【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

第178臨時国会はきょう平成23年9月30日閉会 

2011年09月30日 19時08分04秒 | 第178臨時国会(2011年9月)野田内閣

 第178回国会は、当初会期の4日間を14日間延長したうえで、きょう平成23年(2011年)9月30日(金)閉会しました。

 この国会で通った案件は1つ(法律上は2本)でした。このほか、野田内閣発足にともなう民主党の人事異動による委員長らの配置がえがありました。自民党は次期国会で配置がえになります。

 衆参両院議員の経験がある自民党の塩崎恭久さんらが第177通常国会に提出していた「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会法案」(177衆法24号)と「(両院合同特別調査会を設ける)国会法改正案」(177衆法25号)。これが与野党の修正協議のすえ、衆議院議院運営委員長提出法案の「(両院合同特別協議会を設ける)国会法(改正案)」(177衆法1号)と「東京電力福島原子力事故調査委員会法(案)」に衣替えし、衆参で全会一致で可決、成立しました。

 調査委員会は民間人で構成します。そしてその上部組織で、衆参10議員(議運委理事)の20議員で構成する「両院合同特別協議会」を設けます。この協議会は「国政調査権」を持ちますので、民間人調査委員会が欲しい資料や呼んで欲しい人物を呼ぶことができます。

 これは国政調査権があるからです。国政調査権とは、「国会は国政(国の行政、政治)に関することは、何でも調べることができる権利」です。現行憲法の62条で定められ、帝国議会にはなく、国会になって初めて持った権限です。ですから、今週の衆参の予算委員会は、具体的な議案(予算案)がないのに、「(平成23年度)予算の実施状況に関する調査」のための委員会だったわけです。まあ、もちろん、29日の「調査」での、公明党参院議員の松あきらさんの「第3次補正予算案を早く出してくれていればこの委員会で審議できたのに」という指摘は尊重されるべきです。それはさておき、「国政調査権」に関しては国会議員でも勘違いしている人がいて、これは議員一人一人の権利ではありません。憲法62条は「両議院は、各々、国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭および証言ならびに記録の提出を要求することができる」となっています。ですから、衆議院の権利であり、参議院の権利です。この条文から、「証人喚問は全会一致が原則だ」という政局報道でよく目にするフレーズがでてきます。もちろん、首班指名や予算の採決が全会一致でないので、院として証人喚問をすることが全会一致である必要はありません。ただ、国会にとって生命線なので、大事に扱うべきだ、ということです。

 このため、両院合同特別協議会が国政調査権にもとづき、資料の提出を要求できるわけです。ただ、上の条文にあるように、衆院と参院では別々です。ところで、塩崎法案では、衆参15人ずつの30人となっていました。私は両院協議会改革に興味があったので、てっきり30人になると思い、以下のエントリーをいったんブログにあげました。ただ、与野党協議の修正内容がだいぶ変わって10人ずつ20人となりそうだ、という情報があり、いったんブログから閉じました。まずは両院合同特別協議会で実績を積み重ねていくことになりますが、私の「先走った」意見が入ったエントリーを、今回は後ろに付けますので、よろしければご笑覧いただければ、ありがたく思います。

 第179臨時国会は、10月下旬に召集され、冒頭に第3次補正予算(案)が提出される見通しです。この国会から、自民党側の委員も配置転換されます。ちなみに、自民党の谷垣禎一総裁は、3党合意の石原伸晃幹事長を続投させ、政調会長には、日本新党衆院1期生の茂木敏充さん、幹事長代理の一人に同じく遠藤利明さんを昇格させました。遠藤さんの昇格には、山形1区の対抗馬の鹿野道彦農相の存在感が向上していることも関係していると考えます。一方、野田佳彦首相の日本新党の先輩にあたる小池百合子総務会長、新進党から途中で自民党に出戻った石破茂政調会長は、シャドウ内閣に入閣するようです。これは、谷垣総裁が野田首相や前原誠司・政調会長、藤村修・官房長官と同じ日本新党1期生つながりをつかってきたことで、3党合意路線重視といえそうです。ただ、日本新党つながりが厚くなることで、社会党出身で参議院の輿石東幹事長が相対的に孤立する可能性があります。これは日本新党1期生つながりの樽床伸二幹事長代行を3党協議に引き寄せることも、保険としてあり得る、ということを谷垣総裁は考えていると考えます。一方、野田首相の松下政経塾1期生仲間である逢沢一郎・国会対策委員長ははずれて、自民党一筋の三世議員である岸田文雄さん、総務会長にも自民党生え抜きの二世議員である塩谷立さんを起用しました。こうみると、やはり野田さんの、松下政経塾1期生、日本新党(衆院)1期生という二つの1期生というのは大きい。永久に1期生で、抜かれることはありませんから。やはり開拓者が第一人者になるんだという感じがします。ですから、民主党地方議員で、2009年の総選挙に出ればよかったと後悔している人もいるでしょうが、それは地元の自治体でずっとしっかり活動して、議長を務めてから、みんなに支えられて出馬するという考え方しかないんだと感じます。今まで、そういう人、いっぱい見てきましたが、政治というのは歴史をつくる仕事なので、歴史の流れを読めなかった、あるいは行動に踏み出す勇気がなかったということは、それ自体がやはり能力がないんだということなのだと感じます。

 とはいえ、自民党役員などどうでもいい。大事なのはシャドウ内閣です。シャドウ官房長官は石破さんから、茂木長官に代わるでしょう。谷垣第1次改造シャドウ内閣がどのような布陣になるかで、第46回衆院選の趨勢が決まります。

 一方、野田リアル内閣のメンバーはあまり馴染みがない、という読者の方も多いようです。衆参4日間の予算委員会の振り返りを兼ねて、前田国交相の答弁や、与野党委員の質問などから切り出して、いくつか感想を閉会中に書いていこうと、今は考えております。

 月曜日に「国会傍聴取材援基金」を開設しましたが、きょう通帳記入をしましたが、まだご協力はいただけないようです。なかなか世の中上手く行かないものだなという複数の思いが去来した今週でしたが、これからもなんとかやっていきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。

[以下は、2011年9月28日の午後10時に更新したエントリーですが、前提が変わりましたので、ご参考までご笑覧いただければありがたいです]

 延長国会は、再延長はなく、2011年9月30日(金)で閉会することが決まりました。政府・与党の要請に、野党7党が国会議事堂内の中央部3階にある「常任委員長室」で国対委員長会談を開き、閉会に応じ、次期国会の早い召集を求めることにしました。

 また、あす9月29日(木)の午後12時40分から、衆院本会議が開かれることになりました。

 これは衆参両院の議員経験がある自民党の塩崎恭久さん(現在は衆院愛媛1区)が提出していた「国会法改正案」(177衆法25号)を審議し、採決することになりました。すでに自民党、民主党、公明党、日本共産党らが賛成しているようですが、何らかの修正があるかもしれないので、本会議では議院運営委員長提出法案ということで報告と採決があるかもしれません。可決後、すぐに参院に送り、会期末である30日(金)の参院本会議で、可決・成立する運びです。

 これは、東京電力福島第一原子力発電所の事故に関する「両院合同特別調査会」を設ける法案です。この「両院合同特別調査会」というのは、日本国憲法でも国会法でも耳慣れない言葉です。基本的には、「フクシマ」に関してもっと知りたいという国民の方がおおいですが、私は、この両院合同特別調査会が、衆参ねじれでの両院協議会をめぐる国会法改正などにつながってほしいと思います。

 衆参不一致の議案がでたときに立ち上がる「両院協議会」は、衆参各10議員の20議員で構成します。一方、この事故調査に関する「両院合同特別調査会」は常設の機関で、衆参各15議員ずつの30議員で構成するというのが塩崎案です。これは、公明党が参院で19議席(定数242)なので、15議員にすることで、参院で確実に1人、公明党のメンバーが入れるよう、自民党の友党に配慮した側面があると思いますが、これはラッキーです。

 両院協議会規程は昭和22年(1947年)に参議院、続いて衆議院で可決・成立し、その後、一度も改正されていません。この規程で「両院協議会は両院協議会室で開く」となっていますが、実際には、「両院協議会室」という部屋は国会議事堂になく、上の方でも書いた「常任委員長室」(3党合意でもおなじみの金屏風の部屋)で開いています。おそらく運用上の読みかえというものでしょう。ただ、常任委員長室には、インターネット中継の設備がありません。また、両院合同調査会が30議員のほかに、参考人を呼んだり、公聴会を開いたりすることができるので、常任委員長室では人が溢れます。

 国会議事堂のおなじみ中央部。ここは裏側(議員会館側)は、1階が中央部食堂、2階が閣議室(アタマ撮りで総理の後ろに天然光がさしている部屋が国会内、完全にインドアは官邸内です)、大臣室、総理大臣室があります。3階には、自民党に割り当てられた控室で「自民党総裁室」の看板が立ちます。常任委員長室は、皇居側にあります。皇居側の2階や1階は、正面玄関や陛下や皇族のスペースです。

 原発事故に関する両院合同特別調査会は、やはりインターネット中継は当然されるでしょう。そうなると、例えば、会長が属する院とは反対の院の「第1委員会室」(予算委員会でおなじみ)で開き、ネット中継する。あるいは、衆院と参院の第1委員会室を交代で使うということもあり得ます。議事録をつくる記録者(旧速記者)は衆参合併されましたので、問題ありません。ネット中継は衆参で業者が違うようなので、交代方式がいいかもしれません。

 この際、中央部に「両院協議会室」をつくるのはどうでしょうか。

 そこで、腰の低い野田佳彦さんに、例えば、衆院側3階にある民主党代表室を譲るかわりに、中央部3階にある自民党総裁室を両院協議会室にして、ネット中継の設備をつける。ちなみに、この1年間の首相動静で、菅直人総理大臣(民主党代表)が、「国会内の民主党代表室」に入ったのは、国会内の審議を終えて、都内ホテルでの元連合会長の偲ぶ会に直行したときの1回限り十数分でした。これは総理としてでなく、民主党代表として着替えたと言うことでしょう。ことほどさように、国会においてに「体裁」というのは大事です。ですから、このチャンスに「インターネット中継設備のある両院協議会室」を国会議事堂内につくってしまいましょう。場合によっては、国会内閣議室を両院協議会室に開放したらどうでしょうか。

 とにかく、両院協議会をインターネット中継すると、両院協議会改革に向けた機運は嫌が応にも高まり、両院協議会に関する条文の国会法改正が可能になると期待します。

 野田内閣の支持率は上がっていますが、はたして国会支持率はどうなんでしょうか。昨年秋の臨時国会では、参院インターネット審議中継の視聴回数が衆院のそれを上回り話題になりましたが、大震災後、はたして参議院支持率はどうなっているのでしょうか。マスコミも調査してください。参議院のみなさん、ホントウに危機感を持たないといけないですよ。

 ピンチはチャンス。

 両院合同特別調査会をきっかけにして、衆参ねじれ両院協議会もインターネット中継する。私は参議院が好きです。参議院廃止は日本国憲法改正が必要で現実的ではありません。またGHQが日本に「押しつけた」英文の憲法草案は衆議院の一院制で、日本が「さすがに貴族院の存続はあきらめるけれど、参議院というのはどうでしょうか」とお願いしてつくった数少ないわが国の「自主憲法」条文です。

 原発事故の調査委員会をきっかけに、両院協議会を改革しちゃおう、という私の論は、俗に言えば「スケベ心」とも言うのかもしれませんが、とにかく日本には余裕がありません。草枕をしばしなぐさみながら、秋の空と雲を眺めて、さまざまな思いをめぐらせていたら、息が詰まりそうです。とにもかくにも、立ち上がって、各人のペースで前に進むしかありません。その一歩になればいいと考えます。