渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

山口那津男さん、消費税「上げるな」、「解散しろ」と言及しない“ステルス演説”でスタート

2012年01月31日 09時09分51秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]代表就任後の初めての国政選挙で熟考する山口那津男さん。選挙区候補者が全員上位当選するなど党再建の橋頭堡を築いた=2010年7月、NHKニュース映像から。

【2012年1月23日(月) 参院本会議 施政方針など政府4演説への代表質問】

 公明党代表で参院議員の山口那津男さんがことし初の国会登場です。衆参の関係で、井上義久幹事長が金曜日に質問演説しています。

 すべての議案の成立には、参院での公明党の議席がカギになりますから、参院議員である山口代表のことしの初演説は注目されましたが、熟考の後がうかがえるよく練られた演説でした。いわば、巧みな「ステルス戦術」。おそらくテレビニュースでは伝わりにくかったでしょう。というのは、野党党首の代表質問お決まりの「解散」、「総選挙」という言葉が一つもありませんでした。

 どうしても、テレビニュースは1分未満に切り取る関係から、野党はいつも「解散」と言っています。とはいえ、解散発言を報じないわけにもいきません。また野党党首は解散発言をしないと、地元を這いずり回る支部長、党員・支持者が聞いているとういう組織の論理がある。それは当然でしょう。その点、山口さんは巧みでした。さらに「消費税」という言葉を7回使いました。「社会保障と税の一体改革」など、すべて含めて、演説原稿では、合計13回「税」という言葉が出てきますが、「消費税を上げるな」「消費税増税法案を提出するな」という発言は一つもしませんでした。そのうえで「総理逃げないでください」と与党が年金の全体像と(昨年民主党調査会が作成したとされる将来的な税財源の)試算を出せ、そうじゃないと与野党協議に応じない、という論陣を張りました。

 山口さんは消費税という言葉、合計7回を次のように使いました。

 ◇

 (1)

 「施政方針演説には」「消費税増税に言及されましたが」「その前提となる課題への取り組みについては聞こえの良い言葉を並べただけで、重要政策の全体像について、何一つ示していないではありませんか。

 (2)(3)

 「消費税は4年間上げない、との国民との約束はあっさりとギブアップ。消費税増税の実施は4年を過ぎて(2014年4月)からと言い訳してみても、それが詭弁であることはとっくに国民に見抜かれています」。

 (4)~(7)
 「年金の抜本改革すなわち国民年金を含むすべての年金の一元化と全額消費税でまかなう最低保障年金月額7万円との主張は、もう10年越しの(民主党の)金看板ではなかったのですか。出し惜しみ、先送りの必要はないでしょう」。

 「現に先日も、民主党幹部や閣僚から全体像を示そうとの発言も出たではありませんか。国民は現行制度に基づく素案と民主党のいう抜本改革案を比べて、消費税の負担がどうなっていくのか、受け取る年金がどうなっているのか、これを知りたがっているのです」。

 「総理、逃げないでください。試算の一部が報道されて、膨大な消費税が別に必要となるとか、受け取る年金額が現行制度より減る人がいるとか、それぐらい言われたくらいで(試算を)隠さないでください。不退転の決意が泣きます。また、議論の時間がかかるとか、すぐに消費税がかかるわけではないとか」「正心誠意の総理らしくありません。堂々と全体像を示して協議できる環境を整えていただきたい」。


[写真]山口那津男さんの質問演説の原稿、2012年1月=筆者撮影。

 ◇

 このように合計7回、「消費税」という言葉が出ました。が、山口さんは「上げるな」「法案を出すな」「法案を出す前に解散しろ」とはヒトコトも言いませんでした。

 消費税と年金はまさに「一体改革」であり、年金の全体像を示すべきだ、それができれば与野党協議に応じるとの姿勢。「受け取る年金額が現行制度より減る人がいるとか」の後に、原稿になかった「それぐらい」を付け加えて、「それぐらい、言われたぐらいで隠さないでください」と演説しました。

 「それぐらい、言われたぐらいで」ーー「現行制度から減る高年収者」のことを気にして、「最低保障年金(個人で月7万円)がホントウに必要な人・世帯」のための一体改革を先送りしてはならない。公明党の「大衆とともに」の立党の精神がにじみ出ました。まさに熟考です。

 衆参ねじれの1年半、公明党の演説はかなり変化球が多くなっています。今回の「年金の全体像と試算を出せば、与野党協議に応じる」との意味合いのボールも、クセ球との見方もあります。つまり、政府・民主党は年金の全体像と試算を出せないだろうから、公明党が与野党協議に応じなくても批判を浴びないーー。これはたしかにあるかもしれません。しかし、このボールを野田首相が打ち返したら、ヒットかゴロかは分かりませんが、公明党はキャッチする。論客はそろっています。修正協議に応じられるローメーカーもそろっています。これは野田さんは打ち返してみればいいのではないでしょうか。

 試算ですが、すでに新聞が報じています。最低保障年金の年収制限の設定を4ケースにわけて、2035年、2055年、2075年、2095年にどうなるか。合計4×4の16の数字。例えば、「最低保障年金を全額消費税でまかない、年収260万円までは7万円、そこから下り坂にして、690万円以上は所得比例年金だけにしたら?」。この場合、2075年の消費税率は「17・1%」になると試算しています。2075年のGDPと人口ピラミッドの試算がなければ、計算できません。ということは、新聞社はこの「昨年の民主党調査会の試算」を全部持っていると考えるのが妥当でしょう。ならば、民主党政府が出さなければ、日曜日辺りの1面トップで全部出してくる新聞社が出てくるでしょう。そこで解説などが不十分になることを恐れるよりは、もう出した方がいいでしょう。

 「総理、逃げないでください」ーー野党・公明党代表の言葉はしっかり響きます。前総理に「総理、逃げるのか!」と叫んで両院議員総会で後ろから総理の鉄砲を撃った与党政府外議員もいましたが、国会での山口さんの「総理、逃げないでください」は、実は総理を助けている。さすがは細川内閣で防衛政務次官を務めて、自公政権では党政調会長を務めた山口さんです。

 これはしっかり乗るべきです。

 変化球でも、バットを振ってみないと、結果は分かりません。攻撃は最大の防御。自民党時代とは、日本を取り巻く環境が大きく変わっています。スピードが大事です。一つ一つ乗り越えていく。とにもかくにも、前に進むしか、先は見えてきません。前へ。

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[年金制度の全体像]岡田副総理は坂口さんの「上から(下に)目線」を丸飲みすべきだ

2012年01月29日 12時45分42秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]28日付公明新聞4面から。

 1月29日週は、政府・民主党が、「年金改革の全体像」を野党に示して、与野党協議への参加をお願いする局面を迎えています。

 年金一元化は言うは易く行うは難し。そして、「最低保障年金(月7万円)と所得比例年金のベストミックス」の設計が必要です。政府・民主党は数字を明示すべきです。

 さて、28日付の公明新聞4面は、「土曜特集」と題して1ページぶち抜きで、初代厚生労働大臣の坂口力さん(衆院比例東海ブロック、党副代表)のインタビューを載せています。

 私は坂口さんのインタビューには「目から鱗が落ちる思いがしました。民主党と違って、「上から目線」だからです。正確に言うと、「上から下に目線」だからです。

 坂口さんは「民主党の年金案の問題点は?」との質問に次のように答えています。

 
[画像]最低保障年金と所得例年金のイメージ、朝日新聞社作成の図、朝日新聞電子版からお借りしました。

 「民主党案といわれるものは、国民、厚生、共済など全ての年金を一元化し、基礎年金をなくした上で、所得の少ない人には月額7万円の最低保障年金を上乗せするという案です。しかし、その最低保障年金を上乗せする具体的な所得水準が一向に明らかにされていません」

 坂口さんは右上から左下にグラフを見て、所得比例年金に最低保障年金の上乗せが始まる“年収”が明示されていないと批判しています。

 この「上から下に目線」であり、「大衆とともに」の立党の精神通り、貧しい方、貧しい方に目を向けて、いったいどこから最低保障年金を上乗せするんだと見ています。

 おそらく、民主党調査会での昨年の議論をリードした、仙谷由人さんや細川律夫さんらは、左下から右上へと「下から(上に)目線」で見ているのではないでしょう。なぜかというと、年収の高い(保険料を生涯に多く納めた)人たちに納得してもらう制度を設計する。そのためには、「どこから最低保障年金を減らせば、高所得者(保険料を多く納めた人)からの不満が少なくなるか」を考えていたでしょう。そして、年金受給者の人数などが年を追って増えていくので、2015年、2025年、2050年と3次元のグラフで考えている。だから、横軸(年収=生涯の年間所得の平均)の数字を入れるのをためらう党幹部がいるのだろうと思います。

 ぜひ、この坂口さんの「上から下に目線」を見習いたいものです。

 これに加えて、最低保障機能と生活保護の関係です。おそらく生活保護に縁がない高所得の人たちもこの論点に気付きだしているでしょう。最低保障年金があると、高齢者の生活保護受給者が減ることにつながり、財政需要が減るというメリットがあるはずです。

 これについて、坂口さんは公明新聞でハッキリとした意見を述べています。

 公明党が手直しを提案している点として、「例えば、低年金の方への対策です。国民年金は満額で月額約6万6000円ですが、かつて制度が不十分だったことから夫婦で13万2000円にも満たない人も多くいます。そこで、夫婦なら年収200万円未満、単身で年収160万円未満の方には、何らかの上乗せが必要だと考えています」。

 そして後述する提案により、坂口さんは「これにより受給額が満額で8万3000円、夫婦で16万6000円にアップするので、生活保護よりは多くなります」としています。ちなみに生活保護は法定受託を受けた自治体ごとに、家賃の水準などで金額が違います。坂口さんは全国平均(?)のことを言っているのかな(?)と思います。

 これについては、民主党の福祉のエキスパート、山井和則さんらが以前から指摘しています。第162通常国会(郵政解散国会)に設置されていた衆参の合同会議、2005年7月29日(郵政解散10日前)の年金制度をはじめとする社会保障制度に関する両院合同会議で、山井さんは次のように発言しています。

 「民主党の山井和則です。今の枝野議員の発言の趣旨とも近いわけですけれども、やはり生活保護というのは、ある意味で、できるだけその利用をする人は少なくならねばならないわけです。社会保障の一つの目的というのは、いかに生活保護に頼る人を減らしていくかということであると思います。そういう意味では、今の日本の年金制度あるいは昨年の年金改革というのは、生活保護を逆にふやしていくような流れに私はなっていると思います。与党のある幹部の方も、結局国民年金に入らなければその人は老後年金をもらえないんだから、それで仕方がないということを発言されたのを聞きましたが、やはりそれでは、払わなくて高齢になったら最後は生活保護になったらいいということでは、逆にこれはモラルハザードになっていくわけでもありますし、また同時に、国民皆年金という大看板をおろしてはならないわけであります。その意味で、生活保護をいかに減らしていくかという年金制度であらねばならないわけで、国民年金の未納、未加入にならない制度をきっちりとつくっていくことが重要であると思います」

 と述べています。「生活保護をいかに減らしていくかという年金制度が必要だ」という方向性は、民主党も公明党も完全に一致していると思います。

 ただ、この最低保障年金(月7万円)を生活保護受給額より上に持っていく手法について、坂口さんは「基礎年金の国庫負担は現在50%ですが、こうした皆さんには60%の国庫負担にしてはどうかという提案」をしています。これは無理筋です。おそらく何らかの落とし所を探るベテランならではの変化球だと考えますが、坂口さんの考えをもっと深く聞きたいものです。

 坂口さんは、「素案」について、「年金加算制度のほかにも、厚生、共済年金の一元化や、受給資格期間の短縮、パート労働者の厚生年金適用など、現行制度の機能強化は、公明党が与党時代から提唱し、実現をめざしてきたものばかりです民主党がそれをそっくりそのまま素案に盛り込んだこと自体、公明党の主張が、より現実的であったと認めたに等しい。彼らは野党時代、これらの提案に反対し、法案を廃案に追い込んだ経緯があります。最低保障年金の創設や年金一元化の問題点とあわせて、この点も国会でも厳しく追及しなければなりません」。

 やはり民主党と公明党がめざす年金、社会保障の全体像は同じ方向性です。岡田克也副総理・一体改革相は、坂口さんの案を丸飲みしたらいいのではないでしょうか。そして、2期生以上は野党時代の振る舞いにアタマを下げる。まずは、例え誤解を招いてもいいから数字を出さねば。


[画像]1964年11月の公明党結成大会、目で見る議会政治百年史から。


[画像]第39回衆院選の公明党ポスター、目で見る議会政治百年史から。

 1964年、公明党結成大会の懸垂幕には「大衆福祉の公明党」と書いてあります。そして、1990年2月の第39回衆院選のポスターには「福祉と平和の新時代」と書いてあります。東京オリンピック直後も、バブル絶頂期も、公明党は「福祉」。筋金入りです。「大衆とともに」の公明党。ちなみに1990年の第39回総選挙では、中選挙区三重1区で、自民党公認新人の岡田克也さん(36歳)に弾き飛ばされる格好で、公明党政審会長の前職、坂口力さんは次点で落選してしまいました。しかし、国政復帰後、昨年の3党合意では子ども手当・児童手当の「坂口私案」で、実務者としてまとめました。それは、岡田さんのためではなく、国のための働きで、まさにステイツマンです。

 
[画像]後輩のパネラーを務める、坂口力さん(左)、2008年6月、衆院・決算行政監視委員会、衆議院インターネット審議中継から。右は、当時衆院議員で現在は公明党神奈川6区支部長の上田勇さん。

 上の画像のように、当選10回生(現在は11期生)の初代厚労大臣を4年務めながら、後輩のパネラーを務める坂口さん。「大衆とともに」ーーそれは公明党だけでなく、経済的に成功した人もそうでない人も含めた全国民が共有すべき姿勢です。

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野田首相、参院答弁は「ことしも3党協議」と「お詫び倒し」でスタート 君子豹変す?

2012年01月28日 07時40分31秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]参院本会議で答弁する野田佳彦首相、後ろは平田健二議長、首相官邸ホームページから。

【2012年1月27日(金)参、衆・本会議 政府4演説への各党代表質問】

 政府4演説を受けて、ねじれ国会の主戦場、参院でも本格論戦のスタートです。

 首相の野田佳彦さんが、ねじれ対策の「一体改革」与野党協議のため、福田首相と麻生首相の演説を引用するという「猫だまし」に出ましたが不発。自民党総裁で衆院議員の谷垣禎一さんも、「マニフェストが破綻したので前回の衆院選は無効だからやり直せ」という趣旨に受け取れる、よく分からない「張り手」で、お互いに仕切り直した方が良さそうな気配でした。そこで、きょうの参院自民党の中曽根弘文会長の質問演説に注目しました。

 
[画像]中曽根弘文・自民党参院議員会長、参議院インターネット審議中継から。

 画像にあるように、今国会から会派名が「自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会」になりました。参院たちあがれ日本(藤井孝男さん、片山虎之助さん、中山恭子さん)が加わっています。統一会派を解消した単独会派「新党改革(舛添要一さん、荒井広幸さん)」の2人は民主党と同じ投票行動をするケースも出てきそうです。ここに出てくる議員は全員元自民党員です。

〈お詫び倒しの低姿勢〉

 中曽根さんは冒頭、野田さんの1月16日の民主党大会での「(ねじれ国会の)参院では、衆院から法案を送って、野党に『この法案が通らないとどうなるか』(迫る)ということも時には示していく」との発言をとらえ、「法案を提出する前から恫喝まがい」「参議院の審議権を否定するもの」「議会制民主主義の根幹にかかわる」「発言の撤回を求める」とパンチを浴びせました。

 歴代の自民党参議院議員会長は、このようにいわば「日本国憲法第42条(衆参二院制)」を楯に、あたかも「俺の言うことを聞かないのは憲法違反だ」というのが慣例化しています。例えば、村上正邦会長が、橋本龍太郎総裁を首相官邸に訪ねて、「ペルー日本大使公邸人質事件が解決していないのに、桜を見る会じゃないだろ」と前日の日程について約7分間説教して首相官邸を去っていく姿を見ました。これは青木幹雄さんも物腰がていねいですが同じことだし、会長でなくても、世耕弘成さんや山本一太さんのほとんどの発言もバックに「憲法42条」があります。ほとんどすべての参議院議員は、各種団体あるいは党地方組織という既得権益の用心棒を兼ねています。憲法をバックにした用心棒というのはことのほか強大です。ぜひ世耕さん、一太さん、あるいは林芳正さんらも考えを改めていただきたい。

 議場に戻ります。野田さんは低姿勢で、「党大会での発言は特定の法案ではない」「参議院の審議権を否定するものではない」「昨年の震災後の国会のように与野党での活発な法案審議をお願いしたい」「物事を決める国会にするため、衆参両院の機能強化と二院制の意義を高めるものと理解してほしい」といった趣旨を語りました。

 そして、中曽根さんの「発言を撤回して欲しい」に応じて、「趣旨を必ずしも理解してもらえなければ不徳の致すところだ」と謝りました。

 きょうのポイントとしては野田さんは参院自民党の中曽根さんに3回謝りました。ほかに、YouTube動画で再生が増えている「マニフェストにはルールがあります。書いてあることはやるんです。書いてないことはやらないんです」という野党・民主党幹事長代理時代の街頭演説について謝罪しました。それと元首相の鳩山由紀夫さんの普天間基地移設をめぐる「最低でも県外」など一連の発言を念頭において、「民主党政権として沖縄のみなさまにご迷惑をかけたことをお詫びします」ーーこれに関しては遅きに失したかも知れません。そして、午後の衆本で、公明党のトップバッターとなった井上義久幹事長の質問で八ッ場ダムの本体工事の着工を開始するとした年末の前田武志国交大臣の方針について、「4代の国交大臣が検証した中で、マニフェストと異なる結論に至ったことは真摯に反省し、おわびしたい」と語りました。参院自民党に3回、衆院公明党に1回謝りました。

 このほか、身内である輿石東さんの質問で、昨年12月16日の総理記者会見での「原発事故の収束」という表現が、福島第一原発のことだけでなく、福島全体の事故対応の収束を受け止められたことについて、「福島の人を傷つけた」と輿石さんが指摘。これは総理は「工程表のステップ2が終わり発電所の事故そのものは収束したという意味で、周辺地域のみなさんにさらなる避難をお願いすることはなくなったという意味だ。発電所の廃炉にいたるまで最後の最後まで取り組んでいく」と述べ、謝罪はしませんでしたが、説明を追加することで発言を補足、修正しました。

 一方、衆本では日本共産党の志位和夫委員長が「政党交付金は憲法違反」「廃止すべきだ」としたのに対して、野田さんは「それは日本共産党の主張であり、そのような認識には立っていない」と突き放しました。衆参の状況でハッキリしたところもでました。

〈3党協議、与野党協議への回帰による熟議の国会を要請〉

 ここまでは「お詫び倒し」路線について書きました。もう一つ指摘したいのは「3党協議路線への回帰」を明確な言葉で示したことです。

 中曽根さんの質問に戻ります。「昨年8月9日のバラマキ4K見直しに関する3党合意では、平成24年度予算で農業者戸別所得補償と高校無償化(の2K)について、(3党で)政策効果の検証をするとした。その検証結果が十分でないのに、なぜ24年度予算(案)に盛り込んだのか」と質問しました。

 これは解釈の違いであり、民主党としては「24年度以降の予算」となっているので、実は、政策効果の検証での3党の合意はしない方が、この任期中の予算計上は続けられるんです。3党合意はそういう意味なんです。野田さんは「子どものための手当はその後協議がなかった」として「けさの閣議で(自民党と公明党政権がつくった)児童手当法の改正案の閣法を閣議決定した」とし、子ども手当の見直しにおける参院での自公の協力を要請しました。

 このように「3党協議への回帰」を明確に打ち出しました。

 さらに盛りだくさんでした。

 野田さんは「年金財源の基礎年金の国庫負担分は自公政権の年金法で決められたものだ」としました。これは福田演説・麻生演説の引用から、「年金法」の規定を根拠にする方向に軌道修正したものだと考えれます。総理はこの日、開議の3時間前から首相公邸で官房副長官や総理補佐官と会っていました。そういう官邸政務三役のチームで軌道修正ができたいたら、さすがだと。

〈農業者戸別所得補償法案を今国会提出へ〉

 農業者戸別所得補償法案を今国会に出す用意を示しました。これは今とは逆の衆参ねじれの時に、野党民主党の平野達男さんが提出した参法が参院を通り、衆院に送られています。しかし、政権交代後は、予算書に盛り込むだけで、法案は提出されていません。これについて昨年8月4日の参院農水委員会で鹿野道彦農相は、「ねじれ国会、衆議院と参議院の意思決定が異なる、こういうような状況の中でなかなかこの法制化というふうなものは難しいと、こういうような判断から予算措置でというふうなことの考え方を取らさせていただきました」「軌道に乗せたいというのが私どもの基本的な考え方でありますので、この法制化を目指していきたいと思っておりますが、また現実を考えればそう簡単なものではない」と答弁していました。この答弁相手はJA専務理事出身の自民党参院議員、山田俊男さんですが、すでに山田さんら自民党農林関係議員も「戸別所得補償の制度」は認めていますので、ぜひ山田さんらの意見も入れた良い法律をこしらえてほしい。

〈歳入庁創設へ前向き〉

 衆本では「新党きづな」(7人)代表の内山晃さんが質問しました。かつての「民主党年金3兄弟」です。長妻昭さん、山井和則さん、内山晃さんですが、なかなか3男は目立たないので、家を飛び出してしまいました。内山さんは民主党マニフェストで私も期待していた、「歳入庁」(国税庁と旧社会保険庁)について創設を迫り、総理は「(社会保障と税の共通)番号制度の導入」を条件に創設に前向きな答弁をしました。

 だいぶ長くなりましたが、ポイントは、やはり3党協議、与野党協議を明確にしたことです。これで第180通常国会も、審議拒否がない、ドンドン法律工場となりそうな気配が出てきました。月曜日には参本で、公明党の山口代表ないし白浜会長が登壇するでしょうから、ここでの対応もチェックしたいところです。また同日夕から第4次補正予算(案)が予算委で審議入り。成立のメドが立っています。

 ところで、最後に新聞見出しが立っていない点を指摘します。1月24日召集だったので、冒頭抜き打ち解散があれば2月下旬から3月上旬の特別国会召集も可能でした。しかし、冒頭解散をしなかったことから、3月31日までの本予算成立を考えると、解散は3月下旬以降となることは確実になったと考えれます。衆本では、野田さんが1分前後、咳き込む場面があり、タイヘンだなあと感じました。眼帯はとれましたから、視界は良好になりつつあるように感じました。

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【代表質問】谷垣禎一影の首相、軽減税率でなく低所得者対策求める 2014年4月の消費税8%時

2012年01月26日 21時04分56秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革


【国務大臣の演説(総理施政方針など政府4演説)に対する各党代表質問 2012年1月26日(木) 衆・本会議】

 野田佳彦首相の施政方針演説、玄葉光一郎外相、安住淳財務相、古川元久経財相の演説に対して、自民党総裁(影の首相)の谷垣禎一さんが代表質問しました。

 ◇

 「野田vs谷垣」の初日ですが、勝負の始まりの立ち会いで、お互いに奇策をろうしたので、「立ち会い不成立」です。ともに構図を立て直すべきです。野田さんは福田首相・麻生首相の過去の議事録を引用しました。気持ちは分かりますが、心にストンと落ちません。一方の谷垣さんは、麻生政権下の「附則104条」があるから、消費税増税法案の提出は認めるとしながらも、マニフェストは約束違反だから、「2年半前の総選挙は無効なのでやり直せ」という趣旨にとれる発言。解散総選挙とは、「直近の民意」を問うものです。だから衆院は優越するんです。それをあたかも選挙が無効だからやり直せ、と受け止められる主張は説得力に乏しい。ひょっとしてことし9月の自民党総裁選を心配しているのではないかと自民党内外から見透かされそう。

 ともに作戦を練り直して、分かりやすい構図を示し直すべきでしょう。

 ◇

 谷垣さんの原稿は自民党ホームページに演説から4時間後ぐらいにアップされました。
http://www.jimin.jp/policy/parliament/0180/115432.html

 ぜひ、自民党もドンドン情報発信して欲しいと考えます。また英国庶民院では、水曜日の党首討論を3時間後に議事録をアップしています。ブレアさんが首相のころは1週間でもっとも憂鬱な時間で、なぜかアメリカ人や日本人が大好きで話題になる時間だと振り返っていますが、メリハリを利かした国会運営は見習うべし。代表質問といっても、きょうの谷垣演説は自民党のことし1年の国会運営の基本方針を示したと考えられますから、しっかりおさえておきたいところです。

 谷垣演説では「一税率を内容とする消費税率引上げ法案を提出する以上、政府は、軽減税率に代わる低所得者対策である給付措置の具体案を当然示すべきです」「消費税率引上げ法案の提出までにその具体的設計、費用及びその財源を政府・与党の案として示すことは、法案提出者の義務だと考えますがいかがですか」と述べました。

 ここで、消費税をめぐる議論の土俵、枠組みの設定で重要な発言がありました。

 2014年4月に8%、2015年10月に10%に引き上げる法案が出てくるわけですが、世論では、「食料品は安く」「生活必需品は安く」と言った軽減税率、あるいは複数税率の要望が出ています。ただ現在、食料品に5%の消費税がかかっているので、2014年4月は「食料品5%、それ以外8%」となるのは、現実的でありません。さらに言えば、「キャビアが5%でトイレットペーパーが8%」となるし、「外食店からのテイクアウト(お持ち帰り)は5%、店内なら8%」となります。ここはフランスが「制度設計に失敗した」としていまだに悩んでいるそうです。

 おそらく党議決定はしていないでしょうが、自民党も単一税率での増税準備法案を容認していると考えられます。これで議論すべきでしょう。きょうの日経新聞では、低所得層に年1万円を支給するという暫定的なアイディアが報じられました。2015年10月からは共通番号による給付付き税額控除ということになりますが、この制度設計が議論の的になりそうです。

 そして、谷垣さんは「21年度税制改正法附則第104条を策定したわが党として、この規定に基づく政府の3月までの法案提出を妨げるつもりはありませんが、野田総理、本来、民主党政権に提出の権限は(マニフェストで)国民から与えられていないのです。野田政権の採るべき道は、有権者に謝罪をした上で、解散総選挙を行い、国民に信を問い直すしかありません」としています。

 しかし、第171通常国会(麻生自民党、政権交代解散国会)で成立し、天皇陛下が公布した法律と、あいまいだったマニフェスト。マニフェストというのは法律上の規定はありません。「公職選挙法142条の文書図画(とが)の頒布(はんぷ)」に規定がありますが、「マニフェスト」という言葉は登場していません。だったら、法律はマニフェストに優先するという考えがあってもいいのではないでしょうか。野田さんが謝り、野党として自民党が水に流すということがあっていいのではないでしょうか。「マニフェストの見通しが甘かったから総選挙をやり直せ」という考えの有権者は少ないと考えます。そういった過ちを踏まえた上で、次に目が向いているのではないでしょうか。

 というのは、野田さんは施政方針演説で福田康夫首相、麻生太郎首相の言葉を引用しました。福田さんは民主党が参院史上初めて総理大臣として問責決議をしているし、麻生内閣不信任決議案の賛成討論は野田佳彦さんがやっています。ちなみに、内閣不信任案の討論に野党第1党の幹事長代理が登壇したのは極めてマレで、これは当時の岡田克也幹事長が野田さんに譲ったと考えられます。その2ヶ月前の代表選では、野田さん率いる花斉会が選対のコアメンバーを担いました。

 それから、野田さんが昨年の党首討論で自民党が出した「財政健全化責任法案」(衆法)の言葉を使っているようですが、この衆法のタイトルを口にすべきではありません。無視を決め込む。この法案は自民党がはじめ参法(筆頭発議者・林芳正さん)として出していたのを取り下げて、衆法(同・後藤田正純さん)として出し直したものです。ここからして何らかの思惑を感じました。そこで、よく読んだら、これは陰謀がある「地雷のような法案」と気づきました。民主党国対・議運幹部に「気を付けた方がいいですよ」と伝えたら、「あんなの審議しないよ!」との答えで安心しました。が、民主党は連絡が悪いようで、代表だった菅直人首相が「この法案を審議してもいい」という趣旨のことを国会で答弁しました。おそらく思い付きでしょう。肝を冷やしましたが、やがて言わなくなりました。この法案はちょっとでも審議入りしたら、「民主党は財政健全化責任法案をちゃんと審議しない、財政に無責任な政党だ!」とキャンペーンを張ろうという魂胆がみえみえです。タイトルからしてみえみえです。そしてやはり、年の初めの野党として最大の見せ場で、谷垣さんが攻撃材料に使ってきました。次の一節です。

 「私は、昨年11月末の党首討論で、野田総理が、わが党が提出した「財政健全化責任法案」を引き合いにして、素案を政府でまとめるから自民党も協議に応じるべきと私に迫ったことを忘れてはおりません。総理は今回、法案が求める財政健全化計画の中期計画を策定することもないまま、法案の命とも言うべき財政健全化目標を蔑ろにするという、法案無視の愚かしい選択に及びました。今となっては、あのときの野田総理の物言いは、あの法案を葬り去った民主党の代表が「素案」という法案との言葉の一致だけをよりどころにわが党に協議を迫り、わが党が責任野党として法案に込めた思いを言葉遊びで踏みにじったものとしか受け止めようがなく、怒りに堪えません。まずは党首討論における発言の謝罪及び撤回を求めます。更には、政府はこれまで、今回の「社会保障・税一体改革素案」の表題は「財政健全化責任法案」の文言を引用したものとの説明をしていますが、そうであれば即刻その表題を撤回すべきです。わが党にあまりに失礼です。総理いかがでしょうか

 もうこれを読んでも分かるように、野田内閣は、この法案の名称自体ふれない方がいいですよね。アブナイです。

 その一方で、谷垣さんは、今までの自民党総裁や政権準備政党(野党第1党)党首がほとんど語ることがなかった次のような骨のある本質的な演説をしました。資料的な価値もあると思うので、引用します。

私たちは議会制民主主義の歴史が租税とともに歩んできた ことを忘れてはなりません。

 すなわち、今日の議会制民主主義の繁栄の淵源は、1215年でイギリスにおいて大憲章「マグナ=カルタ」に盛り込まれた「議会の同意なく税金、戦争協力金などの名目で課税してはならない」という条項にあります。

 爾来、国家の課税に対する国民の意思こそが、人々の政治への参画、ひいては議会制民主主義の発展の原動力となったのであり、このことはその後の「権利請願」及び「権利章典」を始めとするイギリス議会の歴史、「代表なくして課税なし」をスローガンとしたアメリカ独立戦争の歴史、主権在民を前提として納税の義務を明記したフランス人権宣言が示しています。

 私たちの議席はこうした長い歴史の積重ねと先人たちの文字通りの血と汗の上に築き上げられたものであり、その証が今日の憲法が定める租税法律主義の規定です。民主主義の下では租税の分担ルールである税制が国民の合意の下によって決定されることが、国民の納税の義務を支える礎であり、であればこそ、税制は主権者である国民に正直に訴え、その訴えが受け入れられるとその意思を反映して、国民の代表で組織される国会で法律により議決されるのです

 このように骨のある演説が出てきたことをうれしいです。君子は本を務む、本立ちて道生ず。自民党、頑張ってください!

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官公労のドン輿石東さん、トロイの木馬(公務員庁新設・人事院廃止法案)撤回へ 給与削減法成立めど

2012年01月25日 20時45分38秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]民主党幹事長で参院議員会長の輿石東さん。

 きょう2012年1月25日早朝、連合会長の古賀伸明さん(電機連合)と、経団連会長の米倉弘昌さん(住友化学)が会談し、さあいよいよ2012年春闘がスタートしました。言うまでもなく、春期生活闘争は賃金だけでなく働く仲間の環境を整える1年でもっとも重要な運動です。ただ、連合傘下の産別で、これに参加しない産別があります。それは、「自治労」、「日教組」、「都市交」、「全水道」といった官公労です。これは、人事委員会勧告により給与改善が図られるので、経営者(市長ら)との春闘はありません。

 昨年の第179臨時国会で積み残しになった「国家公務員給与7・8%削減関連法案」(第177国会閣法74号~80号)の成立に向けた3党協議が整いつつあります。前原誠司さん、茂木敏充さん、石井啓一さんの民自公3党政調会長が合意に近づきつつあります。

 ところで、この「関連法案」の中に、“トロイの木馬法案”と表現してもいい、一部中央官僚が焼け太りするトンデモない法案がまぎれていることにどれだけの人が気付いているのでしょうか。

 「公務員庁設置法案」(177閣法76号)がそれです。

 この法案には次のような内容が含まれています。

 (1)内閣府設置法に基づいて、内閣府の外局として、「公務員庁」を設置する。
 (2)公務員庁は、国家公務員の人事行政、行政機関の機構、定員に関する事務を総合的かつ一体的に遂行することを任務とする。
 (3)国家公務員の任免、分限、懲戒、服務および退職管理、人事評価、退職手当制度、団体交渉及び団体協約に関することをつかさどる。
 (4)行政機関の機構、定員並びに運営の改善及び効率化に関する企画及び立案並びに調整。
 (5)各行政機関の機構の新設、改正及び廃止並びに定員の設置、増減及び廃止に関する審査。
 (6)独立行政法人に関する共通的な制度の企画及び立案。
 (7)公務員庁に退職手当審査会を置く。
 (8)公務員庁に、地方支分部局として、管区国家公務員局を置く。

 まず(8)の出先機関の新設は、「出先機関を原則廃止する」とした民主党マニフェスト違反です。もちろん2月10日付で内閣府復興庁のもとに「復興局」と支所という出先機関が新設されるわけですが、これはマニフェスト後に大震災があったからしょうがない。

 そして、(4)~(5)では、行政機関の機構の新設に関して企画、立案、調整、審査ができるとなっています。これは行政改革の権限を、国会や、国会議員である政務三役から奪いとることにほかならないでしょう。

 そして、(2)(3)をみると、人事院が持つ機能を、内閣府公務員庁が奪うという条文と考えられます。人事院の設置根拠は国家公務員法第3条で「中央人事行政機関」として「内閣の所轄の下に人事院を置く」とあるのが根拠です。

 国会提出中の「国家公務員法改正案」(177閣法74号)を読むと、「(国家公務員法の)目次を次のように改める」とあり、その目次を見ると、人事院の規定がまったくなくなっています。

 ナント、「新しい目次」から「第2章 中央人事行政機関 第3条 人事院」の規定がそっくりそのまま消えて無くなっているのです!

 同法案の附則には「第二条第三項第三号中「人事官及び」を削り、」とあります。現行の国家公務員法は、特別職として「内閣総理大臣、国務大臣、人事官及び検査官・・・」と列挙されています。3人いる人事官が互選して選んだ1人が「人事院総裁」です。すわなち、177閣法74号は「人事院廃止法案」です。人事院が廃止されれば、当然、人勧(人事院勧告)は廃止です。国の人勧が廃止になれば、地方の人勧(人事委員会勧告)もやがて廃止になるでしょう。地方公務員法も国の法律であり、国会が審議する法規です。

 「公務員庁設置法案(177閣法第76号)」と「国家公務員法改正案=人事院廃止法案(177閣法第74号)」という“トロイの木馬法案”が潜んだのが、「国家公務員給与7・8%削減関連法案」なのです。仮にこれを年末の臨時国会で成立させたら、行革も、天下り独法の改革も、定数管理も、職員の懲戒処分も、省庁の新設も廃止も、定員削減も、すべて内閣府公務員庁の仕事になっていたところでした。また職員の採用試験も人事院廃止後は公務員庁になっていたところでした。

 私は、公務員にも団体交渉権や団体協約締結権を認めるべきだと考えています。労働基本権を整えるべきです。しかしそれは制限付きです。例えば国家公務員なら自衛官の労働基本権は制約を受けるべきであり、その代償として人勧(人事院勧告)は必要だと考えます。そして、地方公務員でも、消防職員や警察職員は制約を受けるべきで、それの代償としての人勧(人事委員会勧告)は続きます。

 私がこのことに気付いたのは、秋の臨時国会で政府特別補佐人の江利川毅・人事院総裁の一連の答弁です。「人勧不実施は憲法違反だ!」と主張する江利川さん。「あのジェントルマン江利川がどうしたんだ?」という疑問を持ちました。これをきっかけに、よく法案を精査したら、このことに気付きました。では、このトロイの木馬を潜ませたのは誰か。あくまでも推測ですが、私は総務省人事・恩給局の幹部なのではないかと思っています。「恩給」はもちろんいいのですが、「人事」の方です。仮に「総務省人事局」(旧総務庁人事局)とすれば、人事院廃止で内閣府公務員庁ができればその主力部隊に横滑りすることができます。出先機関の「管区国家公務員局」には、総務省行政評価局の出先機関である「管区行政評価局」の全国1000人の職員を幹部にして、より多くの職員を雇うこともできるでしょう。地方公務員では、官公労は幹部は各々自治体職員なのだから、国の「人勧廃止」を地方にも波及させようと考えるのではないか。このため、政権交代により初めて面通しができるようになった総務省人事局と官公労がタッグを組んでいるのではないか。あくまでも推論ですが、そう考えています。

 で、言うまでもなく、官公労の国会におけるドンは、輿石東さんです。

 そこで、私は年の納めの2011年12月27日の民主党幹事長会見でこのことを聞いてみました。

 私は「公務員給与7.8%削減の関連法案の中に公務員庁設置法案がある。これは人事院を廃止して内閣府公務員庁を設置し、出先機関を新たにつくる。人事院を廃止すれば人事院勧告も当然廃止でしょう。そして行革があるときにはこの公務員庁が企画立案するとなっているから、当然政治家ではなくて、この公務員庁の許可がなければ行革はできないと思う。この公務員庁設置法案を次の通常国会で取り下げるお考えはあるか」と聞きました。

 これに対して、輿石さんは次のように答えました。

 「それは当然いろいろな関連で考えられる1つの方策かもしれません。今、人事院勧告がなんであるのか。労働基本権にかかわるものを労働者に与えていない代償機関としていると。じゃあ、やっている間は人事院勧告を尊重すべきではないかと。じゃあ、かわり得るもの。それから労働関係三法にもかかわる話でしょう。これからきちっとそれは詰めていかなければならないと思っています。だから片一方だけ、給与を削るというところだけ、1つだけやればいいという話にはならないでしょう」と答えました。

 「それは当然いろいろな関連で考えられる1つの方策かもしれません」というのは、“トロイの木馬法案”の取り下げを認める可能性を示唆した発言です。政府が国会に閣法撤回要求をするのではなく、衆院内閣委員会が新3党合意にもとづく修正協議で、閣法を修正可決したり、自民党・公明党提出の衆法を可決する方が現実性が高いと考えます。

 輿石さんが柔軟な姿勢を示したことで、民自公3党合意ができ次第、法案は成立するでしょう。それにしても、昨年の通常国会に提出された法案なので、野田内閣発足した時点から民主党政権ののど元に突き刺さった魚の骨、国地方の役人が混ざり合ったトロイの木馬。昨年末、民主党の1期生議員10人ほどが総理公邸に野田佳彦さんをたずねて、この関連法案を成立させるよう迫りました。総理としても、この法案は、のど元に魚の骨が刺さった法案です。このときの10人には実力があり、私も個人的に親しくしている議員も多いのですが、総理に迫るのではなく、魚の骨を取り除く作業をしてほしかった。私は1期生に言論の自由はないという考えをかねて持っていますが、このときも、ひょっとして誰も気付いていないで公邸に押しかけていたら総理は孤独だし、ホントウに淋しいことだなあ。私たち有権者も、住民票所在地や支持政党の枠組みを柔軟に考えて、しっかりと政治家の「選択と集中」をしていくべきです。

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「自分のために何ができるかではなく、次世代のために何ができるかを考えよう」古川元久さん 政府4演説

2012年01月24日 15時48分11秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]経済財政政策担当大臣の古川元久さん

【2012年1月24日(火) 衆参本会議 政府4演説】

 午前10時から参院本会議、午前11時から衆院本会議で各々、院の構成を決めました。参本では新議員の玉置一弥さんが紹介され、以前とさして変わらぬお元気そうな姿を見ることができました。

 正午から、両院合同の開会式がありました。ちなみに帝国議会では開会式から会期を数えましたが、国会では召集日から会期を数えることになっています。開会式が3日目ぐらいに開かれる国会があるのはこのため。今回はきっちり召集日にやりました。

 この後、政府4演説がありました。朝からテレビ欄を見て、不思議でした。きょうは、国会に平成23年度第4次補正(よじほせい)に加えて、平成24年度当初予算案も同時に提出されたので、一気に政府4演説ができたようです。これで審議日程はだいぶ楽になりました。補正をやると支持率は上がりますから、ホップ、ステップ、ジャンプで消費税政局にのぞんでいきたいところです。

 野田佳彦首相の施政方針演説、玄葉光一郎外相の外交演説、安住淳財務相の財政演説(本予算を先に説明してから補正を説明)、そして、古川元久国務大臣の経済演説がありました。

 このうち印象に残ったのは、古川経財相(内閣府特命担当大臣・経済財政政策担当)の経済演説です。古川さんは46歳、連続当選5回(愛知2区)、勤続15年3ヶ月です。

 古川さんは、「経済財政政策を担当する国務大臣としてその所信を申し述べます」と話を切り出しました。私の記憶する限り、経済演説というのは、経済見通しの数字の羅列だった気がします。「所信を申し述べます」という演説は新機軸ではないでしょうか。と思って、調べたら、過去の経済演説も「所信を申し述べます」で始まっていました。とはいえ、古川演説は能動的な経済を底上げする方向性がしっかりと盛り込まれているのでホントウに「所信を申し述べます」にふさわしい演説だったと思います。演説はていねいにまとめられた力作でした。

 古川さんは「社会のあらゆる場面」での「イノベーション」を打ち出し、ソニー創業者の井深大(いぶか・まさる)さんが「企業にとって必要なのは発明より革新なのだ」と言っていた、という意外なエピソードを紹介します。そして、「わが国が主要な貿易相手国との間で、高いレベルの経済連携を強力に推進し、人や物や資金の交流を強化することはイノベーションの喚起につながる」と、野田内閣の重要なテーマであるTPP(環太平洋パートナーシップ協定)を惹起させるセンスの良さを示しました。

 さらに「南北に細長い国土の多様性と各地で各地で活躍する中小企業の厚みは日本の強み」だとしてそこにイノベーションの種があるとしました。私はこれまで、南北に細長い国土と各地域の中小企業の関係を考えたことはありませんでした。その辺の実例をもっと知ってみたいと感じました。そのうえで、復興特区と総合特区に話をつなげました。

 近江商人の「三方よし」と渋沢栄一の「論語と算盤(そろばん)」に代表される企業の倫理性、社会との共存、持続可能性に言及しました。私は会社員の経験がありますが、私が勤めていた会社にはありませんでしたが、開国の地、横浜の主に二代目から三代目の社長はそういった感覚をしっかり持っていました。そういったわが国の特徴が、わが国の安定性、健全性につながっている。欧州債務危機のなかで、わが国の国債が買われ、長期金利が下がっている、痛し痒しですが、それもそのおかげだと考えます。大震災からわずか10ヶ月ですが、わが国は安全性で、アジアの成長を取り込み、立ち直れると考えています。ただ、私は「三方よし」というのはあまり知らないので、これを機会に調べてみましょう。

 古川さんは落ち着いた口調で「わが国は何度も国難というべき状況に直面し、そのたびにそれを克服してきました。我々日本人の精神構造は柔構造です。しなっても折れることなく元に戻る。そして元に戻ったときには、苦難を経験した分、以前よりさらに強くなっているのです。まさに私たちは、日本という国の底力を世界に示す好機にあると言えるのではないでしょうか」とピンチはチャンスという心強い姿勢をみせてくれました。そのうえで白洲次郎の文章とケネディの就任演説をもじって、「自分のために何ができるかではなく、次世代のために何ができるかを問おうではありませんか」と語りました。

 次世代のために何ができるか。それは野田首相が「不退転の決意」で取り組んでいることです。古川さんは良くも悪くも「オリミンらしい」人で、大いに名を挙げた金融新人類のイメージが強かったのです。正直言って、ややひ弱なイメージを現在まで引きずっておりました。しかし、選挙を経るごとに力を挙げ、そして与党として、意外にも初の入閣でしっかりとたくましさを増しているのだときょうの政府4演説の1人としての演説で感じました。つくづく選挙は政治家を強くするんだと感じます。民主党税制も、第44期衆議院で藤井裕久さんが落選していた時期(長浜博行さんの2007年7月の参院転出で衆院比例南関東で藤井さんが繰り上げ当選)を含めて、古川さんが支えてきました。そういった古川さんの底力をきょうの演説で感じることができました。そして、日本の正念場として、「何度も国難を克服してきた」ことはアタマでは分かっていましたが、政府4演説で聞けたことは大いに安心感を持ちました。

 これに先立ち、総理は初の施政方針演説にのぞみました。国会冒頭の演説は早くも3会期目になりますが、通常国会冒頭の施政方針演説はこれが初めてです。


[画像]施政方針演説する首相の野田佳彦さん、2012年1月24日、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 野田さんは「与野党が信頼関係に立って」という4年前の第169通常国会での福田康夫首相(自民党総裁)の言葉を引用しながら演説をスタート。衆参ねじれの苦しさを感じさせました。そして、「民主党内の政治家の熟議」で一体改革の素案をつくったので、与野党協議に応じて欲しい、とさっそく演壇から呼びかけました。「深刻なイデオロギー対立をはらむものではない」として「今こそ政局より大局を見すえようではありませんか」と述べました。

 復興庁や復興特区など、「復興を進める道具立てができました」としたうえで、東北に3回行って、「どこに行ってもどこか懐かしい郷愁がいたします」としました。私も同感です。東北の復興は東北らしい自然との共生への回帰をめざして、東北にそぐわない大規模な都市再開発はやめてほしいと考えます。

 総理は、第179臨時国会で、「公務員給与8%削減法案と郵政改革法案が大きな考えの違いがなかったのに成立しなかったのは残念だ」と野党を挑発しました。

 このほか、玄葉光一郎外相が外交演説、安住淳財務大臣が財政演説をしました。


[画像]外交演説をする玄葉光一郎外相、2012年1月24日、参議院インターネット審議中継からキャプチャ。

 玄葉さんは「最近サウジアラビアで日本の礼儀正しさを紹介するテレビが放送されたら訪日ビザが3倍になった」という風に様々な情報を盛り込み、有益なものでした。しかし、玄葉外交の背骨が見えてこず、物足りなさと冗長さがありました。

 
[画像]第4次補正予算と平成24年度当初予算に関して財政演説する安住淳財務大臣、2012年1月24日、参議院インターネット審議中継からキャプチャ。 

 財政演説では、平成24年度当初予算案の説明をしてから、平成23年度第4次補正予算案の説明をしました。

 国務大臣の演説に対する各党の代表質問はあさってから。衆院では「新党きづな」(内山晃代表)も質問するようです。来週月曜日まで参院本会議で代表質問がありますので、月曜日のうちには衆院予算委員会で4次補正の趣旨説明があり、審議入りできればいいですね。

 きょう国会に提出された平成23年度第4次補正予算案は
http://www.bb.mof.go.jp/hdocs/bxss010bh23.html

 平成24年度当初予算案は
http://www.bb.mof.go.jp/hdocs/bxss010bh24.html

 のリンク先からpdfで読むことができます。

 「解散含み」だの「日を追うごとに与野党対立激化は必至」だの言われるときほど、国会は意外に安定するものですが、きょうはなかなか良い演説で安定感があり、楽しかったです。第180通常国会、まずは良いスタートを切れました。
 

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第180通常国会が召集 民主党は最低保障年金・3年金一元化の案を示すべきだ

2012年01月24日 09時55分37秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]期待がもてる城島光力・民主党国会対策委員長。



 あけましておめでとうございます。第180常会(第180回通常国会)はきょう平成24年2012年1月24日(火)召集されました。会期末は6月21日(木)。

 いきなり変な話で恐縮です。先週月曜日に、党員資格停止で党大会に出席できなかった小沢一郎さんが「新政研(新しい政策研究会)」という会合をやりました。衆院が80人くらい、参院から25人くらい出席したそうで、なんでかなあと思いました。日曜の「時事放談」で野中広務さんが「帰りがけに20万円の金一封が包まれていたという噂を人から聞いた。そしたら十分な日当になりますからね。やはり金が絡んでますよ」と話していました。20万円×100人なら2000万円で、所有マンションを処分すれば、そのくらいのオカネは出てくるでしょう。たしかに民主党若手議員がオカネに苦しんでいるのは目の当たりにしています。小沢さんは古式ゆかしい。小沢さんが岩手4区の被災者に寄付すると公選法に反しますが、岩手2区・3区などの沿岸部の被害者に寄付すればいいのにと思います。ただ、民主党良識派もオカネに苦しんでいる人は多いので、余裕のある人は政治献金をしてほしいですが、どのグループだろうと、「小沢付き民主党は信用できない」というのはごもっとも。民由合併は失敗だったのかなあ。

 召集日の朝から、さわやかさに欠ける話で恐縮しました。

 先週から今週にかけて、民主党良識派からうれしい発言が相次ぎました。

 アフリカ開発会議(日アフリカサミット、TICAD=ティカッド、タイカッド)の第5回がまたまた横浜で開かれることが、2012年1月20日(金)の官房長官会見で発表されました。「なぜまた横浜?」という質問に、藤村修さんは、様々な条件をあげたうえで、「これはやっぱり横浜だ」と述べました。おそらく、横浜とは、みなとみらい21地区のパシフィコ横浜ということでしょうが、高秀秀信・横浜市長も喜んでいるでしょう。横浜市幹部は、「新進党・民主党系の人ってパシフィコ好きだよね~」と冷やかしますが、気にしない、気にしない。

 21日土曜日には、安住淳・財務大臣の一体改革の地方行脚がスタート。さっそく被災地・仙台で「宮城県に100年先、200年先まで人が住めるように」消費税増税が必要だと訴えました。アニキの勇気にどこまでも付いていきたい。

 22日のNHK日曜討論には城島光力・新国対委員長が登場。城島さんは3党合意をまとめた当事者なので、期待しています。拉致問題解決をめざす「ブリーリボンバッジ」をつけて城島さんは登場。もともとこの運動の事務方が元民社党書記なので、民社協会が熱心にとりくんでいます。自民党の岸田文雄・国対委員長がバッジをしていないのに、公明党の漆原良夫・国対委員長はブルーリボンバッジをしていました。

 さて、この第180通常国会は、マスコミはさかんに「解散含み」「大荒れ必至」と前触れ報道していますが、こういうときは、意外と安定した国会になることはよくあることです。そもそも消費増税準備法案よりも、平成24年度特例公債法案の方が、解散のカギになります。マスコミの報道はややずれています。この本質は見誤らないでください。

 平成23年度第4次補正予算案がきょう提出されます。4次補正(よじほせい)の提出は、昭和22年(1947年)10月4日の第1回特別国会以来、65年ぶり。それだけの国難だということです。補正からの審議入りですが、きょうのうちに政府4演説が衆参であるようです。ちょっとよく分かりませんが、きょう政府4演説をやってしまうので、平成24年度当初予算案の審議入りの際は、財政演説だけでいいのでしょうか。そうだとすると、1週間程度日程を節約できたことになります。

 施政方針演説は、野田佳彦首相、財政演説は、安住淳財務相、外交演説は玄葉光一郎外相、経済演説は古川元久経済財政政策担当大臣というお馴染みのメンバーです。衆参とも演説があった後は、あすは質問通告日で、木金に衆院で、金月に参院で代表質問があります。このところ、質問通告日がないパターンが定着しつつありましたが、質問通告日ができて官僚のみなさんは少し楽になったかも知れません。一方で、衆院議員は4次補正や当初予算の予算委員会審議中はあまり本会議がないので、地元に帰りっぱなしになることも可能です。

 社会保障と税の一体改革では、公明党から社会保障の全体像を示すよう要求されています。私は賛成です。昨年6月に、仙谷由人さんが会長を務めた民主党調査会の「社会保障と税の一体改革の成案」ができたときは、消費税増税準備法案も、社会保障の法案も、てっきりこの通常国会に「一体的に」出すものばかりだと思っていました。その後、このブログで「私の勘違いでした」と書きましたが、やはり、公明党などからは不信感が出たようです。民主党はまず最低保障年金を法案化すべきです。月7万円。そして、報酬比例部分に関しては、今までのグラフよりもより急な下り坂(所得が高いと少なくなる)のものでも、国民の納得は得られると考えます。

 またマニフェストには「年金の一元化」とあいまいな表現で、何をさすのか分かりません。わざとあいまいに書いたという形跡はあまり感じません。ですが、例えば、国民年金と厚生年金の1階部分を一元化するとか。思い切って、国民年金・厚生年金・共済年金の特別会計の一元化を議員立法で押し通して、場合によっては「信を問う」ことにしてもいいのでは。おそらく、「公平性」、「平等性」の観点から行政訴訟になるでしょう。それでも「国民の信」というものは、統治行為論によって、それらを打ち破ることも可能です。3党合意ではお世話になった公明党の坂口力副代表(元厚労相)の発言もよく聞いていると、厚生年金保険料の特別会計を通じた運用面での既得権益というものを重視しているようにも感じられます。まあ当たり前なんですが。

 さはさりながら、厚生年金保険料の労使折半双方の軽減なども含めた「一体改革」で年金の「最低保障機能」を高めないといけません。人間には天寿があります。しかし、どんなに立派に天寿を全うなさる方でも、何歳何ヶ月が天寿か、事前に分かっている人はいませんから。だから、よく地下鉄で、アクティブシニアがポシェットをして日帰り観光をしている姿をお見受けします。今時の東京で、唯一景気の良さそうな方々です。しかし、アクティブシニアなら、楽しく働いていただいた方が、楽しいのではないですかね。ぜひ、最低保障機能を高めるという年金の当たり前の姿に戻すために、むしろ政府外議員が勇気堂々、私案を出したらいいと思います。繰り返しますが、最低保障年金の報酬比例部分の下り坂はもっと急でも大丈夫だと考えます。

 それからうれしいことの付け加えです。「yamachanblog」さんが「控除から手当へ(子ども手当再考)」というのを書いてくださり、とてもうれしかったです。2009年の総選挙のときに私が書いたエントリーを参考にして、「控除から手当へ」という子どものための手当のねらいがよく分かったと書いてくださっています。確定申告書を書いていて、そう思ったのこと。(アー確定申告やり始めなきゃ!)。で、これらはすべて2007年秋に野党・民主党税調が書いた「中期答申」に全部書いてあるので、ぜひ、政府外議員も読んで欲しいです。藤井裕久さんや古川元久さんが書いた物でよくまとまっています。例えば「ナフサの免税の恒久化」という一見すると税制改革が後退したように思える、平成23年度税制改正大綱も、野党時代からの「租税特別措置の簡素化」という考え方からすれば、「免税の恒久化」なので、理にかなっていることになります。与党になって勉強したことの成果です。今後は「租税特別措置透明化法(古川法)」の“伝票”がでてきますので、もっと簡素化できます。もちろん、それにより各種団体は民主党議員にすり寄ってこなくなりますが、今のように目の回るような忙しい日々でなくても、誰か一人は当選するのが小選挙区制ですから、心配ご無用です。

 藤井さんは今月になってから、この中期答申をよく読んでくれ、と繰り返し言っています。野党時代の民主党では、子ども手当に関して、「控除から手当へ」で月1・6万円。それから2007年参院選で月2・6万円。このころから、「子どもは社会の共有財産」という言葉もでてきました。しかし、時折、「子ども手当の理念は、子どもは社会が育てる」と言う人がいますが、私はこんな言葉は野党時代に一度も聞いた覚えがありません。たまに、「子育て」を「子育ち」と呼ぶ人がいますが、そういう人間が、「子どもは社会が育てる」というネグレクト(育児放棄)としか思えない無責任なことを、民主党が与党になった直後に乞食根性で言い出したのではないかと思います。その辺、書いてから2年半経ってから、「yamachanblog」さんが、現実の体験として書いてくださいました。私はいろいろ書いていても、実務としては、所得税の扶養控除も子ども手当の受給も経験しておりませんから、書いていただき、自分としてもアタマが整理でき、勉強になります。ありがとうございます。

 そういう意味では、社会保障と税との一体改革は、もっと説得は簡単なことだと考えられます。油断大敵ですが、そうでしょう。しっかりと本質を捉えてやっていきたい。そのためには、やはり最低保障年金と3年金の一元化は素案を出さないといけないでしょう。出せば、公明党が協議入りしてくれる可能性があります。大胆にやればいいんです。

 第180通常国会は解散含みとされますが、過去半世紀以上、2月・3月に解散されたことはなく、どんなに早くても4月上旬だと思います。私は子どものための手当をめぐる世論が、子育て世代の帰省により、シャッフルされるゴールデンウィーク明けの投票日がいいと思います。しかし、今国会にはNHKによると、81本の閣法が提出されるようです。タイヘン多い数です。内閣官房がまとめた「政府提出法案調べ」をまだもらっていないのですが、今国会は統一地方選も参院選もないので、じっくり時間をとれます。私は20年経って、ようやくそのことに気付いてきたのですが、現職衆院議員というのは与野党とも任期満了までやりたいと本心では考えています。例えば「前回は逆風で比例復活となったが、小選挙区で勝ち上がる自信があるので早く総選挙を闘いたい」とか「野党はもう十分。政権復帰で与党として仕事をしたいので、早く解散してほしい」などといいます。しかし、与党でも野党でも、歳費は同じです。与党の方が、政務三役としての歳費の上乗せや役所からの秘書官、委員長としての手当や公用車がつくぐらいで、歳費が同じなら、任期満了で総選挙をやって良い結果を残せばいいだけであって、前倒しで総選挙をしたいと本心で思っている人は自民党ベテランを含めても一人もいないと思います。だったら、しっかり「働きます国会」にして、閣法だろうが、衆法だろうが、参法だろうが、しっかりつくって天皇陛下にドンドン公布していただく。その先に衆院選の勝敗がある。たくさん法律を作ったから現与党が総選挙に勝つほど単純な世の中ではありません。

 衆院予算委員会の筆頭理事には「ガチンコ相撲の突破力」の鉢呂吉雄さんが入閣した岡田さんの代わりに入りました。岡田さん入閣にともない、民主党行革調査会長には中川正春さん、会長代理には蓮舫さんという、今の民主党ではベストの布陣がとれています。

 城島国対委員長は日曜討論で「熟議の国会であり、懸案を前に進める国会だ」と語りました。浮き足立たずにしっかりと法律をつくっていきましょう。

まあ、なんとかなるものです

[以下、yamachanblogさんから全文引用はじめ]

2012.01.20 Friday

控除から手当へ(子ども手当再考)

子ども手当については過去に何度か書きました。

子ども手当は誰のため
「子ども手当」にかかわる3党合意について
子ども手当廃止について(1) 子ども手当とは何なのか
子ども手当廃止について(2) 財源論という罠

ぐだぐだと長い文章ばかりで今読み返すとなんだコイツはという感じですが要約すると子ども手当っていうのは子どもに等しく支給されるものであって、それって利権の分配に勤しんできた今までの日本の政治構造からすると結構ドラスティックな変化なんじゃないかということでした。すなわち「子どもを社会で育てる」という理念を体現する象徴的な政策であると思い、支持していました。

いまも基本的な考えは変わっていませんが、ちょっと思うことがあったのでメモっておきます。


1. 扶養控除の廃止をはじめて実感

先日、確定申告の書類を書きまして、子ども手当の開始に伴う「扶養控除の廃止」をはじめて実感しました。というかその仕組みをはじめてちゃんと知りました。無くなった控除額が大きかったのでええ~と思いつつ(参考:
扶養控除Wiki)。

よく試算してみると「児童手当→子ども手当の増額分」と「扶養控除廃止による増税分」は、ほとんどトントンであるようです。3歳未満の場合、児童手当から子ども手当になったことで増えた金額は5,000円(
3党合意による改変前までは3,000円)。×12ヶ月分で6万円。一方で、16歳未満の扶養控除廃止により所得税は38万円、住民税は33万円の控除が無くなります。控除廃止による増税額は所得によって変わるので一概に言えませんが、わが家の場合は微増といったところのようです。高所得世帯では負担増になるとのこと。(計算は苦手で、まだ完全に把握したわけではありません。間違っていたらすみません。)

というわけで、子ども手当の導入によって子育て世帯の金額的なメリットが増えたというわけではないことを、(頭だけでなく)身を以て実感したわけです。さて、じゃあ子ども手当っていったい何なのか。

ホリエモンの言うように(
これこれ)、親の所得に関係なく一律支給とすることで役人の仕事を減らして費用を浮かすというのも子ども手当のメリットのひとつだと思います。『上杉隆の40字で答えなさい』によると、官僚の仕事とは「無意味な仕事を勝手につくり、次にそれを守るために一丸となって、予算の獲得に努めること」だそうです。警察の天下り先として悪名高い交通安全協会をはじめ、地デジ騒動もそうだし(参考:地デジとはつまり景気対策。でも強制はよくないよね。)、ETCとかエコポイントとかもそうだったのであろうということは振り返ってみると頷けることです。

だからして「単に金持ちに子ども手当を出すのがムカツクという、レベルの低い妬みのために手間のかかる手段を使わざるを得ない状況っていうのは公務員の思うツボ」というホリエモンの指摘には同意しますし、そのために子ども手当への悪い「イメージ」が先行して流布されているような気もします。子ども手当でツイッター検索すると、とにかく子ども手当憎しみたいなコメントがけっこう多くてげんなりとしちゃう。それも若い人に多かったりするのはオイオイと思いますが。

単純に金額を比較すればたしかに子ども手当による受給のメリットはあまりない。だからこんなのはまやかしだとかバラマキだという批判も出るのもやむを得ないでしょう。ぼくも正直言えば、ちっ、なんだそれと思います。でも、それでも「控除から手当へ」という点においてぼくは子ども手当を支持したい。

2007年に民主党税制調査会がまとめた「民主党税制改革大綱」には、「人的控除を精査した上で、必要なものについては、相対的に高所得者に有利な所得控除から手当へと転換する」と記載されているそうです(参考:
【子ども手当】税制の「控除→手当」の大原則)。ちなみにこのブログを書かれた方は、「税制の透明化」という民主党税制の基本スタンスが「控除から手当への流れ」なのだと指摘しています。これはなるほどと思いますし、さっきのホリエモンの話にもまた繋がってきます。


2. 控除から手当へ

「控除から手当へ」これが大きなテーマなんですね。
ところがそんなことは全然アナウンスされない。子ども手当をめぐる報道は、単に損か得か、あるいは言った言わないの政局レベルでの話ばかり。日本のマスコミは目先のことしか報じないのでそれは仕方ないにしても、当の民主党自身でさえもきちんと説明しているとは言えない(というか本当に理解してる議員なんてどれくらいいるのか疑問)。それで損得勘定以外の意味を見いだせと言われても難しいでしょう。

だから「子ども手当が貰えると喜んでいる家庭も実は控除廃止で増税されるんですよ」的なことを聞くと、その事実だけに目を奪われて(知ったつもりになって)、なんだよインチキじゃねえかって話になる。でも、ほんとうはその事実から考えるということが「はじまる」はずなんです。ぼくは増税という事実を踏まえた上でこう思います。

「控除から手当へ」の流れによって、税制が透明化されて、官僚による無駄な仕事の創出が少なくなることは歓迎です。それによって政治はもっと身近なものになると予想します。政治が身近になるということは、自分のことを自分で考えるようになるということです。お上(密室)にお任せ、から責任と自由を自分らで引き受ける政治へ…実現するには数十年単位での期間がかかるだろうし、存命中に叶うことはないかもしれません。でもその「流れ」を次世代に引き継ぐことはできる。

さらにもっと大事だと思うのは、子ども手当に限って言えば「控除」と「手当」では家族手当というものに対する考え方がまるきり違うということ。「控除」とはすなわち親の所得によって決まるものであり、子を持つ「親」への措置です。児童手当もその延長上にあるものでした。つまり親の都合に大きく左右されます。それに対して「手当」は、親の所得に関わらず「子ども」へ等しく支給されるものというのが当初の子ども手当でした。すなわち、受給となる対象が違うわけです。

けっきょくは親の口座に振り込まれるんじゃねえかと言われれば、それはそうです。しかし、控除として減税措置されるのと、子どものためにと支給されるのでは「親の側の受け止め方」が違ってきます。子どものためという名目で振り込まれたものならば子どものために使ってあげたいと思うし、やむにやまれず生活費に消えたとしても手当を受けとったという事実は子どもへ向かう態度となって表れます。きれいごと?いえ、これって本能レベルでの話だと思います。ふつうそうですよね。ぼくは自分が親になることではじめてそういうふうに考えるようになりました。

そりゃ中には親のパチンコ代に消える家庭もあるでしょう。でもそれは各家庭の子育てのスタンスであって、そこまで強制できるものではないと思います。政治は道徳の場ではありませんし、ましてや信仰や思想の自由を強制などできない。子ども手当が親のパチンコ代に消えると批判するならば、年金の使い方だって規定されなきゃならないのでは。けっきょく政治に何を求めるのかということに立ち返って考える必要があると思います。


3. おまけ

と、あくまでも子ども手当を受給している中産階級という立場からの現時点での感想を書き留めておきました。べつにこれをもって反対派の人たちを論破したいとかいうわけではまったくありません。立場が違えば意見が異なるのは当然です。なんでわざわざめんどくさいことを書いているのかというと、原稿料が出るわけでもないし、あくまでも自分の中での考えを整理するためにこうして書いているだけです。

頭の中でぐだぐだと考えていることを書くという行為によってアウトプットすることで、頭の中が整理されていきます。以前に書いたものを読み返すと、いまも自身の考えの中核をなしていることから書いたことすら覚えていないこともあります。人の記憶なんていいかげんなものです。ぼくは今回あらためて子ども手当というものに対する考えを確認することができました。これは他ならぬ、ぼくだけのものです。

こうして書いておくことは、記憶に残っていなくても記録に残ります。たとえば今後また子ども手当に関する報道がなされ、単一のフレーズや煽り文句が連呼され始めたときに、その狂騒から一歩引いて考える、その素になるはずです。もちろんその頃にはまた考えが変わっているかもしれません。コイツはこんなこと考えてやがったのか、と鼻で笑う結果になるかもしれない。だからこそ、いま自分が置かれている現場で感じることを書き留めておくことはいましかできないし、大事なんじゃないかと思っています。


関連:
子ども手当と扶養控除--「控除から手当へ」の流れとして - 博多連々(はかたつれづれ)
【子ども手当】税制の「控除→手当」の大原則 - 国会傍聴記by下町の太陽
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参議院の勢力図 第180通常国会(第22期参議院・第45期衆議院)の召集にあたって

2012年01月21日 10時17分25秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[画像]第180常会の参議院の勢力図。

 第180常会(通常国会)の召集にあたり、参議院の勢力図をつくってみました。

 ケータイの種類などで見づらい方は、下のリンクをクリックしていたければ、画像だけのページになります。
https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/9e/17c0a1138591899a5b5fb9b22798f3e0.jpg

 衆議院は省きます。与党が絶対安定多数をもっていますから。絶対安定多数とは、仮にすべての委員長を与党がとったとしても一番小さい委員会(10人)でも、委員長を除く委員だけで過半数をしめた議席数のことです。おそらく270~280議席の間でしょう。日本国憲法59条が定める「3分の2」ルール(319議席)はゼッタイムリ。第45期衆議院では、参院否決後の衆院再議決はありません。

 なので、衆院の優越がある「予算案」と「会期の延長案」をのぞく、すべての議案(特例公債法案含む)の成立には参議院での過半数が必要です。参議院では、本会議での押しボタン式投票に議長は参加しません。定数242ですが、241の過半数である「121」が必要という考え方になります。このため、勢力図には、民主党出身の平田健二議長は入れていません。




 民主党・新緑風会の106議席。うち2人は他の政党である「新党大地・真民主」に属します。横峯良郎さん=2007年民主党で当選、平山誠さん=2007年の新党日本名簿で当選)です。鈴木宗男代表(民間人)の指示でゆさぶりをかける可能性は否定できません。民主党員と2人のコミュニケーションが必要でしょう。

 国民新党の4人のうち3人が政務三役です。ただ、唯一の政府外議員はきょねん「子ども手当つなぎ法」の採決を棄権したことがあります。

 社民党・護憲連合(4)。無所属の糸数慶子さんは投票行動が同じことが多いので、5議席という考え方ができるでしょう。

 新党改革(2)。舛添要一代表は、第22期参議院が始まった2010年の臨時国会中に民主党幹事長と雑誌で対談するなど比較的、民主党に近いスタンスをとっています。今回の「たちあがれ日本」との統一会派解消もその考えのあらわれだと考えられます。テレビ入り質問時間の割り当てで、民主党・新緑風会の配慮が期待されます。

 日本共産党(6)。参院議員団長を兼ねる党書記局長が2010年12月、第22期参議院初の通常国会前に民主党幹事長と会食しその模様を機関紙が報じました。参院では近い立場が時にあります。「子ども手当つなぎ法」は統一地方選前に児童手当の公明党との対決色を高めたい考えがあったようで、賛成しています。このときは、国民新党政調会長が棄権し、みんなの党の1議員が賛成に回ったため、「120対120」の同数となり、西岡武夫議長(当時)が「可決」を宣言しました。

 公明党は19議席です。

 「自由民主党・たちあがれ日本・無所属の会」は86議席。たちあがれ日本の3議員は新党改革との統一会派を解消し、自民党と合流。これにより会派名が変わりました。

 みんなの党(11)。野党内でも問責決議案や修正案を独自に出すなど第22期参議院で独自色(あるいは孤立色)を強めています。なので、自公よりも与党から遠い位置に配しました。

 無所属の尾辻秀久副議長と長谷川太紋さん。長谷川さんは地元県連との事情で離党しています。2人の立場や環境を考えると、無所属ながら党員以上に「党議」に従うものと考えられます。

 このように法案・議案の可否はすべて、参議院の勢力図をアタマに入れておかないとどうにもなりません。国民一人一人がそうすべきとは言いませんが、少なくとも与党議員はこの勢力図を、大まかでいいですから、アタマに入れておいていただきたいと、国難の折、切に願います。

[お知らせ①]

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ガソリン値下げ国会から4年、政府として「道路特会」廃止へ 岡田副総理「ここまで来たかと感慨」記者会見

2012年01月19日 22時09分26秒 | 岡田克也、旅の途中

[写真]記者会見する岡田副総理、2012年1月19日、筆者撮影(以下同)。

 きょうは岡田副総理の記者会見に行ってきました。

 定例は「火曜日と金曜日の午後3時」が基本。きょうは行政刷新会議があったので、その後の説明(ブリーフィング)を含めた臨時の記者会見ということだったようです。

 場所は財務省の隣にある「合同庁舎4号館」というところで、いつもの「国会議事堂前駅」より一つ手前の「霞が関」駅で降りていきました。ここは、かつて私が担当していた総務庁があった庁舎で、14年ぶりに入りました。私は2009年9月の政権交代直後に外務省の記者会見で質問しましたが、これは1回限り。「日本雑誌協会会員社に載った署名記事が半年で2つ以上に満ちていない」と報道課長から言われて、その後出られませんでした。ちなみに1回限りのときも、他の方のブログなどにあるように、「囚人扱い」されてしまい、私はあまりに滑稽で笑ってしまいました。今回はそれ以来でしたが、内閣府大臣官房広報課さんが事前に警備員にも、受付にも名簿を用意してくださったので、とても気持ちよく入ることができました。

 
[写真]合同庁舎4号館(左)。

 これは霞が関の「潮見坂」という坂の下(財務省側)から、永田町(国会議事堂・官邸)方面を映した写真です。左が合同庁舎4号館。真ん中に国会議事堂が見えます。合同庁舎の影にうっすらと映っているのがかつてのホテルニュージャパン。20年来買い手が付かず解体されず野ざらしのまま赤坂に異様な姿を晒し続けていましたが、現在はアメリカ資本の保険会社のタワーになっています。


[写真]合同庁舎4号館。

 かつて「総務庁北方対策本部」が入っていたこともあり、合同庁舎4号館には「北方の領土 かえる日 平和の日」という看板があります。同じ文言の看板は東京駅八重洲北口など全国の目抜き通りにあります。この合同庁舎4号館の看板も、時折見ていますが、きょう改めて「いつ?」とつぶやきたくなりました。

 記者会見場は、民主党本部と違い、やはり政府機関ということで、特有な緊張感を感じました。記者クラブ員の記者さんからは、固有名詞などの確認がより一層必要になるなどのプレッシャーが伝わってきます。私の頃は、旧総務庁の記者クラブはのんびりした雰囲気で、兼務する官邸記者クラブに資料を持ち帰って、ゆっくり週末に向けて記事を書いていくという雰囲気でした。今はネット速報もあるので、雰囲気が違いますが、どうもこの建物は、私は好きなのかも知れません、けっこうリラックスしていました。

 首相官邸4階の大会議室で行政刷新会議(野田佳彦議長)をすませた後、岡田副総理が合同庁舎4号館4階の会議室に移動して開かれました。なぜそうするのかは私もよく分かりません。

 さて。本題の記者会見のポイントは2つ。党行政改革調査会(中川正春会長)の意見書を踏まえて、特別会計の廃止(一般会計化)などを決定しました。それと、独立行政法人の統廃合などを決定しました。ともに第180通常国会に法案が出ます。行政刷新会議は法的根拠があるし、総理が議長です。あとは法案が国会を通るかどうかということになります。ダメならば、「信を問う」ところまで行く可能性がありますが、とにもかくにも法案を出さないとどうにもなりません。その前の2月・3月の解散はないと、私は考えています。

 「道路特会」と「治水特会」の廃止(一般会計化)が決まりました。4・5兆円が特別会計のサイフから一般会計のサイフに移ります。第169国会の時点では、「暫定税率」の名の下に集めたガソリン税の上乗せ分(当時は1リットル当たり25円に相当)が道路特会を通り抜けると摩訶不思議なことに「道路づくりの大事さを理解してもらうミュージカルの開催費」に化けているというマジックが長妻昭さんらの手で明かされました。ただ、当時は「笑い事」だった気がします。

 これについて、第169通常国会の野党時代の審議が、4年経って、政府・与党として(法案が成立すれば)実現することに感慨はありますか、と質問しました。岡田副総理は「当時は、マッサージ椅子とかいろいろなことが出てきましたけど」「まあ、それもありますがやはり無駄な道路が、一般会計ではなくて特別会計から無駄な予算の執行があった」「社会資本整備特別会計がなくなるということは大きなことだと理解しています」と語りました。

 そこで、「ガソリン値下げ隊は間違いでなかったと思いますか?」と聞いてみました。岡田さんは「最後はガソリン値下げ隊ががんばり過ぎてしまったんですが、予算委員会の議論のなかで、馬淵澄夫・予算委員らが、(歳入である)道路特定財源の問題や、いかに無駄な道路をつくらないかという採算(費用対効果 B by C)の問題の議論が主流でした。そういった議論を思いおこすと、ああここまで来たか、と感慨を覚えざるを得ません」と語りました。

 岡田さんは陛下からは「国務大臣」として認証を受けているだけです。それ以外は、官邸から野田佳彦首相からもらった補職辞令により、「副総理」とか「行革相」とか「一体改革相」という肩書きがついています。

 岡田さんは初入閣のときは、「外務大臣」という補職辞令を1つだけもらいました。外務省には外局もありません。予算0・5兆円だけの官庁です。

 今回は、副総理(内閣法に定める内閣総理大臣の職務代理順位1位者)を入れて、補職辞令が9つもでています。同じ大臣でも、マルチタスクが必要な、まったく違ったおもむきの「政権を担うことの重荷」を岡田さんはいま、直面しています。ぜひ官僚のみなさんは、「○○省事務官」ではなく、「国家公務員」あるいは「日本の官僚(法律上「官僚」という言葉はありません)」として岡田副総理を支えてください。誰のためでもない、日本のためです。国難ですから。

 この記者会見には、内閣府だけでなく、財務省、経済産業省の官僚もいました。質問者は、自動車関連の雑誌の記者さんだと思いますが、「自動車安全特会の自動車検査登録勘定が独立行政法人へ移管予定」になったことについて質問が出ました。岡田副総理は答えられず、壁際の自席にひかえていた財務官僚が入れ知恵に行きました。ここまでなら、国会でも良くある光景ですが、けっきょく財務官僚もペーパーのどこに該当する記述があるか見つけられなかったようで、岡田さんから自席に戻るよう言われて戻りました。岡田さんは「後でお答えします」と答えました。副総理周りにいるような財務官僚が、内閣改造直後とはいえ、説明できないという光景はかなりの衝撃でした。


[写真]一部修正しています。

 14年ぶりにこの建物に入って、やはり官僚(国家公務員キャリア採用組)のレベルが劣化していることを実感せざるを得ない衝撃のシーンでした。例えば、私は「道路特会」、「治水特会」と書いていますが現在の正式名称はそれぞれ、「社会資本整備特別会計道路整備勘定」、「社会資本整備特別会計治水勘定」です。特会を統合して、特会内の別勘定にするという小手先の改革を続けてきたことで、財務官僚や国交官僚が全体を理解できないところまで来てしまっています。しかも、「分かりません!」のひと言が言えずに傷口が化膿したのが、今の永田町・霞が関の現状です。こりゃ、何とも「日本的だ」という表現しかないでしょう、好きではありませんが。

 民主党政権がうまく行かないのは、官僚主導でも政治主導でもなく、官僚のレベルが劣化したからだと思うのですが、それだと責任転嫁ですし、何も前に進まなくなるのでやめておきましょう。余裕がなくなり訳が分からなくなって、「省庁間の連絡」という官僚が最も優位性を持っていた分野がシッチャカメッチャカになっているのかもしれません。でも、しょうがありません。現実を見つめるべきです。とにもかくにも、まずはサイフの透明化と単純化が必要です。「無駄」があるだけ、幸せな国です。「無駄」を整理すれば、オカネが出てくるというのは、GDP世界3位の豊かな国だということです。それと人作りが大事です。

 官僚のみなさん、もう一踏ん張り、がんばってください。外から見れば、これでも官邸や国会は以前より良くなっています。混乱していますが。一部の省の一部の局が情報を外に出さないということはなくなってきていると感じます。官僚のみなさん、もう一踏ん張りです。

 独立行政法人については、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)とUR(旧住宅・都市整備公団)の統合が保留になりました。岡田さんは「URは貧しい方の住まいなどで重要だ」という考えを示しました。そのうえで、「住宅金融事業」については、株式会社化の余地があると示唆しました。こうなると、住宅金融が全銀協加盟の市中銀行と同じ存在になる可能性があり、政府関係機関であるという現在の優位性が失われます。ただ、やはり副総理会見ということもあり、岡田さんは公的に検討しているわけではないと強調しました。この辺は、ある意味、岡田さんも「インテリヤクザ」ぶりがみられて安心しました。国民としても、副総理がインテリヤクザなら最強だし、頼もしい限り。岡田さんもあまり「イメージ」を気にせず地を出せば道が拓けると私は確信します。そういう意味では、「東大法学部出の通産官僚」というイメージを持つ人には、それはまったく違う、むしろ逆です、と私は言いたいです。

 司馬さんが書いています。少佐だけど、General(将官)だったのが秋山真之だったと。generalには「総合的に」という意味があります。海軍軍人というは海軍官僚であり、国家公務員です。そういった時間軸でも空間軸でもグランドデザインが描ける官僚はいなくなったんだと考えます。全滅はしていないとは思います。出身省庁に偏らない人事や、外資系企業などに転出した人材を再採用することなどもあり得るでしょう。とにもかくにも、予算・決算をはじめ、統治のしくみを作り直さないことにはどうにもなりません。政治家も官僚も、本質をとらえ、雑事を捨て去ることが、国難および、それぞれの人生の苦難から抜け出す唯一の道です。

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◎民主党規約・代表選挙規則がついに改定! 党大会、やっと報われた「長い道」

2012年01月16日 17時37分38秒 | 政権交代ある二大政党政治の完成をめざして

[画像]渡部恒三さん、羽田孜さん、岡田克也さん、鹿野道彦さん=Ustreamからキャプチャ。

 予想外の内閣改造で、すっかり疲労してしまい、報道の事前登録をしていたのに、党大会に行けませんでした。1998年4月27日の民主党統一大会以来、14年ぶりに党大会をこの目で見たいと思ったが、奢れる者は久しからず、その栄華は見ずに、通常国会に備えたいと考えます。

 北澤俊美・実行委員長の下、2012年1月16日(月)、民主党2012年党大会がホテルニューオータニでにぎにぎしく開かれました。


[画像]北澤俊美・2012年民主党定期党大会実行委員長。

 北澤実行委員長は「議論は活発に行い、決定には従う。そういう責任政党としての政党文化を確立しなければなりません」と語りました。

 そして、ついに、民主党規約案、代表選挙規則案の改定に成功しました! これは、両院議員懇談会で小沢グループも交えて議論し、先月20日の第543回民主党常任幹事会で決定した案。公正な運営の下、小沢グループも含めた全会一致で承認されました。

 新しい民主党規約の第11条3項では、「代表の任期は就任から3年後の9月末日まで」となりました。ですから、今後、「総選挙による下野」などの理由で代表が途中辞任した場合でも、少なくとも2年以上はしっかりと腰を落ち着けて代表職に取り組みことができます。また「重ねて就任することができる」となりました。自民党は連続して3期以上務めることはできませんが、民主党は「総選挙での国民の信」がある限り、何年でも総理・代表を続けて、国際会議に出席し続けることができます。新しい代表選挙規則第6条4項は常任幹事会の発議、両院議員総会の承認の基、選挙日程を変えることができます。これは一昨年の英国労働党が下野したとき、ブラウン前首相(党首)の後任を5ヶ月かけてじっくり決めて、党再建に取り組んでいるように、長期的なリーダー選びによって下野時の代表(次の首相)を選ぶことが可能になりました。なお、党規約第10条では「本党が政権の任にない場合、党の政策に関して審議、決定するため、『次の内閣』(ネクスト・キャビネット)を設置する」とし、引き続き、民主党は「次の内閣」、自民党は「影の内閣」と名称は違う状態が続きます。

 これにより、政権準備政党(自由主義の野党第1党)としてフロントベンチに座った1995年12月以来17年間繰り返された小沢グループによる選挙違反(ただし公選法適用外)事件にようやく終止符が打たれることになりそうです。

 これに先立つ15日のNHK日曜討論では、副総理である岡田克也さんが「小沢グループと権力争いしているつもりはまったくない。お互い協力して政権交代の実を挙げないと国民のみなさまに申し訳ない」と発言し、民主党内における権力争いの終結を宣言しました。党大会には、小沢一郎さんは出席せず、ごらんのように鈴木克昌・一新会会長(小沢グループ)が党役員としてとりしきりました。また、小沢グループを含めた全会一致で、党規約、代表選挙規則が承認され、成立しました。ですから、これを持って、小沢グループとの闘いは終わりました。

 
[画像]民主党大会を幹事長代理(内定者)としてとりしきる、鈴木克昌小沢グループ会長=Ustreamからキャプチャ、トリミング。


[画像]小沢グループも含めた満場一致で、民主党規約、民主党代表選挙規約が成立した瞬間。

[資料 小沢グループによる選挙違反事件]

小沢グループによる党首選選挙違反の歴史(公選法適用外)

1995年12月(衆院満了まで1年6ヶ月、実際には10ヶ月後)。

野党第1党・第2回新進党党首選(海部俊樹党首の任期満了)

小沢一郎候補 112万票(66%)
羽田孜候補   56万票(34%)

議員、党員以外に「1000円を払った日本国民のハガキによる投票」を実現。大いに関心を呼ぶ。しかし、「小沢一郎」と同じ筆跡のハガキの束が党本部に大量に届く事態に。党首選挙後、米沢隆幹事長が投票用紙の全焼却を指示。非党員支持者や創価学会などに不満が溜まる。旧新生党の有力議員はほとんどが反小沢派(新進党羽田派)を結成。自社さ内閣の震災初動不手際、消費増税に対して、1996年10月の第41回衆院選での政権交代のチャンスを逃す結果に。1996年12月、羽田派(羽田孜さん、北澤俊美さん、前田武志さん、奥田敬和さん)が太陽党を結成し、離党。石井一さんと岡田克也さんは党に残り改革を目指す。

1997年12月(衆院満了まで2年10ヶ月、実際には2年7ヶ月後)
野党第1党・第3回新進党党首選(小沢党首の任期満了)

小沢一郎候補 230票(55%)
鹿野道彦候補 182票(45%)

翌夏に参院選を控え、創価学会系、連合系を中心に無投票ムードがあった。しかし、反小沢派が党改革を訴え、「当選8回、閣僚2回、旧自民党ながら非竹下派(福田派)」の鹿野道彦さんが早期に単独で出馬表明。ダークホースとみられながら、旧羽田派、創価系、連合系などから徐々に支持を集める。結果として小沢党首に肉薄し、「党首に反省を求める」党内世論が明らかになる。しかし、小沢党首は反省せず、政党助成法の基準日を控えた年の瀬に突如、両院議員総会を開き、「新進党解党」を宣言。翌夏の参院選では橋本自民党が地滑り的惨敗で、参院選2連勝(第1会派)の機会を逃した、

2009年5月(衆院満了まで4ヶ月、実際には3ヶ月後)
野党第1党・第12回民主党代表選(小沢代表の途中辞任)

鳩山由紀夫候補 124票(56%)
岡田克也候補   95票(44%)

支持率から政権交代が確実な情勢で、事実上の首相選挙。小沢代表が突然辞任表明しその週の土曜日に選出する日程を発表。良識派が抵抗も、「決まったことを守るのが民主主義だ」という謎の言葉で押し切る。古川元久中央代表選挙管理委員長が両院議員総会中にディベートタイムを取り込むなどの善後策をはかる。鳩山由紀夫幹事長を小沢系が応援。郵政勝ち残り組の衆院議員は岡田副代表陣営がわずかにリード。小沢氏は参院での巻き返しを図り、小沢一郎政治塾出身議員が参議院議員会館に二十人前後の議員を呼び出し、鍵を閉め、支援を確約する文書に署名しない限り部屋から出さないと迫る「監禁事件」が発生。泣き出す議員も。また離党した無所属の前田雄吉・衆院議員が飛脚としてベテランを籠絡。岡田系の躍進に怒った小沢氏は、両院議員総会の最後に登壇しないという大人げない行動に出る。この3ヶ月後の政権交代で、岡田克也さんから幹事長職を奪い返し党の主導権を握り、翌夏の参院選で惨敗する事態に。ねじれ国会となり現在にいたる。

2010年9月(衆院満了まで2年11ヶ月)
与党・第14回民主党代表選(定期代表選)

菅直人候補 721票(59%)
小沢一郎候補 491票(41%)

8年ぶりの定期代表選で、地方議員、党員・サポーターも参加。結党以来初めて、総理大臣が出馬。勝敗を決する1期生議員に対して、小沢氏の議員秘書が、総選挙の際の資金提供に関する領収書など支援に関する文書をみせて、投票を迫る。東京、大阪、札幌での街頭演説会に大量に聴衆を動員し、菅候補をののしる戦術をとるが効果は不明。結果は、41%の得票率の大惨敗。党内での影響力は大幅に低下する。

[資料おわり]

 第2回新進党党首選での屈辱により、太陽党の船に乗り込んだ、羽田孜さん、北澤俊美さん。新進党に残った岡田克也さん。そして、新進党第3回党首選に出馬し、善戦した恨みで、解党という屈辱を受けた鹿野道彦さん。そして、「(第41回衆院議員総選挙で)新進党と書いてくださった有権者(国民)に対する裏切りだ!」と叫んだ岡田さん。無所属(衆議院副議長)として見守った渡部恒三さん。そして、なんと言っても、新進党千葉4区総支部長として浪人中に党を解党され、イチバン苦労した野田佳彦総理・代表。生活・子育てが困窮し、不安で暗い長い道を歩いたのは野田さんなんですよね。最近まで、そのことに気付きませんでした、ごめんなさい。亡くなった奥田敬和さん。政界引退した畑英次郎さんら。

 みんながそろってきょうこの日を迎えました。


[画像]渡部恒三さん、羽田孜さん、岡田克也さん、鹿野道彦さん。


[画像]野田佳彦代表(総理)と渡部恒三さん。

 まさに二大政党制のしくみが完成した歴史的な日となりました。

 なお、民主党規約、民主党代表選挙規則の改定は、鉢呂吉雄さん、細川律夫さん、藤本祐司さんらが取りまとめにあたりました。

 代表選挙規則の第4条では、任期満了の代表選挙では、国政選挙の公認候補予定者(内定者含む)も有権者となりました。また同13条では、国会議員は2ポイント、公認候補予定者(内定者含む)は1ポイントとなりました。これは、任期満了ではありませんでしたが、野党時代の2009年5月の第12回民主党代表選のルールを決めるときの常任幹事会で、北澤俊美さんが提案したアイディアとほぼ同じです。このときは、辞任を表明した当時の代表から「北澤俊美先生の言葉とは思えない」と恫喝され、実現しませんでした。同日の役員会では野田佳彦広報委員長、安住淳・国対委員長代理、長妻昭政調会長代理、福山哲郎政調会長代理らが指を刺され、「お前らは俺の代表在任中にずいぶん文句を言ったな」という趣旨の発言をその時の代表はしたと伝えられています。それから2年半経った与党として実現しました。当時北澤さんは党副代表でした。今も党副代表です。

 野田さんは第180回通常国会について「(ねじれ国会の)参院では、衆院から法案を送って、野党に『この法案が通らないとどうなるか』(迫る)ということも時には示していく」と述べました。昨年末の常任幹事会で提案し、民主党機関誌新年号で広く党員に呼びかけた「北澤3策」の一部採用を代表・総理が表明したものです。


[画像]民主党籍10年以上の功労者を表彰する野田代表(総理)。

 北澤さんは「民主党にはまだまだ若く力強いエネルギーがあります。これを私は信じております。そのエネルギーをいたずらに党内で浪費することなく、国家国民のために燃焼させようではありませんか」と語りました。

[画像]眼帯をした総理を気づかう、北澤俊美さん(後ろ姿)。

 長い道。

 北信越地方で縁故疎開した少年時代を描いた映画や井上陽水さんの曲のタイトルは「少年時代」ですが、もともと柏原兵三(かしわばら・ひょうぞう)さん自伝的小説です。第58回芥川賞を受賞した柏原さん。北信越地方での苦労がたたったのかは存じ上げませんが、38歳という若さで亡くなりました。そのため現代では、その名前を知る人はまれでしょう。この自伝的小説のタイトルは「長い道」。羽田さんと北澤さんの長い道。ホントウに長かった。「国民の衆院選での投票行動による政権交代が可能な二大政党制」というりんごの実はしっかりと残りました。



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「次期衆院選は無効」か 東大法学部名誉教授・元総長の佐々木毅さんが警告

2012年01月15日 23時11分24秒 | 第46回衆院選(2012年12月)大惨敗


 通常国会召集前なのに忙しくて、与党というのは、豆腐屋さんのように店開きの前の仕込みが大事なので、タイヘンだなあと感じます。

 2012年1月15日付の東京新聞政治面(4面)に日曜コラム「時代を読む」。東大法学部名誉教授で元東大総長の佐々木毅さんが第46回衆院選について、新しい国勢調査(2010年10月1日実施)「に基づいて定数是正を行わなければならないが、延び延びになっている。国会がこれまでの惰性を引きずり、裁判所の姿勢を甘く見るのは重大な結果につながりかねないというのが私の見解である。仮にも選挙の無効などということになれば、議会制は事実上崩壊につながることになろう」として、定数是正なしに第46回衆院選を行った場合、「選挙の無効」があり得ると警鐘を鳴らしました。

 最高裁判所大法廷は、平成22(行ツ)207号事件(選挙無効請求事件)で、平成23年3月23日(水)、に請求を却下しながらも、内閣府の「衆院選区割審」設置法の「衆院定数の47都道府県への基礎配分を1与えるとした1人別枠方式」について、憲法違反として、改善されない場合はいずれは選挙の無効もあり得ると強く警告しています。

 この判決文は、下のリンク先から、全文取り出して読むことができます。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81179&hanreiKbn=02

 この判決と同時に、内閣府におかれた区割り審(衆議院議員選挙区画画定審議会)の村松岐夫・京大法学部名誉教授らは、10年に1回の区割り変更の作業をストップしています。区割り審は、1人別枠方式を廃止したうえで、さらに2010年国勢調査の結果を反映した300選挙区の区割りを、2月24日(金)までに内閣総理大臣に勧告し、そのままの内容を衆議院と参議院で改正公職選挙法として成立させなければなりません。ただ、その下となる区割り審設置法の第3条第2項から「1人別枠方式」の条文を削除し、第4条(勧告期限)の見直しを速やかにやる必要があります。さもないと、4月22日(日)に衆議院の補欠選挙があった場合(現在は予定はないが、3月15日までに小選挙区選出議員に死亡や辞職があった場合は実施される)は、選挙無効に関する最高裁特別抗告がおきると思われます。

 また、区割り見直しがないまま、衆議院解散をするのは、サンフランシスコ講和会議に出席した国民協同党総裁だった苫米地義三・衆院議員が起こした裁判での「統治行為論による事情判決」から、解散そのものは有効だと考えられます。しかし、第46回衆院選が無効となる特別抗告があれば、日本に衆院議員が一人もいない状態が長期化する可能性があり、首班指名もできなくなります。当然、歳費ももらえません。

 このような極めて重要な状態です。

 百里の道も一歩から。国家百年の計が見える政治家は、本来こういった足もとの課題も処理できると考えます。

 まずは、0増5減の細田案で、定数是正を速やかに衆参で成立させる。定数削減はそれから再度仕切り直すべきだと私は考えています。

 平成5年の細川内閣による政治関連3法(改正公職選挙法、改正政治資金規正法、政党助成法)を実現し、小選挙区2大政党制を日本に実現させた民間における最大の功労者は「民間政治臨調」(亀井正夫会長)です。佐々木さんはその後継組織である「21世紀臨調」の主要メンバーであり、選挙制度には極めて強い影響力を持っています。政権交代後の2009年秋には民主党幹事長だった小沢一郎さんから国会法改正案などに関する素案作りを依頼されています。

 小沢一郎さんの支援を受けて2010年6月の第13回民主党代表選(与党としては初の代表選)に出馬した樽床伸二・幹事長代行が各党協議会にのぞんでいますが、まとめられず、日本のデモクラシーの重大な危機が続いています。

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陛下、「2012年1月24日召集」の第180通常国会の召集の詔書を発布

2012年01月15日 20時53分08秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]新年一般参賀(この日3回目)にのぞまれる両陛下、2012年1月2日、皇居宮殿、宮内庁ホームページから。


 天皇陛下は13日、詔書を発せられました。「日本国憲法第七条及び第五十二条並びに国会法第一条及び第二条によって、平成二十四年一月二十四日に、国会の常会を東京に召集する。」1月13日の閣議で決定し、13日付官報に載りました。詔書には内閣総理大臣の野田佳彦さんが副署しました。



 ところで、独立行政法人国立印刷局は、定期的な停電による設備のメンテナンスとして、金曜日から日曜日昼まで、「インターネット官報」の提供をとめていました。事前のメンテナンス日程とはいえ、国会法第1条は通常国会は召集の10日前までに召集詔書を官報に載せなければいけないとしているのですから、この時期だということは分かるはず。あまりにも、トータルデザインに欠いた組織運営と言わざるを得ず、これなら、以前のように財務省印刷局に戻した方がいいように感じます。

 とはいえ、国会法の規定などから、この日の閣議で通常国会召集の詔書を決定しなければいけないのは確実でしたから、この日に内閣改造もあわせた野田さんの政治センスは優れていると感じます。この日曜日からは民主党の2012年定期党大会(北澤俊美実行委員長)の全国幹事長会議、全国政調会長会議がおこなれ、あす1月16日には党大会で、規約と代表選挙規程を改正します。しっかりと準備を整えて、さあいよいよ通常国会の幕開けです。

 第180通常国会は、2012年1月24日(火)召集で、会期は150日間なので、6月21日(木)が会期末になります。この150日間には、統一地方選などの大型選挙は予定されていません。おしりに参院通常選挙もありません。また、4月22日(日)の衆議院・参議院の統一補欠選挙も現在は欠員がいませんので、このまま3月15日(木)までに選挙区選出議員の死亡や、首長選転出や不祥事による辞職がなければ、行われない見通しです。ですから、じっくり、たっぷり、ローメーカー、法律工場としての仕事に専念できます。それが再選への近道であることは言うまでもありません。あるいは与党内野党(小沢グループ)は地方選も代表選も参院選も何もないので、この国会中に党内主導権を取り戻すチャンスはありません。

 衆議院規則1条は「議員は、召集詔書に指定された期日の午前十時に、衆議院に集会しなければならない。」としています。参議院規則1条もほぼ同内容です。このため、衆議院インターネット審議中継では、24日の本会議は「10時に開議」と表示されますが、実際には定刻通り午後1時に始まるケースが多いです。参議院は規則通り、午前10時から本会議を開き、内閣改造などによる、委員長人事など「院の構成」からスタートし、休憩。衆院本会議で、野田佳彦首相と安住淳財務大臣が「今年度第4次補正予算案」提出に関する演説をした後、参本でも同内容の演説をすることになります。

 この日の官報では内閣改造の人事も載っています。こういうのを見たいのに、2日間も官報が見られない状態とは、一事が万事、たるんでいるという気がします。景気対策のためには、まずは「国のしくみを直していく」ことが肝要だと感じます。


 

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「それぞれの政治家の心の中の敵とのたたかい」野田・岡田“男子の本懐”内閣スタート

2012年01月14日 22時06分56秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

 野田・岡田内閣が2012年1月13日(金)午後2時に親任式を受けてから、1日以上が立ちました。少し、城山三郎さんの『男子の本懐』、浜口雄幸・井上準之助の民政党内閣に似ているのかなあという気がします。

 『男子の本懐』で印象的なのは、東京駅と駒本(こまほん)小学校。東京・文京区の駒込と本郷の間にある「駒本(こまほん)小学校」。少子化の影響で廃校になる予定だったようですが、地元住民の方の運動で存続しました。東京駅は3階建てにパワーアップ工事中。およそ100年経っても、残っています、それが政治です。

 
[写真]男子の本懐のラストシーンに出てくる駒本小学校、2008年ごろ?、筆者撮影。

 14日(土)の田勢康弘の週刊ニュース新書で、野田佳彦さんは「政権交代してからあっという間で、日々格闘している」としました。田勢さんは岡田克也さんについて、「岡田さんは人間関係で物事を決めない極めて珍しい政治家だ」と評しました。そして消費税増税と反増税は二項対立ではなく、

 「それぞれの政治家の心の中の敵との闘いだ」

 と総理は言いました。

 岡田副総理は13日午後7時ごろ、首相官邸での就任記者会見で、閣僚の記念撮影の後のカンパイの音頭を岡田さんがとったことを明かして、「この内閣は未来に対し、極めて大きな責任をもっている」と述べました。その後の、内閣府(たぶん合同庁舎4号館の方だと思います)での記者会見では、「日本が沈みつつあることを実感している。これに歯止めをかけて、将来の若い世代が希望と期待をもって、生活できるようにしなければならない」と述べました。

 野田総理も14日午前11時のニュース新書で、「この国に生まれてきて良かったと思える国にして、この国で暮らしていきたい、と思える国にする」としています。

 二枚看板は、長期的な財政展望だけでなく、この1月の新年会での経営者の年頭所感などを聞いて、短中期的な景況感にもすぐれているという感想(私の景況感と一致しているという意味)を持ちました。

 余裕のない日本、岡田さんは、官邸に入る1時間前に、「岡ダッシュ(岡田さんの全力疾走)」を見せました。岡ダッシュは、街頭演説会の応援弁士として入る際に、時折見せる演出で、岡ダッシュのルートは、事前に地図をみた岡田さんが選んで、担当者に指示している、ということもあるようです。

 岡田さんは午前10時55分、突如、衆院第1議員会館を飛び出し、地下道を岡ダッシュ。事務所、警備などのおつきは一切おらず、記者十数人が一緒に走りました。国会閉会中で上京議員がほとんどいないので、変な目で見る人はまったくいなかったように見受けられました。そして、第2議員会館の民主党政策調査会の会議室に午前11時ギリギリで入りました。

 
[写真]民主党行革調査会コアメンバー会議、2012年1月13日(金)午前11時、衆議院第2議員会館、筆者撮影。

 ここでは、行革調査会のコアメンバー会議が開かれました。岡田さんの隣は、階猛さん、手前は1期生の岡田康裕さんと玉木雄一郎さん、向側が津村啓介さんです。行革調での役職は階さんは事務局長(兼)行政管理・効率化ワーキングチーム座長、岡田康裕さんが決算・行政監視ワーキングチーム事務局長、玉木さんが特別会計改革ワーキングチーム事務局長です。岡田康裕さんは兵庫11区で渡海紀三郎・自民党支部長(元文科相)との前哨戦マッチレースを闘っており、万難を排しての上京でした。会議は、藤村修官房長官の閣僚名簿読み上げ記者会見が始まっても続きました。会議が始まって30分頃には、津村さんが会場内から「民主党行政改革調査会コアメンバー会議なう。話題の人、岡田克也会長もご出席。業界や役所の意向がにじむ一部の部会報告に対し、厳しい叱咤と注文を連発されている。岡田さん、エンジン全開という感じ。政府の中枢で、ぜひ行政改革を大きく進めてほしい。」とツイートしました。

 岡田さんは官房長官会見が終わった11時55分ごろ、会議室を出て、同会館から直接、官邸に向かいました。この際は、衆議院事務局が所有し衆議院職員が運転する「民主党・無所属クラブ」割り当ての公用車を予約して、乗っていったようです。さすがに岡ダッシュで官邸に向かうことはありませんでした。

 
[画像]改造内閣のねらいを記者会見する野田総理をみる、岡田副総理、政府インターネットテレビからキャプチャ、2012年1月13日午後6時ごろ、首相官邸。

 岡田副総理は、執務室を総理、官房長官、副長官らと同じフロアに持つことになったようです。秘書官は、政務秘書官に加えて、総務省、財務省、厚労省、内閣府から1人ずつ出向したようです。総務省出身者が行政管理庁・総務庁採用者なのか、内閣府出身者が総理府採用者なのかどうか分かりません。旧大蔵省と旧自治省、財務省と厚労省、厚労省と総務省自治3局などは霞が関でも仲が悪くて有名なので、秘書官同士の連携が気になるところ。出身省ではなく、歴史に仕えているのだという気構えがほしいです。歴史に見られているのだと。岡田さんはこれまで、外務省という1つの会社の政務三役の経験しかありません。複雑に利害が絡み合う内閣官房や内閣府の職員裁きは未体験です。岡田さんというのはマルチタスクが苦手なので、懸念材料です。ただ、岡田さんは民主党幹事長(第3期)のころに、小沢一郎先任幹事長による「剛腕」な人事異動を踏襲しながら、小沢系職員を幹事長室から選対に移す一方で、小沢選対の論功行賞者である事務局長に、党広報委員会の事務部長を兼ねさせています。党広報委員会はテレビCM、新聞広告などをめぐる広告代理店とのつきあいの関係から、総選挙時には数十億円という莫大な「利権」(しかも政府ではないので規制法がない)がありますが、岡田幹事長は小沢先任幹事長が昇格させた事務局長を信頼できる人物として、兼務させたとみられます。このように、小沢系とされていても、やんわり配置換えしたり、逆に重要なポジションを任せたりします。岡田さんの部下は一定の緊張感を強いられますが、そもそもゴマすりはばれるし、人を見る眼があるので、いずれにしろ、なるようにしかならないので、思い切って仕事をすればいいのではないでしょうか。ただ、岡田副総理は、いったん人を信頼すると、あまりにも信頼しすぎてしまいます。だから仲が良かった小沢一郎さんや河村たかしさんに裏切られたときには凄まじい怨念で復讐に出るのでしょう。しかし、国家国民のために奉じていれば、なじられることはないので、部下は思い切って仕事ができる、と私は岡田副総理を見ています。

 岡田副総理は、14日(土)も内閣府(たぶん合同庁舎4号館の方)で6時間ほど、ブリーフィングを受けました。15日(日)は朝9時から15分ほど、「NHK日曜討論」に出るので、注目です。16日(月)は自民党の大島理森副総裁や、石原伸晃幹事長にあいさつに行きます。ところで、岡田さんは1993年6月の自民党離党後、一回も自民党本部に入ったことがなく、月曜日のあいさつが国会内になるのか、自民党本部内になるのか注目しています。

 とにもかくにも、日本のおかれた現状を考えたら、岡ダッシュ!
 私たち良識ある有権者、オピニオン・リーダーも、有権者の半数以上を説得できるよう、ダッシュです。もうかなりデッドラインは近づいてきています。



 

 NHKニュースによると、菅直人さんがきょう、原発事故調査委員会のヒアリングで、元検事総長・但木敬一さんらのヒアリングを受けたそうです。すべて政治家は歴史に見られていて、経験を語るのは歴史への責任です。あと数回ヒアリングがあるそうです。菅総理もしっかりと洗いざらい素直に、いっさいの嘘なく、話して欲しいと考えます。

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野田改造内閣の世襲率5%で横ばい、二世率33%、参院率27%に上昇

2012年01月14日 17時33分04秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革

[写真]野田改造内閣、2012年1月13日(金)、首相官邸ホームページから。

 2012年1月13日(金)に発足した野田改造内閣(第1次野田第1次改造内閣)では、18人の閣僚のうち、選挙区世襲議員率が5%で横ばいだったものの、二世議員率が33%に上昇しました。参院議員率は27%に上昇し、輿石東民主党参院議員会長(党幹事長)の権勢を見せつける格好となりました。

 18人のうち、世襲議員は再任の鹿野道彦農相。閣僚になれなかった父の山形市などの選挙区、父の秘書を経てから世襲し、当選しています。第44回郵政選挙で落選していますが、通算当選11回。

 二世議員は、鹿野農相に加えて、初入閣の田中直紀防衛相、自見庄三郎・金融・郵政改革相ら6人。

 田中直紀防衛相は田中角栄元首相の娘婿で、当初は福島3区から衆院に当選していましたが、落選後国替えし、現在は参院新潟選挙区。田中ファミリーのバス・タクシーの「越後交通」の支援も得ている二世議員。
 前田武志国交相の祖父は、前田勇・貴族院議員です。議会制度百年史によると、前田勇さん男爵は明治12年(1879年)生まれ、本籍地は奈良県、陸軍士官学校卒の陸軍大佐。第一師団の副官、盛岡連隊区司令官などを歴任。このほか、「関東軍副官」の経歴があるので、あまり前田さんは公にしていないのかもしれません。昭和12年(1937年)1月に貴族院議員となり、昭和21年4月の貴族院廃院まで務めました。

 自見さんは親戚から時間をおいて、北九州市の衆院中選挙区から初当選。郵政相経験後の第44回衆院選で落選し、参院の全国比例に転じています。
 玄葉光一郎外相の奥さんのお父さんは県知事で、玄葉さんの実家は造り酒屋。
 安住淳財務大臣の実父は選挙区内の元町長。
 このほか、岡田克也副総理(三重)の奥さんのお兄さんが愛媛県選出で村上水軍の末裔の村上誠一郎・衆院議員、実父はイオン創業者。ちなみに村上さんも元行政改革担当大臣です。村上さんは第2次小泉内閣で2005年8月8日の解散の閣議決定に加わっていて、閣僚適齢期とは言え政権交代の可能性があった民主党の岡田克也代表(当時)への人質として小泉首相が入閣させていたという歴史的観測が有力となっています。

 枝野幸男経産相(埼玉)はお父さんが渡辺美智雄(栃木)元副総理の後援会長経験者。

 小宮山洋子厚労相の実父が元東大総長・成城学園長の加藤一郎さん。小宮山さんの選挙区内に成城学園があります。

 参院議員は前田武志国交相、自見庄三郎金融・郵政改革相、平野達男復興相兼防災相に加えて、小川敏夫法相、田中直紀防衛相の初入閣で、27%となり、極めて高い水準。「衆参ねじれ」を印象付けることになりました。

 なお、政権交代直前の、自民党の麻生改造内閣は、世襲率は67%、二世率は83%、参院率は16%でした。
      これに比べると、民主党の野田改造内閣は、世襲率が5%、二世率が33%、参院率は27%(再掲)ですので、開かれた政治は実現していることになります。

 これとは対称的に、官僚や政治記者では、世襲や二世が増えています。このため、「先代からのつながり」、「東京の私立中高一貫校同窓生」が少ない民主党議員は不利になっている側面が顕著になっています。

 なお、1年半前の第22回参院選では、当ブログは東京選挙区の方は「小川敏夫さん」、全国比例では「前田武志さん」を推薦しました。その2人が法相と国交相という重要閣僚を務めることもあり、私もこの内閣と心中する構えです。

[関連エントリー]2009年7月1日

麻生内閣の世襲率は67%、二世率は83%に上昇(2009年7月1日)

麻生内閣の“二世議員率”は61%、“世襲率”は72%(2008年9月24日)
 

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岡田克也さん、民主党行革調査会のバトンを小沢グループ議員らに引き継ぐ

2012年01月13日 05時26分48秒 | 第180通常国会(2012年1月~9月)一体改革



[写真]民主党行革調査会事務局長の階猛衆院議員=小沢グループ=と行革調査会長の岡田克也さん。

 岡田克也さんが副総理になることになりました。同一政党の総理の下で副総理になった人はその後、総理になった例はあまりありません。で、私は37年生きてきて、総理になって欲しい政治家は2人いたわけです。改革フォーラム21(自民党羽田派)結成から、わずか半年余りで、擬似的に政権交代し、「羽田副総理」となりました。このとき、新生党党首を空席にしました。ここで、代表幹事(小沢一郎氏)にうまくやられてしまい、その後の羽田総理は2ヶ月間で終わってしまいました。さらに「改革フォーラム21」が知らない間に乗っ取られていました。あまり「副総理」という響きに良い思い出がありません。

 総理からの入閣要請を2度断ることは自民党では許されませんでした。岡田さんも、国益、国民益のために自らの総理の座を捨て、副総理として奉公することにしたのでしょう。私も、国難克服のため、ここで自らの身命を削ってでも、100年先の日本のために、りんごの木を残そうと決意しました。

 岡田さんが会長を務める、民主党行政改革調査会は、発足1ヶ月目の前日となる、平成24年1月12日(木)夕方、国会内でことし初の総会を開きました。会議前のアタマ撮りでは、岡田さんが、事務局長の階猛(しな・たけし)さんを従えて、政府側説明席に座る、奥村展三、森裕子両文科副大臣に話しかける場面がありました。おそらく文科省が所管する独立行政法人(原子力含む)の整理統合の件だろうと推測します。奥村さんは前の「一新会」会長代行、森さんは旧自由党出身、階さんは岩手1区。小沢グループが勢揃いの印象でした。

 
[写真]階さん(グレーの背広)を従えて、岡田克也さん(左側の紺スーツの背中の男性)が森裕子さん(赤い女性)、奥村展三さん(人物の陰)の両文科副大臣に話しかけた=筆者撮影。

この後、階さんの司会で総会が始まりましたが、岡田さんは冒頭のあいさつを断りました。


[写真]階さん、岡田さん、行政刷新大臣の蓮舫さん、内閣府副大臣の中塚一宏さん、内閣府大臣政務官の園田康博さん(途中で切れてしまいました)=筆者撮影。

 このほか、総会には、行政刷新担当大臣の蓮舫さん、行政刷新担当の内閣府副大臣の中塚一宏さん、政務官の園田康博さんも出席しました。階さんは衆院決算行政監視委員会の理事ということから、行革調査会事務局長に起用されたようです。岩手1区公募候補の階さんですが、藤井裕久さんの東大野球部の後輩というつてもあり、岡田さんに良く面倒をみてやってほしいという趣旨の申し伝えがあるようです。階さんの対抗馬の女性の自民党支部長を見たことがありますが、階さんは小沢グループでも再選の可能性が高いように感じます。中塚さんも小沢グループですが、岡田さんとは新生党時代からのつながりがあり、中塚さんへの期待は強いようです。

 行革調査会の役員は次の通りです。

 会長、岡田克也さん。副会長、大島敦さん、長妻昭さん、城島光力さん。事務局長、階猛さん。筆頭事務局次長、行田邦子さん。事務局次長、大島九州男さん、岡島一正さん、岡田康裕さん、緒方林太郎さん、小川淳也さん、後藤祐一さん、空本誠喜さん、玉木雄一郎さん、白眞勲さん、花咲宏基さん。オブザーバー、中塚一宏さん。

 総会終了後、岡田さんは十数人以上の記者に囲まれながら議員室に戻りました。ここには、階事務局長が大あわてで駆け付けたほか、行田邦子筆頭事務局次長、岡島一正さん(調査会の下部組織、特別会計改革ワーキングチーム座長)の3人が入りました。財務省幹部もいましたので、提出が迫っている特別会計改革法案を中心とした行革調査会のひきつぎだったんだろうと考えます。このうち、階さんのほか、岡島さんも小沢グループです。また行田さんは、私はそういう認識はありませんが、先日の小沢グループ(新しい政策研究会)の会合に出席したと報じられています。600万人が暮らす埼玉県全域で組織がないのに活動する公募落下傘参院議員。行田さんは岩手県に縁があり、大槌町の親戚4人が大震災で「家だけでなく命まで流されました」(第179臨時国会)とのことなので、広い心で見たいところです。行田さん、岡島さんは、岡田幹事長(第3期)の下、副幹事長を務めていました。

  
[写真]民主党行革調査会の階猛・事務局長、行田邦子・筆頭事務局次長、岡島一正・事務局次長。

 岡田さんの行革調査会長の仕事はわずか1ヶ月間となりました。しかし、初めから党内資源をいかして、岡田さんがまとめ上がるという色彩が強いしくみでした。岡田さんは幹事長時代に、「脱小沢」にこだわる菅直人首相(代表)を説得して、副大臣や政務官に自ら具体的なポストも含めて、小沢グループ議員を入れています。とくに、大震災で、橋本行革以降、廃棄物行政を司る環境省が莫大な災害廃棄物の発生と処理という、法律が想定していない事態に見舞われた際には、小沢グループの樋高剛・環境政務官が脚を使って被災地に何度も入ったことを岡田幹事長は高く評価していたそうです。


[画像]樋高剛・環境大臣政務官(当時)、大震災発生翌月の2011年4月。

 岡田幹事長が党員資格停止処分を倫理委員会に諮ったのは「小沢一郎さん」であり、「小沢グループ」ではありません。小沢グループの総力も結集して、民主党は3党協議体制に戻り、解散風を止ませなければなりません。諸懸案を国会で処理することで、日本が前に進むことにつながります。

 岡田行革のバトンは、より若い世代も分有することになりました。

 ところで、岡田副総理が行革担当に加えて、社会保障と税の一体改革担当大臣を兼任することになった場合、衆参内閣委員会に加えて、自民党が衆参財金委員会でも所信表明をするように迫ってくるかもしれません。しかし、前任の与謝野馨大臣や、古川元久大臣は財金委員会では答弁していませんから、そのようなことを持ち出すのは、形を変えた審議拒否です。責任政党としてのふるまいではありません。財金委員会は財務大臣と金融担当大臣、民主党と国民新党の2大臣がいつも出席し、総括質疑には総理も出席するのです。だから、社会保障と税の一体改革担当大臣が出席する必要はないと考えます。

 
[写真]兵庫3区選出の衆院議員、土肥隆一さん。

 土肥隆一さん(当選7回)が早く民主党に復党して、閣僚候補になることを願っています。

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