■大西洋と新しい88艦隊
ロシアウクライナ戦争が無ければこうした主張を展開する事は無かったでしょうし、今ほど台湾海峡有事が台湾有事となる事への世界の警戒感も無かったかもしれません。
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新しい88艦隊としてヘリコプター搭載護衛艦の8隻態勢を確立できるならば、隔年で大西洋方面へF-35Bを搭載した有力な艦隊を派遣することが可能です。ヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦に2隻の汎用護衛艦、こうした規模の部隊がイギリスやノーフォークや北欧諸国に定期的に親善訪問しインド洋には常駐する事が可能、大きなポテンシャルとなる。
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ロシアがこれをどう受け止めるかは別問題です。いや、もしウクライナ戦争が停戦し終戦協定まで進み、ウクライナと和解する未来があるならば、かつてロシア海軍は何度も太平洋艦隊旗艦のミサイル巡洋艦ワリャーグを親善訪問に派遣してくれましたから、日本もリバウ基地を親善訪問する未来はくるのかもしれません。しかし未来にはその逆もあり得る。
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北海道にロシア軍が上陸することなどキエフを陥落さえさせられないロシア軍にはあり得ない、という主張はありますが冷戦時代のような圧倒的な軍事力をロシア軍が既に保持していない時代においては説得力があります、しかし問題は、イエメンのフーシ派がサウジアラビアやアラブ首長国連邦などに行う様な自爆型無人機をロシアが注力するということ。
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使わせないようにするには、ロシアの国家指導部が戦争以外の選択肢を考えるようになるほかありません、この為に、大西洋上に展開できるポテンシャル、いやもう少し進んだプレゼンスという視点から、ヘリコプター搭載護衛艦を挙げました。ヘリコプター搭載護衛艦を航空母艦と受け止めるかは相手次第、日本側は敢えて大きなDD,駆逐艦で通したい。
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ロシアがどう受け止めるのか、脅威として認識するならば抑止力となりますが、任務は親善訪問と、また欧州各国が日本へ航空母艦を何度も派遣してくれるとともに極東地域にプレゼンスを公使してくれるのですから、その返礼的な意味も含めて重要です、こうしたものは相互主義で成り立つ、幸い日本はそのための造船力と経済力、手段があるのだから。
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ウォーデンレッグ作戦という、PLOの爆弾テロに悩まされるイスラエルが1985年に実施したPLO本部爆撃作戦がありました、これは今考えても驚くのですがイスラエルは2500km離れたチュニジアのチュニスにあるPLO本部をF-15で空爆したものです。当時戦闘爆撃機型のF-15Eは配備されておらず、制空戦闘機のF-15に爆弾を搭載し実施した。
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PLOトップの無力化には失敗しましたが、チュニスでもイスラエルの手は届くということを明白に示すこととなりPLOに衝撃を与えました。イスラエルは国際的非難にさらされていますが、PLOのアラファト議長には爆弾テロに代えて中東和平を模索させることとなり8年後にノーベル平和賞級のイスラエルとの和平合意へつながる遠因となっています。
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F-35は日本上空を探知されずに飛行可能だ、こう数年前に当時のトランプ大統領が発言し、ホワイトハウス広報が大慌てで火消しに走り回る一幕がありました。これは冗談での所謂放言ですが、ロシアにとりF-35Bのステルス性能は一つの不確定要素となる。必要ならば日本版ウォーデンレッグ作戦が可能、少なくとも能力を有する、と思わせる事が重要だ。
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トマホークミサイル搭載のコロンビア級戦略ミサイル原潜を購入し北極海に遊弋させた方がバレンツ海からモスクワを叩く方が、モスクワに近い分有用ではないか、こうした反論はあるかもしれません。つまり、ヘリコプター搭載護衛艦は最小限の数に抑えて、別の選択肢があるのではないか、という視点で先ずコロンビア級戦略ミサイル原潜を挙げました。
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VPNヴァージニアペイロードモジュールというVLS方式のトマホークランチャーがあり、これをヴァージニア級攻撃型原潜ですと3基しか搭載出来ませんがコロンビア級戦略ミサイル原潜に搭載したならば、96発のトマホークミサイルを投射可能となる。別に護衛艦に拘らずとも、日本本土から大陸間弾道弾を整備しても良いではないか、と反論はあり得る。
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ヘリコプター搭載護衛艦を敢えて推すのは、ヘリコプター搭載護衛艦は多機能艦であり、敵意を突き付け過ぎない、という利点がある点をここで強調します。明らかに用途が攻撃しか生まない装備を突き付ける事は、逆に対立を招きかねない。実際、ロシアウクライナ戦争は2022年に始まりましたが、そのはじまりはロシアとNATOとの対立でしたから。
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NATOとロシアはパートナーシップ協定を締結し、ロシア軍はその際にT-90に続く戦車として中古のレオパルド2A4を検討していましたし、T-72の後継にイタリアのチェンタウロをロシア国内でイヴェコ社の協力を受け評価試験さえしており、将来のNATO加盟も在り得ていました。そして1998年コソボPKOではロシア軍はNATOと協力関係にあった。
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ロシアウクライナ戦争に続く遠因となったのは、2007年のイランミサイル脅威に対応する東欧ミサイル防衛システム配備でした、これをロシアはロシアの戦術ミサイル無力化に繋がる脅威と認識した。NATOの東方拡大をロシアウクライナ戦争の要因と主張する自称識者もいますが、ロシア自身がNATOに接近したのだから、東欧諸国もこれに倣ったかたち。
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NATOにロシアが接近した際に将来のNATOロシア加盟さえ想定された1990年代末には、すると仮想敵国は日本になるのかい、と冗談が通じた時代ですが、ロシアがNATOに接近する様に東欧諸国もNATO加盟を希望し、その上でNATO加盟に必要な民主化を進め東欧諸国が加盟を実現、ロシアは権威主義体制とNATOの公序の違いから引いたに過ぎません。
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ヘリコプター搭載護衛艦は、対水上戦闘や戦力投射はもちろん、人道支援から平和維持活動まで幅広く運用できる、これは相手がどう解釈するかは別として、なんなら親善訪問で一般公開してもいい、敵意を突き付け過ぎないという利点があります。開戦を決意して準備するのではなく、将来の戦争を回避する為の抑止力を整備するならば、新しい88艦隊の大西洋展開はその選択肢だと考えるのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
ロシアウクライナ戦争が無ければこうした主張を展開する事は無かったでしょうし、今ほど台湾海峡有事が台湾有事となる事への世界の警戒感も無かったかもしれません。
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新しい88艦隊としてヘリコプター搭載護衛艦の8隻態勢を確立できるならば、隔年で大西洋方面へF-35Bを搭載した有力な艦隊を派遣することが可能です。ヘリコプター搭載護衛艦とイージス艦に2隻の汎用護衛艦、こうした規模の部隊がイギリスやノーフォークや北欧諸国に定期的に親善訪問しインド洋には常駐する事が可能、大きなポテンシャルとなる。
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ロシアがこれをどう受け止めるかは別問題です。いや、もしウクライナ戦争が停戦し終戦協定まで進み、ウクライナと和解する未来があるならば、かつてロシア海軍は何度も太平洋艦隊旗艦のミサイル巡洋艦ワリャーグを親善訪問に派遣してくれましたから、日本もリバウ基地を親善訪問する未来はくるのかもしれません。しかし未来にはその逆もあり得る。
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ロシアがどう受け止めるのか、脅威として認識するならば抑止力となりますが、任務は親善訪問と、また欧州各国が日本へ航空母艦を何度も派遣してくれるとともに極東地域にプレゼンスを公使してくれるのですから、その返礼的な意味も含めて重要です、こうしたものは相互主義で成り立つ、幸い日本はそのための造船力と経済力、手段があるのだから。
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ウォーデンレッグ作戦という、PLOの爆弾テロに悩まされるイスラエルが1985年に実施したPLO本部爆撃作戦がありました、これは今考えても驚くのですがイスラエルは2500km離れたチュニジアのチュニスにあるPLO本部をF-15で空爆したものです。当時戦闘爆撃機型のF-15Eは配備されておらず、制空戦闘機のF-15に爆弾を搭載し実施した。
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PLOトップの無力化には失敗しましたが、チュニスでもイスラエルの手は届くということを明白に示すこととなりPLOに衝撃を与えました。イスラエルは国際的非難にさらされていますが、PLOのアラファト議長には爆弾テロに代えて中東和平を模索させることとなり8年後にノーベル平和賞級のイスラエルとの和平合意へつながる遠因となっています。
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F-35は日本上空を探知されずに飛行可能だ、こう数年前に当時のトランプ大統領が発言し、ホワイトハウス広報が大慌てで火消しに走り回る一幕がありました。これは冗談での所謂放言ですが、ロシアにとりF-35Bのステルス性能は一つの不確定要素となる。必要ならば日本版ウォーデンレッグ作戦が可能、少なくとも能力を有する、と思わせる事が重要だ。
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トマホークミサイル搭載のコロンビア級戦略ミサイル原潜を購入し北極海に遊弋させた方がバレンツ海からモスクワを叩く方が、モスクワに近い分有用ではないか、こうした反論はあるかもしれません。つまり、ヘリコプター搭載護衛艦は最小限の数に抑えて、別の選択肢があるのではないか、という視点で先ずコロンビア級戦略ミサイル原潜を挙げました。
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ヘリコプター搭載護衛艦を敢えて推すのは、ヘリコプター搭載護衛艦は多機能艦であり、敵意を突き付け過ぎない、という利点がある点をここで強調します。明らかに用途が攻撃しか生まない装備を突き付ける事は、逆に対立を招きかねない。実際、ロシアウクライナ戦争は2022年に始まりましたが、そのはじまりはロシアとNATOとの対立でしたから。
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NATOとロシアはパートナーシップ協定を締結し、ロシア軍はその際にT-90に続く戦車として中古のレオパルド2A4を検討していましたし、T-72の後継にイタリアのチェンタウロをロシア国内でイヴェコ社の協力を受け評価試験さえしており、将来のNATO加盟も在り得ていました。そして1998年コソボPKOではロシア軍はNATOと協力関係にあった。
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ロシアウクライナ戦争に続く遠因となったのは、2007年のイランミサイル脅威に対応する東欧ミサイル防衛システム配備でした、これをロシアはロシアの戦術ミサイル無力化に繋がる脅威と認識した。NATOの東方拡大をロシアウクライナ戦争の要因と主張する自称識者もいますが、ロシア自身がNATOに接近したのだから、東欧諸国もこれに倣ったかたち。
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ヘリコプター搭載護衛艦は、対水上戦闘や戦力投射はもちろん、人道支援から平和維持活動まで幅広く運用できる、これは相手がどう解釈するかは別として、なんなら親善訪問で一般公開してもいい、敵意を突き付け過ぎないという利点があります。開戦を決意して準備するのではなく、将来の戦争を回避する為の抑止力を整備するならば、新しい88艦隊の大西洋展開はその選択肢だと考えるのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)