[写真]平成23年度本予算の編成・審議でがんばったみなさん。左上から時計回りに、菅直人首相、野田佳彦財務相、櫻井充・財務副大臣(歳出)、尾立源幸・財務大臣政務官(歳出)、五十嵐文彦・財務副大臣(歳入)、吉田泉・財務大臣政務官(歳入)、玄葉光一郎・民主党政調会長大臣、細川律夫厚労相、平野達男・内閣府副大臣、中井洽・衆院予算委員長、中川正春・衆院予算委筆頭理事、前田武志・参院予算委員長。
さて、年度末の夜です。私は月曜日に年度末にやらなければいけないタスクをやり終えて、この4日間はゆっくりしていました。何となく気が向かなく、3月10日に国会に行って、いろいろ取材して、あと、1つだけごあいさつ(おわび関係)を済ませて、民主党本部に行って、岡田さんの会見に出て、その後は、国会に何となく足が向きません。記者仲間はへとへとに疲れているだろうから、睡眠は十分にとれている僕のことをむかつくかもしれないし、イライラしている人も多い。なるべく出ない方がいい。もちろん、国会づとめで仲の良い人の親戚らが無事かどうかは確認していないのが気がかりですが、なんとか、自分のやるべきことをやろうと思います。
一般会計で92兆4116億円の歳入見込みと歳出の限度額を計上した平成23年度本予算(一般会計、特別会計、政府関係機関)が2011年(平成23年)3月29日(火)、成立した。衆院で可決、参院で否決されたので、日本国憲法第60条により、衆議院の議決が国会の議決となりました。これに先立ち、先日のエントリーでもふれたとおり、両院協議会が開かれました。
3月29日(火)の午後5時12分から、衆議院本会議が再開され、両院協議会の結果が報告されました。ちなみに、何度も書きますが、両院協議会はインターネット中継もないし、記者もアタマ撮りだけで傍聴は許されていません。この点については、当ブログとしては、その問題点を3月末に広く世論に呼びかけたい意向を持っておりましたが、ネット上などでその世論への高まりはありませんでした。それは当然のことですが、ねじれ国会はむこう2年以上続くわけですから、またの機会にしようと思います。
再開された衆議院本会議では、中井洽さんが登壇し、休憩前に指名された衆院側の10人による互選で、「私、中井洽が両院協議会協議議長、中川正春君が副議長に選出された」としました。中井・中川コンビは、予算委員長と与党筆頭理事のコンビですから適任だし、また、三重県第1区、同県第2区のコンビでもあります。まあ、誰でも気付くでしょうが、菅総理(代表)から、国会・党運営をほぼ一任に近い形で任されている岡田克也幹事長と選挙区も国会事務所も近い議員を重要所に配置していたことが分かります。
[画像]両院協議会の結果を報告する中井洽さん、2011年3月29日午後5時過ぎの衆院本会議
中井さんは「両院の一致をみず、成案を得るに至らなかった」と両院協議会の結果を報告しました。
横路孝弘・衆議院議長は、「ただいま両院協議会協議委員議長の報告のとおり、平成23年度本予算は両院の意見が一致しませんでしたので、憲法第60条第2項により、本院の議決が国会の議決となりました」と宣言し、ひな壇の菅内閣がアタマを下げました。
[画像]本予算成立で頭を下げる菅内閣、衆院本会議
この後、参議院本会議が再開し、自民党の林芳正さんが登壇しました。
[画像]林芳正さん、参院本会議、参議院インターネット審議中継
林さんは、参院側の協議委員は「林芳正議長、岩城光英副議長で、衆院側は中井洽議長、中川正春副議長で、くじ引きの結果、両院協議会の議長には中井洽さんがつきました」と報告しました。この内容については衆院本会議での報告には入っていなかった情報です。衆院側(民主党側)が議長をとったから、両院協議会が早く終わったのであって、参院側(自民党側)が議長をとっていたら、もっと長引いたはずです。
林さんは「衆院側からは、『平成23年度本予算は成長と雇用を重視する新成長戦略を盛り込んでおり、震災対策のためにも速やかな成立が必要だ』との意見があった。一方、参院側からは『震災があったのに、マニフェストを修正していない。また公共事業が減り、地方に冷たい予算だ』との意見が述べられた。その後、懇談となり、議事が終了し、成案(すりあわせ案)が見られなかった」としました。ちなみに、成案を可決するには、3分の2以上の賛成が必要です。衆参から10人ずつ協議委員が出て、3分の2なんてあり得ません。第23回参院選(2013年夏)の前までに、国会法改正が必要です。
西岡武夫議長は、「憲法60条2項による衆院の議決が国会の議決になります」と宣言しました。なお、参院本会議には閣僚はひな壇に出席していませんでした。
これにより、統一会派「民主友愛太陽国民連合」が民主党を結党した第142回通常国会(1998年1月12日召集)から第177通常国会まで、13回の本予算審査があったわけですが、すべて年度内に翌年度予算を採決し、成立しました。当たり前のようですが、55年体制で、日本社会党で「成田3原則」の成田知巳委員長-「改良主義」の江田三郎書記長のコンビが失脚した後から、社会党が抵抗野党化し、予算が人質に取られ、4月以降に予算成立が遅れ、暫定予算となることが続きました。また、自民党も第1次野党期最初の本予算審査となった第129通常国会(1994年1月31日召集)では、衆院での受理が3月4日、可決が6月8日、参院での可決・成立が6月23日となり、細川・羽田内閣の政治改革への圧倒的な世論は「村山自・社・さ闇討ち内閣」に倒され、自民党は連立パートナーを入れ替えながら、国民は自民党に2009年夏まで第2次与党期を与えました。そして、自民党の第2次野党期最初の第174通常国会では、 「3月24日」という極めて早いタイミングで、参院でも予算が可決しましたが、この自民党の対応については党内で批判があり、舛添要一・予算委筆頭理事が離党してしまうという後味の悪いものとなってしまいました。同時に、第1次与党期の民主党は、「細川内閣のトラウマ」から解消されましたが、会期終了後の第22回参院選で惨敗し、ふたたびねじれ国会となり、予算編成・審査を迎えました。
政権交代ある二大政党デモクラシーのために、まずは、参院自民党の予算委理事が離党しないこと。これを期待したい。健全野党の第一歩です。
そして、この予算は4月には補正案が提出される見通しです。とはいえ、やはり本予算をしっかり通しておかないと、議論の骨組みができませんから、マスコミなどの関心が低いとはいえ、平成23年度当初予算が、意義の少ないものである、などということはありません。
訓政期にあるニッポン。2月17日の衆院予算委員会では、自民党の1年生議員とはいえ高岡市長の経験がある橘慶一郎さんが、「建設国債というのは設備資金、設備を導入するための資金、それでいろいろなインフラストラクチャーをつくるということであります。赤字国債は言ってみれば運転資金、資金繰りがつらいからそれを借りていく」としたのに対し、野田佳彦財務大臣が「赤字国債も建設国債も、借金としてはやはり積もっていくものでございますから(略)できるだけ抑制していかなければいけないのではないか」との答弁があり、橘さんは「私はそうは思いません。やはりそれぞれ目的が違う、そして、抑制するものはその目的によって抑制をしていかなければいけない、ここはぜひ指摘をさせていただきたいと思います」としています。私は橘さんの意見に賛成です。また2月28日(月)の集中審議では伊吹文明さんが「歳入と歳出の違い」について「歳出というのは『その金額まで「税金」と、そして将来の国民の税金である「国債」を使って良いよ』という権限を国会が政府に与えるものだが、歳入は見積もりに過ぎない」と述べていて、これも全く伊吹さんのいう通りだと思います。
こういう予算を組む作業を、何度もできることは、訓政期にあって民主党にとっては幸運です。衆参予算委、財金委、本会議を見ていて、野田佳彦さんというのは相当に体力と精神力にすぐれたたくましい人のようですから、ぜひ、しっかり勉強して欲しいと思います。
ところで、予算の年度内成立が新記録更新だ・・・と書いていますが、当たり前のことですよね。当たり前のことが当たり前でないのが、自民党長期政権であり、社会党が野党第1党だった55年体制だったわけです。
民主党・国民新党が参議院で少数をしめるねじれ国会ということで、当ブログでも第177通常国会の「3月危機」を指摘してきましたが、なんとか乗り切ることができました。もちろん、3月11日午後2時46分、菅民主党の3月危機をはるかに上回る3月危機が、日本を国難に突き落としました。そして、福島第一原子力発電所の事故は、政権交代のない政治による癒着のずぶずぶのヘドロがもたらした人災だと私は考えています。小沢一郎氏が新進党を解党していなければ、もっと早く政権交代ができたのに。モノ言えぬムラ社会で横に習えで生きていく田舎者の知恵は、長年の長時間労働に培った付加価値と日本の信頼を欠損し世界に迷惑をかける最悪の結果となりました。慚愧に堪えません。
[画像]下半分のバナー(ワッペン)は、自民党の機関紙「週刊自由民主」からキャプチャーさせていただきました。