【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【英国の事例】労働党が総得票数を減らしつつ地滑り的議席増で政権交代、保守党「コロナ禍官邸パーティー」ブラックボックス陰湿政治で自爆

2024年07月05日 20時54分31秒 | 英国の事例
[写真]保守党支持者に対して「アイム・ソーリー」を複数回口にしたファイナル・スピーチを終えて、官邸を去り、バッキンガム宮殿に向かう、スナク前首相(保守党首)、あちら時間の5日午前10時半ごろ、BBC放送画面から撮影。

 5年弱ぶりの解散総選挙で、英国で14年ぶりの政権交代となりました。

[写真]開票締め切りと同時に、出口調査を発表し、政権交代確実を報じたBBC開票特番「エレクション・ナイト」あちら時間の2024年7月4日(木)午後10時ちょうど=同。

[写真]「アイム・ソーリー」を複数回口にしたファイナル・スピーチを終えて、官邸を去り、バッキンガム宮殿に向かう、スナク前首相(保守党首)、あちら時間の5日午前10時半ごろ=同。

[写真]青い光を放つ首相車でバッキンガム宮殿に入るスナク首相、5日午前10時45分ごろ=同。

[写真]宮殿に入るスナク首相、同日午前10時50分ごろ=同。

[写真]スナク前首相の辞任を受けて、チャールズ国王から呼ばれて、宮殿に入る、スターマー労働党首(影の首相)、同日正午ちょっと過ぎ、あちらはこちらの警視庁警備部と感覚が違うようでこの時点では警備・警護のバイク・車はなし=同。

[写真]宮殿に入る眼鏡姿のスターマーさんの横顔、キャンペーンポスターでも眼鏡姿は少なく、まだ見慣れないので、一瞬誰だか分らなかった、同日正午過ぎ=同。

●労働党大勝、保守党、SNP大敗、リブデム復調、その他勢力はさほど伸びず

 労働党が前回より総得票数を減らしながらも、地滑り的圧勝。「コロナ渦官邸パーティーゲート」「財源なき法人税率下げでのディープステートの金融混乱」の保守党は自爆しました。SNPも議席を減らし、保守党・SNPの落選失業者は、2012年の日本・民主党を上回りました。スコットランドでは、SNPから労働党に多数の選挙区が9年ぶりにスイングしました。

●有色人種スナク首相2年足らずで去るも保守党本部8時訪問のきづかい

 翌朝、スナク首相が朝8時過ぎに保守党本部に党職員をねぎらいました。その後、10時半に、官邸前で最後のスピーチ。そのまま去りました。そして、10字45分ごろバッキンガム宮殿に。チャールズ国王に辞任を申し出ました。

●眼鏡姿のスターマー新首相、当選4回にして頂点に

 国王から呼び出され、正午過ぎになってから、スターマー労働党首(影の首相)がバッキンガム宮殿に。正直まだなじみが薄いメガネの姿の横顔のスターマーさんが入りました。既に首相に任命されたものと思われます。

●除名のコービン前党首の2015年の躍進の足腰で今回の議席増か

 14年ぶりとなった政権交代では、2015年の総選挙で、得票率40%・若者の投票率が全体と並ぶ「積極財政の急進左派」(米大統領予備選のバーニー・サンダース減少)として議席を伸ばしたジェレミー・コービン党首が鍛えた足腰が、保守党の自滅とSNPのスコットランドでの退潮で、議席増につながったようです。わずか当選4回で首相となったスターマーさんは最左派路線の微修正のマニフェストで一気に伸びたようです。コービンさんは、無所属強行出馬で労働党を除名されましたが、1万票近く減らしつつも無所属で議席を維持しました。

●キャメロン・メイ・ジョンソン・トラス・スナク元首相で庶民院はスナクだけに

 保守党の14年間で首相をつとめた政治家は辛酸をなめました。デイビッド・キャメロン元首相は奇跡の外相としての政界復帰で貴族院議員となっていましたから改選ではありません。テリーザ・メイ元首相は執行部から小選挙区の情勢を突き付けられるかっこうで、不出馬・引退。議員辞職に追い込まれた前任・後任と違い、バックベンチャー(政府外与党議員)として本会議で積極的に発言したメイ議員の努力は実りませんでした。ボリス・ジョンソンさんは議員辞職済みです。リズ・トラスさんは落選しました。女性で2人目・3人目の首相が政界を去りました。有色人種として2年近く政権をつとめたスナクさんは、元党首(36歳で就任したヘイグさん)の小選挙区を継承したこともあり踏みとどまりました。スコットランド独立投票、脱EU投票という、総選挙より大きな重要選挙にさいなまられた英保守党14年政権。首相交代が多かったことが残念です。

●20歳の若き女性代議士だったブラック女史は3期9年で落選

 SNPで20歳で初当選して3期9年間つとめた議員のブラック女史は落選しました。本会議でのブラックさんのスピーチは退屈なものでした。

●首班指名選挙も、政権移行チームもない英国

 NHkで「過半数ととった時点で政権交代になる」との原稿がありましたが、これは正しくありません。トラス首相がバッキンガム宮殿でチャールズ国王に辞任を申し出て、チャールズ国王がスターマー党首を呼び出して、口頭で告げた時点で首相になります。2010年の政権交代は保守党・リブデム(自由民主党)が「野党ブロック」を組んでいましたから、首相は2・3位連合の連立を数時間模索してからバッキンガム宮殿に行きました。

●チャールズ3世国王の3人目の首相だが、政権交代は初めて

 労働党としての政権交代は1997年以来の27年ぶりとなります。この時は、バッキンガム宮殿に初めて足を踏み入れたブレア党首にエリザベス嬢王が「あなたは私が会う10人目の首相です」と言われて天にも上りそうな気持ちになったものの、直後に「1人目はチャーチルです」と言われ肩に重圧がのしかかったようです。世界大戦を終わらせたチャーチルと違い、ブレアさんはイラク戦争を初めて終結せずにブラウン副総理にその座を継承しました。

●本当に紳士の国ですか、陰湿さを増すブラックボックス庶民院

 かつて当選1回39歳で初当選したトラス前議員は党が任命した指導係の男性議員と不倫していました。地元紙ではかねて報道されていたようです。どっちらけ。以前より陰湿さが増し、ブラックボックス化した庶民院の信頼回復が急がれます。

 以上です。

【英国の事例】2024年7月4日(木)総選挙へ、政権交代か チャールズ国王のもと、歴代党首相次ぎ引退の陰湿密室政治も、首相暗殺1人だけの英国政治の安定性発揮か

2024年05月23日 02時44分13秒 | 英国の事例
[写真]おそらく日英同盟の歴史的経緯からか、アメリカを含むすべての国家で、最も皇居(最寄りは半蔵門)に近い、駐日英国大使館と看板に写り込んだ筆者、きょねん8月4日、

 リシ・スナク英首相(保守党党首)は、庶民院(定数650=完全小選挙区制)を解散して、2024年7月4日(木)に総選挙を行うと発表しました。

 「英国の事例」カテゴリーでは、7年ぶりの記事となります。改革フォーラム21(羽田孜代表)に参画してから「政権交代ある二大政党政治が必要だ」と30年以上、内心で思っていますが、「言語化」がうまくなく、共産党・公明党組織員と思われる人物から心無い書き込みを受けたり、「宮崎信行の問題点は、政権交代ある二大政党政治が必要だと言いながら、それを説明できないことだ」との批判を真に受け、心が折れてしまいました。2019年総選挙の記事を書かないまま、チャールズ国王の時代になりました。なお、英国は日本と違って、内閣より早く議会が発足していますが、暗殺された首相は1人だけで、日本よりも政治的な安定性に優れているという見方もできそうです。

 目に見えない「裏金」に支配された自民党政治のもと、言語化できるわけがなかったのですが。

 政権交代ある二大政党政治が必要だという言葉が通じなくなってからも、英国の事例の研究は続けていて、2019年総選挙の議員要覧も購入して勉強していました。

[写真]筆者が過去半世紀研究している「タイムズ新聞社」(ロンドン)の「庶民院議員要覧」の前回総選挙分。

 今回の選挙では、首相退任後もバックベンチャーとして本会議で質問をして驚かせた、保守党のテリーザ・メイさん、急進左派として若者の投票率を全体と同じ投票率にあげて、半世紀ぶりに二大政党の得票率ををともに40%以上に引き上げた、ジェレミー・コービン元労働党首(元・影の首相)が庶民院議員として立候補せず引退します。非常に陰湿な「自称・貴族」の政治が続いていて、日本の比じゃなくなっています。3代目の女性首相、リズ・トラスさんも、1期生で史上最年少大臣に抜擢されたときに党内有力者と不倫していたことが明らかになり、海を隔ててうんざりといったところです。

 一方、スターマー労働党首は61歳。仮に首相になれば、1997年のブレア首相以降、二大政党がともに40代前半の若手を党首に担いで政権交代するモデルからは、四半世紀ぶりに脱却することになります。スターマーさんはまだ当選3回です。

 スコットランド州民投票、EU離脱国民投票など、総選挙以外の「選挙」に大きく左右された英国民主主義の10年で、首相や議長がすぐに辞めさせられる陰湿な不透明さは日本より悪い印象ですが、完全小選挙区における党内組織の盤石さといったところは、日本からもチェックしたいところです。

 以上です。

【英国の事例】二大政党の得票率と、二大政党とも40%台は、47年ぶりの高水準、2017年総選挙

2017年06月09日 22時47分37秒 | 英国の事例

 2017年6月8日(木)に行われた英国総選挙で、二大政党の得票率がともに40%を超え、これは1970年総選挙以来の高率で、二大政党の復活貴重が鮮明になったことが分かりました。

 2017年総選挙は、過半数政党がないハングパーラメント(宙ぶらりん議会)となりましたが、保守党は議席を330から318に減らしました。しかし、得票数は前回より230万票増えていて、1365万票、得票率は42.4%となり、6ポイント以上増えていたことが分かりました。労働党は232議席から261議席と増やしましたが、まだ政権交代には手が届かない距離です。しかし、得票率は30・4%から40・0%へと大きく伸ばしていたことが分かりました。

 かつての二大政党で、2年前までの連立第2党の自由民主党が後退と、前回大躍進したスコットランド民族党も3分の2程度に、EU離脱をリードしてきたUKIP(英国独立党)は議席を失うなど、第3党以下が退潮しました。結局ハングパーラメントとなり、メイ首相はわずか10議席のDUPアイルランド民主統一党に頭が上がらない政権運営を強いられる、不安定かつ、不透明な先行きになることが確実ですが、急な解散ということもあり、組織の強い二大政党による民意の集約に期待が集まった、ということなのかもしれません。

 このエントリー記事の本文は以上です。


【英国の事例】2017年総選挙は与党・保守党第1党も、ハングパーラメント(宙ぶらりん議会)に、二大政党の得票率は1917年以降最多【追記有】

2017年06月09日 17時45分30秒 | 英国の事例

 英国議会総選挙は、2017年6月8日(木)の午後10時=グリニッジ標準時=に締め切られました。日本時刻の9日(金)朝6時から始まった、BBC開票特番では、午後1時過ぎぐらいに全体の方向感が見えました。

 定数650(過半数326)のうち、4つを除いて、現時点で確定。保守党が317議席となり、第1党ながら現有の単独過半数を失いました。労働党は261議席と躍進し、スコットランド民族党は35議席に敗退。自民党が12議席、DUPが10議席、その他が13議席となりました。

 このため、テリーザ・メイ首相に引き続き組閣権があるため、DUPに連立を求めて、連立での過半数をめざすのではないか、との観測が報じられました。

 これで、2010年以降、保守党は総選挙3連勝。ただ、第1次キャメロン連立内閣、第2次キャメロン単独内閣のあと、総選挙を経ないで、発足した第1次メイ保守党単独内閣ですが、早期解散総選挙にもかかわらず、過半数を割ったため、メイ首相の求心力は下がることはひっし。

 一方労働党は、2010年のブラウン首相(労働党首)による追い込まれ解散で下野。その後、若い閣僚経験者、ミリバンド党首をかついだものの、2015年総選挙で不人気とスコットランド民族党大躍進のあおりで、負けて辞任。その後に、ダークホースながら、党首選に勝ったジェレミー・コービン党首が今回の選挙での伸長により、続投して、影の首相として急進左派ブームをリードするとみられます。

 また、コービン候補のノッティング選挙区での開票結果発表の中継では、4万0086票だと発表されました。私は、英国小選挙区で、4万票超えというのは初めて見聞きしました。他にもあるとは思いますが、コービン議員が政府で大した役を持てないのに、長年当選し続け、今、遅れたブームになっていることを感じさせました。

 メイ候補は、メイデンヘッド選挙区で、首相ゆえ12人の対抗馬とたたかいました。投票結果はメイ候補が3万7390票、労働党候補が2万0049票でしたので、英国単純小選挙区制にしては地元でも労働党に迫られていた印象です。

 BBCは、開票特番開始から8時間後に、司会のデイビッド・ディンブルビー記者が「ハングパーラメント(宙ぶらりん議会)」とのヘッドラインを報じました=写真、BBC日本から筆者・宮崎信行撮影=。

 また、同記者は、保守党が1200万票、労働党が1200万票を集めており、「二大政党収斂率」は、1917年以来(過去100年間という意味か?)最高率となっていると報じました。不安定な時代の不透明な結果とはいえ、それは二大政党の足腰の強さゆえに生じた現象なのかもしれません。

 放送では、前々回保守党と連立して副首相をつとめた自由民主党のクレッグ前党首が選挙区で落選したと報じられました。また、第1次キャメロン内閣で防衛大臣をスキャンダルで辞任しながら、メイ内閣で国際貿易大臣に返り咲いたフォックス議員に対して、中継で、ディンブルビー記者が「選挙戦中、テレビで見かけなかったのですが、どうしました?」という何らかの皮肉めいた語りかけをしたのに対して、フォックス大臣は「いや、地元のテレビには出ていましたよ」と語りました。

 この後、現地時間9日(金)朝10時から、メイ首相が首相官邸(ダウニング街10番地)前で記者会見をするようです。

【追記 9日午後10時】

 メイ首相は、記者会見よりも前に、バッキンガム宮殿を訪れ、DUP(アイルランド民主統一党)との連立を含めた協力で組閣することを報告(了解?)し、その後、首相官邸前で続投を発表しました。

 BBCの公式の選挙特番ダイジェストが良くまとまったいるので紹介します。ただ、YouTubeではなく、BBC仕様なので再生しづらいかもしれません。BBC公式ホームページでは、日本国内からは見られないようですが、Twitterアカウントにエンベッドされたものは私の環境から、見られるようです。

https://twitter.com/BBCPolitics/status/873151622477520898

 




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 2年前の選挙で20歳で当選した女性のブラック議員。(関連エントリー

被選挙権も衆議院で20歳前後に引き下げる公職選挙法10条改正法案が提出へ 民維ク

)所属するスコットランド民族党は、前回選の大躍進から大きく議席を減らしましが、ブラック候補は当選し、2期目に入りました。

 2017年総選挙で、定数650議員のうち、女性の議員が200名を超えたそうで(実数は現時点で不明)、憲政史上最高になったようです。

 労働党は議席占有率を高めましたが、それ以上に、得票率が40%を記録。投票者の5人に2人が投票したことで、急進左派のコービン党首への警戒感が薄れたようですが、BBCは、なおも、中道には警戒感が残っていると、分析しました。

 2010年から2015年まで連立与党第2党として、副総理をつとめた、ニック・クレッグさんは落選しました。

 キャメロン前首相(議員引退)よりも若くて、大蔵卿(兼)第二国家公務員をつとめた、オズボーンさんは、立候補せず引退し、ロンドンの夕刊紙の編集長に就任。オズボーン編集長は「メイ首相、アイルランドにベイルアウト」として、リーマンショック時に流行った「ベイルアウト(パラシュートを使って脱出するようなさまの経済・政治危機脱出政策)」と保守党とDUPの協力の方向性を遅版の見出しにした、とツイートしました。おそらく英国議会インターネット審議中継をみて、かねがね、彼は何かの持病があるのではないかと思っていました。その真偽は分かりませんが、報道の立場から、自分よりも2つ下の序列(首相、大蔵卿、外相、内相)だったメイ首相の今後を報じました。 

【追記終わり】

 このエントリー記事の本文は以上です。


[英国の事例・マスコミ編]あやかりたい?ディビッド・ディンブルビー記者(78歳)が、1979年以来10回連続でBBC開票特番メーンキャスター、BBCが「報道」

2017年06月04日 22時18分03秒 | 英国の事例

[写真]BBCのデイビッド・ディンブルビー記者、BBCホームページから。

 英国の公共放送、BBCは、解散動議が可決された翌日の、2017年4月20日(木)付で、同局でのデイビッド・ディンブルビー記者78歳が、1979年総選挙開票特番以来、10回連続で、2017年開票特番のメーンキャスターを務めると報道(発表)しました。

 上記BBCニュースは、ディンブルビー記者の後継者にも言及しました。テレビの世界はどこもそうですが、8時間以上出ずっぱりでも、放送上は一言も、「疲れた」という趣旨の言葉は一切言わないディンブルビー記者。前回は、早い時間帯から与党・保守党のメイ内相(現首相)をスタジオに招いて政局談義。この後の、生中継では、ロンドン市長を卒業したスター政治家、ボリス・ジョンソン与党・保守党元職候補(現外相)が出るや否や、「風に吹かれましたか?」との一声で、SNSを大いに盛り上げたりしました。

 2015年の特番では、予測に誤りがあり、世界から批判され、番組内で軌道修正の矢面にたった、ディンブルビー記者。もちろん、英国でも、政治記者が話題になることは少ないですが、「入れ墨をしている」と写真入りで報じられたこともある、著名人です。ディンブルビー記者は、父、弟もBBC記者で、父は第二次世界大戦報道で著名。ディンブルビー記者は、平常時は、週1回の討論番組「BBCクエスチョンタイム」のキャスター。この番組は、BBC政治記者2人が、各々、準備版を収録して、それをもとに、ディンブルビー記者を起用することが決まったようで、チャンスをものにした、ということのようです。

 BBCワールド日本版のホームページによると、日本時間の今週9日金曜日朝6時から午後2時まで特番が予定されています。接戦予想が出ており、おそらく午後2時以降も、ディンブルビー記者が続けることになるでしょう。ロンドン(にたぶんある)スタジオでのディンブリビー記者と、有力政治家の会話が、イギリスの歴史をつくるかも。まあ、エリザベス女王も見てるんでしょうね。

 あやかりたい、という政治ジャーナリストは、世界中に多そうです。

このエントリー記事の本文は以上です。


[英国の事例]テリーザ・メイ首相(保守党党首)は2度目の試練? 今週金曜日(日本時刻)2017年総選挙投開票へ

2017年06月04日 21時58分13秒 | 英国の事例

 [英国の事例]のエントリーでは、「ロンドン時間(グリニッジ標準時)」「日本時間」「英紙タイムズに載った付け日」に関して、鈍感に書いていこうと考えます。記者、研究者の方は、ご自身でご確認ください。

 このエントリー記事で引用する写真は、すべて、英紙タイムズ(The Times)の(2017)年の紙面(学校法人早稲田大学所有)を個人的な研究用にカラーコピーしたものを、その一部だけ、筆者・宮崎信行がカメラで撮影したものです。

 テリーザ・メイ首相(保守党)の、就任わずか9か月(投票日基準)の抜き打ち解散となった、2017年総選挙2017年6月8日(木)施行=日本時間9日午前6時からBBC特番=。



 ここに来て、保守党が急失速していて、英紙タイムズは2017年5月31日付1面トップで、650議席(=過半数326)のうち、「保守党(現有330の過半数)が310、労働党(現有229)257、スコットランド民族独立党(現有)50」としています。「その他の6党」(現有33)は私の計算では同じく「33」となっています。調査会社は「ユーガブ」です。ですから保守党が過半数を割り、2年ぶりに連立を強いられないのではないかとの見立てです。

 さて、テロが相次いでいます。

 まず解散前。3月22日の刃傷沙汰は、トビアス・エルウッド議員(与党・保守党当選3回)の勇敢さもあり、おそらく世論の動揺は一定に収まったのだろうと思います。




 その後、2010年に内相、2016年に首相(保守党首)になった、メイさんが、4月18日(火)朝11時に官邸前で記者会見して解散を発表。動議を庶民院に提出。

 




 英紙タイムズも前日付はトランプ大統領が一面だったので、まるっきり抜き打ちだったらしく、自信満々のメイ首相を報じました。なお、「2017年総選挙」のワッペンがすでにできていたのは、日英問わず、新聞マスコミのご愛嬌。

 4月19日(水)、庶民院が2010年議会任期固定法にもとづく早期解散の動議を採決し「522対13」という圧倒的多数で可決。5月6日(土)解散。

 ところが、5月22日(月)に悲劇。マンチェスターでテロがありました。8歳の女の子も死亡したことは日本でも報じられましたが、英国内で、タイムズ紙は、1面トップに大々的な写真で悲劇を報じました。世論のショックはより大きかったんだろうと思います。ここで、2010年から2016年まで内相だった、メイ首相の責任を問う声が上がったようです。翌日は、諜報機関「MI6は知っていたのに防げなかった」との記事。内務省とMI6の関係を私は知りませんが、メイさんはいずれにせよ、首相ですから、無関係とは言えないでしょう。





 そして、もちろん写真はありませんが、ついにきょう、現地の2017年6月3日(土)夜には、ロンドン橋周辺でテロがあり、亡くなりました。

 テロの犠牲者とご遺族に哀悼の意を表します。

 ここから話が変わります。テリーザ・メイさんの「2度目の試練」とは。

 メイさんが初めて、英紙タイムズに載ったのは、1997年4月22日付の12ページのようです。タイトルは「保守党女性候補が投票日をまもなく迎える」という記事で、その冒頭に保守党新人のメイ候補(40歳)が、「保守党女性新人では数少ないテッパン(Safe Seat)だ」と報じられています。これは、いろいろな著作で指摘されているように、保守党は「かわいい子には旅を、させない」方式で、優秀と目される新人ほど、確実に議席を取れそうな金城湯池から出す。現首相(現党首)もまさに、たった20年前にそうやって、なんなく初当選をしたということです。

 ただ、「タイムズ・庶民院ガイド」の各版をみると、1997年総選挙で、メイさんは、メイデンヘッド選挙区で、先代の得票率61%から大きく落とします。メイさんの獲得票は2万5344票で、得票率は49%。労働党が18年ぶりに政権交代し、トニー・ブレア労働党首(影の首相)がリアル首相になります。すなわちメイさんは、思いのほか初当選と同時に野党議員になりました。

 その次の、2001年総選挙では、メイさんは覇気の無い顔写真で、1・9万票、45・0%とさらに成績を落としながら、2選。

 2005年総選挙では、2・3万票と盛り返し、50・8%。

 影の厚労相で迎えた、2010年総選挙では、3・1万票で、59・5%と圧勝。初めての与党議員として、わずか当選4回ながら、内相という、驚くべき高位で初入閣しました。

 2015年総選挙では、メイデンヘッド選挙区で、3・5万票、65・8%。当選5回。このときの、BBC特番は録画があるので、調べればわかりますが、いずれにせよ、開票特番開始1時間程度で、スタジオに登場して、政局をつくる側で、与党・保守党は連立解消で、単独での内閣をつくることになりました。メイ内相は続投。

 そして、2017年は、現役首相として、6選は間違いないですが、首相を続けられるかの窮地に立たされつつあります。ちなみに、保守党が330議席から、326議席未満(325議席以下)になっても、組閣の権利は、現役首相にあります。ただ、ジェレミー・コービン党首(影の首相)率いる労働党は、前回から、スコットランド民族独立党から、仮に勝った場合の連立をもちかけられていました。これは小選挙区の地盤が重なるため、労働党にとっては、弱り目に祟り目の提案となってしまい、影の蔵相、影の外相が落選するという、同国には珍しい事態となりました。

 ですから、保守党が300、労働党が250という「宙ぶらりん議会(ハングパーラメント)」になると、首相が組閣を断念した場合は、労働党・スコットランド独立党連立のコービン内閣ということもありうるわけです。投票日が近くなり、「コービン影の首相の原発政策は非現実的だ」という批判も出てきました。

 選挙ですから、まったく分かりません。

 私が言いたいのは、ただ一つ、メイさんをテッパン選挙区で育てた、保守党はすごい、下野したけど、その13年後に政権交代につなげる底力になっている。長々と書いてきましたが、それだけが言いたいのです。

このエントリー記事は、英国議会インターネット審議中継、英紙タイムズ、タイムズ社の庶民院議員ガイドブックを元にして作成しています。


[英国の事例]メイ議員(首相)「早期の総選挙動議」を提出し、賛成522、反対13で可決・成立

2017年04月19日 21時04分09秒 | 英国の事例

[画像]早期に総選挙を行う動議を提出し、やや緊張気味に趣旨説明する、メイ議員(首相)、英国議会インターネット審議中継からスクリーンショット。

 テリーザ・メイ議員(メイデンヘッド選挙区、保守党)は、さきほど、2017円4月19日(水)の午後12時57分過ぎ(グリニッジ標準時=日本時刻の午後8時57分過ぎ)、庶民院本会議に、

 「早期に総選挙を行う動議」を提出しました。

 趣旨説明するメイ議員は、やや緊張した面持ちで、「EU離脱で選挙キャンペーンを通じて、強いリーダーシップが必要だ」という趣旨の発言をしています。


[画像]コービン労働党党首(ネクスト首相)、2017年4月19日、英国議会インターネット審議中継からスクリーンショット。

 質疑者のトップバッター、コービン労働党首(ネクスト首相)はのっけから、「早期の総選挙の機会を歓迎する」と話し始めました。3分の2以上の賛成で、動議が可決・成立する公算が極めて有力となりました。

 日本では首相・政府が動議を出すことはありませんが、英国議会では、政府側が与党を飛び越して動議を出すことがよくあります。

 動議はこの後、採決される見通し。

[追記 午後10時]

 英国議会ホームページは、動議の採決の結果は、早ければ、午後2時30分(日本時間の午後10時30分)ごろに出るかもしれない、と報じています。

http://www.parliament.uk/business/news/2017/april/mps-to-vote-on-an-early-general-election/

[追記おわり]

[追記 午後11時前]

 採決され、賛成522、反対13で、「3分の2」を大きく上回り、メイ議員の「早期の総選挙動議」は可決・成立しました。反対票の「13」の読み上げには、苦笑も出ました。

[追記おわり]

 このエントリー記事の本文は以上です。 


メイ首相、庶民院を解散し、2017年6月8日(木)EU離脱総選挙断行 仮に労働党が勝つなら8年ぶりの政権交代【再追記】

2017年04月18日 19時32分54秒 | 英国の事例

 テリーザ・メイ首相(保守党党首)は、2017年4月18日(火)の朝11時過ぎ(=グリニッジ標準時=日本時刻同日夜7時過ぎ)、首相官邸で記者会見し、

 庶民院を解散し、2017年6月8日(木)に総選挙を行う、と電撃的に発表しました。

 英国の任期は5年間。2011年任期固定法があるので、それとの兼ね合いはどうか、今後、私の方で、報道なども参考に、そのことを調べてみます。

 解散総選挙は、今世紀になってから、2001年6月7日、20015年5月5日、2010年5月6日、2015年5月7日、2017年6月8日(木)にそれぞれ施行、ということになります。

 このように、5月か6月にしているように、通常国会の召集は10月なので、仮に選挙結果が過半数を獲得した政党がない、ハング・パーラメント(宙ぶらりん議会)となっても、政権づくりには夏の猶予期間があるため、混乱は一定の範囲内に収まるでしょう。選挙結果に限らず、メイさんが首相であり、場合によっては2・3位連合も可能。労働党が過半数を握れば、コービンネクスト首相(労働党首)がリアル首相になり、8年ぶりの政権交代となりますが、党内最左派でベテランながら閣僚経験がないコービンさんが首相になることには、同党員も現実味がないと認めており、それを含めてメイ首相が解散時期を選んだかもしれません。

 総選挙の頻度は減りましたが、英国では、2014年にスコットランド独立住民投票、2015年に総選挙、2016年にEU離脱投票、2017年に総選挙と、国のかたちを決める選挙が続く「政治の季節」となっています。保守党主流派から見ると、各々、勝ち、勝ち、負け・・・と来ています。2015年総選挙は、スコットランド民族独立党に労働党が食われ、意外にも保守党が単独過半数を獲得し、自由民主党との連立を解消したうえでの、第2次キャメロン内閣となりましたが、前年のスコットランド、翌年のEUで、選挙対策が後手にまわりデービッド・キャメロンさんは49歳の若さで首相と庶民院議員の立場を追われました。

 キャメロン政権発足で、初入閣でしかも内相のポストを射止めたメイさんは、EU離脱に反対しながらも慎重に行動。派手な行動に出た、人気のジョンソン議員(現在は外相)と、ジョンソン議員を立てて置いて政権担当能力から首相の座をねらったコーブ法相(当時)らが相次いで脱落し、メイ内相が首相となりました。

 英国政治は、二大政党以外に、スコットランド民族独立党(SNP)が議席を多く得ており、庶民院ではミニ政党ながら、欧州議会の議席がある英国独立党(UKIP) 、2年前まで連立与党だった野党・自由民主党をふくめて、注目の選挙戦となります。ただ、単純小選挙区制ですので、6月8日(木)、日本時間では、6月9日(金)の昼前後に、大勢が見えて、それからが勝負になるのでは。いずれにせよ、歴史が刻まれることになります。

 英国庶民院では、今現在(午前11時台)は、財務委員会だけが開かれているようです。

【追記 午後8時半】

 スカイニュースが生放送中。

Sky News - Live

【追記終わり】

【再追記 日本時間の19日午前6時】

 メイ首相の官邸前の演説、YouTubeでは保守党本部のチャンネルで公開。官邸のチャンネルでは公開されていません、使い分けが興味深いですね。6分強にまとまっています。

Theresa May: Statement from Downing Street 18th April 2017

 庶民院本会議は現地午後10時過ぎても開催中ですが、解散とは別件のようです。

【再追記終わり】

 このエントリー記事の本文は以上です。 


英国議会議事堂周辺で刃傷沙汰、本会議は話し合いで散会、翌日は定刻通り開議を発表、トビアス・エルウッド議員の振る舞いに賞賛

2017年03月23日 06時48分24秒 | 英国の事例

[写真]下述のBBCニュースのツイッターから。

 英国議会議事堂の近くで、2017年3月22日(水)、刃傷沙汰があり、庶民院本会議が中断したまま閉会しました。

 バーコー議長らがコメントを発表し、メイ首相(保守党党首)は首相官邸で黒い服でスピーチしました。

 英国議会両院はSNSで、翌日23日(木)の議事は定刻通り始まると伝えました。

 事件発生時刻は報道によると、午後2時40分頃。水曜日ですので、この3時間ほど前に、PMQ党首討論がメイ首相(保守党党首)とコービンネクスト首相(労働党党首)の間でありました。事件発生時は、採決の途中でしたが、午後2時45分頃に、インターネット審議中継のカメラが議場を離れて、時計だけを写しました。午後2時59分に本会議場に戻り、議院運営委員長が「何かあったようだ。警察官からの報告を待ちたい」という趣旨の動議を出し、労働党側議員が議事の中断を提案。その後、

 

[画像]刃傷沙汰の報告があり、議事の中断を、議長席(画面左側)に座る議院運営委員長に対して申し出る、労働党議員、2017年3月22日午後2時59分頃、英国議会インターネット審議中継から筆者・宮崎信行がスクリーンショット。

 この後、午後3時19分頃に再開。ここでは、議員は落ち着きを取り戻したようでした。ここで動議が出て、3時21分に再び中断し、3月23分に散会しました。





 バーコー議長と貴族院議長は連名で次のような声明を発表しました。

英国議会ホームページから引用はじめ]

Mr Speaker and the Lord Speaker have made a statement following the incident in Westminster.

 

"An extremely serious incident has occurred in the Westminster area this afternoon. The Metropolitan Police is dealing with this and an investigation is underway. 
 
“On behalf of Members of both Houses of Parliament, we wish to offer our thoughts to all those affected and their families. 
 
“We would also like to that express our gratitude to the police and all emergency services.”


[引用おわり]


 この事件で、保守党のトビアス・エルウッド議員が議事堂敷地内で救命処置をして、超党派で賞賛されました。エルウッド議員は、51歳で当選3回在職12年。2015年総選挙では得票率48%ながら、独立党、自由民主党、労働党の各候補が票割れしたこともあり圧勝しています。経歴によると、陸軍でボスニアに行っていた時期があり、この後に政策秘書などの仕事をしています。陸軍時代に救命処置を覚えたのかもしれません。

 BBCニュースのツイッターによると、下の写真のように、エルウッド議員は顔に血がつきながらも懸命な処置をしています。BBCがツイートするよりも前に、エルウッド議員の姿は1万回以上ツイートされています。

 


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このエントリー記事の本文は以上です。

 


スタンディングオベーションは英国議会でもめったに起きない

2016年10月01日 17時40分46秒 | 英国の事例

[画像]スタンディングオベーションを贈られる、キャメロン首相(当時、手を振る男性)、メイ内相(当時、現首相)、ハモンド外相(現蔵相)ら、2016年7月13日の英国庶民院本会議、YouTube動画からスクリーンショット。

 スタンディングオベーションの話も週を越すことはないと思うので、英国の事例です。

 実はアングロ・サクソンの英国の議会でも、スタンディング・オベーションはめったにありません。

 めったにないと言って、あった事例ですが、2016年7月13日(水)=現地時間=の庶民院(衆議院)本会議場での党首討論。 

 ディビッド・キャメロン首相(当時)の最後の党首討論の締めの言葉「I was the future once」の後に、スタンディングオベーションが起きて、キャメロン首相は傍聴席に手を振り、去っていきました。この後、残念ながら議員辞職となりました。

 このスタンディングオベーションは味があり、仲間内の与党・保守党から起きていますが、隣にいる、次期首相のテリーザ・メイ内相(当時)は、同僚が立ち上がったことに気づいて、やや慌てたそぶりに立ち上がります。およそ10秒後にバーコー議長も起立。ところが、手前側の野党(The opposition)労働党は、コービンネクスト首相(労働党首)をふくめて誰も立ち上がっていませんが、全員が拍手をしています。

 この場面の、議事録「ハンサード」は、「After all, as I once said, I was the future once. [Applause.]」 となっています。キャメロン議員の最後の議事録は「拍手」のト書きで終わっています。この言葉の意味を私は7月付のエントリー記事で分かっていなかったのですが、初当選のときに、ブレア首相(労働党首)のことを、彼は未来だったのにね、「He was the future once」と過去形で呼んだことが評価され、一気にネクスト首相、リアル首相と駒を進めた政治人生のオチだったようです。スタンディングオベーションもめったにやるようなものではないようです。

David Cameron's last PMQs: 13 July 2016

36分30秒過ぎからスタンディングオベーション。

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英国の事例 テリーザ・メイ首相が就任 保守党党首

2016年07月13日 23時59分59秒 | 英国の事例

[写真]テリーザ・メイ英首相、英首相官邸ウェブサイトから。

 この記事は、2016年7月21日に投稿しましたが、さる、2016年7月13日(水)=英現地時刻=、テリーザ・メイ英庶民院議員が保守党党首となり、エリザベス女王から首相に任命されました。

 昨年5月の総選挙で、デービッド・キャメロン首相(保守党党首)が、苦戦する中、EUとの関係で国民投票をするとし、総選挙は意外にも勝利したうえ単特過半数獲得し、連立解消で、第2次キャメロン保守党単独内閣となりました。しかし、国民投票で負けたことから、キャメロン首相は辞意。9月の党大会での選出の日程感を示しましたが、有力候補が相次いで撤退し、テリーザ・メイ内務大臣が保守党党首となり、首相となりました。

 私は長年英国二大政党制を研究していますが、心無い人からの誹謗中傷を恐れて、あまりこのブログには書いていません。ですが、メイさんについては、過去2回、英国の女性議員の状況に言及する下りで言及していました。

 2014年3月9日の記事中、「 一方、現在の内閣。テレサ・メイ総務大臣は、1956年10月生まれの57歳。1997年初当選なので、政権与党・保守党公認で出馬し当選したものの、直後に野党になり13年間耐え、政権交代で総務大臣になりました

 2015年12月3日の宣戦布告の議会承認に関する記事中、「キャメロン首相は右隣にハモンド外相、左隣にオズボーン財務相、テレサ・メイ内務相らを従えて、攻撃の正当性について、数字をつけて順に説明しました。ISILのフランス語発音である、ダーイシュを使うこともありました。」 

 私は意図的に、英語の綴りを書かないことにしていますが、Theresa May という日本では聞きなれないファーストネームの発音を間違えておりましたが、報道の通り、「テリーザ・メイ」さんです。また両記事で「総務大臣」と「内務相」の表記が混在しましたが、同じ役職でした。

 こうしてみても、2014年の記事には「残念ですが全く共感できませんでした」という非常に心無いコメントが寄せられており、本当に腹が立ちます。IT化とグローバリゼーションの中、英語で情報がとれる私に嫉妬と焦りを感じているのでしょうが、その人物が30歳以上ならば、自分の努力不足であり、国益を毀損している、と強くなじりたい。

 閑話休題。

 

[画像]The Times Guide to The House of Commons May 1997からキャプチャ。

 上は、メイさんが初当選したときの、英庶民院議員名鑑です。まず、メイさんは初当選は40歳過ぎていたんですね。そして、この選挙では、保守党は18年ぶりに下野しました。メイさんは得票率49・8%で初当選。対抗馬の反対党(野党・労働党)の候補者は日本でいう惜敗率52・0%で大差で負けています。ただ、英総選挙では、その小選挙区の前回得票との差、「スイング」が重視され、メイさんは、前任保守党議員から、マイナス11・8%もスイングしてしまっていますから、与党・メージャー保守党の下野への逆風はそうとう強かったようです。ただし、他の選挙区でもほぼ同じ程度のスイングが起きています。

 こうして野党議員としてスタートした、メイさんですが、連続して当選。政権交代後の2010年にはさっそく内務大臣として初入閣。 

[写真]2010年の、第1次キャメロン・保守党・自由民主党連立内閣の閣僚の記念撮影=英紙タイムズの、2014年7月16日(水)付の8面の記事からキャプチャ=。

 初当選から13年経ち、初めて与党議員になると同時に初入閣した、2010年の第1次キャメロン保守党・自由民主党連立内閣の記念写真。右の赤丸(筆者が加筆)のキャメロン首相の後列の端から2番目のという控えめな位置(左赤丸)のメイ内務大臣。

 初入閣時点では、内務大臣(兼)女性参画担当大臣でしたが、兼務は2年後に解消されました。控えめに位置ですが、他の資料によると、閣議の席次は、キャメロン首相から見て、向かい側の人物の左2人目に座っていますので、主要閣僚です。

 2015年の総選挙では、メイさんは、初当選時と同じ名前の選挙区(境界線がまったく同じかは不詳)で65・8%で当選。対抗馬の反対党・野党労働党の候補の惜敗率は18・0%という大圧勝。BBC開票特番スタートから1時間もしないうちから、スタジオで、デイビッド・ディンブルビー記者のインタビューを受けました。下馬評と違う「保守党単独過半数」という出口調査結果から始まった驚きの出だしから、さっそくテレビで政局のキャスティングボートを握ったのでしょう。明晰なメイ内務大臣が、すばやく首と腕を伸ばして、ディンブルビー記者に答える様が印象に残りました。この番組では、ディンブルビー記者が、中継で登場した名物政治家のボリス・ジョンソンさん(メイ内閣で外相に就任)に「風に吹かれましたか」とヒットソングとかけた一声で機先を制して、インタビューをしたのも話題になりました。

 政界一寸先は闇。総選挙に勝つために国民投票を約束した第2次キャメロン首相は、単独過半数からわずか1年2か月後に、国民投票敗北で辞任。メイさんが在職19年、59歳で首相の座を射止めました。

 英庶民院には首班指名がありませんから、キャメロン首相は2016年7月13日(水)の党首討論(PMQ)で、辞任を表明。与党・保守党議員が総立ち、野党・労働党は着席しながらも拍手で送り出しました。在職15年49歳で、首相からバックベンチ(与党政府外議員)になるキャメロンさんは英国の未来に言及しながら、声を潜め、「私も昔は未来の一人だったんですが(I was the future ones)」との絞め言葉で庶民院本会議場を去り、バッキンガム宮殿でエリザベス女王に報告。女王は速やかにメイさんを呼び出し、首相に任命しました。

 David Cameron's last PMQs: 13 July 2016

 組閣情報は、首相官邸公式ウェブサイト、Twitter等で逐次、発表されました。

 翌20日水曜日の党首討論には、もちろんメイ首相が登場しました。

Theresa May's first PMQs: 20 July 2016  

  上述のジョンソン議員など、最近の(そんなに昔は知りませんが苦笑)庶民院は、女性議員を中心に、真っ赤なノースリーブなど、目立つ服装が多く、メイ首相もヒョウ柄のパンプスなどが話題になっています。

 日本の衆議院先例集にあたる、規則集、アースキン・メイの「メイ」も同じ綴りですが、こちらは19世紀の事務総長ですから、メイ首相と無関係だと思います。 庶民院中継は、日本時間だと夜になるので、眠たくて、とても日本の国会中継後には聞けませんし、上の新聞類も、なかなか読みに行く時間がとりにくいのですが、引き続き英二大政党を見ていきたいと思います。

 すべては、政権交代可能な二大政党政治を日本に根付かせるために。

(C)Nobuyuki Miyazaki 宮崎信行。 


キャメロン首相、パナマ文書をG8サミット(伊勢志摩サミット)の議題に 英国の事例 

2016年04月11日 23時59分59秒 | 英国の事例

[画像]第2次キャメロン内閣、英国議会インターネット審議中継からスクリーンショット。

 英国議会の庶民院は、2016年4月11日(月)、本会議を開きました。

 ここでは、通例は水曜日の午前11時半(現地時間)に対決するキャメロン首相(保守党党首・3期)と、コービン影の首相(労働党党首)が対決しました。

 これは、当日午前10時半までに動議(Early Motion)が出た場合は、全閣僚が出席しなければならない英国議会の先例(アースキン・メイ)にもとづくものと思われます。

 日本時間の同日午後11時35分、現地時刻の午後3時34分ごろから登場したキャメロン首相は、パナマ文書(パナマペーパーズ)について、

 「G8サミットの議題となり、法人税などについてグローバルな連帯が必要だ」との趣旨のスピーチをしました。

 議長国日本の安倍晋三首相(自民党総裁)は、伊勢志摩サミットを「国際的な財政出動の連帯」という歳出圧力に演出しようとしているのではないか、との観測が高まっています。が、租税回避地タックス・ヘイブンの生々しい実態が明かされつつある、「パナマ文書」によって、「国際的な法人税・所得税などの捕捉の連帯」という、歳入引き締めの方向に変わる可能性が出てきました。 





[画像]攻めるコービン影の首相(労働党党首)。

このエントリーの本文記事は以上です。


英国の事例 庶民院外務委員会にブレア元首相呼ばれる シリア問題

2015年12月12日 08時39分47秒 | 英国の事例

 2015年12月11日(金)、庶民院外務委員会にブレア元首相が、証人(参考人?、Witnesses)として呼ばれました。

 午前10時30分から11時44分まで、委員の質問に答えました。

 5月の総選挙で、第2次キャメロン保守党内閣は、単独過半数を得たので、元首相・労働党党首のブレアさんを呼びやすかったのかもしれません。

 議題はシリア問題。

 イラク戦争で米英同盟として開戦したブレアさんですが、終始険しい表情で、質問に答えました。






[画像]英国議会インターネット審議中継からスクリーンショット。

 緊張感があり、委員からの「ISILのリーダーについてどう思うか?」との問いに、「とても難しい質問だ」とたどたどしくなった後、「ISILのリーダーは、とても変わっている(He is unusual)」と答えると、珍しく笑いが起こりました。

 第2次キャメロン保守党単独内閣は、この10月から初めての通常国会にのぞんでおり、各委員会で証人(参考人?)からヒアリングをしています。これに関する庶民院先例は17世紀のものも残っています。

 これに先立つ、9日(水)の党首討論(PMQ)では、外遊中のキャメロン首相にかわり、オズボーン副総理・財務相が登場。「朝の会議で、総理からペーパーを受け取った」として話し始めました。労働党影の副総理のアンジェラ・イーグル女史が登場すると、労働党バックベンチからの歓声を保守党バックベンチがブーイングで返しました。かなり騒然としました。イーグル副総理がバーコウ議長の顔を見たものの、バーコウ議長は特段干渉しませんでした。イーグル影の副総理は、9月12日に就任したばかりなので、女性いじめ(セクハラ)ではなく、出鼻をくじこうという考えが、保守党のオズボーンさん(44歳)にあったのかもしれません。オズボーン副総理は外遊についての批判に対して、英国のために大事な外遊をしているとし、強気な答弁を繰り返し、騒然とした会議が続きました。

このエントリー記事の本文は以上です。
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 
(http://miyazakinobuyuki.net/)


英国の事例【追記・お詫び・訂正有り】

2015年12月03日 07時42分26秒 | 英国の事例

 政権交代ある二大政党政治のさきがけである、英国議会(750歳)について長年研究してきました。

 ただ、このブログに書くと、「日本人には無理」などといった心無いコメントが寄せられるため、 避けていました。私のように、英語を聞いて書き取れる者に対する劣等感もあるのでしょう。

 2015年12月2日(火)午前11時35分から午後10時過ぎにかけて、=日本時刻では、おおむね2日夜8時35分から翌朝7時過ぎにかけて=、英国庶民院で審議が行われました。

 英国議会では、政府も動議を出せることになっています。午前10時半までに、政府が動議(motion)を出し、「国連安保理決議2249にもとづく、シリアにおけるISIL決議」を審議しました。

動議が今週半ばに提出されることは、先週の本会議で予告されていました。

 全閣僚が出席する中、キャメロン首相(保守党党首)が説明し、コービン・ネクスト首相(労働党党首)や与野党政府外議員らが発言しました。

 キャメロン首相は右隣にハモンド外相、左隣にオズボーン財務相、テレサ・メイ内務相らを従えて、攻撃の正当性について、数字をつけて順に説明しました。ISILのフランス語発音である、ダーイシュを使うこともありました。

【追記・謝罪と訂正 2016年7月21日】

 「テレサ・メイ内務相」は「テリーザ・メイ内務相」でした。綴りから想起した発音が原音と違いました。お詫びして、訂正します。

【追記終】

 政府外議員も発言しました。たとえば、29歳の当選1回生、与党・保守党のベン・ハムレット議員も発言しました。

 午後10時22分(日本時刻午前7時22分)に採決。

 賛成397、反対223で動議は可決されました。

 以下は、英国議会TVからのスクリーンショットです。


[画像]動議を説明する、キャメロン首相(保守党党首)、ハモンド外相。

[画像]キャメロン首相の背中と、第2次キャメロン内閣の保守党員の閣僚ら。向こう側は総選挙敗北後に新しく選出されたコービンネクスト首相(労働党党首)ら。


[画像]奥がバーコウ議長、左側が与党・保守党など、右側が最大野党・労働党などの席。


[画像]コービン・ネクスト首相も発言、





[画像]採決を終えて賛成、反対の人数を発表。

このエントリーの本文記事は以上です。


バーコー(Bercow)庶民院議長が衆議院法務委員会を傍聴し「日本は民主主義のリーダーだ」

2015年08月05日 14時46分54秒 | 英国の事例

 [画像]英国庶民院を取り仕切る、バーコー庶民院議長、2015年7月21日、英国議会インターネット審議中継からスクリーンショット。 

 英国庶民院のジョン・バーコー(Mr.John Bercow)議長が2015年8月5日(水)、衆議院法務委員会を傍聴し、激励しました。

 この日は、日本では初めて「可視化」を導入する、刑事訴訟法改正案と、それに対する自公民維修正案が審議中。奥野信亮委員長が、山尾志桜里筆頭理事や、上川陽子法相、山谷えり子国家公安委員長らにいったん審議をやめるよう促し、バーコー議長を紹介しました。

 バーコー議長は英語で、「きょうは民主主義にとって大事な法案を審議する委員会があると聞いています。日本はこの地域における民主主義のリーダーだ」と励ましました。


 [画像]英国庶民院を取り仕切る、バーコー庶民院議長、2015年7月21日、英国議会インターネット審議中継からスクリーンショット。 


[画像] 衆議院法務委員会を傍聴し、激励するバーコー庶民院議長、2015年8月5日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 バーコー議長は、2009年に46歳で議長に選出。その後、2010年の総選挙で、保守党・自由民主党連立政権になり、2015年の総選挙で、保守党単独政権になりましたが、一貫して、議長をつとめ、3期目に入った52歳。

 なお、庶民院選挙について、「議長の選挙区に候補者を立てない」のは二大政党のみの慣例であり、バーコー議員は、英国独立党党首(欧州議会議員)らの挑戦を小選挙区で受けています。

 衆議院は、5月の総選挙に際して、ロンドン駐在職員に、バーコー議長の3選について情報を収集するよう、指示をだしていました。

このエントリー記事の本文は以上です。

(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

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