◆脱単一機種選定と戦略予備という視点が必要
今回がWeblog北大路機関創設以来2222号記事。そこでちょっと考える話題。次期戦闘機選定ですが、戦闘機国産技術の生産基盤という位置づけ、そして将来脅威への対応という視点から考えていく必要があるように思います。

冒頭に松島基地の話題。いろいろとご指摘がある松島基地、某新聞の読者からの投稿に津波に逃げ遅れるような戦闘機では、という指摘が寄せられていたのですがいつもお世話になっている方が松島基地近隣住民の方から聞いたお話として一つ、松島基地の管制塔は耐震基準を満たしておらず、地震発生の時点で管制塔の要因が退避していた、ということです。管制塔に倒壊の危険性があった、ということになるわけでして、これならば仕方ないのではないか、と。当日は天候もかなり悪かったようでして、加えて管制塔の事情。今度地震があった場合には救難ヘリコプターだけでも発信できるような体制になっているはずとの指摘があったことを伝えますと、少なくとも松島基地近傍の住民ではなく単純に願望を述べているのでは、との声でした。松島救難隊は任務再開しているのか、ということになるわけですからね。

さてさて、私事ながら昨年十二月、大村航空基地の近くで携帯電話を落としてしまいました。落としたのはGz-one携帯で数時間後には自動車に完全に破壊された状態で発見、基地祭等で知り合った多くの方との連絡手段を失いまして、急遽次期携帯電話選定が必要となったわけです。そこで、スマートフォンの導入を試みたのですがiphoneはソフトバンクへの切り替えが念頭にないため断念、最新のスマートフォンであるIS-03は発売開始直後であり入手が困難であったため、販売店よりGz-oneの最新機種を貸与により繋ぎとし、現時点ではIS-03を運用しています。魅力的な要素を含めているとはいえ運用基盤をそのまま使えない、ということで断念したiphoneはいうなればタイフーン、導入しようにも順番待ちで取得することができなかったIS-03はやはりF-35,入手できる最善策ということで導入したGz-one最新型はさしずめF/A-18E,というところでしょうか。

さて、個人的に次期戦闘機選定において絶対に取得するべき航空機はF-35,と考えます。しかし、今回の次期戦闘機選定においてF-35を導入するのかと問われれば、その必要性は決して高くはない、と考えています。第一にF-35では後継機として導入までの時間が切迫しているF-4EJには到底間に合わないだろう、という実情があります。本年は航空自衛隊用のF-4EJ初飛行から40周年、米海軍によるF-4実運用開始から50周年という節目の年に当たり、そもそも21世紀初頭には一定の開発が進展しているはずであったF-35は現時点においても初度作戦運用への目途が立っていないため、端的に間に合わない、という実情が無視できないのです。優先的に日本へ供与、という可能性もあるにはあるようですが、しかし現時点で開発計画に参加しておらず、出資金も出していないので優先顧客ではない日本、今年納入されても億入れているといえるF-4の後継機に、間に合うという言い分はあり得ないと考える次第。

そしてもう一つ。F-35は現在の航空自衛隊にあって、使いこなせないのではないのか、という一視点。加えてステルス機を対領空侵犯任務に充当するということによる周辺国からの視点。この二つの点を考えますと、F-35の導入というものはどうなのか、と考えるわけです。まず使いこなせるのか、という視点。F-35は当初挙げられたようなF-22戦闘機に対する廉価版、という位置づけではありません。無人機の完成を行い戦域情報管理を優位に進展させる、という従来の戦闘機には含まれない任務を達成し、加えて無人機や地上からの部隊による情報収集を支援し上級司令部に伝送する任務の中継、という任務が含まれているほか、初めてステルス性を活かした航空優勢確保という任務が含まれているわけです。

航空自衛隊の戦闘機には陸上自衛隊の基幹連隊指揮統制システムとの連接はもちろん含まれていませんしそもそも近接航空支援任務にあたることができる機体も限られているわけです。加えて海上自衛隊の海幕情報システムとの連接についても今のところ言及はなく、可能性としてリンク16を連動させ、彼我情報を共有することが限度、というところでしょうか。また、航空自衛隊では限定的に無人機の運用を開始しつつある等状況にあるようなのですが、MQ-9のような近接航空支援なども包含した打撃力の一環としての無人機運用は全く考えられていません。F-35がF-15から運用される目標情報に基づいて戦力投射任務に対応できるのか、と問われれば、想定していない、というところが実情になっているように言えましょう。

即ち、F-35の能力の極一部分しか発揮できず、そして運用する予定もないというわけです。いや、航空自衛隊はF-35導入とともに抜本的な戦域情報管理の体制確立を意図していて無人機も造成されるし、陸上自衛隊や海上自衛隊との連携も検討してはいるのだ、という情報をお持ちの方はご一報いただければ幸い、個人的にその情報を利用するものではありませんが、少なくとも今夜は安眠できます。ステルス機としてだけの性能のためにF-35を必要とする、というのはいわば、高性能なパソコンをただ単にワープロの後継機種として導入するだけのようなものです。

正直、そこまで必要なものと考えることはできません。もう一つはステルス機としてのF-35は、どういったレーダーの性能を持っており、そしてどの程度レーダーに映るのか、F-35を導入していない、もしくはF-35を現実的な脅威として扱う空軍としてはどうしても得たい情報です。安易にこうした情報は漏えいしないようレーダーシステムやレーダー反射などについて一定の配慮は為されているでしょうが、別の脅威にさらされるわけです。こうした中で、ステルス機とは第一撃を担う戦力投射手段であるわけで、基本的に先制攻撃を行うことができない対領空侵犯措置任務にF-35を充当する必要性はないだろう、そう考えるのは当方だけなのでしょうか。むしろ、陸海空の統合運用と装備体系の進展とともに装備すべき機体、それがF-35だろう、というのが重要。
結論として、航空自衛隊はF/A-18E,もしくはタイフーンを要撃機として数を揃えるべき、と考えます。数を揃える、しかし次期戦闘機は二個飛行隊所要だけではないのか、といわれるかもしれません。仰る通り。しかし、先の東日本大震災を契機に戦闘機戦闘訓練を担ってきた松島k地代四航空団のF-2B支援戦闘機18機が津波被害に遭い、うち12機が修理不能となっている現状を忘れてはなりません。F-2BはF-2支援戦闘機への機種転換を担うとともに戦闘機搭乗員としての機上訓練を担う戦闘機戦闘訓練を行う飛行隊だったことを忘れてはなりません。この代替機として潜在的に一個飛行隊の後継が必要になります。

付け加えてもう一つ、防衛計画の大綱では現在一個飛行隊を基幹としている那覇基地第83航空隊の二個飛行隊基幹への増勢が挙げられています。航空自衛隊は、千歳基地、三沢基地、百里基地、小松基地、築城基地に二個飛行隊からなる航空団を配置、新田原基地に一個飛行隊からなる航空団を置いていますが、千歳はロシアから北海道への脅威を一手に担い、三沢は本州北部に定期的に飛来するロシア機への備え、百里は首都防空唯一の航空団ですし、小松は北朝鮮に対する日本海側唯一の航空団、築城は朝鮮半島と中国からの脅威を一手に引き受ける九州防空の要衝であり、新田原は九州から南西諸島北部を含め一個飛行隊で担う航空団、どこからも引き抜く余裕はありません。そこで那覇基地に一個飛行隊を増勢するならば、新編の必要性さえも出てくるのでは、ということでここに一個飛行隊の需要が浮上します。

まあ、あまり前方の基地に部隊を集中するのはどうか、むしろ九州からの増援を重視してはという考えたさておき、そうでなくとも考えられるのは新田原の第五航空団を那覇に移転して新田原基地を飛行教導隊専用の基地、とする案もあるのかもしれませんが、これだけではなく加えて偵察航空隊の一個飛行隊所要、東日本大震災で国際されたRF-4の後継という意味も出てきますので、那覇の飛行隊を新田原からの移転、というようなスクラップ&ビルドで捻出した場合でも四個飛行隊、最大で五個飛行隊という所要が出ることになり、それならば、取得性、という単語も重視しなければならないのではないでしょうか。

F/A-18Eかタイフーン、それならば冒頭のF-35が絶対必要、という論題はどうなったのだ、そう問われるかもしれません。そこで必要な視点は、F-35について、戦略予備としての運用が必要である、という信念です。要撃任務に充てるのではなく、情報共有への実験やステルス機対処のための試験、加えて対戦闘機訓練を大きく超えて無人機や海上自衛隊の護衛艦隊、陸上自衛隊の地対空ミサイル部隊との連携も視野に入れた航空優勢確保に充てる、要撃飛行隊でも、もちろん支援戦闘機部隊でもない航空総隊司令部飛行隊のような直轄運用を行う部隊としての運用、これが望ましい。

F-35は後方の基地、日本では浜松基地か、潜在的に米海軍の厚木基地でしょうか、挙げられると思います。浜松基地などはE-767という戦略的に重要な航空機が、しかし三沢基地のE-2Cのような掩体に入れることなく運用されている基地でして、航空自衛隊では完全に安全な後方の基地、という位置づけにおかれている基地だと思います。ここに配備するべきだろう、と。変な話、第一航空団は新田原の第五航空団が戦闘機部隊を那覇に抽出されるというのならば、飛行隊を移して第五航空団を練習飛行隊にしてもいいのでは、と。そして第一航空団を全てのF-35を運用する戦略予備航空団に位置付ける。もっとも、機密性の高い航空機ですので、地下ハンガーなどを整備する必要が出てきてしまうのかもしれませんが。これは一見無謀にも思えるかもしれませんが、しかしF-4戦闘機代替分とF-2B支援戦闘機消耗分、RF-4偵察機代替分を全てF-35で置き換えようとすれば、一個飛行隊を対領空侵犯措置任務を念頭に18~24機で置き換えることは逆に財政負担が過剰となりすぎることは明白で、むしろ少数のF-35の導入を以てステルス機が絶対必要という条件とともに、現実的な戦闘機数の維持ということが可能になるわけです。

いうなれば、F-Xは二機種の選定もあっていいのだろう、というわけです。やたら折衷案のような印象もあるのですが、F-35は必要である、しかし間に合わない。必要な機数を全て置き換えるのも難しい、特に戦闘機戦闘訓練所要の需要に単座型しかない機体はお呼びではありませんからね。F-35はいずれ導入する、そしてF-35を以て航空自衛隊は航空優勢確保一辺倒から脱却し協同交戦能力の確保における戦域絶対優位確立への重要な機体として戦略予備で運用し、将来的に一か所ではなく、文字通り動的防衛力として、必要な空域に神出鬼没にて展開し、必要な打撃力を行使する、という考え方。

築城基地と百里基地のF-4飛行隊代替、そして松島基地のF-2B補填は理解できても、那覇基地の増強用と浜松基地に一個飛行隊を創設する、という方策は防衛大綱に明記された戦闘機定数に逸脱するのでは、と思われるかもしれません。尤も、この話題ですと、そもそも防衛系あくの大綱が明示された1976年には防衛に必要な最低水準を明示したのだから凌駕することは問題にならないのでは、という声はあるかもしれません。いいやそもそも戦闘機定数が少なすぎるのだから防衛大綱そのものの水準からしておかしい、こういう声もあるでしょうが、第一航空団に配備すべきというF-35,さしあたって一個飛行隊12機定数の二個飛行隊と予備機を含め30機程度が必要だろうと考えるのですが、こちらを実質的な能力実証機として作戦機に含めない、という選択肢があります。もちろん防衛計画の大綱そのものを改定してしまうという選択肢もあり得るのですけれども。

こうしたうえで、F-35については有償軍事供与により取得、整備基盤は嘉手納基地にF-15に換えて配備されるであろう機体、岩国基地に配備されるであろうF-35Cとともに日本飛行機などへ稼働率をある程度断念してでも最低限のものをということで共通運用基盤を構築することを重視し、次期戦闘機にとして喫緊に選定する機体をライセンス生産という意味合いで予備部品調達という高い運用能力を担保する戦闘機運用基盤を維持し、同時に200機以上の需要がある次期練習機T-Xの生産とともに防衛航空産業の維持を図る、ということが望ましいように考える次第です。それならば、F-35とパートナーを組むのはタイフーンとスーパーホーネットどっちがいいの?と問われるかもしれませんが、・・、いや、それはそれで難しいですよね、とお茶を濁して本日の結論とします。
北大路機関:はるな
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