北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

協同転地演習、第12旅団中心に現在実施中、北方では第7師団が既に今夏実施

2011-10-12 23:36:51 | 防衛・安全保障

◆規模縮小下でも展開能力強化へ演習実施

 陸上自衛隊の緊急展開能力を高める協同転地演習が現在第十二旅団により実施されているとのことです。

Img_3061 今年度は第七師団が北方から本州へ、本土からは第十二旅団が北海道へ展開するとの演習計画が立てられていたようですが、東日本大震災に伴い全自衛隊の演習計画がそのままこれまでの練成を試す機会となりました。結果、中止されるのか、と思いましたが規模縮小とはなりましたが、演習は行われることとなった模様。

Img_603910/6日付 ニュース トップ :30普連基幹で協同転地演習 ・・・ 陸自東部方面隊による23年度協同転地演習(連隊等転地)が10月3日から王城寺原演習場などで始まった。同10日まで。  渡部悦和東方総監を担任官に、30普連(新発田)基幹の人員約1500人、車両等約300両が参加。

Img_0849
往路は10月3日から8日まで東部方面区から王城寺原演習場等まで車両による陸路機動と航空機による長距離機動を行い、演習場に集結後は11日までヘリボン堡設定や防御の訓練、9日から15日までは特科の実弾射撃訓練を実施。復路は11日から16日まで、陸空路の長距離機動で帰隊する
。 ttp://www.asagumo-news.com/news/201110/111006/11100612.html

Img_6045 協同転地演習が現在実施されているようです。本年は三月の東日本大震災の発災により、文字通り全自衛隊が東日本の被災地へ展開するという、これまでの協同転地演習において確認練成されてきた展開に関する運用が試される初めての実践、いや実戦の場となりました。例年は初夏から初秋にかけて実施されるのですが、演習実施の時期が遅れたのは、これは理ゆうを述べるまでもないでしょう。

Img_0878 しかし、連隊規模の移動、そうはいいつつも旅団普通科連隊ですから定員は550名程度、砂即ち1500名の機動ということはそれだけ支援部隊の多数が参加しているということになるのですけれども、王城寺原演習場は東北方面隊第六師団管区、東部方面隊第十二旅団管区とは方面隊こそ違いますが隣同士の管区にあたります。

Img_5874
例年は部隊の大半が本州から北海道へ展開しますから比較した場合に規模は相当縮小されているということがわかります。加えて第12旅団は東日本大震災に際して旅団を挙げて福島県の災害派遣を命じられ、対応しました。この部隊を演習に投入する、ということは常に有事に備える、という陸上自衛隊の固い決意の表れ、といえるかもしれません。

8Img_2754/11日付 ニュース トップ :7師団が転地演習
・・・ 陸自北部方面隊は8月29日から9月9日まで、協同転地演習(師団等転地)を行う。  千葉徳次郎北方総監を担任官に、7師団(東千歳)基幹の人員約3000人、車両等約1000両(うち火砲20門と、71、72戦連の戦車約100両)が矢臼別演習場まで陸路で機動訓練を行い、演習場に集結後は攻撃訓練など師団規模の演習を実施。
その後、復路の機動を行い、9月9日までに原隊に戻る予定。 ttp://www.asagumo-news.com/news/201108/110811/11081110.html

Img_3613今年夏に第七師団が記事のとおり協同転地演習を行っています。例年協同転地演習は、北海道の部隊が本州へ、そして本土の部隊がほか移動へ展開するという演習構成となっていて、かつて冷戦時代に本土から部隊を北海道へ急速展開させる北方機動演習をさらに強化したのが協同転地演習です。しかし、今年はやはり北海道内で実施というほどに縮小されていました。

Img_2278
 この規模でしたら、回数を分けて、という意味でしたら平時にも十分行われている演習、という印象でもあるのですが、演習計画を卆無く熟す事により、東日本大震災という未曽有の地震災害に際しても自衛隊の備えの盤石さを周辺諸国に示す、という狙いは、やはりあるのでしょう。

Img_3695 震災発災から史上空前の規模、すでに延べ人数では1000万名の派遣を超えている派遣に際して、周辺国からの偵察などは継続されていたことから、今侵攻されたら、という危惧は第一線ではあったと聞きます。無論、軍隊が海を渡る難易度と準備に要する期間を考えれば難しいものはあるのですが、理屈では納得させられない責務、ということがある、そういうことでしょうか。

Img_4311 同時に考えなければならないのは、今後考えられる日本国家への脅威、これは南西諸島への限定進行や潜在的脅威として北方への遠い将来での直接武力侵攻の危険、更には東海東南海南海地震による津波災害等が考えられますので、ヘリコプターによる空中機動力、装甲機動部隊の強化による機動打撃力強化という意味での動的防衛力整備が真剣に検討されなければなりません。この点、あらゆる機会を利用してその課題模索に用いられるべきと考える次第です。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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東北地方太平洋沖地震・東日本大震災発生から七ヶ月

2011-10-11 23:09:32 | 防災・災害派遣

◆次の災害への視点は復興と同様に重要

東日本大震災から七か月が経ちました。次の災害への備えは今回の復興と同程度に重要です、行わなければ復興途上に復興を粉わなければならない地域が増えることを意味するのですから。

Img_2713 自衛隊関連行事を見れば、すべての行事は黙祷とともに始まり、訓示祝辞共に東日本大震災に関するものが筆頭に挙げられ、この地震による被害の大きさと、最後の護りは自己完結能力と機動力を求められている国軍でしかない、ということを認識させられる次第です。如何に民間防衛を充実させようとも、その地域が許容できる被害以上の損害を被れば外からの支援救援が不可欠であることを端的に示すとともに、限りある時間を生産活動に費やし、防災はもちろん、政治参加の時間さえ捻出できないこの国の現状では、必然の結果といえるでしょう。

Img_9845 先日、東北方面隊創設記念行事の際、松島へと足を延ばしました。松島は日本三景の一つに挙げられる名所で、一見瓦礫が撤去されたのちの町並みは変哲無いものと見えるのですが、街の基盤というべき部分は津波による破壊の痕跡が多く、そうでない場所については、文字通り津波に浚われたことにより更地となってしまった地域があり、松島という多島地形が幾分か軽減し、地形的に直撃を免れたという地域でも被害が想像を超えており、更に直撃を受けた地域を考えれば、これら地域の復興はどうなるのか、改めて現実を見せつけられた次第です。

Img_1709 一方で、今月行われました第十師団創設記念行事守山駐屯地祭の当日、駐屯地売店に並べられていた中日新聞の一面は、東海地震と連動する三連動地震が発生した想定において発生る津波は名古屋市には最大8メートルに達するという大見出しがあり、より震源に近い世界最大級の自動車輸出港豊橋を蹂躙した津波は中京地区の心臓部を名古屋駅付近まで抉ると同時に、遠く離れて同じ時間帯には紀伊半島、四国を蹂躙した大津波が阪神地区沿岸部を5メートルの高さで貫き、梅田と難波までもを水没させる、と先に報じられています。

Img_7988 さて、これからの日本を考えた場合、国土の地形や地質、気候などを考えた場合、どうしても災害との共生無くして日本という国家はあり得ないということは強く認識されるべきです。何故なら日本という国土そのものが大規模な火山活動を伴う造陸運動の賜物であり、繰り返す大地震と土石流、巨大噴火と火砕流が国土に平野をもたらし、大洋に面した豊かな海と豊穣の大地が人々を育むと共に、海洋を最大の防壁として外部からの侵入を拒み今日の世界に開かれた富める国に至ったわけですから。

Img_5777 こうしたなかで、必然として生じる大災害は、その被害そのものは一義的に軽減する防波堤や耐震構造強化、そして直後から始まる救命救難措置、続いて二次災害を防ぐ事前備蓄と広域避難施設の整備、そして復興に至る都市再建計画とともに被害補償措置の充実による将来不安への軽減や短長期併用での人間の復興というべき政策的取組の普遍部分を今回の災害から抽出し、臨機応変な運用と組み合わせることで次の災害へ備えなければなりませんし、その端緒となるべき救命救難の部分については考えなければなりません。

Img_9192 上記のとおりの視点に続いて、自衛隊の能力についての言及を始めると、何故消防や自治体の防災能力強化で置き換えれないのか、という指摘は今日でも受けるのですが、これは消防と自治体が平時の社会基盤に依拠して活動するものであり、社会基盤を喪失した状況での自己完結能力はそもそも求めることができない、という実情があります。これは過去にも繰り返したことですが、自治体の役場が恒久的な自家発電能力を粉う施設を整備すれば批判されますし、消防も平時の火災に対応する車両よりも有事に対応する工作車両を多くそろえれば批判にさらされるでしょう。

Img_2992 想定される最大規模の災害に対して、日本国家としてはどのように取り組むのか、中央防災会議の新しい指針を定めるということがようやく本日決定した段階ですので、この方針が今後どのように進展するのかは未知数です。しかし、地域防災能力の醸成については、相当長期的な視点から即座に必要な施設の整備と関連法令の制定、これに連動した利害調整と運用形態の模索、中期的には都市計画の防災対応への改編とこれに伴う自治体や国の権限と予算の配分と調整、長期的には人材の育成と防災文化の再構築、これらを同時に進めてゆかなければならないと考えます。

Img_9982 すると、これら諸整備が完了するまでの期間は、やはり個々人の防災努力には限界があり、自衛隊の即応能力にしか依存でき無い現状がありますので、例えば現状の全国各地に部隊を駐屯させることで自治体との関係を強化しつつ地誌研究を実施、加えて動的防衛力整備という、掛け声だけではなく航空機、重車両、艦船とこれらを支援する基盤体制の構築、というものは重要になってくる訳です。こうした観点からは、例えば今後検討の課題に上がるだろう防衛計画の大綱改定に際して、”防衛防災上必要に応じて緊急展開する部隊規模、それに応じた機動力輸送能力後方支援能力の整備”という文言を盛り込み、国全体としてはこれらを包含した防災大綱というべきものの画定も視野に入れて物事を進める必要があるかもしれません。

北大路機関:はるな

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小松基地航空祭2011は中止 F-15増槽破裂事故の影響

2011-10-10 20:41:22 | 防衛・安全保障

◆F-15増槽破裂、求められる原因究明

 本年は小松基地開庁50周年という節目の年でしたので残念ではありますが、航空祭は中止です。開庁行事は関係者のみで後日実施されるようですね。

Img_91562011年10月8日 航空祭は中止となりました。 ・・・ 小松基地は、当基地所属F-15型機の機外燃料タンク落下事案の発生に伴い、再発防止に万全を期すため、今月29日(土)に予定していました小松基地開庁50周年記念行事を延期し、また今月30日(日)に予定していました航空祭を中止することといたしました。  機外タンクの落下により、住民の皆様に多大なご迷惑とご不安をあたえましたことを、深くお詫び申し上げます。  また、本事案の発生を真摯に受け止め、原因の究明と事故防止対策に万全を期し航空事故の絶無を期す所存です。  今後とも基地へのご理解をよろしくお願いしますhttp://www.mod.go.jp/asdf/komatsu/

Img_9000小松基地航空祭が中止されることが小松基地応報により公式に発表されました。先週金曜日に小松基地のF-15から落下式の増槽が脱落したとの一報が入り、続いて脱落ではなく破裂したものであるとの報道が入ってきまして、この状況は報道ヘリコプターによる空撮映像においても、増槽の一部分が残っており、訓練用に搭載していた訓練弾も同時に破損している様子が報じられたわけです。増槽は着脱式ですが、燃料が入った状態で落下した場合、高度にもよりますがさらに危険な状況が考えられるものの、そうした状況には至りませんでした。この状況については朝日新聞の報道が詳しいので引用してみましょう。

Img_8249F15落下部品、196点を回収 残り9点も捜索・・・ 航空自衛隊小松基地(石川県小松市)のF15戦闘機から燃料タンクなどが落下した事故で、同基地は8日までに、落ちた部品は計205点にのぼり、うち196点を回収したと発表した。残る部品を探すため、600人態勢で同県能美市山口町の下水処理施設周辺などを捜索している。 また同基地は、事故機が1998年10月に製造され、今年1月に同基地に配備されたことや、パイロットが43歳の3等空佐だったことを明らかにしたhttp://www.asahi.com/national/update/1008/OSK201110080032.html

Img_8989 米軍基地などを見ますと増槽は山積みになっていまして、消耗品であることが一目瞭然です。しかし航空自衛隊では消耗品としては用いられていないようで、一方で訓練空域が基地近傍において確保できずという日本の国情もありますため、航続距離を延伸させ十分な訓練時間を確保するために増槽を装着する、という実情もあるのですが、通常戦闘機同士による格闘、つまり近接戦闘を行う場合この増槽は空気抵抗となりますから投棄します。小松は訓練空域が比較的近いため、実情とは異なる可能性も高いことは認めるのですが、増槽はFRP製、空戦機動にさらされることで劣化した、という可能性はあるかもしれません。

Img_9151可能性だけを示してもきりがないのですが、少なくとも増槽への負担などを考えて訓練の制約が高まるということは避けなければなりませんし、緊急発進へ備えた対領空侵犯措置任務は継続されていますが、航空祭はもちろん通常の訓練飛行も制約されています。東日本大震災災害派遣へは航空自衛隊からも多数の隊員を災害派遣に出動させていますので、訓練計画は戦闘機部隊であっても大きな影響があったわけです。この点、原因究明とともに現在の訓練水準を維持できるよう、十分な施策と予算的措置が求められると考える次第。

北大路機関:はるな

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第七師団創設56周年記念行事 東千歳駐屯地祭2011 速報

2011-10-09 22:27:44 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

■機甲師団の創隊記念行事

本日陸上自衛地第七師団創設記念行事を見学に東千歳駐屯地へ行ってまいりました。毎度のことですが、一眼レフの写真が整理できておりませんので、コンパクトデジタルカメラG-12の写真により取り急ぎ掲載です。

Img_32831 第七師団といえば、本年が機甲師団改編30周年。しかし、2006年の駐屯地祭にて豪雨があり、撮影機材の防滴対策が当時未発達だった東宝は大打撃を受ける事となりました。撮影機材の故障こそありませんでしたが、レンズの曇りにより撮影継続がほぼ不可能となり、満足な写真が撮れなかったわけです。こうした事情もありまして、第七師団の行事写真を紹介する際に悪天候写真が多いのはそういう理由だったりします。

Img_3288 あの年を契機に、当方は最大限の防護措置をとり、そのおかげで豪雨のさなかに撮影した豊川駐屯地祭、浜松基地航空祭ではその時点でもっとも納得のいく撮影が出来、加えて機材の故障もなく、さらに富士総合火力演習予行における夜間演習でも豪雨の最中導入したばかりのカメラを含め機材保全と撮影を両立させました。

Img_3321 正直なところ、東千歳駐屯地祭は数ある陸上自衛隊駐屯地記念行事の中で、迫力は最大級を超えて、最大、といって過言ではないでしょう。富士学校祭よりも迫力では数段上です。特に戦車の迫力は、一列二列ではなく一挙に五列で観閲行進するのですから、ここに勝る行事というのは思いつきません。

Img_3360 第七師団は機甲師団ということで、起動打撃による衝撃力を用いた前線の強行突破による敵主力の殲滅と戦線の崩壊を意図していますので、特にあらゆる装備が機械化されているというのも驚きです。そしてその多くが本土では中々見ることのできない装備、というのも特筆すべきでしょう。

Img_3395 機械化は徹底しており、戦車部隊はもちろん、普通科部隊も完全機械化、迫撃砲まで自走化されていますし、対戦車中隊はそもそも装甲戦闘車に対舟艇対戦車誘導弾が装備されているので配置はなく、特科ももちろん全てが自走榴弾砲、高射特科には自走高射機関砲と誘導弾が配備されているのです。

Img_3520 ここまでは想像がつくのですが、施設大隊や通信大隊まで装甲化されている、というのは驚きなのではないでしょうか。それはもう数両単位で本部管理中隊に配備、というのは本土でも事例は挙げられるのですが、通信中継車両や施設小隊の車両まで装甲化、偵察隊には戦車が配備され、連隊の情報小隊には偵察警戒車、これはもう重装備のひとことに尽きるのではないでしょうか。

Img_3686 加えて、第一電子隊という陸上自衛隊唯一といえるだろう電子戦部隊がいますし、第一高射特科団本部があり、さらには北部方面混成団の本部も駐屯地の表札には挙げられていて、式典に参加しました。駐屯地はとにかく広大で、一般開放されている地区だけでも見えるものはそれはそれは、という状態になっていました。

Img_3777 観閲行進の迫力は写真でしか表現できないのですけれども、模擬戦も規模がすごく、それはもう実弾を使用しない点を除けば迫力は富士総合火力演習と比較してもなかなかのもでして、一進一退とともに戦車部隊の攻撃前進、そして機械化部隊の速度を活かした展示とともに、空包の連続発射、地雷原処理装置の発射や富士総合火力演習と同じ煙幕の展開、凄かった。

Img_3910 今年は文字通りの快晴に恵まれまして、第二航空団からは練習機による祝賀飛行も実施、こうしたなかで毎回速報を掲載する際に用いているコンパクトデジタルカメラにもこれまでにない用法を実際に試す事が出来まして、行事とともに写真以外に得たものも多かったです。さいっごになりましたが、本日現地でお世話になりました皆様、開門前に正門付近でいろいろお聞かせいただきました首都圏からの方、道内にお住まいで海外の航空祭にも多くの経験をお聞かせいただきました方、そして何よりも隊員の皆様にこの場を借りてお礼申しあげます、ありがとうございました。

北大路機関:はるな

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夕暮れの千歳基地と黄昏のイーグル、南千歳駅からの情景

2011-10-08 23:10:52 | 航空自衛隊 装備名鑑

■第二航空団の精鋭をホームから

 新千歳空港駅から札幌駅に向かう空港快速、その車窓から眺めた夕暮れがあまりに綺麗だったので、思わず南千歳駅で列車を降りてみました。

Img_3328  夕暮れと千歳基地、第二航空団が二個飛行隊のF-15イーグルとともに展開する日本の空における北辺を睨む要衝。日本海から津軽海峡を渡り雲を抜けた先に北の大地、天候は晴れとのことでしたが望見する空の絨毯の挟間には天候の移ろいが経験と異なる事を知らしめてくれます。

Img_3285  千歳基地、南千歳駅からは道路を隔てて先に広がることは経験上知っていたのですが、F-15Jが並ぶ様子と夕暮れの時間帯が期せずして重なった、ということは明日の撮影に際しての幸先の良さでしょうか、しかし昨日の小松基地における事故の関係上暫くは緊急発進以外の訓練が行うことが許されず、地上に留まったままであろうという状況、こちらもはやく解決されることを望みたいですね。

Img_3282  しばらく、もうしばらく千歳基地を眺めていたい、という気もしたのですが、秋の夕暮れというのは本当に一瞬にして日が落ちてしまう、ということをこの北海道でも改めて感じました。しかし北海道、もっと寒いと思いきや千歳空港到着の時点ではさほどでもなく、そう思いきや日没後には秋の身なりには強烈な寒さが、という気候、新鮮でした。

北大路機関:はるな

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平成二十三年度十月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2011.10.07-09)

2011-10-07 23:37:46 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

BS-211でまもなく零時からFate-Zeroの放映が始まるというなか、戦車が先かヘリコプターが先か。・・・今週末の行事です。

Img_2906 小松基地のF-15部品脱落事故の続報が気になりますが金曜日は行事紹介。今週末、最も大きな行事は東千歳駐屯地第七師団創設記念行事でしょう。戦車師団である第七師団は陸上自衛隊最大規模の戦車による観閲行進が行われ、普通科、特科、高射特科、施設科、すべて機械化されている迫力の行事です。例年五月に行われているのですが既に道北では雪が降り始め、札幌市内にもヒグマが越冬準備に出現するという季節の行事。

Img_0198 西部方面ヘリコプター隊創設記念行事が目達原駐屯地において実施されます。第三対戦車ヘリコプター隊のAH-64D戦闘ヘリコプターなどが展示を行う模様で、先日は第四対戦車ヘリコプター隊が痛対戦車ヘリコプターホブラを展示し注目を集めたようですが、目達原は南西諸島の安全を直接与る最前線部隊、ということで注目です。

Img_0618 今津駐屯地祭、京都近傍となると日曜日の今津駐屯地創設記念行事は注目の行事です。第三戦車大隊、第十戦車大隊と中部方面移動監視隊、中部方面無人偵察機隊などが駐屯、会場は決して広くはないですが遠くに市街戦訓練施設が見える中、例年74式戦車が迫力の模擬戦を展開してくれますので、空包発砲焔を収めたいところ。

Img_9381
 中部方面航空隊創設記念行事八尾駐屯地祭、京都から近傍の行事となりますと土曜日のこちらも忘れてはなりません。こちらは駐屯地が非常に広いのですが立地上開放可能な区域が狭いため、少々混雑する行事です。しかし、大編隊と立体模擬戦の迫力はなかなかのもの。逆光ですけれどもね。

Img_6381 豊川駐屯地創設記念行事。戦車の次は大砲だ、というところですが、しかし今年あたり行きたいのだけレオも、ちょっと行くことができない豊川駐屯地祭。・・・。いや、お会いしたい方もいるのだけれども、今年重なるとは思わなかったので・・・。迫力あります、第10特科連隊のFH-70連続射撃、第49普通科連隊や第10高射特科大隊、それに方面隊の施設群がいますから、大半の師団に配備されていない75式装甲ドーザーや92式地雷原処理車も見れます。

Img_1491 徳島航空基地創設記念行事、京都から近く、とは参りませんが南海特急サザンを南海フェリーに乗り換えればすぐの場所にあるのが徳島市。徳島航空基地にはTC-90練習機を運用する教育航空群があり、なかなかTC-90はほかの行事では見ることができませんので、お勧めといえばおすすめの行事、いや一度は行ってみたい行事。

Img_4277 館山航空基地開庁記念行事、房総半島南端にある海上自衛隊東日本回転翼航空部隊の総元締めが置かれている航空基地の行事。首都圏の行事というと入間基地を筆頭に混雑する印象があるのですが、館山の混雑度合いはそこまで大きくない、とのことです。体験搭乗とか、行われる模様。

Img_5652
 航空自衛隊行事として、冒頭のF-15部品脱落事故、訓練飛行が中止となるということでこちらが我が国の防空に関する影響が心配なのですが、これとは無冠気鋭に宮崎県の高畑山分屯基地にて、開庁記念行事が予定されていまして、近隣住民向けの一般開放だけということですが、行われるようです。このほか、行事でお気づきのものがありましたら、コメント欄でお教えいただければ幸い。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第2222号記念 F-X選定、将来の日本を護る航空自衛隊次世代戦闘機はどうあるべきか

2011-10-06 23:02:36 | 先端軍事テクノロジー

◆脱単一機種選定と戦略予備という視点が必要

今回がWeblog北大路機関創設以来2222号記事。そこでちょっと考える話題。次期戦闘機選定ですが、戦闘機国産技術の生産基盤という位置づけ、そして将来脅威への対応という視点から考えていく必要があるように思います。

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冒頭に松島基地の話題。いろいろとご指摘がある松島基地、某新聞の読者からの投稿に津波に逃げ遅れるような戦闘機では、という指摘が寄せられていたのですがいつもお世話になっている方が松島基地近隣住民の方から聞いたお話として一つ、松島基地の管制塔は耐震基準を満たしておらず、地震発生の時点で管制塔の要因が退避していた、ということです。管制塔に倒壊の危険性があった、ということになるわけでして、これならば仕方ないのではないか、と。当日は天候もかなり悪かったようでして、加えて管制塔の事情。今度地震があった場合には救難ヘリコプターだけでも発信できるような体制になっているはずとの指摘があったことを伝えますと、少なくとも松島基地近傍の住民ではなく単純に願望を述べているのでは、との声でした。松島救難隊は任務再開しているのか、ということになるわけですからね。

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さてさて、私事ながら昨年十二月、大村航空基地の近くで携帯電話を落としてしまいました。落としたのはGz-one携帯で数時間後には自動車に完全に破壊された状態で発見、基地祭等で知り合った多くの方との連絡手段を失いまして、急遽次期携帯電話選定が必要となったわけです。そこで、スマートフォンの導入を試みたのですがiphoneはソフトバンクへの切り替えが念頭にないため断念、最新のスマートフォンであるIS-03は発売開始直後であり入手が困難であったため、販売店よりGz-oneの最新機種を貸与により繋ぎとし、現時点ではIS-03を運用しています。魅力的な要素を含めているとはいえ運用基盤をそのまま使えない、ということで断念したiphoneはいうなればタイフーン、導入しようにも順番待ちで取得することができなかったIS-03はやはりF-35,入手できる最善策ということで導入したGz-one最新型はさしずめF/A-18E,というところでしょうか。

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さて、個人的に次期戦闘機選定において絶対に取得するべき航空機はF-35,と考えます。しかし、今回の次期戦闘機選定においてF-35を導入するのかと問われれば、その必要性は決して高くはない、と考えています。第一にF-35では後継機として導入までの時間が切迫しているF-4EJには到底間に合わないだろう、という実情があります。本年は航空自衛隊用のF-4EJ初飛行から40周年、米海軍によるF-4実運用開始から50周年という節目の年に当たり、そもそも21世紀初頭には一定の開発が進展しているはずであったF-35は現時点においても初度作戦運用への目途が立っていないため、端的に間に合わない、という実情が無視できないのです。優先的に日本へ供与、という可能性もあるにはあるようですが、しかし現時点で開発計画に参加しておらず、出資金も出していないので優先顧客ではない日本、今年納入されても億入れているといえるF-4の後継機に、間に合うという言い分はあり得ないと考える次第。

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そしてもう一つ。F-35は現在の航空自衛隊にあって、使いこなせないのではないのか、という一視点。加えてステルス機を対領空侵犯任務に充当するということによる周辺国からの視点。この二つの点を考えますと、F-35の導入というものはどうなのか、と考えるわけです。まず使いこなせるのか、という視点。F-35は当初挙げられたようなF-22戦闘機に対する廉価版、という位置づけではありません。無人機の完成を行い戦域情報管理を優位に進展させる、という従来の戦闘機には含まれない任務を達成し、加えて無人機や地上からの部隊による情報収集を支援し上級司令部に伝送する任務の中継、という任務が含まれているほか、初めてステルス性を活かした航空優勢確保という任務が含まれているわけです。

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航空自衛隊の戦闘機には陸上自衛隊の基幹連隊指揮統制システムとの連接はもちろん含まれていませんしそもそも近接航空支援任務にあたることができる機体も限られているわけです。加えて海上自衛隊の海幕情報システムとの連接についても今のところ言及はなく、可能性としてリンク16を連動させ、彼我情報を共有することが限度、というところでしょうか。また、航空自衛隊では限定的に無人機の運用を開始しつつある等状況にあるようなのですが、MQ-9のような近接航空支援なども包含した打撃力の一環としての無人機運用は全く考えられていません。F-35がF-15から運用される目標情報に基づいて戦力投射任務に対応できるのか、と問われれば、想定していない、というところが実情になっているように言えましょう。

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即ち、F-35の能力の極一部分しか発揮できず、そして運用する予定もないというわけです。いや、航空自衛隊はF-35導入とともに抜本的な戦域情報管理の体制確立を意図していて無人機も造成されるし、陸上自衛隊や海上自衛隊との連携も検討してはいるのだ、という情報をお持ちの方はご一報いただければ幸い、個人的にその情報を利用するものではありませんが、少なくとも今夜は安眠できます。ステルス機としてだけの性能のためにF-35を必要とする、というのはいわば、高性能なパソコンをただ単にワープロの後継機種として導入するだけのようなものです。

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正直、そこまで必要なものと考えることはできません。もう一つはステルス機としてのF-35は、どういったレーダーの性能を持っており、そしてどの程度レーダーに映るのか、F-35を導入していない、もしくはF-35を現実的な脅威として扱う空軍としてはどうしても得たい情報です。安易にこうした情報は漏えいしないようレーダーシステムやレーダー反射などについて一定の配慮は為されているでしょうが、別の脅威にさらされるわけです。こうした中で、ステルス機とは第一撃を担う戦力投射手段であるわけで、基本的に先制攻撃を行うことができない対領空侵犯措置任務にF-35を充当する必要性はないだろう、そう考えるのは当方だけなのでしょうか。むしろ、陸海空の統合運用と装備体系の進展とともに装備すべき機体、それがF-35だろう、というのが重要。

Img_3166結論として、航空自衛隊はF/A-18E,もしくはタイフーンを要撃機として数を揃えるべき、と考えます。数を揃える、しかし次期戦闘機は二個飛行隊所要だけではないのか、といわれるかもしれません。仰る通り。しかし、先の東日本大震災を契機に戦闘機戦闘訓練を担ってきた松島k地代四航空団のF-2B支援戦闘機18機が津波被害に遭い、うち12機が修理不能となっている現状を忘れてはなりません。F-2BはF-2支援戦闘機への機種転換を担うとともに戦闘機搭乗員としての機上訓練を担う戦闘機戦闘訓練を行う飛行隊だったことを忘れてはなりません。この代替機として潜在的に一個飛行隊の後継が必要になります。

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付け加えてもう一つ、防衛計画の大綱では現在一個飛行隊を基幹としている那覇基地第83航空隊の二個飛行隊基幹への増勢が挙げられています。航空自衛隊は、千歳基地、三沢基地、百里基地、小松基地、築城基地に二個飛行隊からなる航空団を配置、新田原基地に一個飛行隊からなる航空団を置いていますが、千歳はロシアから北海道への脅威を一手に担い、三沢は本州北部に定期的に飛来するロシア機への備え、百里は首都防空唯一の航空団ですし、小松は北朝鮮に対する日本海側唯一の航空団、築城は朝鮮半島と中国からの脅威を一手に引き受ける九州防空の要衝であり、新田原は九州から南西諸島北部を含め一個飛行隊で担う航空団、どこからも引き抜く余裕はありません。そこで那覇基地に一個飛行隊を増勢するならば、新編の必要性さえも出てくるのでは、ということでここに一個飛行隊の需要が浮上します。

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まあ、あまり前方の基地に部隊を集中するのはどうか、むしろ九州からの増援を重視してはという考えたさておき、そうでなくとも考えられるのは新田原の第五航空団を那覇に移転して新田原基地を飛行教導隊専用の基地、とする案もあるのかもしれませんが、これだけではなく加えて偵察航空隊の一個飛行隊所要、東日本大震災で国際されたRF-4の後継という意味も出てきますので、那覇の飛行隊を新田原からの移転、というようなスクラップ&ビルドで捻出した場合でも四個飛行隊、最大で五個飛行隊という所要が出ることになり、それならば、取得性、という単語も重視しなければならないのではないでしょうか。

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F/A-18Eかタイフーン、それならば冒頭のF-35が絶対必要、という論題はどうなったのだ、そう問われるかもしれません。そこで必要な視点は、F-35について、戦略予備としての運用が必要である、という信念です。要撃任務に充てるのではなく、情報共有への実験やステルス機対処のための試験、加えて対戦闘機訓練を大きく超えて無人機や海上自衛隊の護衛艦隊、陸上自衛隊の地対空ミサイル部隊との連携も視野に入れた航空優勢確保に充てる、要撃飛行隊でも、もちろん支援戦闘機部隊でもない航空総隊司令部飛行隊のような直轄運用を行う部隊としての運用、これが望ましい。

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F-35は後方の基地、日本では浜松基地か、潜在的に米海軍の厚木基地でしょうか、挙げられると思います。浜松基地などはE-767という戦略的に重要な航空機が、しかし三沢基地のE-2Cのような掩体に入れることなく運用されている基地でして、航空自衛隊では完全に安全な後方の基地、という位置づけにおかれている基地だと思います。ここに配備するべきだろう、と。変な話、第一航空団は新田原の第五航空団が戦闘機部隊を那覇に抽出されるというのならば、飛行隊を移して第五航空団を練習飛行隊にしてもいいのでは、と。そして第一航空団を全てのF-35を運用する戦略予備航空団に位置付ける。もっとも、機密性の高い航空機ですので、地下ハンガーなどを整備する必要が出てきてしまうのかもしれませんが。これは一見無謀にも思えるかもしれませんが、しかしF-4戦闘機代替分とF-2B支援戦闘機消耗分、RF-4偵察機代替分を全てF-35で置き換えようとすれば、一個飛行隊を対領空侵犯措置任務を念頭に18~24機で置き換えることは逆に財政負担が過剰となりすぎることは明白で、むしろ少数のF-35の導入を以てステルス機が絶対必要という条件とともに、現実的な戦闘機数の維持ということが可能になるわけです。

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いうなれば、F-Xは二機種の選定もあっていいのだろう、というわけです。やたら折衷案のような印象もあるのですが、F-35は必要である、しかし間に合わない。必要な機数を全て置き換えるのも難しい、特に戦闘機戦闘訓練所要の需要に単座型しかない機体はお呼びではありませんからね。F-35はいずれ導入する、そしてF-35を以て航空自衛隊は航空優勢確保一辺倒から脱却し協同交戦能力の確保における戦域絶対優位確立への重要な機体として戦略予備で運用し、将来的に一か所ではなく、文字通り動的防衛力として、必要な空域に神出鬼没にて展開し、必要な打撃力を行使する、という考え方。

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築城基地と百里基地のF-4飛行隊代替、そして松島基地のF-2B補填は理解できても、那覇基地の増強用と浜松基地に一個飛行隊を創設する、という方策は防衛大綱に明記された戦闘機定数に逸脱するのでは、と思われるかもしれません。尤も、この話題ですと、そもそも防衛系あくの大綱が明示された1976年には防衛に必要な最低水準を明示したのだから凌駕することは問題にならないのでは、という声はあるかもしれません。いいやそもそも戦闘機定数が少なすぎるのだから防衛大綱そのものの水準からしておかしい、こういう声もあるでしょうが、第一航空団に配備すべきというF-35,さしあたって一個飛行隊12機定数の二個飛行隊と予備機を含め30機程度が必要だろうと考えるのですが、こちらを実質的な能力実証機として作戦機に含めない、という選択肢があります。もちろん防衛計画の大綱そのものを改定してしまうという選択肢もあり得るのですけれども。

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 こうしたうえで、F-35については有償軍事供与により取得、整備基盤は嘉手納基地にF-15に換えて配備されるであろう機体、岩国基地に配備されるであろうF-35Cとともに日本飛行機などへ稼働率をある程度断念してでも最低限のものをということで共通運用基盤を構築することを重視し、次期戦闘機にとして喫緊に選定する機体をライセンス生産という意味合いで予備部品調達という高い運用能力を担保する戦闘機運用基盤を維持し、同時に200機以上の需要がある次期練習機T-Xの生産とともに防衛航空産業の維持を図る、ということが望ましいように考える次第です。それならば、F-35とパートナーを組むのはタイフーンとスーパーホーネットどっちがいいの?と問われるかもしれませんが、・・、いや、それはそれで難しいですよね、とお茶を濁して本日の結論とします。

北大路機関:はるな

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防衛省 大臣臨時会見概要 平成23年10月5日(15時32分~15時39分)

2011-10-05 23:09:31 | 防衛・安全保障

◆F-35に関する話題とともに

 次期戦闘機は機種不詳のまま防衛予算概算要求に盛り込まれていましたが、機種の選定が報道だけが先走っているという印象。

Img_98_79 一部報道において次期戦闘機選定がF-35優位で進展しつつある、もしくは内定が出されたとの報道が出ていますが、報道機関が同一であり今一つ信憑性の面から記載を避けてきたのですが、防衛大臣記者会見がありましたので、この機会に掲載。

Img_2832Q:今回の航空自衛隊の基地は初視察となったわけですが、航空自衛隊のF-Xの選定が課題としてありまして、国内の産業の保護を重視すべきだとの指摘もありますが、改めてF-Xについて、どういう点を重視して選定していくかお聞かせ下さい。

Img_0234A:この前も提案書を受け取ったばかりでございますし、これから専門的にしっかりと審査に入るということですから、私は、基本的には戦闘機ですから、戦闘機の本来の性能、目的に沿ったものかどうかということが、最も大事なことだと思います。

Img_7466その他に、今仰ったような国内の防衛産業を、これからレベルをしっかりと維持していくという観点で、できるだけ国内の関連するいろいろな企業の方々に、そういう業務にタッチできるような機会を与えるということも重要な要素だと思いますし、またいろいろな面で経費全体的な面を考えながら、しっかりと公平に厳正に選択することに尽きると思いますhttp://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2011/10/05.html

Img_9051 防衛大臣の入間基地視察に伴う防衛大臣臨時記者会見の様子です。中部航空方面隊司令部が置かれる入間基地を視察した、ということで記者からはF-X選定に関する質問も出ていたのですが、一部報道で行われていたようなF-35の有力視、という発言はなく現時点で公表の範囲内では白紙、というのが実情のようです。

Img_7104 他方で現行のF-4戦闘機の老朽化は深刻でして、そもそおWeblog北大路機関が開設したころには次期戦闘機選定が大詰め、となっていて然るべきだったのですけれども、遅れに遅れて今月、F-4ファントムは米海軍実戦配備五十周年を迎えるに至りました。航空自衛隊ではEJ初飛行四十周年です。

Img_0459 ステルス性の重要性は理解できるのですが、データリンク能力というソフト面での運用、特に無人機の指揮管制と情報の伝送、電子情報収集と戦域情報管理の端末としてのF-35に盛り込まれた能力は、単にステルス性が高いだけということで安易に対領空侵犯措置に用いた場合、逆に周辺国の情報収集の対象となり緊急発進回数に反映されてしまいそうで。

Img_8551 一方で国産能力ですが、それよりも重要なのは稼働率維持の運用基盤が日本に配置できるのか、というところでしょうか。極論しますと、本気で国産能力を維持するのでしたらT-4練習機の後継機に200機の需要がありますので、こちらで部品などある程度の生産能力維持はできますから、T-Xでは不可能な部分をどうするのか、という視点が重要になる気もします。他方で、運用基盤が日本に構築できなければ、稼働率の問題で韓国のような問題を抱えてしまいますので、現状ではこちらも重視するべきでしょう。まあ、明日あたり次期戦闘機の話題、今度こそもう少し深いところで考えてみようかな、と検討しています。

北大路機関:はるな

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自衛隊ハイチ安定化団PKO派遣任務、更に一年間の延長方針

2011-10-04 23:38:10 | 防衛・安全保障

◆半年程度の予定が二年間へ、更にアフリカ派遣へ
陸上自衛隊によるハイチ安定化弾PKO派遣がさらに一年延長されました。当初案では半年程度の計画だったのが二年に延長です。
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ハイチPKO、1年間再延長へ…政府・・・ 政府は、大地震があったハイチの復興支援のため、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づいて派遣している陸上自衛隊施設部隊の活動期限を2012年1月末から1年間、再延長する方向で調整に入った。 陸自施設部隊の派遣を検討中の南スーダンPKOについても、近く第2次調査団を派遣する方針だ。 ハイチPKOでは10年2月から約330人が、がれき除去や道路補修などを行っている。昨年、活動期限を延長したが、国連が再延長を求めていた。

Img_4612
今後は、撤収後を視野に現地住民にトラックや重機などの操作を教える訓練も行う方向だ。 一方、300人規模の派遣を想定している南スーダンPKOでは、2日までに帰国した第1次調査団の報告をもとに治安情勢や自衛隊へのニーズなどを分析するとともに、第2次調査団では数千キロに及ぶ物資補給路確保や宿営地選定に向けた調査を行う。物資の集積・輸送拠点となる可能性があるウガンダやケニアなどの周辺国も順次調査する。(2011年10月3日03時06分 読売新
聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111002-OYT1T00718.htm

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もともと半年程度の予定であった任務が二年に延長した、ということですが自衛隊の規模から、また編成などの面から外征を想定しておらず最小限度の人員以下しか認められていない状況下で、大隊規模の人員を交代要員を含め派遣させる体制に置く、ということはかなり難しいことです。今回の報道はこれに加えて、スーダン派遣に関する調査の開始も明記されています。記事にもあるようにスーダンというアフリカ大陸でのPKOを行うには必ず中継地点が必要となり、ここにも一定数の人員を派遣しなければなりませんし派遣すれば調整のために当該地域の上級部隊へも連絡要員の派遣が必要であり、もちろん交代要員も合わせて確保しなければなりません。
Img_3907
任務が増大する中で陸上自衛隊はこの15年ほどで定数は五万人近く削減されています。こうした中で任務のみ増大し、任務とともに長期展望なき政治主導のもと外交の失敗により周辺情勢の緊張かという状況を抱えています、一昔では陸上自衛隊の定数は十八万人だったわけです、それが十三万台にまで縮減され、そうした中の任務増大。また陸上自衛隊は全国に部隊を均等に配置する基盤的防衛力に依拠して防衛警備を行っており、安易に部隊を引き抜くことは重大な結果を生みます。

Img_8561
その端的事例が東日本大震災でして、専守防衛を念頭に編成された陸上自衛隊において展開能力は元々限られており、地点防御を念頭に電子装備や公社装備の充実、戦車と特科火砲の整備を行ってきているわけです。世界でも有数の災害大国である日本にあっては、基盤的防衛力を置き換えるにはアメリカ海兵隊並みの多数のヘリコプターを装備し人員の機動力強化による集合分散を迅速化し、その行動に共同しうる火力投射体系として航空打撃力を整備するほかないのですが、その動きはなく、どうやら動的防衛力整備を掲げた政権交代後の防衛大綱改訂は単なる思い付きだったようです。

Img_4888
 ここまで任務の増大を踏まえますと、これはもうアフリカ地域や中米地域といった、つまり全地球規模での海外派遣能力の付与を防衛計画の大綱に盛り込むべきではないか、という考えがわいてまいります。具体的には、海上自衛隊の輸送艦部隊を複数輸送隊を基幹とする輸送隊群、補給隊複数から編成される補給隊群とに拡大し、新しく統合支援艦隊を編成表に盛り込み、その数量に応じた補給艦や輸送艦の建造を実施してゆくべきでしょう。

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 航空自衛隊の輸送についてもC-2輸送機や遠距離大量貨物の輸送が可能なボーイング747-400の中古機取得による増勢、KC-767空中給油輸送機の強化による輸送能力抜本的強化に向けての必要輸送能力の画定などを盛り込み、防衛計画の大綱は政治決定ですから、これをもとに財務省の理解を得てゆく、という方針は、もうそろそろ出されて然るべきではないでしょうか。この任務と並行してソマリア沖海賊派遣任務が継続中であり、護衛艦不足から日本周辺での訓練への若干の影響が出た海域に、ここ数年間外国艦船の出現が多く報告されている、という話も先日耳にしました。

Img_0046特に東日本大震災発災当時は常時二隻の護衛艦派遣を念頭に交代時期が近いことから行動中の護衛艦二隻、海賊対処任務中の護衛艦二隻と補給整備中の護衛艦が二隻という自衛艦隊の護衛艦にあって一割以上が海賊対処任務に充当されているさなかに発災し、聞くところではやりくりには苦労があり、護衛艦隊司令官が地震発生後即座に全ての群司令を横須賀に呼び寄せ、タスクフォース編成を行った、ともいわれています。東日本大震災への災害派遣により訓練計画の根本的再編が求められている自衛隊にあって、現状のままの派遣体制でも苦労する部分があるにもかかわらず、陸上自衛隊においてはその任務増大が示唆されるという状況は、これは普通なのでしょうか。 そろそろ任務に応じた規模の整備、それが不可能ならば規模に応じた任務の維持、という視点も必要ではないか、そう考える次第です。

北大路機関:はるな

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防衛省、東日本大震災第三次補正予算に1620億円を要求

2011-10-03 23:02:38 | 防災・災害派遣

◆被災修理と車両減耗補填、次の震災への備え

 防衛省は9月13日に東日本大震災復興第三次補正予算へ1620億円を要求したとのことです。少々古い話題ですが、先月29日付の朝雲新聞に詳細が出ていましたので転載します。

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9/29日付 ニュース トップ 大震災3次補正予算 :施設や装備品の復旧と今後の備え1620億円要求 航空機 修理・取得630億円 車両など減耗分に360億円・・・ 防衛省は9月13日、東日本大震災の復旧復興に伴う政府の23年度第3次補正予算の要求分として約1620億円(契約ベース約4100億円)の内容をまとめ、与党部門会議に説明した。防衛省の3次補正要求は①施設や装備品等の復旧②活動に伴う減耗の回復と今後の活動への備えの充実③全国的な災害への対処能力の向上――を主な柱としている。 復旧関連経費では陸自多賀城、仙台、大和、霞目、霞ヶ浦各駐屯地の給水、電源などインフラの復旧、海自の大湊、八戸、横須賀各基地の護岸などの基地基盤の復旧、空自松島基地の復旧費などで約280億円(同380億円)。

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 被災した装備品等の復旧では、仙台空港近傍の会社で定期修理中、津波被害に遭った陸自のEC225LP特別輸送ヘリ1機と海自のT90練習機1機の取得のほか、空自松島基地で津波に遭った教育用F2B戦闘機18機のうち6機分のエンジン修理や関連器材、UH60J救難ヘリ1機分の取得など約630億円(同約1250億円)となっている。 損耗回復と今後の備えの充実関連経費では、災害派遣活動で減耗した装備品等の回復に約360億円(同約890億円)を計上。トラックなど各種車両の取得と損傷した化学防護車の更新(NBC偵察車)のほか、個人装具、業務用天幕などの各種需品器材、ヘリ映像伝送装置などの情報通信関連器材、線量計や化学防護衣などNBCテロ・災害対処器材の整備など。

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 また、海自のYS11M/MA輸送機3機の減耗回復のため新たな航空機を取得、輸送能力の向上を図るほか、空自のC1輸送機2機の減耗回復のためのC2次期輸送機2機の取得と航空機や艦船の維持整備のための部品の取得など。 今後の活動の充実関連では約210億円(同約1010億円)を計上。広域帯多目的無線機や衛星通信器材の整備、情報通信能力の向上のほか、放射線映像表示装置などの取得、原子力災害などへの対処能力の向上、特別機動船や航空関連器材の整備による部隊の機動力の向上、災害時の初動対応能力の向上、海中捜索用器材や人命救助セットの整備、津波災害などに対処する救助能力の向上など各種事業を進める。

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 全国的な災害対処能力の向上関連では、①原子力災害などへの対処能力向上に約10億円(同約80億円)で、無人機や無人車両の取得と陸自が装備する無人偵察機システムの原子力災害時に有効なセンサーの装備、遠隔操縦可能な施設作業システムなどの研究②災害派遣の際に活動拠点となる駐屯地・基地の整備にかかわる経費約130億円(同約430億円)で、本部庁舎等の耐震化の推進、非常用電源の確保など③その他約10億円(同約50億円)で後方支援用備品の整備や緊急登庁者支援備品の整備などを実施する


http://www.asagumo-news.com/news/201109/110929/11092903.html

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来年度防衛予算概算要求がだsだれたばかりではあるのですが、同時に概算要求を俯瞰した場合に災害派遣に関するものがあまり多くは盛り込まれていない、という印象でした。しかし、今回の補正予算で防衛予算の4%に匹敵する程度の復旧及び今後の災害派遣に関する要求がなされているようで、なるほど全体での対応、ということになるわけでした。あまり本題とは関係ありませんが、軍事費、という観点から見た場合、防衛費は微増と微減を繰り返している中で、補正予算というものはどういう位置づけに入れられるのか、軍事費の推移という観点から後輩に何かいい資料はないかと問われ各国比較する場合はどこまでが軍事費に含まれ、逆にどの程度までを本来軍事費に入れ、そして含めないべきなのかというものの指針が難しく、という話を少し思い出してしまいました。

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既に一次補正予算と二次補正予算において要求を行っていますので、その延長上にある、ということになります。特に今回注目するのはメーカー定期整備中に被災した要人輸送ヘリコプターと練習機についての新規調達分でしょうか、本来は保険に掛けてあるのですがエンジンが取り外された状態での津波被害に被災した航空機は飛行に供すことのできる器材ではないとの観点から保険金は支払われませんでした。この論調では一機50億円程度といわれしかしその価格に電装品やエンジンが含まれていなかったということで物議を呼んだF-35は航空機ではなくなってしまうではないか、ということが言いたくはなるのですが、その減耗分の補てんは防衛予算ではなく補正予算のほうで認可される、ということになったわけです。

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それならば修理費についてF-2Bの捻出も補正予算において行われるようですが、今回その六機分のエンジンなどの予算が盛り込まれています、こうしてみますと、さらに一歩進んで全損認定とされる12機の後継機にF-2Bは生産終了していますから別のF-Xについてその複座型を要求して戦闘機戦闘訓練課程用に充当、その分機種転換訓練は修理予定の6機を実戦部隊に回す形で第四航空団を再編してはどうか、とおもってしまいます。また、減耗分といいますと元々寿命が切迫していたRF-4偵察機が今回の災害派遣に伴う情報収集のための飛行で更に飛行寿命が切迫する状況に陥っていますので、後述する将来の災害派遣への備え、ということも踏まえF-Xに偵察能力が備わった航空機が選定されるのであれば、これをもって一個飛行隊分を要求する、という選択肢はあるやもしれません。この通りの話では、繰り返すことになるのですが今回の補正予算では将来の災害に備えた装備品調達が盛り込まれていることが大きな点となっています。

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次の災害への備え、例えば原子力災害への対策の装備というものはどうしても原発事故は起こらないとの想定に基づいて対策訓練の実施さえも電力会社と政府からの難色により実施できない期間が長くあったわけですので、当然予算要求において財務省からも否定的な見解が示されていました。新しく装備されるNBC偵察車にしても師団に特殊武器防護隊が編成されている部隊には配備されるものの化学防護隊編成のままの部隊には配備されないということが守山での説明で知りましたので、原子力災害に対しては線量測定さえも危険が伴う部隊というものは少なくなく残っているわけであり、実際に事態が生じたのだからこそ増強しなければならない装備、というものは思い切って要求するという姿勢は無視してはならないでしょう。

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 一方で、今回の東日本大震災ではその発災時に定数20の東北方面航空隊にあってか同数8機を以て任務にあたっていました。メーカー定期整備と罪状予備機はほかにじゃ感あったようです画家同期としては少なすぎ、ヘリコプター部隊の増加に対して機体数を造成せずスクラップ&ビルド方式での編成を行っていたことが今回もう少し注目されるべき事案として挙げるべきでしょう。ヘリコプター用映像伝送装置などは盛り込まれているようですが、方面ヘリコプター隊への多用途ヘリコプター20機体制の充足と、師団旅団飛行隊への当初計画通りの多用途ヘリコプター配備を、この際思い切って補正予算でUH-1の大量取得、というものも考えてはどうか、定員割れしていることにより任務に限界をきたし、全力を発揮したとしても定数充足時の全力として想定される能力は発揮できなかったのですから、決断してはどうか、とも考えてしまうわけです。

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このほか、無線などの通信確保に関する能力の充実と、そして無人航空機の導入による情報収取能力の強化が要求されており、こちらも本来は軍事機構に絶対必要とされる指揮系統維持のための通信確保、そして現代戦闘の結果を左右する情報優位の獲得という重要な措置を実現するために必要な部分とも重なるのですが、本土直接武力侵攻という状況以前に東日本大震災によりその能力の限界が指摘されたことを機会として、その能力限界を是正する、という点で考えてみると意味合いがわかってきます。

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 最後に一つ気になるのは補正予算でC-2輸送機二機が要求されている点です。C-2輸送機は来年度予算概算要求に二機が要求されていますが、今回の記事は第三次補正予算の扱いですので、防衛予算概算要求とは別枠で二機を要求し、概算要求の分とともに通れば一年間で四機を取得する、ということになるのでしょうか。ともあれ、防衛予算は自衛隊の規模に比して非常に少ない水準で推移してきたため、これまでは必要な装備であってもさらに優先する装備の取得のためにやむを得ず断念してきた部分を補てんすることができる機会となりました。そして自衛隊の規模は広大な国土に多くの災害危険地位を抱えつつ周辺国は冷戦時代と変化ないだけではなく地域的にはそれ以上の危険を有しているという、いわば内憂外患という状況にあります。多くの犠牲とともに多くの任務を果たした自衛隊には次の災害に備えるという、そしてその能力が最も重要な国家の防衛という任務を支える礎となるのですから、教訓を無為にしないよう要求する部分はしっかりとしてゆかなければなりません。

北大路機関:はるな

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