5年弱ぶりの解散総選挙で、英国で14年ぶりの政権交代となりました。
[写真]開票締め切りと同時に、出口調査を発表し、政権交代確実を報じたBBC開票特番「エレクション・ナイト」あちら時間の2024年7月4日(木)午後10時ちょうど=同。
[写真]「アイム・ソーリー」を複数回口にしたファイナル・スピーチを終えて、官邸を去り、バッキンガム宮殿に向かう、スナク前首相(保守党首)、あちら時間の5日午前10時半ごろ=同。
[写真]青い光を放つ首相車でバッキンガム宮殿に入るスナク首相、5日午前10時45分ごろ=同。
[写真]スナク前首相の辞任を受けて、チャールズ国王から呼ばれて、宮殿に入る、スターマー労働党首(影の首相)、同日正午ちょっと過ぎ、あちらはこちらの警視庁警備部と感覚が違うようでこの時点では警備・警護のバイク・車はなし=同。
[写真]宮殿に入る眼鏡姿のスターマーさんの横顔、キャンペーンポスターでも眼鏡姿は少なく、まだ見慣れないので、一瞬誰だか分らなかった、同日正午過ぎ=同。
●労働党大勝、保守党、SNP大敗、リブデム復調、その他勢力はさほど伸びず
労働党が前回より総得票数を減らしながらも、地滑り的圧勝。「コロナ渦官邸パーティーゲート」「財源なき法人税率下げでのディープステートの金融混乱」の保守党は自爆しました。SNPも議席を減らし、保守党・SNPの落選失業者は、2012年の日本・民主党を上回りました。スコットランドでは、SNPから労働党に多数の選挙区が9年ぶりにスイングしました。
●有色人種スナク首相2年足らずで去るも保守党本部8時訪問のきづかい
翌朝、スナク首相が朝8時過ぎに保守党本部に党職員をねぎらいました。その後、10時半に、官邸前で最後のスピーチ。そのまま去りました。そして、10字45分ごろバッキンガム宮殿に。チャールズ国王に辞任を申し出ました。
●眼鏡姿のスターマー新首相、当選4回にして頂点に
国王から呼び出され、正午過ぎになってから、スターマー労働党首(影の首相)がバッキンガム宮殿に。正直まだなじみが薄いメガネの姿の横顔のスターマーさんが入りました。既に首相に任命されたものと思われます。
●除名のコービン前党首の2015年の躍進の足腰で今回の議席増か
14年ぶりとなった政権交代では、2015年の総選挙で、得票率40%・若者の投票率が全体と並ぶ「積極財政の急進左派」(米大統領予備選のバーニー・サンダース減少)として議席を伸ばしたジェレミー・コービン党首が鍛えた足腰が、保守党の自滅とSNPのスコットランドでの退潮で、議席増につながったようです。わずか当選4回で首相となったスターマーさんは最左派路線の微修正のマニフェストで一気に伸びたようです。コービンさんは、無所属強行出馬で労働党を除名されましたが、1万票近く減らしつつも無所属で議席を維持しました。
●キャメロン・メイ・ジョンソン・トラス・スナク元首相で庶民院はスナクだけに
保守党の14年間で首相をつとめた政治家は辛酸をなめました。デイビッド・キャメロン元首相は奇跡の外相としての政界復帰で貴族院議員となっていましたから改選ではありません。テリーザ・メイ元首相は執行部から小選挙区の情勢を突き付けられるかっこうで、不出馬・引退。議員辞職に追い込まれた前任・後任と違い、バックベンチャー(政府外与党議員)として本会議で積極的に発言したメイ議員の努力は実りませんでした。ボリス・ジョンソンさんは議員辞職済みです。リズ・トラスさんは落選しました。女性で2人目・3人目の首相が政界を去りました。有色人種として2年近く政権をつとめたスナクさんは、元党首(36歳で就任したヘイグさん)の小選挙区を継承したこともあり踏みとどまりました。スコットランド独立投票、脱EU投票という、総選挙より大きな重要選挙にさいなまられた英保守党14年政権。首相交代が多かったことが残念です。
●20歳の若き女性代議士だったブラック女史は3期9年で落選
SNPで20歳で初当選して3期9年間つとめた議員のブラック女史は落選しました。本会議でのブラックさんのスピーチは退屈なものでした。
●首班指名選挙も、政権移行チームもない英国
NHkで「過半数ととった時点で政権交代になる」との原稿がありましたが、これは正しくありません。トラス首相がバッキンガム宮殿でチャールズ国王に辞任を申し出て、チャールズ国王がスターマー党首を呼び出して、口頭で告げた時点で首相になります。2010年の政権交代は保守党・リブデム(自由民主党)が「野党ブロック」を組んでいましたから、首相は2・3位連合の連立を数時間模索してからバッキンガム宮殿に行きました。
●チャールズ3世国王の3人目の首相だが、政権交代は初めて
労働党としての政権交代は1997年以来の27年ぶりとなります。この時は、バッキンガム宮殿に初めて足を踏み入れたブレア党首にエリザベス嬢王が「あなたは私が会う10人目の首相です」と言われて天にも上りそうな気持ちになったものの、直後に「1人目はチャーチルです」と言われ肩に重圧がのしかかったようです。世界大戦を終わらせたチャーチルと違い、ブレアさんはイラク戦争を初めて終結せずにブラウン副総理にその座を継承しました。
●本当に紳士の国ですか、陰湿さを増すブラックボックス庶民院
かつて当選1回39歳で初当選したトラス前議員は党が任命した指導係の男性議員と不倫していました。地元紙ではかねて報道されていたようです。どっちらけ。以前より陰湿さが増し、ブラックボックス化した庶民院の信頼回復が急がれます。
以上です。