Can you read me? といわれて「お前の何を読んだらいいんだ」と思っていはいけない。これはよく映画やテレビのニュースで宇宙飛行士とヒューストンとの会話でやり取りされる言葉である。同時通訳とか字幕では「聞こえますか」と訳している。Can you hear me ? と絶対にいわないのかどうかは知らないが、普通にはCan you read me? のようだ。
中学生の昔You had better (should) book a seat. とかいった文章を読んでbookが動詞として使われることにぶったまげた。そういえば、予約するという意味にbuchenという語をドイツ語でも使うことがあるようだ。一昨日だか昨日だかテレビの英語会話でreasobnable priceを「手ごろな値段」と訳していたが、このreasonableをどう訳していいかいつも困ってしまう。合理的なというのもおかしいし、適当なとかいつも訳に困る。
昔、論文を書いてほんとに真っ赤に添削されて自分の使った元の語彙がところどころ大海に浮かぶ島のように残っているというそんな頃だが、「実際に」という語にreallyと訳をつけたら、さりげなくactuallyと添削されて、このactuallyを覚えた。「実際の場合に」というときにはin actual casesなどという。
それよりもっと後だが、8年ぐらいアメリカにいて英語の達者だった同僚のS先生と懇意だったので、論文の英語をみてもらったが、「完全に」をなんだか訳がおかしいよなあと思いながら, totallyと訳しておいたら、entirelyとさりげなく直してもらった。これなどはentirelyが英語に出てくれば、まったくとか完全にと訳せるが、日本語から英語としては私には思いもつかなかった。そうやって一つ一つの語を覚えていくのだ。まだまだ語彙は不足している。
物理の本を読むときはそれでも辞書を引く回数は多くないが、これを日本語にしようと思うとつい訳語探しに辞書を引く回数が増える。しかし、辞書にはなかなかこなれた訳が載っていない。それで訳しにくいことが多い。identityなんて語もそのうちの一つだ。identity cardといわれると身分証明書とわかるが、identifyという語の訳はぴったりするものを知らない。
そういえば、長男と品川のホテルで会って、食事にホテルの前のレストランに入ったときアメリカ人が隣の席に座った。何の用で日本に来たのかと尋ねると仕事だという。そして彼はIBMに勤めていることがわかった。それで技術者かと聞いたらそうではないという。仕事は何に関係しているかと聞いたら、logisticsだというそれで物品の調達の取引に来ていることがわかった。
彼が帰った後で長男にlogisticsをどう訳すかと聞いたら、即座に「兵站」と答えたので、お互いに笑ってしまった。これは大抵の辞書にそう出ているからである。長男しばらくあって「物流かな」とつぶやいた。物流とか物品調達などという訳は辞書にはまだ載っていないのだろう。