[画像]森まさこ自民党参院議員、2011年10月26日、参議院インターネット審議中継から。
【第179臨時国会 2011年10月26日(水) 参議院法務委員会】
「復興予算」というのはおおすじ、平成23年度第3次補正予算のことです。2011年10月27日(木)に衆参本会議での財政演説で審議入りし、11月21日(月)に成立しました。復興債を発行する復興財源確保法(179閣法4号議案、平成23年法律117号)など関連法が11月30日(水)に成立した一連の「3点セット」(復興債、復興庁、復興特区)を具体化した予算です。この当時すでに、「復興予算」という表現がされていました。基本的には公明党のプランが骨組みとなり、民主党、自民党、公明党の3党合意により参院では「賛成225、反対6(共産党)の賛成多数」で成立しました。
この提出前日の26日(水)の参議院法務委員会では平岡秀夫法相への一般質疑が行われました。この中で、福島県選出の自民党の森まさこさんが次のように語っています。
「3次補正の中身を見ましたら、12兆のうち8兆が震災と言っておきながら、被災地への予算ではない全国防災とかいっぱい入っておりますし、この法務省の予算でいっても、今から言う被災地の治安の問題も入っていないし、福島県民の損害賠償の法テラスの法律扶助の予算も入っていないし、一体何のために2か月間無駄にしたのかなというとても残念な気持ちでございます」
このように、全国防災対策費が被災地向けでないと指摘しています。2ヶ月間無駄にしたというのは、小沢一郎氏が主導した「菅内閣不信任政局」をめぐる6月1日からの混乱の収束と平成23年度特例公債法の成立とひきかえに、民自公が合意した「辞任3条件」にともない、菅直人首相が内閣総辞職を表明した8月26日からの2ヶ月間という意味です。
森さんの質疑によると、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故にともなう避難区域の治安は「もう泣いてしまって、地獄のようだった。その中に大変な犯罪が多数起きているんです」とし、半年間で避難者の住宅の犯罪被害は30倍になり、50軒に1軒が被害にあい、東電に賠償を要求したところ「悪いのは泥棒だとして一切賠償に応じていない」そうです。さらに、「性犯罪も起きて、避難所に婦人警官が私服で泊まり込むということもありました」とのことで、地獄のような実態です。
この部分の議事録は下につけました。なお、参議院インターネット審議中継でも、(このエントリーの初投稿時点では)見ることもできます。なお参院福島選挙区は4増4減の減員対象となっています(参院で可決、衆院で継続審査、180参法36号)。福島県では、金子恵美(かねこ・えみ)さんが地味ながらとてもよくがんばっていて、復興大臣政務官(兼)内閣府大臣政務官をつとめています。
谷垣禎一・自民党総裁は、10月31日(月)の衆議院本会議で「三次補正で計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり」、「全国防災対策経費の定義は何か、単なる公共事業が紛れていることはないのか」と述べ、全国防災費が全国で行われる単なる公共事業であるとの認識を持っていたことがハッキリ分かります。さすがに宏池会総裁だし、野田さんと「ケミストリーがあう」本筋を見すえた政治家です。
森さんと同じ日の衆議院厚生労働委員会で安倍派四天王(清和会四天王)とよばれた中国地方選出の政治家の世襲議員(娘婿)は「今回の復興の関係では、被災地だけではなくて、全国防災という観点もあります」と述べています。清和会の安倍総裁誕生にともない総裁特別補佐を務めています。その前日には、鹿児島県選出の民主党衆院議員が災害対策特別委員会で「我々のところでも日向灘というところでよく地震があったりする」「この3次補正の中でも全国防災として2600億強の予算がついているわけです」と指摘しています。この人は非主流派でしたが、今月、政務官になりました。
wikipediaによると、森まさこさんは清和会ということで、残念な思いです。なぜ森さんの声が自民党内で封じられたのか。それを自民党は語る必要があるのではないでしょうか。
責任ある政治、健全なる古き良き自民党を体現していた宏池会の谷垣総裁がひきずりおろされ、自民党はふたたび清和会に乗っ取られました。税金乞食、解散乞食の清和会自民党に日本を任せられません。そういう悔しさでいっぱいです。国難にあたって、国家財政を福島など被災地に集中できずに全国防災費に敷衍化してしまうようでは明治維新以来の経世済民、日本の国家戦略の否定です。そして同時に、30年遅れで始まった、代議制民主政治の危機でもあります。
猛省を促します。そして、国会でも、行政刷新会議でもない。国民の出番が近づいています。
[国会会議録検索システムから引用はじめ]
(前略)
○森まさこ君 御就任から二か月が過ぎようとしております。私、なぜ今冒頭このようなことをお聞きしたかと申しますと、私、千葉景子大臣のころからずっとこの法務委員会で自民党の筆頭理事をさせていただいておりますけれども、大臣所信のたびにむなしい思いを感じているものですから質問をさせていただいたということなんですね。
民主党政権になって二年ちょっとですか、平岡大臣を入れずに計算しますと、お一人当たり在任期間が五・八か月、約五・八か月と半年にも満たないわけでございます。ですから、大臣所信のたびに質問をさせていただいて、法務大臣のそれなりのお考えというものをいただいているわけでございますが、これがなかなか政策に反映されないうちにまた次の大臣になってしまう。平岡法務大臣も約六か月の在任期間だと仮定いたしますと、もう既に二か月が過ぎてしまった。やはりもっと早く、就任直後に大臣の所信を伺いたかったわけなんです。
今日は、私、被災地の福島県でございますので、福島県の原発地域の空き巣被害が大変な問題になっております、このことをこの後質問をさせていただくんですけれども、平岡大臣の前の江田五月大臣に何回も質問しているんですよ。それが、もう被害が増大する一方なんです。しかも、看過できない事態もいわき市で起きております。ですから、私は早く大臣所信をいただきたかったなと思うんですが、野田総理が任命してすぐに国会を閉じてしまった。それで、私たち、平岡大臣に所信を伺って、そして、そこでいろんな、大臣ってどういう人なんだろう、何を考えて、法務行政どう進めるんだろうと質問をする機会もなかったし、前回からの引継ぎ事項を注文する機会もないうちに二か月が過ぎちゃったんです。
それは、補正予算を組むから忙しいからという理由だったから、震災のための補正予算を組んでいただけるのであればやむを得ないかなと思って待っておりましたが、この間出てきた三次補正の中身を見ましたら、十二兆のうち八兆が震災と言っておきながら、被災地への予算ではない全国防災とかいっぱい入っておりますし、この法務省の予算でいっても、今から言う被災地の治安の問題も入っていないし、福島県民の損害賠償の法テラスの法律扶助の予算も入っていないし、一体何のために二か月間無駄にしたのかなというとても残念な気持ちでございます。
大臣、このことについて、まず大臣のお考えをお聞かせ願えませんか。
(中略)
○森まさこ君 今のことを私から詳しく説明を申し上げますと、震災後、いわき市の福島地検いわき支部、それから地裁いわき支部も、ちょっと時を異にしておりますが、十五日、十六日に次々と庁舎を閉めて、十六日には郡山の方に移動してしまったということがあったんです。そして、それに先立ち、地検では勾留をしていた被疑者を全員釈放する、処分しないで釈放するということがあり、その中には女性の家に押し入って手錠をはめて性的犯罪を犯すという、そういう容疑者もおりましたし、釈放されたうちの被疑者がまた再犯を起こしたということも起こりました。
あの当時、いわき市は避難地域でありませんでした。三十キロまでが屋内退避です。一部三十キロに入っておりますが、警戒区域ではありませんから、いわき市の北部の少しだけが屋内退避、それ以外全ていわき市は何の避難区域にも、政府の言う避難区域に入っていないんですよ。そこにいなさいという指示です。ガソリンも何もなくて、自分で避難したいと思う人さえ避難できなかった。今お昼休みに、福島県の方々、双葉郡、いわき市の方に会ってきましたけれども、その当時の状況を話すと今でももう泣いてしまって、地獄のようだった。その中に大変な犯罪が多数起きているんですよ。
私が三月二十四日に質問したときには、警察庁は、特にそんな犯罪は増加しておりませんし、ちゃんと警戒していますというような答弁でしたけれども、今になって、十月十六日の朝日新聞に書いてありますけれども、九月末までの住宅の被害は前年同期の三十倍近くに達していて、五十軒に一軒が被害に遭った。被害者からはこれは避難せよということが原因なんだからということで東電に賠償を求めておりますが、東電は悪いのは泥棒だとして一切賠償には応じていないんですよ。これは財産犯罪だけの話ですけれども、先ほどのような性犯罪も起きて、避難所に婦人警官が私服で泊まり込むということもありました。
その中で、国民に対して避難指示が出ていないのに、国の機関が先に避難したというのはどういうことなんですか。大臣、お答えください。(後略)
[引用おわり]
[国会会議録検索システムから引用はじめ]
(前略)
○谷垣禎一君 私は、自由民主党・無所属の会を代表して、先般の野田総理の所信表明演説、安住財務大臣の財政演説について質問いたします。(拍手)
冒頭、東日本大震災並びに相次ぐ台風の被害によって不自由かつ不安な日々をお過ごしの皆様に対し、心からお見舞い申し上げるとともに、地域における復旧復興に向けて、自民党は引き続き総力を挙げてまいることをここにお約束いたします。
また、先般のタイ王国大規模洪水及びトルコ共和国大地震災害に対して、政府においては最大限の支援策を講じることを強く求めます。
さらには、歴史的な円高の影響によって、多くの企業が厳しい経営を強いられております。政府は、本日、市場介入を行いましたが、引き続き市場に対して断固たる姿勢を示すよう求めます。
さて、政権交代より、はや二年の歳月が過ぎ、その間、民主党政権において三代目の総理に至りました。我が自民党も、小泉総理で総選挙を行い、その後、三人の総理がかわったことは公平に述べておかねばなりません。
しかし、その際に、野田総理、あなたは、与党のトップが交代する際には民意を問うべきであると言われたことを覚えておられるでしょうか。今もその意見は変わりありませんか。
この二年間、民主党の、絶え間ない内紛、統治能力の欠如によって国政の著しい停滞を招き、内政、外交にわたって多大なる国益の損失をもたらしました。これを民主主義のコストとして安易に片づけてしまうことは、到底許されません。
国際社会においては、来年の主要国における権力の移行期を控えつつ、欧米諸国の財政リスクが顕在化し、他国を顧みるゆとりもなく、ひたすらみずからの国益を追求して、しのぎを削り合う情勢にあります。
一方、国内に目を向ければ、少子高齢化は急速にその進行の度を深め、経済の高成長、それによって立つ財政の分配を期待する経済社会システムは、もはや昔日のものとなりました。その上に、この大震災が我々を襲ったわけです。
これらを踏まえれば、民主党の政権担当能力を磨くための授業料を支払う余裕が残されていないことは、国際情勢からも、国民の懐ぐあいからも、明らかであります。
また、民主党政権におけるマニフェスト施策の実現が進まないどころか、後退、違背を繰り返すことによって、国民との契約違反の状態が続いております。
野田総理は、その不履行の要因として、景気後退による税収減、ねじれ国会、東日本大震災、この三つを挙げています。しかし、これらはすべて、無駄を省いて財源を確保することで施策を実施するというマニフェストの基本構造に対しては、何ら関係がありません。どれが無駄の削減策を左右し得たのでしょうか。震災前の昨年末に野田財務大臣のもとで編成された平成二十三年度予算において、十六・八兆円と言っていたマニフェストの実行額がわずか三・六兆円にとどまっていたことこそ、その構造的欠陥の明らかな証左です。
国民は、さきの総選挙で票という代金を支払ったものの、約束された商品を受け取れないままとなっております。うそをついて奪い取った政権はそのままに、誠実な履行をすることができないのであれば、根強い政治不信を払拭することもできず、国民は、コストをひたすら払い続けるのみです。
これらの厳然たる事実を、政権運営に当たる野田総理においては十二分に認識すべきと考えますが、いかがでしょうか。
さて、平成二十三年度第三次補正予算案と東日本大震災に係る復興財源の確保のあり方について、我が党の基本的考え方を申し述べつつ、政府・与党の考え方をただしてまいります。
初めに明らかにしておきますが、我が自民党は、七月八日には、総額十七兆円の震災対策を公表しております。その財源のうち、歳出削減や税外収入で賄えない分について復興債を発行することとし、その信認を担保するために、所得税、法人税等の付加税により償還の道筋を明確にすべきであると、いち早く表明しております。
我が国財政事情は深刻さをきわめており、東日本大震災からの復旧復興対策経費が巨額に上る中で、いかに財政規律を確保するかという基本的認識において、政府・与党と私どもとは違いはありません。
しかし、今回の政府・与党の三次補正予算案と復興財源確保法案は、我が党の取りまとめから三カ月半以上おくれている上、その間、内容についてよほど詰めが進んでいるのかと思いきや、国民の皆様に負担を求めるにしては、随分粗っぽい、いいかげんな案を出してきたとの印象であります。
国民の皆さんに負担を求めるためには、丁寧な説明と合理的な制度設計が必要であります。政府・与党の案はその双方の要素に欠けており、運び方も、案の内容も、稚拙そのものです。このような政府・与党が、今後、消費税でさらに大きな国民負担をお願いすることに取り組むというのであれば、その資質からして、大いに疑問を抱かざるを得ません。このことを、質問を通じて明らかにしてまいる所存です。
我が党は、第一に、現在の政府・与党案の復興債の償還期限が十年とされているのは短過ぎると考えており、その大幅な延長を求めております。
理由としては、まず、千年に一度という大震災の復旧復興経費に係る財源調達を現世代の負担によってのみ賄うとすれば、現世代が前後の世代と比較して、大震災があったばかりに過重な負担を強いられることになり、不公平と言わざるを得ません。特に、復興による受益を後の世代が享受することを踏まえれば、世代をまたいで負担を分かち合う必要があります。
しかも、復旧復興経費の内容を見れば、三次補正で計上されている全国防災対策費などは全国で行われるハード事業であり、中身において、通常の建設公債発行対象経費と明確に区別が可能なものとは到底思えず、復興債及びその償還財源としての税制措置で賄わなければならない理由がわかりません。
また、我々は、単に、長く償還期限を延ばせと申し上げているつもりはありません。我が国財政に対する市場の信認を高める上で大事なことは、償還の道筋をしっかりとつけることであって、償還期間をいたずらに短くすることではありません。政府・与党は、この点を混同しております。
さらには、我が国財政の今後の課題を見据えれば、いたずらに短く設定することには疑義があります。
我が国は、基礎的財政収支の黒字化などの財政健全化目標を設定しており、その達成に向けて、消費税を含む税制抜本改革は避けられません。目先の性急な復興財源確保のみにとらわれず、マクロの財政健全化の取り組みとの関係にも配意し、償還期間を長くとることで、その負担を薄いものにしておく必要があります。
そこで、総理に質問いたします。一つ一つお答えください。
まず、三次補正予算に係る東日本大震災復興経費十一兆七千三百三十五億円のうち、公債発行対象経費とそれ以外は幾らずつか。言いかえれば、この部分について、今回のような異例の対応ではなく、通常の公債の追加発行による対応をとった場合、建設公債、特例公債はそれぞれ幾らとなったのか、伺います。
その上で、それらについて、建設公債等によらず、あえて復興債及びその償還財源の確保のための税制措置というスキームによることとした理由を改めて伺います。
次いで、政府・与党案では復興債の償還期間が通常の六十年償還ルールに対して十年と大幅な短縮がなされたことについて、いかなる理由づけがあるのか、お答えください。
さらには、そこまで償還期間に差を設けるからには、債券の発行で賄われる事業の性質についても明確な差が認められるのでしょうか。例えば、全国防災対策経費の定義は何か、単なる公共事業が紛れていることはないのか。両者を区別する基準は何でしょうか。
さらに伺いますが、消費税の取り扱いなどを含めて今後の財政健全化への取り組みが具体的に固まっていない中で、短い償還期間を設定して単年度当たりの国民負担を大きなものにしてしまうことが、今後の取り組みへの足かせとなるのではないでしょうか。
これらに対する答弁を踏まえた上で、改めて、償還期間の大幅延長を求めている我が党の見解に対するお答えをいただきたいと存じます。
第二に、我が党は、二十三年度予算における子ども手当の減額措置に伴って、特例公債を減額することを求めております。これは、民主党のマニフェスト施策を目のかたきにして、その歳出削減に見合う特例公債減額を立てることであえて辱めに遭わせようとしているわけではありません。子ども手当の見直しの要因を震災に求めることが筋違いだと申し上げているわけです。
そもそも、特例公債発行額を極力圧縮するというのが財政運営の基本ルールであり、特例公債の発行によって全体の予算が賄われている以上、歳出の削減を行う一方で建設公債発行対象経費の増額が行われた場合、特例公債を減額して建設公債に振りかえるのが補正予算の通例であるはずです。なぜ、今般はそのような対応をとらないのでしょうか。
政府・与党が、マニフェスト政策については特例公債に頼らず財源をきちんと確保したという建前と、復興債と建設公債を同時発行しないことにこだわる余りに、特例公債発行の減額に努めるという財政運営の基本ルールをないがしろにしてしまっているのが今回の対応ではないかと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
そして、このような対応を今後も踏襲していくとなると、二十四年度以降の当初予算についても、復興財源となる歳出削減分については、その見合いとなる復興経費に幾ら公債発行対象経費があっても特例公債発行額を減額しない措置をとり続けることになりかねませんが、それでよろしいのでしょうか。本来圧縮できるはずの相当規模の特例公債発行額が毎年度圧縮できないということになってしまいますが、そのことは財政運営として妥当なのか、あわせて御回答願います。
以上を踏まえた上で、改めて、今般の三次補正予算、さらには二十四年度予算以降における子ども手当の歳出削減分を特例公債減額に充てることを求めます。
第三に、我々は、復旧復興経費を管理する特別会計の創設を求めています。
今回の政府・与党の復興財源確保のスキームが、余りにいいかげんで、国民にとって受益と負担の対応関係が見えにくいものであることを踏まえると、特別会計の創設は、いよいよ必要となります。それにより、復興経費は新たな特別会計で管理されることとなるため、その他の経費との差別化が進み、単なる通常の公共事業関係費が全国防災対策費として復興経費に紛れ込んでくるようなことも防がれていくと考えられ、B型肝炎対策との区分も明確になります。税財源が確保されている復興事業の進捗度合いが明確になり、今後、国民からも、さらなる税制上の措置が必要な状況にあるのかどうかということが見えやすくなります。復興を名目に講じられた税制措置による増収分が、他の事業に費消されることなく、必ず被災地向け歳出に充てられることが明確になることで、国民の納税意識も高まるものと考えます。
政府・与党は、今回の復興財源確保のスキームについて、よくよく居ずまいを正した上で、国民に増税の理解を求めていくべきです。特別会計設置に関する野田総理の見解を改めて伺います。
復興財源としての税外収入、歳出削減をめぐっては、前原政調会長と政府側とで、増税額をめぐって行ったり来たりのやりとりが続くという混迷ぶりを見せつけましたが、相変わらず取り扱いがすっきりしておりません。
関連してお尋ねしますが、国家公務員給与特例法案による国家公務員給与の引き下げ分は復興財源にカウントされている一方、二十四年度予算などで連動して行われる地方公務員給与に係る地財措置、さらには義務教育国庫負担金や独立行政法人運営費交付金の見直しなどによって生み出される財源については、復興財源に使うのではなく財政再建に使うとの報道もあり、現段階では復興財源としてはカウントされていないようです。
しかし、やはり公的部門全体で捻出する復興財源として整理することが適切であり、今後、復興経費の増加が確実な中で、これ以上税負担をふやさないために用いるべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、社会保障・税一体改革について伺います。
先般、五十嵐財務副大臣が、二〇一五年度までの消費税率の一〇%への引き上げは二段階に分けて行い、その第一段階目は再来年秋の衆院任期満了後に行う旨を示唆しましたが、本来、財政や経済の状況を踏まえ決せられるべき消費税率の引き上げのタイミングが、それらとはおよそ関係ない政治日程との関係で決まるというのは、いかにもナンセンスであり、いかにマニフェストとの関係で民主党が消費増税の検討を行うことが破綻を来しているかのあらわれであります。
そもそも、あなた方が法案提出のよりどころとしている消費税を含む税制抜本改革の規定を含む平成二十一年度税制改正法に、民主党は反対されたのではありませんか。さきの総選挙におけるマニフェストには、消費税について一言の言及もありませんでした。当時の鳩山代表は、消費税は二十年間上げないことを公然と述べておられました。
社会保障・税一体改革は必要な政策ではありますが、ここでもまた国民に対して言行不一致な行動をとろうとするあなた方は、票を投じた有権者にどう説明するのでしょうか。
また、平成二十一年度税制改正法附則第百四条との関係で今年度内に具体的な法案提出ということになれば、年内にはその概要を固める必要があります。しかし、議論の時間が余りに不足しています。
六月に成案を取りまとめて以降、社会保障機能強化の進め方等、具体的な検討が進んでいるようには聞こえてきません。複数税率など逆進性対策をどうするのかといった受益と負担の関係も全く見えないまま年末までの二カ月ですべてを決めてしまうことには、相当無理が伴います。
このように、無理に無理を重ね、国民に言ったことと違う政策を押し通そうとするあなた方の社会保障・税一体改革への取り組みの前途は多難と考えますが、野田総理としては、この窮屈な日程の中で具体的なスケジュールをどのように進めていこうとされているのか、具体的にお示しいただくとともに、改めて御決意を伺います。
過去二代にわたる民主党政権によって我が国の外交の基盤は大きく揺らぎ、今や、その失地回復にのみきゅうきゅうとせざるを得ないのが現状であります。普天間基地移設問題についても、その迷走によって米国との信頼関係を大きく損ねたために、政府・与党は、そのツケをなりふり構わず返そうとしているかのように見受けられます。
TPP交渉への参加をめぐっても同様であります。
そもそも、日米関係において日々の情報交換や意見調整等が円滑になされていれば、このような切迫した事態に陥っていなかったはずであります。また、国益にかかわる重要事項にもかかわらず、政府が情報を提供しないため、参加の可否を判断するための国民的議論が全く熟しておりません。それに加え、藤村官房長官や前原政調会長は交渉途中の離脱の可能性を明言されていますが、入り口から逃げ腰の国を相手に、他の参加予定国が真剣に向き合うことはあり得ません。
これまでの経緯から昨今の騒動まで、極めて稚拙な取り運びとなっていることについて、民主党並びに野田政権の責任は極めて重いものと考えますが、その点について総理の見解を伺います。
いずれにせよ、我が国は、世界に物を売って、自国で賄い切れないエネルギーや資源を買って成り立っている以上、自由貿易体制を志向せざるを得ず、その中で国内産業にも十分な目配りをする。その際、不断の外交努力でみずからの国益を主張し他国の譲歩を可能な限り引き出すとともに、国内産業に対しては、不安と弊害を払拭すべく、財源に裏づけられた対策を適切に講じていくことが、我が国の基本戦略ではないでしょうか。前者は先ほど指摘しましたが、後者についても、その対策が不十分なものと考えます。
民主党政権は農家の戸別所得補償制度を推進していますが、これは、基本的には価格差補てんの仕組みであります。したがって、関税障壁が除かれて市場価格が払底しても、これより高い生産価格との価格差を補てんすることで、TPPへの一定の対応策にはなります。しかし、価格差が拡大していけば、それを埋めていくための巨額の財源を要します。
TPPで輸出企業に、戸別所得補償で農家にもいい顔をし、その結果、財源はないとなれば、まさに、あの詐欺マニフェストと同じことであります。
そもそも、財源が限られた中では、頑張って競争力を発揮できる農家には担い手として支援するとともに、農業の多面的機能の観点からも直接支払いを中心として支えていくといった、政策目的に応じた農業政策こそが求められるものと考えます。その見きわめもないままばらまくのみでは、財源は枯渇して、結局は農業を守ることもできず、民主党が五〇%まで掲げた食料自給率は見る見る低下し、農村は荒廃し、過疎化が進む一方となります。
政府においては、積極的に情報を開示し、今後の確たる展望を示すことで国民の議論に供するよう、強く求めます。
APECも差し迫っておりますが、TPPがもたらすメリット、デメリットは具体的に何か、TPP交渉に参加するのか否か、野田総理の明確な答弁を求めます。
野田総理が早期成立の意欲を示しておられる国家公務員給与特例法案について伺います。
我が党は、国家公務員の給与引き下げ自体に反対しているわけではありません。協約締結権とセットであることを問題視するとともに、人事院勧告を実施した上で、さらに深掘りすべきと考えております。これによって、地方公務員等を含め、より大きな削減が実現できるわけです。
さて、本法律案は、その策定過程で、自治労、日教組が大宗を占める職員団体と交渉を行った結果まとまったものと承知しており、官が身を切るという、一見改革的でありながら、組合配慮ありきの法律案であるとすれば、働きアリの税金にシロアリがたかる構図が総理の足元で始まっているということとなりかねません。
その点に関して、まずは、協約締結権の付与を行う国家公務員制度改革関連四法案との関係を確認いたします。
給与特例法案が仮に協約締結権の付与と交換条件になっているとしたら、本法案は組合天国への誘い水であるということになり、論外であります。
連合などは、ホームページで、十月十一日の政府とのトップ会談における、国家公務員制度改革関連法案と国家公務員給与特例法案を同時期に成立を目指すという基本姿勢は変わっていないという関係閣僚の答弁を成果として喧伝していますが、これは事実でしょうか。四法案とのセットを組合と取引しているとすれば、復興財源捻出を装いながら、実際は協約締結権の取得対価としての手あかにまみれた引き下げ法案であることになり、我々としては、審議にも値しないということになります。
この答弁をした閣僚を明らかにしていただくとともに、事実であるとすれば、撤回を求めます。事実でないとすれば、この答弁を否定し、四法案の処理とは完全に切り離す旨をこの場で明言してください。
重ねてお尋ねします。
政府は、閣議決定において、国家公務員給与特例法案は人事院勧告の趣旨を内包しているとして人事院勧告不実施を決めましたが、人勧の趣旨は、労働基本権の制約の代償に尽きると言って過言ではありません。
給与特例法案は、人勧どおりのマイナス〇・二三%ではなく、マイナス七・八%にまで労働者の給与を一段と大幅に引き下げるわけですが、これのどこが、どうして、その趣旨を含むことになるのでしょうか。含んでいないとすれば、虚偽の閣議決定であったということになりますし、人勧無視の憲法違反ということになります。含んでいることになれば、それこそ四法案とは連動しないものであることが明らかになるので、四法案の棚上げを求めます。この点の確認をお願いいたします。
なお、内包しているという閣議決定がそのとおりであれば、独立行政法人、義務教育国庫負担金を初め、国家公務員給与の改定に伴う公的部門の人件費に関する扱いは人勧の際と全く同様でなければ、閣議決定が偽りとなるということを申し添えておきます。
いずれにしても、内包云々という苦しい説明をしていますが、政府には、人勧を実施した上で給与特例法案も成立させる選択肢もあったのに、わざわざダイレクトに人勧を不実施にする理由がどこにあったのでしょう。ぜひ御教示ください。
人勧不実施を高らかにうたう背景に、よもや、人勧制度の廃止、協約締結権の付与に向けて、人勧不実施の実績をつくりたいという何らかの政治的思惑はなかったのか、あわせて伺います。
国民の皆様には、各種の組合が政府に対して人勧不実施を申し入れているという事実を申し添え、組合依存という民主党の実態をよく見きわめていただくとともに、保守政治家を自認する野田総理におかれては、ぜひ、組合との取引によって国政が壟断されることがないよう、衷心から御忠告申し上げます。何かおっしゃりたいことがあれば、反論していただいて結構であります。
次に、選挙制度改革と一票の格差是正について伺います。
先般、衆議院の選挙制度について各党の協議会がスタートしました。我が党も、具体的な提案を行い、積極的に参加してまいります。
私は、既に衆議院議員の任期が二年を切っており、まずは当面の対応として、衆議院の小選挙区における一票の格差が憲法違反と判断されている状態を一刻も早く解消すべきと考えます。
そのためには、現在、最高裁判決を受けてストップしているいわゆる区割り審の審議を早急に再開することが、不可欠の第一歩となります。今国会でその前提となる条件をクリアする必要があると考えますが、野田総理は、どのような条件が整えば審議を再開できると理解しているのか、伺います。
また、区割り審が直ちに調査審議を進めたとしても、来年二月二十五日の期限までに審議を終えて勧告を行うことが困難な場合、勧告期限の延長期間は必要最小限のものとすべきであります。早期の解散を避ける意図を持ってわざと長く延長しているといった疑念を国民に抱かれるようなことがあってはなりません。
延長は最小限の期間とし、勧告が出たら、速やかに区割りを改定する法律を成立させる、かつ、その公布から施行までの間、すなわち周知期間は、十年前と同様の一カ月とすべきであると考えます。この点についての野田総理の見解を確認します。
一票の格差是正のための区割りの改定は、先ほど述べた手順でいけば、次期通常国会のうちに実現し、憲法に違背しない制度で国民に信を問うことが可能となります。なお、それまでの間においても、今の民主党政権の状態では、即刻解散・総選挙を行う以外に日本を救う道がないという状況を迎えることも十分に考えられます。その場合には、私は、現行制度のもとでの解散・総選挙も必要だと考えております。
区割り審の審議や法改正の途上である場合でも解散権は常に制約されないと理解しておりますが、この解散権の解釈について、野田総理の見解をここで明確にお示しください。
なお、最高裁判決から一年を経過しても国会が法改正の道筋をつけられないことは、国会の権威にかかわる重大問題であると重ねて申し上げておきます。
本日は、多々政策課題について伺いましたが、政策を実現するに当たっては、何より、その主体となる為政者の資質が問われます。クリーンな政治を標榜する民主党において、野田総理を初め、鳩山元総理、菅前総理、小沢元代表、前原政調会長などの幹部が相次いで政治資金問題を引き起こしているまま、その説明責任も十分に果たされてきていないことは、その資質の欠如のあらわれと考えます。我々は、この問題をいたずらに復旧復興の議論の妨げとするつもりはありませんが、政党間の信頼関係を構築し、議論を円滑に進めるための環境整備に意を砕くことは、与党の務めであります。
これに関して、二つ伺います。
まず、野田総理御自身の外国人及び脱税関係企業からの献金問題について、今国会において説明責任を必ず果たしていただくよう求めます。九月三日に、調査する、結果が出たら報告すると述べてから、途中経過の報告も公表のめども示さないままに二カ月がたちます。
また、小沢元代表に対し、国民から選ばれた公人として、証人喚問に応じ国会においてその説明責任を果たすよう、民主党代表として指導力を発揮するのかどうか、総理は、誠実かつ明確にお答えください。
さきの臨時国会において、私は、野田総理に対し、保守政治家としての理念を問い、民主党の理念のあらわれである綱領の有無について伺いましたが、いずれも明確な回答を得られませんでした。
政権発足後しばらくは、野田三原則、余計なことは言わない・やらない、派手なことはしない、突出しないとの安全運転などのおかげか、大きな混乱はもたらされませんでした。しかし、これは、何の見るべきことも進められなかったということであり、いわば停滞であります。結局は、理念なき総理、綱領なき政党において、大局的な政策判断の物差しを欠く以上、内政、外交にわたる重要課題を乗り越えていくことはできません。
それに加え、何より、マニフェストの破綻と、かつてみずからが批判した信を受けないままの総理たらい回しによって、この政権は、主権者たる国民に対して正統性を欠いていることは明らかであります。
被災地で延期されていた地方選挙も十一月二十日にはすべて実施されるとともに、復旧復興の補正予算も三次を数えるに至りました。にもかかわらず、復興を理由に、被災地を含む全国民との契約違反の状態は放置されたままにあります。
国民との契約違反の十字架を背負い、国民からの信という権威の裏づけもないがゆえに、確たる政策体系は構築できず、その場を取り繕うことのみが野田政権に許されたことなのではありませんか。
したがって、今後一気に押し寄せるであろう政治的かつ政策的な矛盾によって、これまで同様、もしくはそれ以上の政治的混乱がもたらされることは不可避であり、早晩行き詰まることは必至であります。
この混乱を回避し、国政の停滞を打開するためには、解散・総選挙によって国民との再契約を行って信を受け、大事に当たるための政権の基礎体力を回復することが求められます。それを欠いたままで、マニフェスト違反の消費税や普天間問題、TPPや選挙制度改革といった重要課題をすべて乗り越えられるとお考えでしょうか。
これらの課題を総合的に組み立て、実現していくためには、政治の力を要するわけであり、各省が行政の発想で描く絵のとおりには決して事は進みません。
何もなすこともなかった二代にわたる亡国の宰相の轍を踏まないためにも、賢明なる回答を野田総理に心から期待し、私の質問を終わります。(拍手)
(後略)
[引用おわり]
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