つい数週間前のことだが、長年使って来た電気カミソリが壊れて動かなくなった。仕方なく新しいのを買ったが、前と同じオランダのフィリップス社のものを選んだ。電気カミソリはフィリップスに限る。
これは次兄が就職をしてはじめての給料でフィリップスの電気カミソリを購入していたのを見たからである。そのころは松下電器が下請けで生産をしていたと思う。
亡くなった長兄はブラウンの電気カミソリを愛用していたが、これは深剃りができるという理由だった。
学生の頃フランス映画ではじめて電気カミソリを使っているシーンがあって、便利らしいなと思ったが、まだそのころ日本にはなかった。私は頬にひげが伸びて来る方なので、電気カミソリは羨ましかった。
後年大学に勤めてから、羽仁五郎が対談か何かで彼が電気カミソリを嫌っているのを知って意外な気がしたものだ。
私の記憶がともかくも変なことだけ覚えていて本質的なことはどこかへいってしまうというよい例だろう。