おととしの第180通常国会で、民主党、自民党、公明党が2012年6月15日(金)に結んだ3党合意にもとづく臨時福祉給付金に関する法律をつくらなかったことが背景となり、5億円の国費が無責任に無駄になりました。
3党合意の1ページ目につけられた確認書3点のうち、2番目の「低所得高齢者・障害者等への福祉的な給付に係る法案は、消費税率引き上げまでに成立させる」としていました。臨時福祉給付金として、1人1万円、年金受給者には1人1万5000円を支給することととし、平成25年度第1次補正予算(2014年2月7日金成立)に盛り込まれました。しかし、予算措置にとどまり、民自公3党はこの間、一貫して衆参で過半数をはるかにしのぐ議席数を持ちながらも、政府は法案は提出することはありませんでした。
きょうの報道では、日本年金機構から市町村にくぼった対象者リストにミスがあり、10万人が間違った「加算対象」となったようです。この10万人には、加算金となる5000円は、「今からリストを修正すると混乱する」として、厚労省局長通達を改正するようです。これにより、5億円の国費が余計に支出されたことになります。もちろん、加算金を受け取った10万人に罪はありません。しかし、予算措置でしかなく法律がないため、年金機構、厚労省、市町村のいずれも、法的責任は問われないことになります。
ちなみに3党合意の確認書3項目のうち、1項目目の「今後の公的年金制度、今後の高齢者医療制度にかかる改革については、あらかじめその内容等について三党間で合意に向けて協議する」については、社会保障制度改革国民会議報告書(きょねん8月)と社会保障制度改革プログラム法(昨秋臨時国会成立)、3項目目の「交付国債関連の規定は削除する。交付国債に代わる基礎年金国庫負担の財源については、別途政府が所要の法的措置を講じる」は、政権交代後の平成24年第1次補正予算で安倍内閣が「年金交付国債から年金特例公債へのつけかえ」として実現しており、この2項目目だけ実現していませんでした。
この件に関して、筆者が2014年4月14日(月)の民主党代表定例記者会見で質問したところ、この時私が3党合意書を見ながら質問したこともあってか、海江田万里代表(ネクスト総理)は「宮崎さんよくお調べいただいたと思いますが、確かに私どもは中身についてきちっと法律対応ということをお話をしましたが、実際に行われたのは予算措置であります。ですから、その予算の審議の中で私どもは本当に一回こっきり、しかも1万円ないしは1万5000円でいいのかということは再三追及してきたところであります」としており、3党合意に関する当事者意識の薄さを感じさせました。
3党合意に関しては、政権交代後も、民主党の野党内でのヘゲモニーにつながるとの観測がありましたが、昨夏の第23回参院選での民主党大敗による衆参ねじれの解消で、ほごにされたとの認識があり、社会保障と税制改正の2つの分野の党内での人事配置について、民主党党内に異論があり、臨時国会前の人事異動の一つの焦点になりそうです。
また、海江田執行部らオリミンが勢が、小選挙区に強い旧新進党勢をないがしろにしているとの不満も、9月に予定されているとされる人事に前後して噴出する可能性も指摘されています。
臨時給付金、本来対象外の10万人に加算 ミスで5千円(朝日新聞) - goo ニュース
4月の消費増税に伴う低所得者向け「臨時福祉給付金」について、日本年金機構が作成し、市区町村に配られた対象者リストの一部にミスがあったことがわかった。厚生労働省が7日明らかにした。年金受給者らは給付金が5千円上乗せされるが、本来なら加算対象にならないはずの約10万人分を含めてしまっていた。今からリストを修正すると混乱するため、同省はこの約10万人にも加算金を支給する方針だ。
この給付金は、住民税の定額部分(均等割)がかからず、課税された家族に扶養されていない人が対象となる。1人あたり1万円が支給される。年金受給者やひとり親家庭などの児童扶養手当を受給している人(約1200万人)には5千円が上乗せされ、支給額は1万5千円となる。
ミスは、日本年金機構がつくった年金受給者の対象者リストにあった。本来は原則として今年3月の年金を受け取っている人が加算対象だった。だが、4月以降に新たに年金を受け取り始めた約10万人も、誤ってリストに含めてしまったという。