【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

東京電力は切腹しろ

2011年04月19日 08時41分51秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

【2011年4月18日(月)参院予算委員会 集中審議(平成23年度本予算の執行状況、とくに東日本大震災について)】

 参院では今年度当初予算の審議が、「3・11」のため中断したことから、5回程度の集中審議(TV入り)を開く、ということで与野党が合意しているようで、4月18日(月)に続いて、4月25日(月)にも集中審議があるようです。

 参院自民党国対委員長の脇雅史さんの質問通告で、東京電力社長が、震災から1ヶ月以上経って、ようやく国会に参考人として来ました。なぜ、彼が今まで呼ばれなかったのか、ふしぎです。脇委員も「ホントウは呼びたくなかった」と言っていましたが、どういう意味なのかちんぷんかんぷんです。

 第75通常国会の1975年6月13日(金)の衆・外務委員会では、核拡散防止条約(NPT)の締結をめぐり審議の中で、宮澤喜一外相や坂田道太(さかた・みちた)防衛庁長官に加えて、佐々木義武・科学技術庁長官の自民党3衆院議員が閣僚として出席。公明党(Clean Government Party)で後に中央執行副委員長も務めた渡部一郎さんが次のように質問しています。

 「東京電力の福島第一原子力発電所は四十六万キロワットアワーの認可出力を持ち(ながらも)現在(の発電量は)ゼロ」「合計しますと、認可出力は八基で三百八十九万三千キロワットアワーで、百五万キロワットアワーである。つまり(認可出力に対する実際の発電量は)四分の一ぐらいなんですね、四分の一しか出力は出ていない。これはもうどうしてこんなになっておるのか」「しかも原子力発電所という欠陥商品のために原子力発電は不能になりつつある」そうすると核防条約(=核拡散防止条約、NPT)云々の前に、これほどまでに原子力発電に対する状況が悪いのに、科学技術庁長官は、核防条約さえサインをすると日本は原子力でエネルギーがたっぷり供給されるかのごとく発言された。それはいささかオーバーな御発言ではないか」とただしています。

 これに対して、自民党きってのエネルギー通と言われた佐々木義武・科学技術庁長官は次のように答弁しています。

 「現在の完成した原子炉がどうして稼働率が悪いのかというもう一つの御質問でございますけれども、これは実際に立地いたしましていま稼働しておるわけでございますが、その稼働率の悪い一番大きい原因と申しますか、これはいわゆる重大事故ではございませんけれども故障が予想以上に起きまして、その故障の主なものはパイプの亀裂とか溶接部分の割れ目とか、そういう材料あるいは品質等からくる、またそれに対応する技術的な未経験、未熟と申しますか、そういう点からいたしまして炉をとめて検査をして補修するという現状がたくさんございますので、お話しのように現在の運転率が悪いのでございます」と答弁しています。あっさりと、福島第一原子力発電所らを「故障が多い」「パイプの亀裂とか溶接部分の割れ目」が多い、それに対する技術が「未熟」と、自民党の大臣が認めているわけです。これは36年前の国会答弁です。

 そして、この委員会で答弁席に座っていた宮澤喜一外相はその28年後、宮澤喜一首相として通常国会にのぞみました。外相から28年後に首相というのは、ヒジョーに息の長い政治家だったと感心しますが、それは別として、ついに自民党の長期政権に幕を閉じました。しかし、その後、小沢一郎氏のミスがあり、自民党政権に。しかし、直後の1995年の第17回参院選では、新進党が自民党の総得票を上回り(議席数では及ばず)、二大政党の時代が到来しましたが、小沢一郎氏は1997年12月に新進党を解党してしまいました。

  ところで、東京電力の有価証券報告書(有報)をネットで読むと、もちろん、日本航空と違い、不動産はたくさんあります。ところが、この会社は、意外に内部留保が少ないんですね。そのわりに、社債は4兆円以上発行していて、大変信用されていた会社だと感心します、3月11日までは。この4兆円ですが、当然、これは負債です。しかし、東京電力を国有化したりすると、この社債の償還に税金が使われることになります。日本航空の会社更生法申請では、600億円以上の社債がデフォルト(債務不履行)しました。日航と違い、東京電力は不動産の保有
数が桁外れですが、これはあくまでも発電・送電施設の土地であり、すぐに売買できる性質のものではないでしょう。これは私は東京電力が会社更生法を申請するよりも前に、特別立法でデフォルトさせるべきだと、私は考えます。

 ところで、菅直人内閣の景況感はおかしい。「自粛を自粛しよう」と言っています。しかし、ことしの日本経済は、「原子力災害による消費マインドの冷え込み」が足を引っ張るでしょう。既に内閣府の景気ウォッチャー調査では、足元も先行きもマイナス20を越えるDI(景気判断指数)の落ち込みとなっています。

 もう一つは、部品の収集ができずに工業製品において、完成品がつくれないという問題です。私は横浜市港湾局や、周辺業者への取材経験が多いのですが、全国的にはあまり分かりませんが、東北地方には工業製品の完成品を出荷する港というのはあるのでしょうか。あるでしょうが、あまりないでしょう。日本の工業は現在も太平洋ベルト地帯が主力です。東北は水が良いので、精密部品の生産工場があり、東北道・東北新幹線で栄えましたが、組み立て工場から直接、港から太平洋に出荷できる態勢にはあまりないのではないでしょうか。私が知っている限り、鹿島港も化学製品ですから、横浜港にある日産自動車の専用埠頭や三菱重工業の専用埠頭が完成品が出荷できる本州の北限のように思えます。ということは、東北の工場というのは、太平洋ベルト地帯の完成品組み立て工場に部品を納入して初めて成り立つ産業構造なのではないかと考えます。そうすると、太平洋ベルト地帯の中京工業地帯、京浜工業地帯は、国内外の他地域からの調達に切り替えないといけないのではないでしょうか。さらにすべての部品を調達したところで、電力が足りないのですから、工場稼働率は下がるでしょう。これは、考えていくと、原子力災害と震災により、日本全体で、完成品の売上高に大きな影響を与えます。これを裏付けるように、4月の新車販売台数は、どうやら50%前後の落ち込みの気配だそうで、これは、おそらく自販連が統計を取り始めて最大のマイナスになるでしょう。もちろん完成車(=タマ)が来なければ、販売店はどうにも売りようがありません。

 菅内閣は「自粛を自粛しよう」「節電しよう」としか言っていないような気がします。もっと全国的に、売掛金、とくに、工場の従業員の給料支払いのためのセーフティーネット保証を制度融資で整える必要があるのではないでしょうか。

 さて、参院予算委員会に出てきた、東京電力。この清水正孝・社長ですが、どういうわけかテロップが「取締役社長」となっているので、代表権がないのかどうか調べたら、どうもハッキリしないのですが、どうやら「代表取締役」のようです。この「代表取締役」なのか「取締役」なのかというのは、今、彼(清水氏)が、東京電力が置かれている境遇からしたらものすごく重要な情報なのですが、東京電力のホームページでも、会社四季報などをみても、なんだかハッキリしません。もともとこういった情報をしっかり出そうとしない、責任逃れの体質がある会社だったのではないかと考えます。

【追記 2011年4月20日(水)午前10時】

 上の段落について、「いつも読んでいる通りすがり」さんからメールで情報提供をいただきました。有価証券報告書を見ると、勝俣会長、清水社長、武藤副社長・原子力本部長とも、役職名は「取締役会長」「取締役社長」「取締役副社長」で、その下に(代表取締役)とマル括弧で補っています。ですから、上記参議院インターネット審議中継のテロップも「取締役社長」という肩書きになったということのようです。しかし、これはおかしい。中小企業の社長の名刺では、社長よりむしろ「代表取締役」とだけ書いてあることがよくあります。会社法上、それは当然のことです。報道でちょっとだけ見たのですが、東京電力には、総会屋だか、あるいは暴力団だかの関係があったそうで、その辺などからも「代表権」を明示しないのかもしれません。しかし、それは上場企業としても、公益企業としても許されない情報隠しです。一人で会社の債務を個人で全部連帯保証している中小・零細企業の社長の名刺「代表取締役」を見習えといいたいです。情報提供ありがとうございました。【追記おわり】

 4兆円の社債をどんどん売って、それを原子力につぎ込んできたんでしょうから、社債のデフォルトは当然だと思うし、東京電力もよくも、ノコノコと国会に出て来られるもんだ。ホントウに、東京電力は切腹しろ、と私は言いたい。もちろん、二大政党制の導入を遅らせる新進党解党という暴挙をした小沢一郎氏も切腹すべきだし、郵政解散などで自民党に投票し続けた人も同罪だと考えております。本気で考えております。そして「放射能がこわい」が禁句となっている会社に勤め、それに従っている会社員も、日本がこれからも村社会、ものいいにくい社会を続けていき、次の「フクシマダイイチ」を招くことになりますから、やはり同罪だと思います。菅内閣の政務三役にも同じような人がいるんじゃないですか。みんな、もっと怒りましょう。泣き寝入りは、自分が損をするだけでなく、自分の子孫も損をするということをわきまえてください。なお、震災後も、わが国の機関投資家は、海外の資産を「買い越し」ています。経常収支黒字国として債権国として、わずかな利息を大事に分かち合う内需をしっかりつくってほしい。この辺のことは、やはり経済産業省が原発で手一杯のようですから、民主党政府外議員にもがんばってほしい。