前の原稿に脚注を加えて、付録も書き加えようとしている。
数学とすれば、まず演算子があって、それから固有値を求め、その固有値に対する固有ベクトルを求めるという順序になる。
ところが、物理とすれば、電子のスピン行列のz成分についての演算子の固有値が実験的にわかっていて、それから演算子s_{z}を求め、最後に固有ベクトルを求めるというのが、朝永『角運動量とスピン』(みすず書房)の記述法である。
一方、原康夫『量子力学』(岩波)では固有値がわかっており、さらに固有ベクトルがわかり、最後に演算子s_{z}の行列表現を求めるという順序になっている。
論理的な順序とすると朝永のやり方がよさそうだが、それだけ演算子s_{z}を求めるところにギャップを感じた。ところが、それはそう感じたのだが、結果を見ると当然のように思えるから、不思議である。
論理的なことはさておき、わかりやすいのは原康夫流の取り扱いであると思ったのが、今朝の時点での認識であった。
いまでは堂々巡りの感じがしている。
(2021.8.19付記) 「Pauli行列の導出」は結局「数学・物理通信」9巻10号(2020.2)に掲載した。Pauli行列はよく知られたものだが、その導出となると簡単だというのかどうかは知らないが、きちんと導出した文献はあまりみかけない。
それで、それを不満に思って書いたのであった。インターネットで「数学・物理通信」で検索してみてください。簡単に見つかるはずです。
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