選定)と来年度予算計上は見送り

2010-08-14 22:40:43 | 防衛・安全保障

◆F-35か、タイフーンか、F/A-18Eか

 時事通信の記事と、少し前ですが産経新聞の記事でF-X選定に動きといいますが、動きが無い事が示されましたので、本日はこの話題を掲載します。

Img_46531  FX候補、F35など3機種に=来年度予算計上は見送り-防衛省 防衛省は13日までに、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)について、米英などが共同開発中のF35、欧州共同開発のユーロファイター、米国のFA18E/Fの3機種に候補を絞り込んだ。同省は、新たな防衛計画大綱や次期中期防衛力整備計画(中期防)を取りまとめる年末を目指し、選定作業を加速させる方針。ただ、年内に結論が出ない事態も想定し、8月末の2011年度予算概算要求段階での調達費計上は見送る考えだ。 FXは老朽化したF4戦闘機の後継機。同省はこれら3機種のほか、米国のF22、F15FX、仏ラファールの計6機種を調査対象に指定し、選定作業を進めてきた。 

Img_1101  防衛省は当初、レーダーに捕捉されにくいステルス性能を備えた最新鋭のF22を軸に検討に入ったが、機密保持を理由に米議会が輸出を禁じていることから、最終的に導入を断念した。また、F15FXは、6機種の中では旧世代機に当たることから除外。ラファールも、開発企業などからの積極的な情報提供がなく、候補からはずすことにした。  絞り込んだ3機種のうち、省内では、F22に迫るステルス性能を誇るF35を支持する意見が多い。一方で、開発が遅れており、調達時期が不透明なことや、価格が高額になりそうなのが難点。このため、同機と比べ、性能面では劣るものの、各国で既に多くの運用実績があり、少ない費用で導入できそうなユーロファイターやFA18E/Fを推す声もある。 同省は年末に向け、F35の開発状況や価格、防衛費全体に占める導入費のバランスなどをにらみながら、後継機の絞り込み作業を続ける方針。ただ、概算要求への計上を見送ることから「年内の機種選定にこだわらず、慎重に検討すべきだ」(幹部)との声も根強い。(2010/08/13-16:55)◆http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010081300567&j1

Img_9902_1  記事ですが、絞り込んだ、という事は既報でF22断念、という内容から進んだものはありませんので、要するに先行して来年度予算に期待取得費用のみを計上する、という方式が採られなくなった、ということが注目すべき点でしょうか。そして先送りするという事は、現時点で入手できない機体が選定候補に挙がっている、すなわちF-35の取得が最有力として考えている、ということが見てとれます。ラファールをどのくらい航空自衛隊が真剣に検討していたのかという事には興味が集まりますけれども、本命はF-35,そしてF-35以外であり得る機体として二機種を提示、という事でしょうか。

Img_8625  F-35ですが、機体のユニットコストは徐々にF-22に迫るものとなっている上に、最高速度マッハ1.6とされているのですけれども、超音速飛行性能が証明されたのは最近、イギリス空軍に今春初号機の納入が成ったというF-35は一見順調な方向に向かっているようにも見えるのですが、しかし同時にイギリス空軍での運用開始が二年間計画の遅延が発表されていて、F-4の後継機として間に合うのか、という一点が問題です。そして、F-35は空中での機動性はもともとF-16と同程度のものが盛り込まれる計画で設計されているのですけれども、しかし、F-22やタイフーンよりは劣るとされていて、どちらかというと戦闘機よりも攻撃機、という印象の機体となっています。ステルス性を活かして敵地奥地へ侵攻して開戦第一撃を加える、という用途には合うのでしょうが、ステルス性を活かして絶対航空優勢確保に用いる航空機、という用途には合わないようで、米空軍の場合はF-22との協同ありきで、考えられているのでは、と。

Img_4508F35選定に向け調査費 次期主力戦闘機、概算要求に最大10億円 (1/2ページ)2010.8.8 01:30 次期主力戦闘機(FX)の機種選定をめぐり、防衛省は7日、平成23年度予算案の概算要求に初めて調査費を計上する方向で最終調整に入った。米英などが共同開発中のF35ライトニング2の技術情報について、米政府に開示を求める費用として最大で約10億円の計上を想定。21年度に調達を開始する当初予定から大幅に遅れているFX問題は、F35の選定に向け、大きく動き出す。 米国が多国間で共同開発する装備品について、日本が有償軍事援助(FMS)契約で米側に情報開示を求めるのは初めて。ただ、米国以外の国が日本優遇に難色を示す恐れもある。

Img_9862 また、米軍普天間飛行場(沖縄県宜(ぎ)野(の)湾(わん)市)移設問題で日米同盟がきしむなか、曲折も予想される。 F35は最新鋭の第5世代機。航空自衛隊のF4の後継を決めるFXの候補としては、ほかに米国のFA18E/F、欧州共同開発のユーロファイターが残っているが、ともに第4世代機。レーダーに捕捉されにくいステルス性において第5世代機が格段に優れている。 このため、空自にはF35導入を求める声が強い。共同開発に参加していない韓国が今秋にもF35の情報開示を請求するとされ、日本が出遅れることへの懸念もあり、調査費計上にカジを切った。 年末に改定する防衛力整備の基本方針「防衛計画の大綱」と、来年度から5年間の「中期防衛力整備計画」の検討過程でも、F35を軸に機種選定作業を加速させる。F35の技術情報が開示されれば、ステルス性や装備などを精査し、導入の是非を最終判断する。 ただ、F35の開発は遅れており、導入時期は不透明。それまでの間、国内の戦闘機の生産・技術基盤維持のため、国内に生産ラインが残るF2戦闘機の追加調達も引き続き検討する。http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100808/plc1008080131002-n1.htm

Img_9933 F-35は国際共同開発が行われている第五世代ステルス戦闘機なのですけれども、この航空機が特殊なのは開発計画に参加するか、一定以上の出資を行っていなければこの航空機に関する情報にさえもアクセスできない、というところにあります。これまで航空自衛隊が必要とする航空機があればメーカーが一定の資料を提示してくれるのでしたが、横浜航空宇宙展に展示されるような一定以下の情報以上は、こうした予算計上を行って出資する必要があった訳です。こうした点を見ると、F-35に対する航空自衛隊の関心の高さが垣間見えてくるのですけれども、開発費用増大とユニットコスト高騰を背景にプロジェクトは新しい採用国を求めていて、一方で調達計画を縮小した参加国の機体を日本が買い取るという方式を採るのならば、比較的早期に入手することが出来るかもしれません。

Img_9321 F-2支援戦闘機の生産継続の可能性ですが、F-Xとして新たにF-2を選定するのではなく、次の航空機が実用化されるまでの間の暫定的な調達という形であれば、F-X選定を先延ばししてF-2の生産を続けるという選択肢はあり得る、といえます。もっとも、F-2は日米共同生産ですので、アメリカ側に利点が無ければ継続は難しいでしょうから、F-35調達とF-2生産継続はセット、という事が妥結点でしょう。要撃機として使用するのならばタイフーンが妥当で、どうしてもF-35,といいますかF-22を含めてステルス機を必要とするのならば、F-4後継機にタイフーンを充てて二個飛行隊所要を充当して、その後に耐用年数が待っているF-15初期の機体をF-35で置き換える、という選択肢もあり得るのでは、と思ったりもします。タイフーンにかんしては運用基盤が日本周辺に無いので、相当この点に留意して導入する必要があるので、一概にこれだ、ということはできないのですが、しかし、F-35のようなリスクは抱えていない訳です。F/A-18Eは、空母艦載機ですし、F-2と比べた場合、特にF-2はまだのびしろがありますので、比べてしまいますとF/A-18Eにそこまで高性能、という印象はありません。なんにしても、そろそろ決めなければならないF-X選定ですが、選定が遅れることでF-2の生産継続に繋がるのならば、これも選択肢に入るのかな、と思ったりします。

HARUNA

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陸上自衛隊 桂駐屯地納涼盆踊り2010詳報 (2010.08.04)

2010-08-13 22:08:09 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆桂駐屯地一般開放

陸上自衛隊の駐屯地では夏祭りや盆踊り大会が行われる、と掲載してきたのですが本日はこの話題。

Img_5216 陸上自衛隊の駐屯地でのこうした納涼行事は、地域との交流に重点を置いているので、戦車や装甲車に興味のあるかたには無縁、ともいえるのですが、祭り好きには規模も大きいですし、ビールを片手に楽しめる行事です。浴衣も多いのですが、近所かたこどもたちをつれて家族で訪れる方に紛れて仕事帰りに立ち寄ったような方も多く見受けられます。

Img_5085  来場者を迎える駐屯地司令、兼ねて中部方面後方支援隊隊長保坂收1佐。ロジスティクスこそが全ての任務を達成する上で不可欠な戦闘支援であるので、そうした意味ではこの駐屯地の重要性は非常に大きいといえますし、また京都市において大規模災害があった際には即応して対処するのもこの桂駐屯地の所在部隊です。

Img_5043  陸上自衛隊の駐屯地、こういう場所では、スリや置き引き、喧嘩などはありえないので安心ですね。しかも、迷子への対応も完璧です。盆踊り大会が行われた桂駐屯地ですが、聞いてみたところではこの地域では最大の盆踊り大会とのことで、駐屯地広報の発表では4500名もの人が集まったとのことです。

Img_5089  中部方面後方支援隊の本部が置かれる桂駐屯地は車両や火砲の重整備を行う駐屯地として知られ、師団や旅団での整備能力の限界を超えた大きな整備をにない、よって部隊全般の稼働率向上へ寄与することを目指します。また、中部方面輸送隊が駐屯している駐屯地としても知られ、JR東海道本線(京都線)の車窓から戦車輸送車が多数みることができる駐屯地でもあります。

Img_5090 桂駐屯地、中部方面隊管区でも有数の面積を誇る駐屯地として知られるのですが、一方で後方支援拠点ということもあり、戦闘部隊などは駐屯しておらず、駐屯地祭の規模もどちらかというと小規模な行事といえます。だからこそというべきでしょうか、あまり強い印象のない駐屯地なのですが、この日はどこもいっぱいです。

Img_5080 駐屯地司令が浴衣で来場者に挨拶します。背景に見えるノコギリ状の建物は1942年に建てられた格納庫で、現在の建築基準法では単一建造物として建設できる限界以上の大きさの建物ということですから、この種の倉庫としては日本最大級、ということになり、実はこの駐屯地の見所の一つだったりします。

Img_5098  中には補給品と用途廃止になった装備があふれていて、自衛隊の物量というものはいがいと大きい、ということを伝えてくれます。駐屯地司令は、迷彩服というイメージの強い陸上自衛隊ですが、こういう時は浴衣です。京都市唯一の駐屯地として災害の際に備えている隊員を代表して、来場者の方との交流を通じてお互いを知り合いたい、と挨拶を行い、いよいよ盆踊り大会の始まりです。

Img_5126京都は大学の街として知られていることもあり、盆踊り大会では中央の櫓を舞台に地元大学(桂だとどこだろう?)の演舞が行われます、続いて部隊付最上級曹長の音頭とともに盆踊りが始まりました。総務部、という看板も掲げられていましたが、このあとでほかの部署もでてくるのかと少し期待してみたりしました。

Img_5167 それにしても行事は混雑しています。ビール片手に一杯、というつもりできたのですが、行列行列行列。ううむ、屋台焼きそば、屋台唐揚げ、その他をもりもり頬張りながらこの地域の盆踊りを堪能しようとも思っていたのですけれども、ここまで混雑しているとちょっと並んで買うのはためらってしまいます。

Img_5129 会場を歩いてみますとさすがは自衛隊駐屯地の納涼行事といいますが、並んでいるテントが全部オリーブドラブ、使われている調理器具には野外調理器具も出ていまして、そこここで行われている夏祭りや盆踊り行事とは、このあたりが全然違うというのがこうした駐屯地の雰囲気というか醍醐味というか。

Img_5173  桂駐屯地は、ポプラ並木とサクラ大路が有名な駐屯地でして、阪急京都本線から木々に隠れているあたりにグラウンドがあって、そこが会場となっています。JR東海道本線京都線から見える桂駐屯地とは倉庫や整備区画、資材置き場、モータープールとを挟んで反対側のところなのですね。

Img_5180  このグラウンドが、駐屯地祭が行われる場所で、晴天行事はここで、雨天行事の場合は、1942年に建てられた倉庫の中で行われます。観閲行進はさすがに倉庫内では行えないのですけれども、装備品展示は倉庫内で行えるので、屋内の装備品展示という非常に稀有なものを見れたのもこの桂駐屯地です。

Img_5185 この日の一般公開では、もう少し早い時間にいけば野外で軽音楽の演奏のようなものを行っていたのでしょうか、舞台は撤収中でしたがマイケルジャクソン風の格好をした隊員が子供たちに人気を集めていました。帽子を取られたり、引っ張ったり、いろいろされていたようなのですけれども、いや、人気でしたよ。

Img_5161 歩いていても混雑は変わらず、水分補給が必要になってきました。そこで、会場端の方をみてみますとなるほど、駐屯地祭の時と同じ場所に同じ自販機が稼働していました。コーラは売り切れでしたが、こういうときはミネラル分を補給です、ということで麦茶を購入、一気に飲み干します。

Img_5153 一通りまわってみたので、今度は保存車両地区に足を運びました。かつては、61式戦車と74式戦車が並んでいたのですけれど、非常に残念なことに61式戦車の方は撤去されていて、代わりに75式自走榴弾砲が74式戦車とともに、夜の駐屯地にゲートガードとして並んでいました。

Img_5160  保存車両でも解体しなければならないほどに老朽化が酷かったということなのでしょうか、それともどこかほかの分屯地あたりに余生を送っているのでしょうか。日本が戦後初めて開発した国産戦車の生き残りの一両が消えてしまったのは少々残念ですが、しかし、新しい75式を歓迎です。

Img_5198  北部方面隊に配備されていたこの自走榴弾砲は、リボルバー式弾庫を備えていて、非常に素早い連続射撃が可能となっている陸上自衛隊自慢の装備なのですが、その分取得費用が高く、ソ連にもっとも近く、自走火砲の必要性が高かった北部方面隊の専用装備となっていました。

Img_5219 砲の射程というのは火薬の燃焼効率と装薬の強度が大きく影響しまして、燃焼効率を向上させるには砲身の長さを、強力な装薬を用いるには砲身を頑強なものとすることで対応します。75式の制式化は1975年で、当時としてはこの30口径の155mm砲は長砲身、射程も大きかったのです。

Img_5211  しかし本土部隊に39口径のFH70が採用されていることからわかるように、世界の主流は39口径砲の時代になり、陸上自衛隊は新しくより砲身が長い52口径の99式自走榴弾砲を制式化するにいたり、北部方面隊から交代で除籍された75式自走榴弾砲がこちらに展示車両として回ってくるようになった、というわけです。一部光学照準器は取り外されていますが、こちらではなかなかみれなかった車両です。

Img_5204  74式とともに、70年代の陸上自衛隊を代表する装備ですが、なるほど、こういう盆踊り行事では、普段駐屯地祭に足を運ばないような方もいらっしゃるようで、並ぶ74式戦車をみて、ああ、いまの戦車は昔の戦車よりも大きくて本当に強そうだ、ということを呟かれているご老人もいらっしゃいました。

Img_5201  昔の戦車とは、61式でしょうか、M4でしょうか、まさか97式や95式かな?と思ったりもしたのですが、そういう野暮なことは聞いたりは出来ませんめ。これを撮りに来たのが目的の一つといえるほど夜の闇に照らし出された74式や75式は、日中の駐屯地祭とはまた違った精悍な面持ちを見せてくれます。

Img_5189  もう一度まつり会場に足を運んだのですが依然として混雑しているので、夕食は別のところで、と駐屯地を出ました。桂駐屯地へは、最寄り駅が阪急洛西口駅で、高架化工事の準備が進む、今しかみれない風景を歩いて正門へ向かったのですが、東海道本線に新しくJR桂川駅が開業しているので、ちょっと行ってみました。

Img_5229  学研都市線で踏切安全確認があった影響で東海道本線京都線も遅れていたのですが、通過する223系新快速を撮影していると、やや遅れて221系がやってきました。夜風とともに新駅の雰囲気を堪能していたそのときにも、駐屯地からは祭り囃子が風に乗ってホームを流れ、真夏の冷涼感を味わうことができました次第です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成二十二年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報3

2010-08-12 22:16:24 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 酷暑を縫って台風と豪雨の襲来、如何お過ごしでしょうか。盆休みの時期とあって駐屯地一般公開等はありませんが、シンガポール艦の入港と厚木基地一般公開があります。

Img_7792  横須賀基地をシンガポール海軍フリゲイト、スプリームが親善訪問へ入港します。艦長のタンウェイミン中佐指揮下のスプリームは、18日1000に横須賀入港、24日1000に横須賀出航の予定で入港します。海上自衛隊からは護衛艦はるさめ、が艦長川上司朗2佐以下を以てホストシップとして歓迎することとなっています。

Img_7787  スプリームは、写真のステッドファストと同じシンガポール海軍フォーミダブル級の六番艦で、満載排水量3200㌧、ステルス性と多機能レーダーを備えたシンガポール海軍初の大型水上戦闘艦です。大型輸送艦、潜水艦の整備を進めるシンガポール海軍は東南アジア地域でも筆頭に並ぶ勢力を有していますが、その中でもスプリームは2009年に就役した最新鋭艦です。

Img_6156  陸上自衛隊の盆踊り行事はひと段落したようです。今月末に幾つかありますが、今週末はありません。しかし、米海軍の厚木航空基地で盆踊りが行われるようです。14日に行われる厚木基地盆踊り大会は、アメリカンフェスティバル2010というかたちで行われるとのことで、ちょっと詳細は分かりませんが情報が出ていました。

Img_7745  厚木基地アメリカンフェスティバル&盆踊り2010は、開門が1200ということですから、盆踊り大会としてはちょっと早めの開門です。写真は昨年の横田基地一般公開、上の写真は岐阜基地盆踊りの様子ですが、エプロン地区は一般公開されるのでしょうか、厚木の一般公開ということで注目といえます。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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