北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

練習艦隊遠洋航海部隊無事帰国へ,環太平洋合同演習RIMPAC2020参加の第2護衛隊は出航へ

2020-07-21 20:01:43 | 防衛・安全保障
■真価問われる流行禍下の関係
 かしま無事日本へ帰国し、いせ環太平洋合同演習へ。新型コロナウィルスCOVID-19流行禍に世界が鎖国を進める中に海の交流は続く。

 海上自衛隊練習艦隊の遠洋航海部隊が22日、帰国します。練習艦隊司令官八木浩二海将補隷下、練習艦かしま、練習艦しまゆき、2隻が第70期一般幹部候補課程修了者155名を乗艦させ44日間、19000kmの航海を実施しました。しかし、今年の遠洋練習航海は異例の航路を辿りました、理由はやはり、新型コロナウィルスCOVID-19流行禍の影響でした。

 いせハワイへ出航。COVID-19の世界的な流行禍とともに南シナ海や東シナ海と日本周辺海域では中国海軍や中国公船の行動が活性化しており、沖ノ鳥島周辺での国連海洋法条約違法測量を実施、このままでは沖ノ鳥島が第二の尖閣諸島のような軍事圧力に晒される懸念があり、日本は海洋自由原則を共有する友好国同盟国との協力を強化せねばなりません。

 いせ、あしがら。海上自衛隊はRIMPAC2020環太平洋合同演習へ参加するべく、いせ、あしがら、第2護衛隊司令北川敬三1佐を指揮官に護衛艦2隻を来る23日に出航させます。RIMPAC2020は8月17日から31日まで実施され、艦隊は9月18日に帰国予定という。日程から逆算すると帰国前に二週間の検疫隔離を盛り込んだ上での派遣といえるでしょう。

 RIMPAC2020,実は新型コロナウィルスの感染拡大、WHO世界保健機関のパンデミー世界的流行禍宣言とともに参加各国からは今年度のRIMPACを中止しては、という提案が数多くあったとされますが、アメリカ海軍は、寧ろこうしたときだからこそ各国連携を強化させなければならない、と実施が決定され、海上自衛隊も感染対策を徹底し参加することに。

 かしま以下新任幹部と乗員含め550名、全員無事という。全員無事というのは遠洋航海においても徹底した感染対策によりCOVID-19感染者が出なかった事を示す。なお、異例ではあるのですが本年度の遠洋航海は前期と後期にわかれており、今回実施された訓練は前期訓練となります。参加人員を刷新して再度の後期訓練が行われる、ということでしょう。

 練習艦隊は6月9日に呉基地を出航しました。この時点で異例ということが端的に示されています、例年遠洋航海は東京晴海埠頭から出航します、そもそも近海練習航海を経て晴海に至るのですが今年は晴海に入港していません。練習艦隊は先ず6月13日に沖縄の勝連基地に入港し補給を行います、コロナウィルス対策にて補給のみ、当然のように上陸無し。

 沖縄を出航した艦隊は一路南下、バシー海峡を経て南シナ海、現在世界でもっとも緊張している南シナ海を通り7月5日にシンガポールのチャンギ基地へ入港します。しかし、驚くのは今回の遠洋練習航海ではこのチャンギ基地が唯一の寄港先となっていまして、そしてここでも補給のみ、上陸はしていません。一回も上陸がない遠洋航海は初めてなのです。

 シンガポールを6日に出航した艦隊はそのままマラッカ海峡を通行してベンガル湾へ入りスマトラ島を一周する航路を経てカリマンタン海峡を経て再度南シナ海へ、ルソン島沖を航行しマリアナ諸島北方を。やはり寄港することなく小笠原諸島に沿って東京湾へ、遠洋航海の終着は22日の横須賀入港となります。しかし、実施しました意義と意味は大きい。

 日米共同訓練が二回実施されました、このうち一回はアメリカ原子力空母との訓練を実施し、もう一回は新鋭の沿海域戦闘艦が参加しています。インド海軍とも日印共同訓練を実施しインド海軍はミサイル駆逐艦など2隻を派遣、シンガポール海軍とも共同訓練を実施し、シンガポール海軍はフォーミダブル級フリゲイトを派遣しました。一通りの訓練も。

 COVID-19感染拡大、元々深刻で江田島基地を近海練習航海部隊と外洋練習航海部隊が出航した際には、すでに日本国内での感染拡大兆候は顕在化していましたが、四月には国家緊急事態宣言が発令、新任3尉には厳しい状況となっていました、なにしろ近海練習航海でさえ縮小、寄港地では祝賀会も行えていないといいまして、非常時の航海といえました。

 外洋練習航海の航路かと思った、こういいますのは遠洋航海として例年では欧州や北米や南米と世界一周の長期航海を行うのですが、日本国内の緊急事態宣言下の感染状況とは比較にならないほどの感染爆発が欧州も北米も南米も蹂躙している状況で、そもそもなかなか航路が発表されず今年は遠洋航海の実施不可能か、と一時は思ったほどでしたが出航へ。

 環太平洋合同演習、遠洋航海、なるほど今でなくとも、と思われるかもしれませんが周辺情勢は寧ろ緊張度を増しており、いまでなければならない、縮小実施でも今年実施するからこそ意味がある、というものなのかもしれません。外洋練習航海後期、環太平洋合同演習、感染対策を徹底し外洋練習航海前期のような感染者の出ない無事の帰港を祈念します。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

COVID-19,日本国内死者数一〇〇〇名/世界感染者数一四四〇万&死者数六〇万の現実を視よ

2020-07-20 20:10:15 | 防災・災害派遣
■拡大,異常事態進行中の自覚
 欧州やアメリカでの軍隊による感染対処や地域封鎖支援等の状況を対岸の火事のようにみてきたのではないか、こう危惧するのは現在の日本国内です。

 第2波は深刻な状況となるかもしれない、コロナウィルス肺炎はインフルエンザと同じく空気が乾燥する時機に最も猛威を振るう為、梅雨の最中の猛暑日という夏を迎えた日本においても寧ろ感染拡大が進む状況では錯覚しますが、冬から春までにイタリアやスペインで猛威を振るった、搬送や埋葬に軍が出動せざるを得ない状況は対岸の火事では、ない。

 日本国内の死者数1000名、NHKによれば本日1名が死亡したことで、今回の新型コロナウィルス感染症COVID-19による死者数は検疫隔離者を含め遂に1000の大台にのってしまいました。第一波で既にこの死者数、ワクチン開発が世界で進むとか、久々に東京の感染者数が200を割った等の数値を平常と考えてはなりません、異常事態の只中なのです。

 感染防止。生活の基準は経済活動の再開と感染防止を両立させる事に現在重点が置かれているように思えます、しかし、感染防止に重点を置いた施策、テレワークの根本的強化や不要不急の外出防止、実のところここを再度重視してゆかなければならないように思うのです。感染は落ち着いていない、正常性バイアスで非常時の現実から目を背けていないか。

 Weblog北大路機関のアクセス数が1440万を越えた翌日である本日19日、世界の新型コロナウィルスCOVID-19感染者数が1449万8897名(20日1230時ロイター集計)となりました死者数は60万4232名となっていまして、こうした中でこの死者数に日本での死者数1000名が含まれている、もちろんピークではない為、終息まで少なくとも同数が亡くなる。

 ワクチン開発は大車輪で進められていますが、忘れてはならないのは2003年に中国を中心に世界で大流行したSARSコロナウィルスによるSARS-Cov重症急性呼吸器症候群、このワクチンはまだ完成していません、今回流行しているCOVID-19については同様なのかは、まだこのウィルスが人類と接触して数カ月故に不明なのですが、時間はかかり得るという。

 世界の感染者数を見ますと、アメリカの378万9711名、ブラジルの209万8389名、インドの107万7618名、ロシアの77万1546名、ペルーの35万3590名、南アフリカの35万0879名、メキシコの34万4224名、チリの33万0787名、イギリスの32万5405名、スペインの27万8109名、比べれば日本は2万6137名ですが楽観要素は全くありません。

 死者数では。アメリカが14万0398名、ブラジルが7万9488名、イギリスが4万5300名、メキシコが3万9184名、イタリアが3万5045名、フランスの3万0152名、スペインの2万8420名、インドの2万6816名、イランの1万4188名、ペルーの1万3187名、ロシアの1万2342名、ベルギーの9800名、ドイツの9058名、カナダの8852名と続く。

 中国、このCOVID-19最初の大規模感染爆発が発生した中国は中国本土感染者数が8万3660名であり死者数は4634名です、上記の感染拡大を見れば分かるように、この感染症は一瞬でも気を抜けば爆発的感染爆発を引き起こし、それこそ阪神大震災や東日本大震災のようば死者数が総計で、いや毎日熊本地震や新潟中越地震のような死者さえでるのです。

 イスラエルとシンガポールは徹底した検査体制とAI人工知能や諜報機関の監視技術を応用し一時は感染抑制に成功したと注目されましたが、人口564万名のシンガポールでの感染者数は4万7913名と死者は27名、イスラエルは人口888万名に対して感染者数4万9365名と死者数401名、共に深刻な感染拡大を引き起こしています。日本も次はこうなり得る。

 スウェーデンは集団免疫の獲得による感染抑制を目指し、社会的距離の確保と外出自粛要請に重点を置き大規模な都市府スアを行いませんでしたが、結果は感染者数7万7281名と死者5619名、スウェーデンの人口は1023万と日本の十分の一以下ですのでこの感染者数は驚くべき数字であり、また経済活動を維持したものの景気後退が本格化しているのです。

 医療崩壊は起きうる。過去の1919年スペイン風邪新型インフルエンザ世界的流行禍では、第一波で医療従事者の多数が感染し医療崩壊が発生したことが第二波時に医療崩壊を招き死者数が爆発的に増大しました、しかし日本の場合は医療崩壊が、医療従事者ではなく医療機構が経営難により破綻へ向かう、医療破綻の懸念顕在化という状況に陥っています。

 医療破綻の懸念は、院内感染防止の取り組みに必要な膨大費用、特にコロナウィルス対処を行っていない医療機関への院内感染防止費用という負担が大きく、また、医療機関全般が通院患者の感染を恐れての通院控えにより一時的な医療過多となってしまい、これがコロナウィルス対応は勿論、インフルエンザ等の季節性感染症への対応力をも削いでいます。

 重症化しない若者、と言いますがCOVID-19は新型肺炎という呼称が用いられなくなったように、サイトカイン炎症という全身一斉の炎症を引き起こす事例、血液の粘性が高まり脳疾患を引き起こす事例、肺炎はこの疾病の一例でしかなく、そもそも重篤化する肺炎が全ての肺機能がサイトカイン炎症により機能不随となっている原因というものなのですね。

 肺機能障害や脳機能障害、兎に角この感染症は分かっていない事が多い、分っているのは通常の感染症よりも感染力が強く、飛沫核感染が天然痘の空気感染程ではないにしても感染しやすい、そして無感症キャリアが意図せず広範囲の感染拡大を引き起こすという点などです。昨今は抗体免疫持続性が三カ月程度しか無く、再度感染し得る事も報告される。

 ワクチン開発や治療薬報道には、なんとかなりそうな印象を持たないでもありませんが、時間が掛かります、そして後遺症への治療は簡単ではありません。すると今一度、感染しない為にはどういった行動を、長期間、数年単位で持続する方法を考えねばなりません。死者数1000名という現実を前に正常性バイアスを疑ってみるべき、こう考えるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (12)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日曜特集】第33普通科連隊-久居駐屯地創設61周年祭(3)33普連観閲行進(2013-04-21)

2020-07-19 20:09:16 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■観閲行進から訓練展示へ
 第33普通科連隊久居駐屯地創設61周年祭記念行事は観閲行進が続き、同時に訓練展示への準備も進みます。

 本部管理中隊の行進が始まった。様々な車両が並んでいて本部管理中隊は、連隊本部班と通信小隊や施設作業小隊に情報小隊と衛生小隊に補給小隊という、普通科連隊が独立して運用に当たるための細かい気遣い的な小技の聞く装備を一通りそろえている部隊です。

 情報小隊の軽装甲機動車と偵察オートバイ、師団に偵察隊や偵察戦闘大隊などがおかれていますが、斥候や情報収集など普通科連隊が自前の戦闘を展開する上で必要な情報収集を行う部隊です。最近では携帯式無人機などの装備も配備されていて、能力が向上している。

 通信小隊や発煙機3型などが進む。通信小隊は師団に通信大隊が置かれていますが、交換所と合同通信所など大規模な装備は師団へ依存するものの、連隊本部と隷下中隊の指揮系統維持への通信や小規模な電子戦は通信小隊にて実施可能、式典会場の通信も受け持つ。

 発煙機3型、化学科の装備が本部管理中隊の施設作業小隊に配備されています。実は携帯型除染器や94式除染装置なども配備されていまして、主として化学剤による攻撃を受けた場合の自隊除染などは、施設作業小隊でもかなりの部分の任務ができてしまうのですね。

 第10後方支援連隊第1整備大隊第2普通科直接支援中隊の支援車両、こちらは所属はあくまで春日井駐屯地の第10後方支援連隊ですが、駐屯しているのはここ久居駐屯地、後方支援重視の背景には高機動車や軽装甲機動車や重MATなど、整備が大変な装備が増えたため。

 豊川駐屯地からの第10特科連隊のFH-70榴弾砲、2ー4とありますので第2大隊第4中隊の所属とわかる。第10師団の特科連隊、最盛期には全般支援の第5大隊を含む5個大隊へ12個特科中隊が60門並べていましたが、現在は6個中隊30門のFH-70が残るのみ。

 春日井駐屯地からの第10偵察隊、87式偵察警戒車が。第10偵察隊は遠からず第10戦車大隊と統合され、74式戦車2個中隊は全廃され16式機動戦闘車を装備する1個戦闘中隊へ縮小改編、偵察戦闘大隊となる見込みです。2020年代にはもはや74式戦車の居場所は。

 UH-1JやAH-64DにUH-60JAとCH-47,地上には戦車が並ぶ。妙に豪華な編隊ですが、ついに第10飛行隊に配備されたのでは決して無く、明野駐屯地航空学校本校の装備が加わった形、第10飛行隊はUH-1J多用途ヘリコプター、当時はOH-6D観測ヘリコプターのみ。

 今津駐屯地からの第10戦車大隊の参加です。第10戦車大隊も戦略機動師団改編当時には第49普通科連隊新編とあわせ4個中隊60両が配備されていましたが、現在は第49普通科連隊が中部方面混成団へ管理替えとなり、戦車中隊も縮小、2個中隊のみという寂しさ。

 74式戦車2両が観閲行進へ参加しました。戦略機動師団当時は普通科連隊へ戦車中隊と特科大隊を配置し連隊戦闘団を編成していましたが、即応機動連隊改編後は、第2中隊から一個戦車小隊のみが各普通科連隊へ回され、第1中隊は師団長直轄の予備戦力扱いという。

 第10戦車大隊、74式戦車はよくみますと第1中隊と第2中隊から各1両が参加しているもよう。2010年代には流石に第二世代戦車は時代遅れで、なんとか10式戦車の戦車中隊を編入できれば、と。第1戦車大隊は10式戦車と74式戦車の混成編成を採用しています。

 AH-64D戦闘ヘリコプター。AH-1Sの後継として62機が調達予定でしたがミサイル防衛へ費用捻出のために調達が宙に浮き結局13機で調達終了となってしまった自衛隊航空の暗転期における航空機、高価ではあるが戦闘行動半径の大きさから絶対に30機は必要と思う。

 UH-60JA多用途ヘリコプター。第1ヘリコプター団第102飛行隊や第8飛行隊、第12ヘリコプター隊と第15ヘリコプター隊、着実に配備が進んだ航空機ですが、救難機と同等の航法装置を搭載し費用が高く、UH-1Jと二機種混合調達が行われ、今後はUH-2に続く。

 CH-47JA輸送ヘリコプター。陸上自衛隊にとって天恵といえる装備で55機を装備、航空自衛隊も20機を装備しています、駐屯地に飾られているV-107の後継機であり川崎重厚にてライセンス生産されています。こうして観閲行進は祝賀飛行の航過をもって完了した。

 訓練展示開始、銃剣格闘の展示だ。訓練展示はこうした個人技術の展示をおこなったのちに災害派遣展示か野戦訓練展示を実施します。災害派遣展示は重機で木材を動かせたりダンプに積んだりテントを建てたりご飯を炊いたりする、つまり余り見栄えしないのですね。

 銃剣格闘は普通科部隊の近接戦闘最終段階を左右する。訓練展示が野戦なのか災害派遣なのか、2011年東日本大震災から二年目ではありますが、やはり三重県まで出かけたのですから戦車が空包射撃を行い普通科隊員が縦横無尽に走回る様子というものを見てゆきたい。

 89式小銃へ飛び跳ねる泥しぶき。訓練展示がどう言った内容であるのかは、ポスターに描かれることも有れば描かれないこともある。つまりその日までわからない、ということだって有ります。空包射撃は音がすごいので伊丹のように住民反対で実施できないことも。

 格闘展示では芝生に含んだ雨滴が飛沫を上げる。久居駐屯地は初めて訪問した2000年代初頭のお話ですが、訓練展示が災害は剣展示だったこともあり、いや、せっかくだからまだ新車の香り立つ軽装甲機動車から硝煙の様子をみたいのだ、と切に思ったことを思い出す。

 UH-1J多用途ヘリコプターが戦闘訓練展示へ。そう2013年度は訓練展示が野戦訓練展示だったのですね。状況開始です。必要な装備や人員を最前線まで輸送するUH-1Jはみた目以上におおきな能力を秘めた航空機です。富士重工により改良型の国産化がすすみ馴染み。

 UH-1Jからラペリング降下で次々と隊員が降りてゆく。HU-1Bシリーズの航空機を初めて導入したのは1961年、HU-1Bは小型で小銃班半分しか載りませんでしたが、大型化したUH-1H、エンジンをAH-1Sと同型としたUH-1J、そして双発化したUH-2と配備は進む。

 津市の町並みとUH-1Jの対比が面白い。実際問題、アグスタAW-175のような航法性能の高い機種かエアバスEC-725のような縮小小隊や車両を吊れる多用途ヘリコプターが必要だけれどもこれらは全て高価で、部隊数の多い自衛隊には難しい、再編も必要ではないか。

 偵察へ87式偵察警戒車と情報小隊の偵察オートバイが進む。UH-1Jより展開したレンジャーとともに地上からの偵察が本格化する、敵情を探る87式偵察警戒車には25mm機関砲が装備されており、敵前衛と接触し可能ならば突破、全容を探るのが威力偵察というもの。

 BTR-82,仮設敵が応戦する。わが偵察隊の攻撃に装甲車を出して反応を示したことで敵の防御線一端が見え始めたという想定、BTR-82装甲車は重機関銃などを装備する軽装甲車で車高が高いのが特色、速度やエンジン出力や正面装甲の厚さは87式偵察警戒車と同じくらい。

 87式偵察警戒車、背景に並ぶのは74式戦車の車列が続く。74式戦車は第二世代戦車で、当時はまだ高出力小型のエンジンや軽量で強靱な装甲材などの技術が開発されておらず、戦車を構成する攻撃力・機動力・防御力、この三要素の内二つしか満たせない時代のもの。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【土曜詳報】オタワHMCS-OTTAWA舞鶴親善訪問(6)艦内旅行記への再訪(2019-08-24)

2020-07-18 20:07:08 | 世界の艦艇
■もういちど,カナダ艦
 米軍艦艇でも在日米軍以外の艦艇は特集”在日米軍”ではなく”世界の艦艇”にて掲載するかを検討中ではあるのですが。

 オタワを艦首方向から眺める。北太平洋や北大西洋を舞台に海上防衛とともに海洋法執行機関として漁業権保護や密輸監視にテロ対策を担うカナダ海軍は日米どちらともちがう白っぽい迷彩が特色、これは冬の大湊あたりでは目立たないのかな、思ってしまいました。

 舷門から見学者を警護するカナダ水兵はC7小銃を携行している。M-16A2をカナダで生産したもの、京都市内ではYAMAMOTOでM-16A2のエアガンは入手できますがストックやハンドガードがOD色となっているのが特徴、C7はG&Gがエアガンを出しているとも。

 ハープーン艦対艦ミサイル発射筒を真後ろから。このハープーンミサイルが本艦が外洋哨戒艦なんぞではなく歴とした水上戦闘艦、ということを端的に示しています。ただカナダ海軍は第二次大戦中も駆逐艦が主力で水上打撃戦の歴史を有さないのは残念でもある。

 カナダ軍艦旗と護衛艦せんだい、護衛艦まつゆき。水上戦闘艦というものはこういうもの、というのが海上自衛隊の護衛艦です。領域警備や密輸防止や漁業権保護は海上保安庁、密漁は水産庁が担い海上自衛隊はもっぱら抑止力の構成と警戒監視と海上防衛が任務という。

 カナダ海軍のボディーアーマーとシグP225にC8カービン。さて、二周目です、始発で来ましたのでかなり混雑はしているのですけれども、なんとかなった、という。早めの行動が大事というのはこの前の年にイギリス海軍の揚陸艦アルビオン艦内旅行で学んだこと。

 ディマコC8カービン、ANSオプティカル社製EOダットサイトが載せられています、漁業権保護にテロ対策の臨検をカナダ海軍は海洋法執行機関として全てになわなければならないので、万一変な気をもった重武装マフィアやテロリストへの備えがこうした装備です。

 パナソニック製タフブックとX-boxコントローラ型個人端末が並ぶ。万一海水に浸かっても衝撃で落としてしまっても確実に作動する現場用ノートパソコンとして1998年に登場、実は学生時代も北大路機関も検討したが結局はdynabookを使い続けている、私事でした。

 航空機格納庫にはクロスバイクと2台のロードレーサーが。ロードレーサーは愛用しているのですが、あまりメーカーとかは気にしない当方、しかし積んでいるのだなあ、と妙に感心、我が国の護衛艦は公用車としてママチャリことシティサイクルを積んでいます。

 航空機格納庫は整備用クレーンと開閉式シャッターなどが並ぶ。実はCH-148のような艦載機を期待していたのですが搭載していませんでした。しかしシャッター形状が護衛艦とちがう、二回目となりますとまあ落ち着いていろいろとみてゆくことが出来るのですね。

 ボフォース57mm艦砲、連射性能を重視した艦砲でもともとは自衛隊も採用したボフォース40mmが威力不足になったために開発されたという、小型の大砲と言うよりは大砲になってしまった機関砲というべきもの。個人的に海上保安庁の巡視船向きの機関砲とおもう。

 艦橋ダビットは手すりが木製で双眼鏡はNIKON製、日本製デスヨーと気さくに解説していただきました、木製の手すりは暖かみを感じる、というよりも厳しい冬の北太平洋や北大西洋で評決して皮膚に張り付かないように、という厳しい環境配慮なのかもしれません。

 57mm艦砲を艦橋構造物から眺める。昔はじめてこの艦を雑誌の軍事研究、晴海埠頭に北際を報じた1998年頃のものでしたか、みた際にはもっさりしたステルスだなあ、と思っていたものですが、むしろ厳しい海象を相手に機能性を追求したのがこの設計、とおもう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

令和二年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2020.07.18-07.19)

2020-07-17 20:01:41 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 東京で新規感染者数の記録が更新される中ではありますが皆様いかがお過ごしでしょうか。今週末も自衛隊行事はありません。

 GO-TO-トラベル、GO-TOこのまま予定通りならばいよいよ来週の22日より開始されます、旅費の35%が負担されるということですので、ぷらっとこだま利用ならば京都から東京まで新幹線で6500円となる、往復でも13000円というなかなかに画期的な観光需要喚起兼惹起策です。しかし、現在の感染状況を俯瞰しますと第一波の再燃が懸念水準です。

 東京発着のGO-TO-トラベルは当面感染拡大を受け対象外となるようですが、旅行代理店を通じて新幹線と宿泊で考えますと、名古屋の知人曰く京都まで往復新幹線とホテル代込で8300円から、つまり往復新幹線運賃よりも安いお値段で宿泊税込の京都旅行が可能になるということでして、これは凄いなあ、と。百里基地や浜松基地に小松基地等も近く感じる。

 COVID-19感染が続く中では旅行の時機ではない、と思われるでしょう、実のところ当方も半分はそう考えているのですが、COVID-19はワクチン開発が年内にも見通しが立つ、という明るい報道も散見する一方、ワクチンが普及し予防接種により集団免疫が醸成され感染が終息に向かうまで、長い時間が、恐らくは来年や再来年では実現しないでしょう。

 大阪万博の2025年までは完全終息を願いたいものです、悲観的と思われるかもしれませんが、実際に感染し恢復した感染者の免疫は三カ月ほどで効力が消滅するとの臨床結果がありまして、一年間に三回以上感染する可能性もある。つまりワクチンが完成したとしても一年間に四回は接種しなければならない、日本では即ち5億回分確保する必要があります。

 観光業はそこまで長える事は厳しいでしょう、僅かに例えば政府や自治体がコロナ対策により隔離施設として大規模に借り上げ、ホテル業のみを存続させる選択肢はあるかもしれませんが、この他には限度があります。なにしろ補助金や補償金も税金ですので無限に支援するには相応の税収が必要となります。なにか、観光業を維持する方策を探すほかない。

 新しい生活様式、感染拡大防止には換気を徹底しつつ、社会的距離を保ち手洗い消毒とマスク着用を行うことで感染を防止できるという。しかし、社会的距離を鉄道で保つ場合には、僅かにコンパートメントを有する車両は存在しますが、なかなかに厳しいものがあります、イギリスBR車両のようなコンパートメントに乗降扉を有するものもありません。

 社会的距離にしましても、安全係数としては2mが絶対値であるはずが、商業施設などでは努力数値と誤解され、換気というものも徹底した施設では換気機械の所要時間を計るべく発煙装置を用いた実験を行っている施設も存在しますが、換気は確実に行っています、というアリバイ発言のための窓開け程度に留めている施設も、私見ですが、多い印象がある。

 消毒にしても厚労省やアメリカCDCが既に消毒の反応時間が数分、具体的には五分から六分を要する点が強調されていますので、そもそも確実に手洗いを行っているという方々は最低でも五分間手を石鹸の泡で覆っているのか、と問われますと、毎回一日六回30分は洗面台で手を洗っている、と胸を張って応じられる方は、実はかなり少数派ではないか、と。

 白衣や医療用ガウン、少し気恥ずかしいですがこの役割を担う外被を暑い夏でも頑張って着用し、ゴーグルかフェイスマスク乃至防護グラスを着用し、素手は避けて軍手等を着用する、その上でマスクと手洗いを行う、旅行のリラックスには程遠いものですが、日常の緊張度が高い分だけ、これでも気分を味わう、これがコロナ時代の旅行となりましょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米中空母-南シナ海で対峙!中国海洋閉塞化へ原子力空母ニミッツ&ロナルドレーガン展開

2020-07-16 20:02:08 | 国際・政治
■日米豪関心集める中国南方進出
 ポストコロナの世界が模索される昨今ですがコロナ禍下では世界の耳目が疾病に集まる中で軍事緊張が進みます。

 南シナ海の緊張が静かに進行中です。米中航空母艦がにらみ合う。二つの海軍大国が空母をにらみ合わせるのは歴史上で二度目、前回は帝国海軍とアメリカ海軍が雌雄を争った太平洋戦争の際のことでした。75年後の今日、しかし東南アジアと日本の経済関係や日本のシーレーンを考えるならば、この緊張続く現状は決して看過できるものではありません。

 アメリカのポンペイオ国務長官は、13日の声明で南シナ海の現状について触れ、中国が南シナ海のほぼ全域の権益を主張している状況についてフィリピンと中国やヴェトナムと中国の国際仲裁裁判所勧告的意見を支持する方針を明確に示し、中国の主張全般を“完全に違法だ”としまして中国を強くけん制しました。この発言に中国は即座に反発しました。

 安倍総理大臣は9日、オーストラリアのモリソン首相と電話会談し、南シナ海と沖縄県近海の東シナ海において生じている緊張状態について重大な懸念を日豪間で共有することを確認しました。モリソン首相はコロナ禍下で突如受けた中国からのいわれなき経済圧力と軍事圧力、政治圧力に驚き、第二次世界大戦後屈指の国防強化施策を発表したばかりです。

 モリソン首相は今月1日に、今後十年間の国防力近代化へ2700億豪ドル、邦貨換算で20兆円の国防計画を発表したばかりであり、既に配備されたキャンベラ級強襲揚陸艦やホバート級イージス駆逐艦、陸軍の装輪装甲戦闘車及び装軌式装甲戦闘車選定に加え、長距離攻撃能力やサイバー攻撃対策の抜本的強化を行う計画で、先ずAGM-158C導入が計画中だ。

 中国海軍は南シナ海、ヴェトナムより中国が武力奪取した西沙諸島近海において五日間にわたる空母演習を実施、2015年に当時のオバマアメリカ大統領との間で中国はこの海域での開発において軍事施設化は行わず平和的な観測施設とする合意を習近平主席が交わしつつ、着々と要塞化を進める西沙諸島沖での航空母艦含む集中的な訓練を実施したとのこと。

 中国海軍による南シナ海での空母演習に対抗するようにアメリカ海軍は二つの演習を実施しました。一つは原子力空母ニミッツと原子力空母ロナルドレーガンを南シナ海へ展開、アメリカ海軍は公式声明において防空能力の最大発揮と艦載機による長距離精密攻撃能力の強化を演練した旨を発表しています。そしてこの演習の規模は異例のものといえました。

 ニミッツとロナルドレーガン、ヴェトナム戦争中にはヤンキーステーションとして複数の米空母が遊弋していた海域ではありますが、ヴェトナム戦争後では異例で、実際、南シナ海にアメリカ海軍空母2隻が展開するのは2014年以来とのことで、2014年以前では2001年に実施して以来といいますので、21世紀では二回目、といえば特殊性が分かりましょう。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦とステッドファスト級フリゲイト。アメリカ海軍はこの時期に二つの演習を実施したと前述しましたが、もうひとつの演習はシンガポール海軍とアメリカ海軍との合同演習でした。インディペンデンス級沿海域戦闘艦ガブリエルギフォーズはこの航海で同時に航行の自由作戦を実施、アメリカのプレゼンスを示したかたち。

 平和的観測施設を習近平主席がオバマ大統領に約束して五年、飛行場施設は地対空ミサイルと海軍歩兵部隊に3000t級フリゲイト3隻が同時接岸できる岸壁を有し、超水平線レーダを建設したことで東南アジア地域全域を監視できる体制を構築、更に空母部隊による演習を実施し、いわば東南アジア全域を中国勢力圏へ収める要塞となりつつある現状です。

 アメリカ海軍は、しかし2001年から数えて三回目という空母二隻による演習を実施したのは前述の通りですが、このプレゼンスを一時的にとどめる余裕は与えないようで、第三の空母、セオドアルーズベルトがフィリピン東方海域において訓練を実施中、必要であれば南シナ海に原子力空母三隻の打撃群を展開させる能力を示唆しており、覚悟が垣間見える。

 日本にとり、南シナ海は東南アジアとの多国間国際分業による部品サプライ網の根幹を担う重要なシーレーンが通ります。一説には中東からの石油シーレーンは南シナ海を避け豪州北方を太平洋へ迂回した場合でもそれほど輸送費用は影響しないという主張はありますが、東南アジアからの多国間国際分業サプライチェーン輸送網はそうはいきません。

 結局のところ、北東アジア情勢と東南アジア情勢の緊張は単なる一過性のものではなく、軍事的な現状変更を試みる動き、海洋自由原則という第二次世界大戦以来の国際公序から海洋閉塞という地域的な公序改編の試みが、極めて憂慮する摩擦を引き起こすよう思えます。表面的緊張緩和にあまり意味は無く、日本は深い意味での長期対応が求められています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都発幕間旅情】長浜城,大地震に潰えた琵琶湖畔城郭は防守城塞から戦略策源地への転換点

2020-07-15 20:04:39 | 旅行記
■天正地震に消えた戦国の夢
 豊臣秀吉がまだ羽柴秀吉だったころ琵琶湖の湖畔に巨大な城郭が在った。赤影参上、とは続きませんが、そんなお城のおはなしです。

 長浜城。豊臣秀吉がまだ羽柴秀吉だったころ、織田信長により拝領した最初の城郭です。新快速基点駅である北陸本線長浜駅から隣り合う城郭としまして、ご覧になった方も多いでしょう。いや、サンダーバードを利用しますと湖西線で北陸に向かう為通りませんがね。

 独立式望楼型三重五階の模造天守が造営されていますが、これは戦後の1983年に高知城等を参考として建築した模造天守閣で、豊臣秀吉建造当時の天守閣形状は明らかとなっていません。しかし初めて拝領した所領の城郭、琵琶湖水運を考えた城構えと考えられている。

 天正元年の1573年、浅井長政を破った織田信長は撤退の殿や姉川の戦い等で勲功厚かった羽柴秀吉に浅井氏旧領を与えます。感激した秀吉はこの地の今浜を信長の名から一字拝領し長浜に改名し、城郭造営に着手します。浅井氏本拠の小谷城とは若干離れたこの地に。

 小谷城は日本五大山城に数えられ小谷山多峯の尾根や峡谷地形を活用した難攻不落を誇りましたが籠城は援軍が前提でなければ干上がり、浅井氏も城と共に潰えました。ここは城郭としては有利ですが地形が険しく策源地には不適です。その為に今浜、いや長浜が。

 築城は廃城となった小谷城の資材流用や琵琶湖に浮かぶ竹生島に浅井氏が戦略備蓄を行っていた材木などを流用し、三年程で完成しています。堅固な城郭への籠城も孤立化してしまえば落城する、それよりは城郭は戦術拠点と共に策源地であるべき、その思想に基づく。

 包囲軍必勝の論理は、実はこの後に日本ではインパール作戦まで、つまり第二次世界大戦中ですか、堅持されます。籠城軍は西南戦争の熊本城籠城のように増援が展開しなければ補給線が絶無で生き残れません。この為に策源地として湖畔を選らんだ点は慧眼でした。

 堀秀政、織田信長没後は清洲会議により柴田勝家が近江所領を得て、甥の柴田勝豊に長浜城を与えます。ただ、秀吉と対立した事で柴田勝豊は開城に追い込まれ、続く天正年間の1583年、賤ヶ岳の戦いの勲功を経て山内一豊が入ります。ただ、その拠点も残念ながら。

 天正地震、天正13年11月29日、西暦では1586年1月18日に発生した若狭湾沿岸を震源とする我が国最大規模の内陸地震です。被害が大きかった地域は、福井県、石川県、愛知県、岐阜県、富山県、滋賀県、京都府、奈良県、三重、つまり日本の中心部全域に当る。

 若狭湾沿岸の一つの巨大地震を引き金に、飛騨高山庄川断層と阿寺断層、養老断層伊勢湾断層、養老-桑名-四日市断層帯、余りに広い激甚被害により最初の地震を契機にここが一斉に動いたとも研究があり長浜城はこの巨大地震にて天守閣倒壊、再来しない事を願いたい。

 山内一豊は無事でしたが倒壊した天守閣が屋敷を圧し潰して長女と家老が圧死、十二日間に続く余震により長浜城の多くが地すべりにより琵琶湖に押し流され、対岸の近江今津が津波被害を受けています。何しろこの地震は全国で当日日記が殆ど残らない程に激甚です。

 飛騨国帰雲城は山岳崩壊で一族郎党ごと消滅、伊勢国長島城、大垣城、越中木舟城倒壊、京都でも東寺が破損しています。ただ長浜城は幾つかの櫓と城門が残り、江戸時代初期に一国一城令とともに廃城となりますが、新たに築城される彦根城へ資材は流用されました。

 市立長浜城歴史博物館として模造天守閣は活用されています。長浜城は天正地震により潰えましたが、しかし城下町の活況は北国街道の要衝として今日に至り、明治時代の北陸本線敷設からも今日に至ります。意外な歴史街道その象徴としての長浜城は駅前に在ります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

89式装甲戦闘車後継-新装甲車令和七年度完成,陸幕"諸外国の装軌式装甲車に係わる調査"開始

2020-07-14 20:15:26 | 先端軍事テクノロジー
■比較:世界七カ国の装甲戦闘車
 三菱重工による新装甲戦闘車両共通車体の試験が進む中ではありますが、諸外国の装備との比較も本格的に開始されました。

 陸上自衛隊はいよいよ装甲戦闘車の増強に踏み切るのか。防衛省は6月23日、陸上幕僚監部防衛部防衛課より"諸外国の装軌式装甲車に係わる調査"として一般競争入札を実施しました。この装軌式装甲車は装甲戦闘車型と人員輸送型を明示し、"中口径機関砲等の火力性能を有し、人員を輸送するとともに、戦車等と協同して運用される車両"と明記している。

 総合近代化師団と総合近代化旅団、要するに北部方面隊の師団と旅団ですが、自衛隊ではもっとも装甲化が進んでいるという北部方面隊はようやく全ての普通科連隊に装甲車中隊が配備されている程度でしかありません、そして長らく自衛隊の主力装甲車であった73式装甲車も老朽化で残る車両は少なくなっており、これらの後継が求められた構図です。

 89式装甲戦闘車の砲塔を搭載できることを最大限考慮する、としているほか、努めて令和7年度までに導入開始を条件としており、89式装甲戦闘車砲塔が搭載できない場合は、砲塔込みの総費用で89式装甲戦闘車砲塔流用よりもどの程度費用を抑えられるか、という条件を明示しています。これは事実上、89式装甲戦闘車砲塔の流用が前提といえるもの。

 装軌式装甲車は必須条件として、アメリカ、イギリス、ドイツ、トルコ、スウェーデン、スペイン、イタリア、以上の諸国の調査を必須とし、装甲戦闘車型と人員輸送型を基本的にファミリー型としつつ、ファミリー化しない場合でのライフサイクルコストについても提示を求めています。これは要するに単一種類以外の車両も一応想定しているということ。

 装甲戦闘車であればどれでもよい、というものではなく、火力性能として25mm以上の機関砲を有することが条件として挙げられ、機動力は入札業者決定時にのみ開示されるものとして登坂能力や超堤能力および超壕能力などが明示されていまして、例えば安価ではあるが不整地で第三世代戦車に随伴できないM-113や派生AIFV型等はのぞかれるもよう。

 防御力は正面装甲において重機関銃弾に抗たんできること、側面については距離は非開示ながら155mm榴弾への防御力を求めており、重機関銃は14.5mm徹甲弾程度までが想定され、正面装甲で30mm機関砲弾に耐えるが高コストのドイツ製プーマ重装甲戦闘車は省かれる可能性もありましてマルダー装甲戦闘車派生リンクスKF41装甲戦闘車の可能性も。

 各国装甲車を比較しますと、アメリカはM-2A3装甲戦闘車と車体を流用しM-113の後継を目指すXM-1283ターレットレスブラッドレイ、イギリスは近年導入した40mmCTA機関砲搭載のAJAX装甲偵察車ファミリーか新砲塔型のFV-510ウォリアー装甲戦闘車、ドイツはプーマ重装甲戦闘車か基本設計は手堅く周りは最新のリンクスKF41が考えられる。

 スウェーデンは有名なCV-90装甲戦闘車と無砲塔型のアルマジロ装甲車、トルコは新型のTulpar装甲プラットフォーム、スペインはオーストリアと共同開発しエンジンや砲塔の互換性を重視し導入の障壁を下げたピサロ/ウランASCOD装甲戦闘車、イタリアは1980年代に設計したが財政難で量産が2000年代にずれたCCV80ダルド装甲戦闘車が考えられる。

 装甲戦闘車の重要性はロシアと中国が相次いで強力な装甲戦闘車配備を進めており、特にロシアのアルマータ重装甲戦闘車は57mm自動砲を搭載し遠距離から以前の軽戦車並の火力を投射、また、AI人工知能と画像処理能力をあわせた場合、徒歩歩兵を遠距離から同時多数を識別し攻撃を仕掛ける懸念があるため、陸上戦闘は新時代を迎えつつあります。

 M-113装甲車、こういう選択肢はありますが安価ではありますがNATOではレオパルド2主力戦車に全く随伴できない、という問題が生じています。我が国でも60式装甲車が現役であった当時、74式戦車が54km/hで前進する中、60式装甲車は最高40km/hといいつつ登坂地形で15km/h程度しか発揮できず、戦車を支援できない実状が問題となっていました。

 10式戦車の機動力は第三世代戦車の中にあって特に秀でており、このために陸上自衛隊が戦車と協同して、と明示した点は不整地突破能力や登坂力で戦車と協同できない装甲車では困る、という視点が含まれているのでしょう。戦いは数なのですからどれだけ装甲車が配備されていても戦車に随伴できる装甲車が皆無では数の上での優勢は得られません。

 令和7年度を一つの目処とし、またライフサイクルコストの算出は、装甲戦闘車型をX両と人員輸送型をX両、数量は非開示なのですがX年間で同数を調達した場合のコストを具体的に求めていまして、これは単に現在89式装甲戦闘車が配備されている普通科教導連隊と機甲師団である第7師団の第11普通科連隊所要に留まらないことを示しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボノムリシャール火災!アメリカ海軍強襲揚陸艦サンディエゴ基地停泊中に大規模火災延焼中

2020-07-13 20:19:24 | 防衛・安全保障
■USS BonhommeRichard
 ボノムリシャール、シャルとして佐世保基地にも長く前方展開していました強襲揚陸艦での火災事故という衝撃の報道が入ってまいりました。

 ボノムリシャール。佐世保基地にも長く前方展開していましたが、現地時間12日の0900時頃、アメリカ本土西海岸のサンディエゴ海軍基地に停泊中のボノムリシャールにて大規模火災が発生しました、火災の概況は船体全体から白煙と黒煙が噴き出しており、現在も鎮火しておらずCNN報道によれば鎮火までは数日を要する可能性がある、と報じています。

 佐世保基地においてエセックスやワスプとともに日常風景に溶け込んでいました強襲揚陸艦だけに心が痛みます。そして強襲揚陸艦は現在、アメリカ海兵隊がAV-8B攻撃機に代えF-35B戦闘機の運用を開始している為、所謂“F-35Bキャリアー”として環太平洋地域の抑止力に重責を担っているため、安全保障上も痛みが大きい、といえるのかもしれません。

 ワスプ級揚陸艦6番艦のボノムリシャールは1998年竣工、満載排水量40650tの巨大な船体はヘリコプターやSTOVL戦闘機等50機を搭載し、航空機による強襲を担う。戦車や装甲車及び輸送車両を輸する海兵1900名を輸送します。ワスプ級強襲揚陸艦は8隻が配備されており、この他に拡大改良型のアメリカ級強襲揚陸艦が1隻、更に建造が続いています。

 サンディエゴ消防当局の話をCNNが報じたところによれば火災は現地時間12日0900時頃で、この当時ボノムリシャールは整備点検中、艦内には160名の乗員と作業要員が乗艦しており、火災発生と共に脱出を開始したが、21名が負傷したとのこと。21名の負傷者の内17名が海軍要員、4名が民間人、生命異常は無く他の乗員も全員の所在が判明している。

 ウェルデッキより火災が発生したとCNNは報じていまして、火災現場を空撮した報道映像を見る限り、かなり吃水が下がっている様にもみえます。ウェルデッキは両用強襲車やエアクッション揚陸艇、上陸用舟艇等を格納する区画でエアクッション揚陸艇3隻か中型揚陸艇12隻を収容します。喫水線よりも下に位置しており、艦内に広く延焼しているもよう。

 火災概況は、上空からの映像を見る限り、航空機格納庫全体から白煙と黒煙が噴き出しており、艦橋構造物の一部からも白煙が噴出している状況が見え、ハロゲン消火ガスではなく延焼が続いているとみるべきでしょう。CNN報道では整備要員が下船しようとしているところで爆発が発生したとの証言があります。母港ですので艦載機は搭載されていません。

 ウェルデッキでの火災発生、爆発が発生したとありますが、報道映像を見る限り吃水が下がっている点が、ウェルデッキに注水している状況で火災が発生したのか、火災により吃水が下がったのかが未知数です。注水している状況の火災であれば揚陸艇に関係した火災が想定されるのですが、艦は整備中であったといい、整備器材が原因の可能性もあり得る。

 ダメージコントロールが適切に行われていない可能性があります、こういいますのもワスプ級の固有乗員は1100名であり、当時乗艦していたのは160名、母港にて定期整備中であったとはいえ、当直を行うには不十分な規模といわざるを得ず、防火シャッターの閉塞や艦内スプリンクラーによるダメージコントロールが、完全に機能していない点が窺えます。

 アメリカ海軍の整備中の艦艇勤務状況は浅学にして知りませんが、海上自衛隊の場合は停泊中や停泊しての整備中は勿論、ドック入渠中であっても当直を配置します、今回のボノムリシャール火災は整備中とはいってもドック入渠ではなく、サンディエゴ基地の周囲に機動揚陸プラットフォームやイージス艦が停泊する中の火災、当直体制に疑問が残ります。

 延焼の背景には強襲揚陸艦独特の艦内構造と防火シャッター閉塞不備が相まって深刻な事態とした可能性があります、強襲揚陸艦は多数の車両を航空機と舟艇により揚陸させる艦艇であり、艦内には車両用スロープが全通飛行甲板と車両甲板と航空機格納庫にウェルデッキを結んでいます、火災発生時に防火シャッターが作動しなければ、煙突のようになる。

 船体の損傷度合いですが、艦内火災である点が重要です。こういいますのもアメリカ海軍の航空母艦は第二次世界大戦中、珊瑚海海戦において空母レキシントンが爆弾と魚雷命中により艦内に航空燃料が気化充満し大火災の末に沈没し、日本空母もミッドウェー海戦において艦内での爆弾搭載中に被弾し爆発的火災を発生した点を後の設計に反映させています。

 強襲揚陸艦は航空母艦ではありませんが、設計の多くは共通点があり、爆弾などの危険物搭載は飛行甲板で行い、航空燃料も送油管を舷側に配置し、艦内火災を発生させない事に留意し、1969年に作戦中の原子力空母エンタープライズがロケット弾暴発による爆発事故を発生させていますが、こちらも危険物搭載が飛行甲板であった為に沈没を免れています。

 実は強襲揚陸艦の火災はこれだけではありません、いや、アメリカ海軍の強襲揚陸艦としては過去にない水準の火災といえるのですが、今年4月2日、中国海軍が上海にて建造中の075型強襲揚陸艦においても火災事故が発生していまして、乗員が居ない状況での火災、ウェルデッキと飛行甲板へと延焼、煙等火災の概況などについて、共通点が多いのですね。

 ボノムリシャール、ワスプ級強襲揚陸艦は、ワスプ、エセックス、キアサージ、ボクサー、バターン、そしてこのボノムリシャール、イオージマ、マキンアイランド。なにか日本の戦史と関わりある名前ばかりなのですけれども、この他にアメリカ級揚陸艦アメリカ現役、二番艦トリポリが建造中です。重大事故故に鎮火とこの教訓が生かされる事を願います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【日曜特集】観艦式2009-守る!この海と未来-【15】ミサイル艇と展示飛行(2009.10.23)

2020-07-12 20:01:30 | 海上自衛隊 催事
■くらま観閲の海空訓練展示
 自衛隊観艦式の展示はミサイル艇による高速航行展示と共に再度航空機のエンジン音が太平洋へ響き渡ります。

 イージス艦こんごう、水陸機動作戦、という構図で。アメリカ海兵隊などは野戦防空部隊としてかつてホークミサイルを配備していましたが、そのまま区分廃止し、野戦防空は海軍イージス艦に依存する現状となっています。スタンダードSM-6の射程は370km以上だ。

 あしがら、ミサイル艇。海上自衛隊にとってミサイル艇とは、冷戦時代の魚雷艇による一撃離脱の運用を引き継いだ装備ですが、冷戦以降、一撃離脱よりは長期の警戒監視が求められる時代となりまして、その運用も高性能を活かしにくくなっているようにもおもう。

 せんだい、ミサイル艇。あぶくま型護衛艦ですが、平成初期の設計ながら周辺国の、具体的には中国の新世代駆逐艦に対しても平時には対艦ミサイルはじめ各種装備を有しており抑止力は発揮できます、そして護衛艦不足からミサイル艇も同種の任務に当たります。

 ミサイル艇流し撮り。ミサイル艇の韋駄天性能を紹介するには、この構図が良い。一号型ミサイル艇という、イタリアのスパロビエロ級の技術提供をうけ開発した水中翼船がありましたが、任務が特化過ぎ開発されたのが本型、ちなみにスパロビエロとは隼を示す。

 ミサイル艇と沿岸護衛艦。ミサイル艇ですが、個艦防空能力が低く紹介ヘリコプターにも太刀打ちできません。故に北欧ミサイル艇先進国などでは沿岸砲兵と一体化して運用されます。自衛隊の場合、沖縄南部の陸上自衛隊ミサイル部隊と統合運用すべきなのかも。

 沿岸護衛艦とミサイル艇。石垣島や宮古島には12式地対艦誘導弾や03式中距離地対空誘導弾部隊が進出予定です。石垣島あたりに海上自衛隊防備隊基地を置ければ、平時は海上防衛プレゼンスを発揮し、有事の際には友軍防空網下での遊撃戦、という運用も可能だ。

 水平線上くらま。海上自衛隊の旗艦的な位置づけとなっています護衛艦です。実は2003年の観艦式では首相の観閲艦は護衛艦しらね。2006年から2015年までの観艦式では佐世保くらま、が観閲艦を果たしました。その期間、私も撮影のご縁があった、ということ。

 水平線上ひゅうが。新時代の護衛艦といいますと、この護衛艦です。はるな除籍は本当に残念でして、実は舞鶴配備の護衛艦はるな、観艦式にて航行している様子を見たことは、当方、ありませんでした。ひゅうが、当時横須賀配備、現在は舞鶴配備となっている。

 US-1A救難飛行艇とUS-2救難飛行艇、あしがら。飛行艇の展示が開始されました。US-1AもUS-2も3mまでの波浪に対応するのですが、観艦式では離着水を行う場合、艦隊進路に合わせる必要がありまして、波より風向きから着水できない、ということも多々あります。

 あぶくま、US-2飛行艇。US-2,インドへの輸出とか、カナダが森林火災対処用に興味を示したとか、インドネシアが離島急患輸送用に、という声をよく聞きました。しかし、US-2の取得費用はF-35B戦闘機とほぼ同額、値段を聞くと去っていく、という話も聞きますね。

 US-2と水平線上の護衛艦。日本の場合は当初、対潜飛行艇としてPS-1が開発され、しかしあまりにも離着水によるソナー運用が非現実的で、しかもP-3C哨戒機などに対し優位性がなく、つり下げソナーならばソノブイよりも高性能、という目論見は外れました。

 US-1Aと水平線上の護衛艦。PS-1の発展型は、しかし広大な日本の排他的経済水域EEZを前にP-2J哨戒機やP-3C哨戒機を運用し、万一の事態があったことを考えて広範囲の航空救難体制を構築する必要に迫られ、高速艇や救難ヘリコプターを補完する機種が必要に。

 自衛隊と飛行艇。多数が必要、という航空機ではないのですが、陸上基地から1000km以上離れた海域での遭難事案ではヘリコプターには天候次第で厳しく、艦船ならば二日近く要する。飛行艇は、万一のことがあっても必ず助ける、という保証で保障なのですよね。

 US-2の情景。特殊な航空機であるため、輸出により量産効果を強めたいところですが、高価であること、そしてなにより職人芸とも呼ばれるほどの離着水の難しさがありまして、現実的に輸出を行うには自衛隊OBによる訓練支援部隊が必要になるようにも思います。

 くらま、飛行艇展示を終えて。観艦式は次の展示へと進んでゆきます。ただ、この観艦式を最後にボフォース展示がなくなり、そろそろ昔のように76mm艦砲の実弾射撃を再開してはどうかな、と思います。昔は太平洋でも日本海でも体験航海で艦砲を撃っていました。

 US-2はそのまま飛び去ってゆきました。水平線上に見える護衛艦の微かな情景とUS-2とともに飛行する水鳥の様子が不思議情景を醸し出しています、US-2,費用対効果としては飛行艇に難しい時代が到来している様にも思うのですが海洋国家の意地なのかもしれません。

 あしがら、艦橋の背景にP-3C。P-3Cが海上自衛隊の一時代を築いた哨戒機いよいよ開始される航空機による訓練展示、ここは相模湾という世界でも有数の過密海域であるためになかなか思い切ったことはできないのですが、それでも精一杯の展示を実施してゆくのだ。

 あしがら、P-3C。P-3C哨戒機は1997年まで101機が海上自衛隊へ納入されまして、大半は川崎重工にてライセンス生産を実施しています。導入時は高価な製造費が第二のロッキード事件と揶揄され、護衛艦いしかり一隻よりも高く護衛艦はつゆき型よりは安価という。

 あぶくま、艦橋の背景にP-3C、哨戒機はもともと高いものでアメリカの最新P-8A哨戒機も護衛艦あきづき型の半額程度を要します、その分だけに高性能でP-3Cは一機で同時に四国同等面積の海洋哨戒が可能という高性能を誇ります、シーレーン防衛に必須といえた。

 ひゅうが、P-3C。艦影は水平線上に浮かんでいまして、洋上航空とヘリコプター搭載護衛艦という一つの作戦体系が見て取れます、P-3Cは年々能力向上を進めていますが機体構造寿命が近づき、現在では延命を重ねつつ新型のP-1哨戒機へと更新を進めているところ。

 350ポンド対潜爆弾投下。80mほどの水柱がたつ、この水柱は京都の東寺五重の塔よりも高い、こうした展示を行うために海上保安庁は航路注意情報を出しています、ボフォース対潜ロケットの実弾射撃の際よりも増し、足元から突き上げる衝撃がどん、どん、と響く。

 対潜爆弾水柱。昭和の時代の観艦式ではもう少し実弾射撃が頻繁に行われていまして、P-2J哨戒機による127mmロケット弾発射、S-2V哨戒機もロケット弾の射撃展示を実施していました。ヘッジボッグ対潜擲弾や76mm艦砲の実弾射撃などを行っていたというから凄い。

 対潜爆弾起爆、海面が一瞬泡だって、という情景は1954年の映画ゴジラを思い出すか、1957年の映画眼下の敵を思い出すか。相模湾では艦砲射撃は安全管理上難しい、という話を聞きまして、行うならば野島碕の沖合にある射撃訓練海域へ行かなければならないという。

 対潜爆弾水柱。2020年代となった今日ではボフォース対潜ロケットが自衛隊から全て全廃されてしまったために、観艦式で実弾といえばこの対潜爆弾が唯一のモノとなっているのは残念ですね。跳弾しない76mm平頭弾など不審船用に開発、あれならば大丈夫そうだが。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする