先日、ドイツ語で「言い回し」をRedewendugenというと書いたが、いまNHKのラジオのフランス語の講座を聞いていたら、表題の表現が「決まりきった言い回しです」という意味で言われていた。
これはIl tombe des cordes. という表現が決まりきった表現だというのである。フランス語に何年も接しているが、初めて聞いた表現である。直訳すると「縄が落ちてくる」である。
これでは普通には、フランス語を母語とはしない我々にはわからない。tombeといえば、「雪が降る」というシャンソンはTombe la neigeというふうに歌っている。あのシャンソンの出だしはTombe la neige, Tombe la neige, tu ne viendra pas ce soirだったか。
もとにもどって、普通に雪が降るなら, Il neige. である。ilは人称代名詞の彼を意味するが、天気とか時間をいうときにはilという代名詞を使う。こういうilは非人称代名詞という。ドイツ語ならば、これは中性の代名詞esである。雨が降るならば、ドイツ語ではes regnet.であり、雪が降るならば、es schneit. である。
これがフランス語ならば、il pluet.が雨が降るだし、雪が降るならば、il neigeである。おかしいのはどういう天気ですかという問いは
Quel temps fait-il ?
というのである。直訳すると「どんな天気をつくっているか」とでも訳せようか。faireという語は「つくる」とか「する」というときに使うとても用途の多い語であるが、天気のときにも使うのである。
そういえば、暑いとか寒いとかもIl fait chaudとかIl fait froidとかいう。ここでもfaireを使っている。または風があるとかでもil fait du vent という。天気がよければ、il fait beauだし、わるければ、il fait mauvaisである。 faireのオンパレードであった。
(注)tempsには天気のほかに、時間という意味もあるが、時間を聞く場合にはtempsはつかえない。「今何時ですか」このごろはIl est quelle heure ?(イレ ケル―ル)という。むかしはこれを倒置した、Quelle heure est-il ? と教わったものだが、だんだんくだけた口語的表現が教えられるようになった。
これはもう私たちの若いころのことだが、大学の宿舎に住んでいたころ、妻がこのケル ウウル エティールという文句だけを知っていて、花についた害虫のアブラムシを方言でケラレというが、誰かよその奥さんがそんなフランス語がありますねといったときに、即座にそれはフランス語で「何時ですか」という意味で、「ケル ウウール エティール」というと言って、近所の奥さんから学があると感心されたことがある。彼女はこのフランス語だけしか知らなかったのに。
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