北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】妙心寺,法堂に見上げる雲龍は狩野探幽筆の雲龍図-心に想うは現実が支える算盤面のたいせつさ

2023-08-23 20:23:56 | 写真
■妙心寺さんの算盤面
 クルト式計算機がたまに欲しくなる当方なのですがここ妙心寺は算盤面といわれているのです。

 法堂、明暦3年こと西暦1657年に再建されたものですが、狩野探幽筆の雲龍図が描かれていまして、堂宇の外から、このお盆の時期だけは拝むことができる。雲龍図はその完成まで8年を要したというもので、お香のけむりとともに霞見える雲龍を先ず拝む。

 妙心寺、この寺院は算盤面と呼ばれているという。東福寺の伽藍面や大徳寺の茶顔面、東福寺は堂宇がどれも大きく、いや今は焼失したものが多く現存するものはそう大きくもないのですが、当時は偉そうといわれた。大徳寺はお茶の作法がうるさすぎたゆえ。

 算盤面、これはどういうことかといいますと、わたしが言ったのではなく室町時代の人の話、いちおうご先祖様も一人くらいは言っていたのかもしれないのだけれども、室町時代の町衆の方々に言われていた、今の伝わるほどですので相当言われていたのでしょう。

 塔頭は山内塔頭だけで40に及ぶ寺院、お盆の季節には法堂に提灯が並ぶ様子が季節感を感じさせるのですが、これだけの巨大寺院を明治の廃仏毀釈という時代さえ超えて連綿を受け継いでいるには、財政基盤を確たるものとし、無駄を省き修行にあたったゆえ、か。

 五山十刹から距離を置く林下寺院、実はこの算盤面という表現の背景には、妙心寺が始まりの頃から堅実な財政を目指して算盤を弾いていたためという。会計重視というわりには寺域は庭園以外自由に拝観できるところですが、そういう表面のはなしではない。

 林下寺院として室町幕府の庇護を受けないからこそ、しっかりとした会計が必要であると、これは室町中期の仏日真照禅師雪江宗深により唱えられたものでして、この日とはもともと尾張国は蒼龍山瑞泉寺で出家した僧侶でした、あの犬山城を一望する高台の。

 龍安寺開祖の義天玄詔に師事しました雪江宗深、石庭で有名な龍安寺もここ妙心寺の塔頭寺院の一つで当時の寺域の広さを垣間見るようですが、幾つかの地方の住持を経まして大徳寺の住持となったころに、そうです時代が時代です、応仁の乱がおきました。

 応仁の乱では、やはりといいますか妙心寺は全焼します。いや、実はその前の足利義満の時代に妙心寺は林下寺院であり、反幕府勢力が頼るという経緯もありましたので、一時断絶しているのですが、その混乱も収まらぬ最中に応仁の乱で焼かれたこととなります。

 正法山妙心禅寺米銭納下帳、雪江宗深は後土御門天皇の勅命により妙心寺を再興することとなります。そうとうな実力者であったようで、大徳寺と龍安寺の再建も命じられますが、その際に始めたのが出納記録である正法山妙心禅寺米銭納下帳、正確な財政記録だ。

 雪江宗深が始めた正法山妙心禅寺米銭納下帳は、実に江戸時代末期まで記録が続き、出納記録方法が定型化した明治時代に引き継がれました。これは寺院の経済記録としてはわが国でも最も正確で且つ長い記録というものでして、ここに考えさせられることが、と。

 算盤面とは揶揄されるものの、信仰という、一見俗世を離れたもののようであっても体系化し継続的に、且つ一定規模を維持するには相応の安定基盤が必要である、これは冷淡な目で見られることがあっても無視しては成り立たない、という耳の痛いようなかんがえ。

 妙心寺には幾つか庭園を拝観できるところもあります、しかし庭園以上にこの伽藍が並ぶ様子を、紅葉や観桜のような観光に頼らず受け継いでいる背景には、算盤面とは揶揄されるものの確たる安定基盤の維持へ努力があり、成程なあ、と深く考えさせられるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】妙心寺,檀家さんが並び曇天にお精霊さん集うお盆の風景は花園法皇の院宣による林下寺院

2023-08-23 20:00:55 | 写真
■妙心寺のにぎやかなお盆
 曇天の湿気にも負けず提灯が点々と並びいつもは静けさに包まれる寺院が賑やかである様子はお盆故という。

 妙心寺。五山十刹という禅寺の格付けには入らない独自の信仰を湛えている寺院です。そして何度拝観しても、ここは一つの町のようで、寺院の石畳という一種神聖な風情の最中を物流トラックが行き交う様子は、ちょっと京都らしいなぞの風景といえるもの。

 お盆の風景ということで、檀家さんが集う様子は、祭事のような、活気というのでしょうか、普段の静かな風景とは打って変わって集う熱気とともに、このお盆が大事にされている、そんな気概を感じるところですが、この広さには歴史というものがついています。

 花園上皇が院政を行う花園御所として当地に造営された離宮萩原殿、花園上皇が落飾し法皇宣下を行うにあたって、この離宮萩原殿を寺院としましたのが妙心寺の始まりで、このために西の御所、ともいわれているのですが文字通り当地には御所があったという。

 大燈国師宗峰妙超、花園上皇は禅の師として宗峰妙超に師事していました。宗峰妙超は幾度も紹介しました通り大徳寺の開祖なのですが、そしてお気づきの通り大徳寺を開いた年と妙心寺を開いた年は随分と離れていまして、宗峰妙超も余命は長くありません。

 建武4年こと西暦1337年、まさに時代は南北朝の日本分裂という時代を迎えつつある時代なのですが、宗峰妙超は旅立たれることとなりまして、今際の際に花園法皇へ自分の後継として関山慧玄という高弟を示したといいます、ただ、この日とは京都にはいません。

 美濃国伊深、今の岐阜県美濃加茂市伊深町という、岐阜基地のある平野部からはかなり奥まったところ、正眼寺という寺院に修業を重ねていたといいまして、もっとも、関山慧玄は京都よりも美濃の山奥での修行を優先していたという。もっともそこに届いたのは。

 宗峰妙超の遺命、禅師の遺命が届くとともに花園法皇の院宣も届くところとなりまして、実に七年の時を経た暦応5年、この年に康永元年の改元がありました西暦1342年のことですが、妙心寺は創建を迎えることとなりました。それは質素な、質実剛健な寺という。

 五山十刹。これは京都五山という、禅寺の格付けを示す位階ではあるのですが、位階といいますともうそれだけで素晴らしいもの、と格付けの主体を考えずにありがたがってしまうものです、これは金賞受賞、と書いてある食品や酒類に靡くのと同じともいえる。

 叢林ともいうこの五山十刹は、禅寺を新しい武士の仏教と理解して幕府が保護をした、つまり室町幕府が格付けを行った寺院という。そして京都五山ともいう禅寺の格付けにあって、実はここ妙心寺は寺院の成り立ちと歴史を背景としましてふくまれていません。

 林下寺院、室町幕府の庇護を受けない禅寺を林下といいまして、幕府の庇護を受ける叢林とは明確に分けられています。妙心寺は大徳寺と並ぶその代表的な寺院で。もちろん幕府の庇護があった場合の方が財政的には安定する、ただ、寺院の目的は財政なのか、と。

 大徳寺と妙心寺とは、こうした林下寺院という共通点をもつとともに、そしてもう一つ、多くの修行僧が厳しい修行を重ねている、伝統的に修業を通じての禅風を醸成するという気風を湛えてきました。すると、確かに、京都五山と比べれば観光客は確かに少ない。

 禅寺として、観光客は少ないのだけれども、じつは宿坊がいくつかありまして、要するに物見遊山は避けるのだけれども、信徒や信仰への関心は気前よく引き受けるというおおらかさもあり、長いものに巻かれる権威付けを、超えたような爽快感が、あるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-アメリカ政府が欧州各国F-16ウクライナ供与承認,ロシアはルーブル暴落防止措置による混沌

2023-08-23 07:00:42 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナのF-16問題を見ていますと日本はF-2戦闘機をF-2C戦闘機に偵察機RF-2や電子戦防空制圧機EF-2に高等練習機型TF-2などなどで製造を継続し戦闘機国産基盤を残すべきであったと思う。

 アメリカ政府は欧州各国のウクライナへのF-16供与方針を承認することとなりました。これは8月17日にアメリカ国務省報道担当者へNHKが電話取材した内容をNHKが18日1127時に報道したものです。F-16戦闘機について、ウクライナ政府は防空能力強化へ強くその供与を求めており、既にF-16戦闘機への機種転換訓練も開始されています。

 F-16戦闘機供与は、オランダ空軍とデンマーク空軍が既に機種転換訓練実施しており、このまま訓練を完了したウクライナ空軍要員へのF-16戦闘機供与をオランダとデンマーク両政府がアメリカに求めていました。なお、両国空軍では既にF-16戦闘機は後継機であるF-35戦闘機の配備により余剰となっており、中古輸出などが過去に模索されていました。

 ウクライナへのF-16戦闘機供与は、アメリカ政府は必ずしも積極的ではありません、この背景にはF-16戦闘機供与によりウクライナ軍とロシア軍の戦力均衡が崩れ、戦争が広範囲に拡散することを懸念しているためといわれますが、現状ウクライナ軍は反転攻勢が航空支援のない状況下で停滞しており、アメリカの決断を左右したとも考えられます。
■ロシアのルーブル暴落防止
 経済制裁が地味に影響を増してきている。

 ロシアのルーブル暴落防止のための様々な施策がBRICSの連携を混乱させている可能性があります。BRICSの一翼を担うインドはG7先進七か国が呼び掛けたロシア経済制裁には参加せず、G7各国が買い控える天然ガスや石油などをロシアから購入し続けていますが、ロシアへ、その支払いは外貨建てではなくインドルピーが用いられています。

 インドルピーでの支払いを受けたもののロシアはSWIFT国際金融取引電信網より締め出されているため、送金ができず紙幣のままインドに置かれており、ロシア送金町のインドルピーは8月時点で既に39億ドル相当がインド国内の銀行に滞留したままであり、石油会社などはロシアへ輸送する手段がないままとなっています。またバーターもできない。

 BRICS諸国との協力ではもう一つ、中国人民元がロシアの保有する貴重な外貨となっていますが、中国では現在、邦貨換算46兆円の負債を抱える恒大グループ経営破綻し人民元安となることへの警戒感が高まる一方、ロシアがルーブル維持のために人民元を市場に売りに出しており人民元安の要因を造っています、現状でBRICSの協力が確認できません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】ジョージワシントン炉心換装工事完了と空母ジョンCステニスのRCOH,ヴィクラマディーチャとヴィクラント

2023-08-22 20:00:06 | 防衛・安全保障
■防衛フォーラム
 今回は海軍関連の話題ですがまずは横須賀の空母として馴染み阿多原子力空母の話題から。

 アメリカ海軍は5月29日、原子力空母ジョージワシントンの炉心換装工事を完了しました。ジョージワシントンは一時期神奈川県の横須賀基地へ前方展開していました、そして日本へ配備された最初の原子力空母として知られていますが、ニミッツ級原子力空母に定期的な長期工事とされている原子炉炉心交換工事により一時現役を離れていたもの。

 RCOH大規模オーバーホールと称される原子炉炉心交換工事は、もともと数年間を要する大規模工事ですが、ジョージワシントンではそのRCOHのさなかにCOVID-19新型コロナウィルス感染症のアメリカにおける感染拡大が重なり、工事が長期化、五月雨式の工事により艦内居住環境が悪化し多くの発狂者や自殺などの事案が続く不幸に見舞われます。

 ジョージワシントンは、しかしこの厳しいRCOHをようやく完了、今後は第一線運用に対応させるべく海上でのシステム運用試験や航空艤装関連試験、高速航行試験などを行う計画です。RCOHでは炉心に加え配管や空気供給系統と冷暖房装置、電気系統と推進装置や船体の改良などが実施、またこのほかメインマストの更新などもおこなわれています。
■マゲン級コルベット
 近距離用防空艦という珍しい種類の話題です。

 イスラエル海軍はマゲン級コルベットからのCドームミサイル防空システム発射試験を成功させました、これは2023年5月29日まで実験された評価試験の一環で、2022年11月に実施された発射実験に続くロケット弾や無人航空機に小型巡航ミサイルなどを目標とした実戦的試験を示します。マゲン級コルベットはサール6型コルベットともいう。

 Cドームミサイル防衛システムはイスラエル国防軍が都市防空用に配備しているアイアンドームミサイル防衛システムの海上配備型で、いわゆる弾道ミサイルや極超音速兵器に対する防空能力は持ち合わせていませんが、数十km以内から撃ち込まれる数十発のロケット弾によるゲリラ攻撃等に対し高い防空能力を発揮する近距離防空システムです。
■RCOH大規模オーバーホール
 もう一つの空母RCOH大規模オーバーホールのおはなし。

 アメリカ海軍は空母ジョンCステニスのRCOH大規模オーバーホール実施状況について発表しました、最新の工事状況として計画されているマイルストーンの35%を2023年5月末までに完了しているとのことです。この概況は同じくRCOHを完了させ現役任務に復帰した原子力空母ジョージワシントンの現役復帰に合わせて発表されたものです。

 RCOH大規模オーバーホールは原子炉炉心交換工事を伴うもので、ニミッツ級原子力空母はおおむね25年間に一回実施しています、これにより事実上50年間の運用が可能となります。ただ、現役期間の一割をRCOHを行う為の入渠により占めることとなり、この後継と成るジェラルドフォード級は交換不要の原子炉を搭載する設計となっています。
■デゼーヴェンプロヴィンシェン級
 デゼーヴェンプロヴィンシェン級をどうしてもデーゼンヴェンプロヴィンシュタイン級とよんでしまう。

 オランダ海軍は新たにMk.41VLSの8セル型を8セット導入します。この導入計画は6月にアメリカ国務省より有償軍事供与の承認を受けています。今回導入するのはMk.41VLSのベースラインⅦ、8セットの輸出費用は1億1000万ドルと推定されてて、VLS垂直発射装置本体に加え整備支援や技術支援、予備部品と請負業者費用なども含む。

 新しいVLS、オランダ海軍では現用のデゼーヴェンプロヴィンシェン級ミサイルフリゲイト4隻全てへのVLS増設と、デーゼンヴェンプロヴィンシュタインと呼んでしまうこの艦はCOVID-19下の2021年にイギリスの空母クイーンエリザベスを中心とした空母戦闘群の一員として海上自衛隊横須賀基地を親善訪問したことで記憶に新しいでしょう。

 デゼーヴェンプロヴィンシェン級は艦隊防空艦でMk.41VLSは40セルをすでに搭載していますが、オランダ海軍2022年防衛レビューによりトマホーク巡航ミサイルの搭載が発表されており、8セルはこうしたミサイルの拡張用として用いられると考えられます。また海軍は2030年以降、FuAD将来防空艦を計画しており、こちらへも搭載されます。
■イタリア海軍将来潜水艦
 ドイツ製潜水艦のライセンス生産の話題だ。

 イタリア海軍は将来潜水艦U-212-NFSの3番艦建造計画の議会承認を受けました。これは2023年6月6日の2番艦起工式に合わせてのもので、U-212-NFS型潜水艦でこれまでに認可されているものは2021年2月に2隻が13億5000万ユーロで結ばれた建造契約、1番艦は2027年と2番艦は2029年に就役する計画で、4番艦までが検討されている。

 U-212-NFSはその原型が212A型潜水艦、サルバトーレトダロ級潜水艦として2006年に1番艦が竣工し2017年までに4隻が建造された212A型潜水艦の改良型で、建造を担当するフィンカンティエリ社はイタリア海軍向け潜水艦としては2017年以来の潜水艦建造となります。212A型潜水艦そのものはAIP潜水艦で燃料電池を搭載する高性能潜水艦です。
■NSMミサイル
 NSMミサイルは西側の標準ミサイルになりつつある。

 スペイン海軍はハープーンミサイル後継のNSMミサイルを2027年から運用開始する。スペイン海軍では水上打撃力の基幹として長らくハープーン艦対艦ミサイルを運用しているが、ミサイル本体の射程やステルス性などの性能限界を受け後継ミサイルを検討、ノルウェーのコングスベルク社が開発したNSMミサイルを新対艦ミサイルに選定しました。

 NSMミサイルは海軍打撃誘導弾の略称、既存艦への搭載回収ではなく2027年に竣工予定の新型艦F-110型フリゲイトの搭載ミサイルとして配備開始となる見込みで、F-110型フリゲイトはスペインのナバンティアが建造を担当しています。ただスペイン海軍はハープーンの保有数を明示しておらず、全体でどの程度のNSMを導入するかも未発表です。
■ピッツバーグの起工式
 サンアントニオ級は縁が薄く中々見る事ができません。

 アメリカ海軍はサンアントニオ級ドック型揚陸艦ピッツバーグの起工式を行いました。ピッツバーグはもともと1984年に竣工したロスアンゼルス級攻撃型原潜の艦名となっていましたが、攻撃型原潜ピッツバーグは2019年に退役しており、ドック型揚陸艦ピッツバーグはペンシルベニア州ピッツバーグの名を冠した5代目の海軍艦艇となりました。

 サンアントニオ級ドック型揚陸艦、正確な艦種はドック型輸送揚陸艦で先日のYYよこすかのりものフェスタ当日に横須賀へ入港していたことでも話題となりました、満載排水量は25883tでヘリコプター搭載護衛艦いずも型に迫る排水量、ただ全通飛行甲板は採用していません。ピッツバーグは15番艦、そしてフライトⅡ型では2番艦に当たります。
■ヴィクラマディーチャとヴィクラント
 インド海軍空母は先日あたらしい艦載機としてフランスのラファール戦闘機を採用したばかりですね。

 インド海軍はアラビア海上で空母2隻による共同作戦デモンストレーションを実施しました。空母ヴィクラマディーチャと空母ヴィクラントが参加してのデモンストレーションはインド海軍の洋上航空作戦能力の水準を示威することにあるとのことで、更に陸上から離れた地域における航空作戦能力の集中投射能力も重ねてしめしたかたちです。

 ヴィクラマディーチャとヴィクラント、二隻の航空母艦に搭載されている航空機はMiG-29K戦闘機やMH-60R艦載ヘリコプター、カモフ対潜ヘリコプターとシーキング対潜ヘリコプターにチェタック軽ヘリコプター、インド国産のALHヘリコプターなど開発国だけでも多国籍といえる多種多様な航空機35機以上が洋上に展開したとのことです。

 ヴィクラントはインド国内において初めて建造した空母で2009年に起工式を迎えたのちに2022年に竣工したインド海軍最新鋭の空母で満載排水量は40662t、当初計画では326億ルピーでの建造が計画されていましたが、鋼材を輸入に依存し且つインフラ等未整備から最終的に2000億ルピーまで高騰したことで二番艦計画が宙に浮かんだ空母です。
■アポロ無人水上艇
 機雷掃海は近年大きな変容を迎えようとしていまして小型掃海艇多数雲ようでゃ広範囲の掃海任務が厳しいという従来からの指摘が漸く技術の実を結びつつある。

 イギリス海軍はタレス社製アポロ無人水上艇による機雷探知試験を完了させました。MASTT海軍海洋自律システム試験室と呼ばれるイギリス国防省の部局を中心にフランス海軍も参加し、ワイマス湾において実施されていた試験では、遠隔操作による機雷探知が行われ、将来的には自律航行による機雷探知や機雷掃討までを構想しているとのこと。

 アポロ無人水上艇による機雷探知試験では、レーダーに加えレーザーセンサーと電子光学カメラや熱線暗視装置などを併用し機雷を捜索しました。レーダーについては機雷を探知するには浮流機雷などを近距離で発見する能力があり得るのかもしれませんが、自動航行の周辺警戒が主用でしょう。これはMMCM英仏教導機雷対策に基づく計画です。
■オハイオ級戦略ミサイル原潜
 オハイオ級戦略ミサイル原潜について後継のコロンビア旧がミサイル搭載数を削減した事へ大丈夫なのかなと素朴な疑問を感じますが。

 アメリカ海軍はオハイオ級戦略ミサイル原潜の延命計画を前倒しで実施する検討を進めています、これは5月に発表されたもので、前倒し期間としては2025年度計画が構想されているという。延命計画、アメリカではオハイオ級戦略ミサイル原潜の後継艦としてコロンビア級戦略ミサイル原潜の建造計画が進められていますが、国際情勢が変化した。

 戦略ミサイル原潜について、海軍では常時10隻を作戦運用に充てる計画であり、コロンビア級戦略ミサイル原潜の整備期間によってはオハイオ級戦略ミサイル原潜の延命が無ければ必要な警戒態勢を維持できないことが指摘されたかたち。もともとこの延命計画は2029年までに開始される計画でしたが優先度が高まり、前倒しとなった構図といえます。
■インドネシア掃海艇
 インドネシアは旧東ドイツ製鋼製掃海艇をコルベットとして大量運用していました。

 インドネシア海軍は新掃海艇プラウファニとプラウファニルドの2隻を受領しました、建造はドイツのアベキングラスムッセン造船所で、竣工式は5月26日に挙行されています。プラウファニ級掃海艇は機雷掃討能力をもつドイツ海軍のフランケンタール級掃海艇の輸出仕様で、フランケンタール級はトルコ海軍やアラブ首長国連邦海軍でも運用中だ。

 フランケンタール級掃海艇の調達について、インドネシア国防省は2016年にドイツと2億1500万ドルの契約を締結、契約締結後に値引き交渉を行い2億0400万ドルに値引いたことで知られます、満載排水量は662tであり全長は62mで船体は非磁性鋼、1992年から12隻が建造、インドネシアは旧東ドイツ製艦船を多数導入したことで知られている。



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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-北大路大宮,オレンジジュースにアイスが浮かんでいるのをクリームソーダと呼んでいいかな

2023-08-22 07:01:44 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 真夏は気温では舞鶴がフェーン現象で凄い事になるけれども湿気がこもる不快度指数では単純な温度で比べられずしかも逃げ場がない所に大量の観光客が世界中から来る京都は、凄いよ。

 暑くなったり、涼しいというよりも寒いようになったり、いやでも暑いのが熱いに変わるのももう少しなのだろう、春の桜前線は素早かったのにその桜前線を呼び込んだ熱気は寒さに代わったり、その次は五月に真夏日のような日が続き五月中に岐阜では猛暑日という。

 京都の夏は、凄いぞ。脅すわけではないのですが盆地であるので熱がこもりやすいですし、その盆地に100万都市が熱に焦らされているのですから、そこに中途半端に鴨川と大堰川と木津川が湿気を呼び込み風は来ない、しかも寺社仏閣は熱を貯めるし冷房は少ない。

 クリームソーダ、熱い時はアイスコーヒーというのも嬉しいけれども、度を越した暑さとなれば、これはもう緊急事態なのですよと美味しいものを頂きたくなります、するとまあ、平日の明るいうちには少々背徳感があるのが、クリームソーダーを頂くときでないかな。

 オレンジジュースに+40円でクリームソーダにできるという、そんなお店を大徳寺の門前町というべき大宮通で見つけました、クリームソーダが出来上がるまで、暑い日には御冷やのお水が先ず美味しい、素早く飲んで氷さえがりがりやってしまいそうな熱気が外に。

 アイスクリームが乗っているのは良いのだけれども、そういえばオレンジジュースって炭酸でもないのに、ソーダを名乗るものなのだろうか、フランスのオランジーナのような炭酸オレンジジュースかと思えば、色は昔っぽいオレンジジュース、だけれど飲むと驚く。

 炭酸入りのオレンジジュースだ、ファンタなのかな。そして沈めない様に気を付けてアイスクリームを口に運ぶと、そう乳成分が空気を含んだクリームとして程よく溶けてゆき、そうこれなんだよなあ、暑い日は、と考える。やっぱりこういうの、美味しいものだね。

 タイムさん、という大宮通沿いのお店、ここはランチタイムを外すと急に静かになるのだけれども、街中華に元駄菓子屋のイタリアンにBARに寿司屋と昔ながらの定食屋さんに御総菜屋さんや街の電気屋さんと銭湯に御寺と喫茶店とが並ぶ、京都散歩の穴場なのだ。

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【防衛情報】アメリカ軍,M-10ブッカーMPF装甲機動砲発表とXM-30MICVブラッドレイ後継有人戦闘車両

2023-08-21 20:01:44 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 アメリカ陸軍に74式戦車並の重さの"軽戦車"というべき新型装甲機動砲が正式採用されました。自衛隊も可能ならば軽戦車ではないというこの車輛を偵察戦闘大隊に二個中隊分ほど欲しい。

 アメリカ陸軍は新型MPF装甲機動砲M-10ブッカーを発表しました。発表は6月9日、アメリカ陸軍としてこの種の装備を発表するのは40年ぶりとなります。この装甲機動砲は諸外国の装甲戦闘車派生の軽戦車に当るもので、また奇しくも先代にM-10駆逐戦車というものがあり、これも軽戦車や事実上の戦車として運用されていたという重なりが有ります。

 M-10ブッカーはジェネラルダイナミクスランドシステムズ社の開発したグリフィンⅡ軽戦車が原型として採用されたもので、この他に候補車輛としてBAEシステムズ社のM-8-AGS機動砲が提示されていました。その主砲は105mm砲で戦闘重量は38t、この重量は空軍のC-17輸送機に同時に2両が搭載出来る事を求められ収斂された重量とのこと。

 MPF,この装備体系が求められた背景にはアメリカ陸軍の歩兵旅団戦闘団の対戦車火力がTOWミサイルを搭載したハンヴィーに限られている為であり、従来この任務に当っていたM-551シェリダン軽戦車も1996年に退役していた事情があります。そしてこの為にM-8AGS機動砲が開発されていましたが、これは1996年に開発計画が中止されていました。
■M-10ブッカーの概要
 軽戦車ではないとしているアメリカ陸軍ですが元々はグリフィンⅡ軽戦車が原型車両となっている。

 アメリカ陸軍に採用されたM-10ブッカー装甲機動砲について。これはジェネラルダイナミクスランドシステムズ社が開発したグリフィンⅡ軽戦車で、もともとの設計はスペインとオーストリアが共同開発したASCOD装甲戦闘車の軽戦車型です。ASCODはオーストリアではウラン装甲戦闘車、スペインではピサロ装甲戦闘車として採用されています。

 ASCODの特色は、異なる整備補給体系を持つ採用国への適合であり、この開発でもオーストリアはシュタイアダイムラープフ社、スペインではエンプレサナショナルサンタバーバラ社が製造しており、基本設計は同じですがエンジンや変速装置と駆動系については採用国が既に採用しているエンジンを自由に組み込める冗長性が確保されているのは特徴です。

 エイジャックス装甲偵察車としてASCODはイギリス陸軍の偵察車輛に採用、ただ、振動などがイギリス仕様では相殺できず乗員が騒音と振動で発狂する懸念から実用化が遅れているという装備でもあります。また、フィリピン陸軍がイスラエル製105mm砲塔をASCODの車体に搭載したサブラ軽戦車を採用するなど近年に入り採用国が増えている装備です。
■装甲機動砲大隊
 師団に戦車大隊の様に配備されるもよう。

 アメリカ陸軍の軽歩兵旅団戦闘団へのM-10ブッカー装甲機動砲の配備について、現在の計画では師団単位で装甲機動砲大隊が編成される計画で、旅団ごとに14両のM-10装甲機動砲が配備されるとのこと。現在の計画では陸軍全体で504両が量産される計画で、LRIP初期低率生産では先ず96両を製造、最初の量産車両納入は2023年末が予定されている。

 機動砲大隊は2030年までに4個大隊が編成され、2035年までに計画されている504両の生産を完了させるという。ASCOD装甲戦闘車の車体設計が応用されてますが、装甲戦闘車のような後部の兵員室と直結する乗降扉は無く、この為にM-10そのものについてもNGCV次世代装甲戦闘車、M-2ブラッドレイ装甲戦闘車の後継車両候補とはなっていません。

 ASCOD装甲戦闘車の設計を応用しているM-10ですが、その製造は砲塔システムがニューヨーク州のウォーターブリート工廠で、車体部分はミシガン州のジェネラルダイナミクスランドシステムズ社工場で組み立てられ、アラバマ州アニストン陸軍補給処にて車体と砲塔部分を接合、そして最終的にオハイオ州リマの装甲車両デポにおいて完成するとのこと。
■ブラッドレイ後継
 ブッカーがASCOD派生型となりましたがさてその車両はどう応用されるのでしょうか。

 アメリカ陸軍は2030年までにブラッドレイ装甲戦闘車後継有人戦闘車両を選定すると6月26日に発表しました。車種はまだ選定されていませんが、開発名称としてXM-30MICV機械化歩兵戦闘車両としています。この開発にはアメリカンラインメタルビーグルズ社、ジェネラルダイナミクスランドシステムズ社のどちらかが対応することになっています。

 ジェネラルダイナミクスランドシステムズ社はスペインとオーストリアが共同開発したASCOD装甲戦闘車を基に開発したM-10ブッカーMPF装甲機動砲をアメリカ陸軍へ納入しており、アメリカンラインメタルビーグルズ社はドイツへプーマ装甲戦闘車を納入しているラインメタル社の現地法人、アメリカ陸軍はプーマ装甲戦闘車に注目している。

 XM-30MICV機械化歩兵戦闘車両について、陸軍は確たる方針を示していませんが、基本的に50mm砲と対戦車ミサイル搭載の遠隔操作砲塔を搭載し、歩兵は6名を収容し乗員は2名、車体は装甲に加えアクティヴ防護装置により敵対戦車ミサイルに対応できる性能、またインテリジェント射撃統制能力などを盛り込んだもの、と方向性を示しています。

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ウクライナ情勢-タウルスKEPD-350空中発射巡航ミサイル供与巡るドイツ国内議論とロシア自爆無人機

2023-08-21 07:00:34 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 射程の長いミサイルは国産開発しておかなければなりません。

 ドイツ政府はウクライナへのタウルスKEPD-350空中発射巡航ミサイル供与をめぐり揺れています。イギリスとフランスがストームシャドウ空中発射巡航ミサイルを既に供与しており、ドイツ政府もこの種の装備供与を求めるドイツ国内世論と、ロシアを刺激しないようにとの慎重論に板挟みとなっていますが、なによりこのミサイルの射程の大きさ。

 タウルスKEPD-350空中発射巡航ミサイルはトーネード攻撃機にユーロファイタータイフーン戦闘機やF-15Eストライクイーグル戦闘爆撃機などから投射するスタンドオフ兵器で射程は500㎞とストームシャドウミサイルの倍程度あります。この為、ドイツ国内慎重論からは、射程を短縮できないかを検討すべきとされていますが、現実的ではありません。

 500㎞という射程がドイツ政府やドイツ議会を二分する背景には、ウクライナ北部国境からモスクワまでの直線距離が450㎞であり、Su-24戦闘爆撃機によりハリコフ州上空から発射した場合、多雨留守巡航ミサイルはロシア首都モスクワまで到達する、この為にモスクワ攻撃にドイツ供与ミサイルが使われることを強く懸念しているのが実態のようです。
■シャヘド自爆用無人機
 日本の無人機対策をどのように進めるべきか。

 ロシアが国産化を試みるイランのシャヘド自爆用無人機のコピーが失敗している可能性がある、イギリス国防省ウクライナ戦況報告8月16日版にその分析が示されています。これによれば、ロシアはコピー版シャヘド無人機の性能が不均質であり、兵器システムとして未完成の段階にある、これが結果としてウクライナ軍により大半が撃墜されている。

 シャヘド自爆用無人機のコピーについては、生産初期の段階に数多い品質管理の問題であり、数か月以内に完成したコピー機を製造できる可能性があるとイギリス国防省は分析していますが、逆にその数か月間は少なくともカスピ海軽油でイランよりロシアへ輸出されるシャヘド無人機部品やシャヘド無人機本体へのロシアが依存することを示します。

 ただ、ロシア政府の自爆用無人機国産化への意志は固く、ロシア国内で製造された精度が低い一種の過渡的な装備も買い上げ実戦に投入しており、現在は半導体ロシア禁輸措置などに参加する諸国により製造は抑えられていますが、早晩精度をイラン製と同程度に高めたものの量産体制を固める可能性があり、射程の大きさから周辺国の脅威となるでしょう。

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【16】八月は艦艇広報と五山送り火と(2012-10-08)

2023-08-20 20:22:28 | 海上自衛隊 催事
■八月は反撃能力
 八月は艦艇広報と五山送り火とそしていろいろな事がある一ヶ月なのですが反撃能力がどのように来年度予算概算要求に記されるかが関心事です。

 八月という事で新しい88艦隊という毎年の特集を掲載していますので、自衛隊観艦式も、考えてみればここで用いました初公開の北大路機関写真をアーカイブ方式で88艦隊特集に用いているのだから、こちらの方が源流なのだけれども、特別企画と関連します。

 新しい88艦隊という想定は、この始まりは一応専守防衛を念頭とした防衛戦略に依拠した概念として論理構成しています。しかし、一応、政府の反撃能力という防衛力整備の指針が示されますと、自衛隊の戦力投射を行う相手は非常に遠い場所ともなりうるわけだ。

 艦隊、海上自衛隊の能力として特筆したいのは護衛艦や潜水艦という装備はその装備一つとってシステムを構成していますので、戦力投射、遠隔地への独力展開が友好国や同盟国の基地提供という制約に陸上自衛隊や航空自衛隊ほどしばられない、ということです。

 大西洋へ護衛艦隊を展開させる、この視座は反撃能力という防衛力整備に加え、2022年の新しい88艦隊の日、考えれば昨年もロシアウクライナ戦争という新しい88艦隊の背景が、大きく転換していたところなのですけれど、二年連続での世界政治の影響を受ける。

 権威主義国家に対する策源地攻撃は末端部分の部隊をどれだけ叩いても、逆に権威主義国家の支持層と被支配層という、今の日本ではなかなか理解できない感覚の命題を前に、信仰するのは一部の指揮官は前者であるが大半は後者という現実をみなければならない。

 着上陸した相手を徹底して叩いても、逆に被支配層という権威主義国家において政権選択に実質関与できない少数民族を中心に損耗を重ねたところで、逆に進行する側には国内不満分子を日本側が粛清の代行をするという結果になりかねず、逆効果ともいえる。

 策源地攻撃と過去に呼ばれた反撃能力を行使するためには、日本の隣国にロシアが居る限り、どうしてもモスクワとサンクトペテルブルクに対してわかるかたちでの力の行使を行わなければ、日本との和戦を決する政策決定に影響力を及ぼせないという現実がある。

 反撃能力整備というダイナミズムの中において既存防衛力組み換えが今後重要な視点となってゆくでしょう。ただ、反撃能力整備という視点は防衛省自衛隊からの視点ではなく政府が国家防衛戦略に明示したものであり、これがどう防衛力整備に繋がるのか、と。

 政治主導による国家防衛戦略なのですから、政治は、自衛隊が有事の際にどのような任務にあたるのかの概略を示す必要があります、無論細部は自衛隊に任せるべきであり、防衛出動命令の発令、Q号指令が発せられた先には政治は関与すべきではありません、が。

 専守防衛を念頭に防衛力整備が続けられたため、装備体系や訓練体系と戦術研究から教育は勿論のこと基地や駐屯地の配置まで政治は関与すべきではないと考えるのですが、反撃能力という国家防衛戦略の概念は、政治主導のものであり、概略は示すべきです。

 2012年自衛隊観艦式の当時には、政権は安倍内閣であり、保守政権である認識はありましたが、いまの岸田政権のような保守政権の中でも、専守防衛を超えて本土以外の場所での戦闘を第一とすることはなかなか想定できませんでした、これは転換が難しい一歩だ。

 太平洋戦争を真剣にその敗戦を反省し、戦争の災禍から国民を守るという視座に立つならば、専守防衛という戦略は批判されるべきで、戦闘は日本本土へ戦果が及ぶ前に抑止する、少なくとも軍事力を使ってでも戦争そのものを開戦を封じ込める努力が必要です。

 しかし、日本に攻撃できないように相手本土、指揮中枢と航空基地や軍港とミサイル関連施設などに対して反撃能力を加える、特に指揮中枢は大都市に置かれており、政策決定当事者への攻撃は控えるとの指針は示されていますが、段階的悪化を留意しているのか。

 反撃能力は上記視点に基づいて、その上で反撃能力と陸上自衛隊や航空自衛隊の位置づけというものが随分と変わってくる点にどう対応するのか、わかりにくいのです。政府は陸上自衛隊全ての師団と旅団を機動運用部隊に指定する、としましたが、無理がある。

 地域配備師団は戦車大隊と特科部隊を手放していますので、もちろん軽装備の部隊でもアメリカ陸軍のように戦闘ヘリコプターが配備されるならば怖いものはないのですが、政府は戦闘ヘリコプターも廃止する方針、どういった戦闘を想定するのかわかりません。

 普通科連隊を地域配備師団の場合は地対艦ミサイル連隊へ組み替えてしまったほうがいいのではないか、地対艦ミサイル連隊は人員450名、しかしミサイルは発射装置16基と3斉射分の弾薬を一基数として配備されます、地対艦ミサイルは射程を延伸する計画だ。

 地対艦ミサイル連隊に普通科中隊と施設中隊に情報隊を加えた沿岸戦闘連隊、というような部隊に改編しなければ、政府がもう本土を戦場とする戦いは行わないという方針を示したのだから、反撃能力で一発でも多くのミサイルを発射する必要が生じます。

 偵察部隊についても、いまアメリカ海兵隊がコットンマウス偵察車などを試験していますが、海兵隊は水陸両用部隊から島嶼部防衛部隊へ大規模な転換を行っており、従来の装甲車の延長線上にある水陸両用装甲車で洋上偵察を以下に行うかに悩まされている最中で。

 政治が反撃能力整備を示して、それも従来の策源地攻撃ではなくかなり深部まで叩くという方針を示したのですから、その為には大掛かりな編成の組み換えが必要であり、それは天文学的な予算をも同時に、一時的であれ、必要となるのですが、政策がみえない。

 航空自衛隊については、次期戦闘機としてイギリスとイタリアとともに共同開発計画を進めていますが、反撃能力の一翼を担うかどうかでは根本から設計要素が異なり、F-15EX戦闘爆撃機か、オーストラリアが導入を一時検討していたB-21爆撃機の視野も要る。

 日本本土へ侵攻する航空部隊を撃滅する必要が生じることは確かですが、洋上での防空戦闘を行うのか基地を叩くのかでは全く必要な能力が変わりますし、敵爆撃機を阻止ししても弾道ミサイルや大量の自爆用無人機の飽和攻撃に都市部を焼かれては結果は同じ。

 現在の防衛力の延長線上に策源地攻撃を考え、基本的に専守防衛政策を踏襲するならば、想像できる範囲内での防衛力再編により対応できるでしょう、過去22年間のミサイル防衛により疲弊した防衛力を先ず再建し、その上で再編に当たればよいのだから、しかし。

 防衛予算概算要求がまもなく示されます、恐らく金額は過去最大規模となり、主として金額面での議論が交わされる事でしょう、ただこれは表面的なものであり、その予算が必要となった背景の是非を、多少知識が必要ですが、踏み込んでみてゆかねばならない。

 八月は概算要求の月であると共に五山送り火と終戦記念日の月です、特に終戦の日は不戦を平和への道と理解している方が多いようですが、そうでなく過去の戦争は政治をおカミの決め事として無関心が醸成した結果のようにも思える故、関心が必要だと思うのです。

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【京都幕間旅情】京福電鉄-嵐電,モボ101型の風景-昭和初期の旧型車置換えに新型車両KYOTRAM導入決定

2023-08-20 18:10:20 | コラム
■モボ電の騒音響く日常
 暑苦しい写真ですが実際暑かったので赦してほしい、見た目が新しい電車はもう少し残るのだけれども丸っこい量産に手間がかかりそうな大時代の車両が行き交う風景はもうあと少しなのか。

 京福電鉄にいよいよ新型車両がはいる、しかもかなりモダンな、つまり印象ががらりと変わってしまうような新型車両がはいってくる。江ノ電で使われているような、ね。すると、今の風景も数年間でおおきくかわってしまうかもしれない、聞こえる音さえも。

 KYOTRAM,きょうとらむという愛称で知られる新型車両は2024年から導入が開始され、モボ101とモボ301を置き換える構想、、まるっこい、いかにも路面電車どすえ、という車両が、いよいよ消えてしまうこととなる。計画ではモボ101全てが置き換え対象、と。

 京福電鉄の車両は外見が新しいものでも車体部分が昭和一台という車両が混じって運行されているので、じつはあのごうんごうん、という音さえも遠からずみゅいいん、というインバータ音に置き換えられてしまう、なじんだ音が消えてしまうのはすこし寂しい。

 新旧この100年の進歩、ということでしょうか、新型車両は釣り掛けモーター車と比べて消費電力が半分になっているという。もしかすると繁忙期にはあり得ない旧型車と最新鋭車両による2両編成増結の様子がみられるようになるのかもしれません。

 モボ電はけっこううるさい、沿線の方は、車両が古いと音はもちろん、車両そのものも重さがあるのでレールがきしむ音もそれなりに響くだろうし、新型車両に置き換わることは騒音の面で悪いことではないのだろうけれども、たまに乗る身としては、寂寥感が。

 江ノ電と姉妹関係にある京福電鉄で、江ノ電などは新型車両を導入しつつ旧型車とともに独特の車両体系を構成していますので、風景にはなじむのだろうなあ、と考えてはいるのですが、やはり、きょうとらむ、今風の車両形状となるイメージ図が示されています。

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ウクライナ情勢-ガスパイプライン使用延長協議終了と黒海穀物輸送の危機,東部戦線クピャンスクの激戦

2023-08-20 07:00:44 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 南部戦線ではウクライナの渡河能力が効果を示していて、これは日本が受け留める戦訓として自衛隊の水陸両用能力の強化を進める必要ともいえる。

 ロシア軍は東部戦線クピャンスク近郊で前進に成功している、ISWアメリカ戦争研究所が8月14日付分析報告として発表しました。これはロシア軍が公開した映像を基にISWがファクトチェックを行ったもので、ロシア軍の本土に近い東部戦線での再攻撃を意味している状況、オルリアンカ付近とミコライフカ付近まで進出しているとのこと。

 オルリアンカはクピャンスクの東22km、ミコライフカはクピャンスクの東24kmにあります。ただ、ウクライナ軍の防御態勢も固まっており、スヴァトフ-クレミンナ線にかけてのロシア軍再攻撃は阻止された可能性がある。東部戦線はバフムートの南西7kmにあるクリシチフカやウロジャイネ近郊地域でも戦闘が続いておりウクライナ軍も前進しています。
■ガスパイプライン
 欧州各国は昨年の海底ガスパイプライン破壊を重く見ており海上防衛に併せ海底防衛を強化しようとしているところです。

 ウクライナはロシアの欧州向けガスパイプライン使用延長協議に応じない方針を示し、これにより2024年を以てウクライナ国内のガスパイプラインを通じてのロシアから欧州への天然ガス販売が終了する見込みです。これは2023年8月16日のウクライナのハルシチェンコエネルギー相発言を8月17日1150時にロイター通信が配信しました。

 ロシア政府にとり天然ガス輸出は戦争継続への生命線の一つであり、その複数敷設されたガスパイプラインの一部は交戦中のウクライナ国内を通っており、ロシア政府はウクライナでのガスパイプライン使用継続を希望していましたが、ウクライナ側が更新に応じない姿勢を示しました。他方、ロシアはほかのガスパイプラインを用いることは可能です。
■パラオ船籍貨物船
 こうした状況がもし日本周辺で発生した場合には海上警備行動命令を発令できるのでしょうか。

 ロシア国防省は黒海海上を航行中のパラオ船籍貨物船に対し威嚇射撃を行った、これは13日のロシア国防省発表を引用するかたちでロイター通信が2023年8月14日0803時に配信しました。パラオ船籍船船が航行していたのは黒海南西部、ロシア国防省の発表では穀物輸送船がウクライナへ向かう武器密輸に用いられていた可能性があったとしている。

 パラオ船籍船はロシア海軍の停戦命令に応じなかったために威嚇発砲を受けた、威嚇発砲は艦砲ではなく自動小銃が用いられたとロシア国防省は発表しています。この貨物船はウクライナ南部オデッサ州のイズマイル河川港に向かっており、臨検が行われたものの武器などは見つからず、貨物船は臨検終了後にイズマイル河川港へ航行を再開したとのこと。

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