昨夜(29日)話題の映画「天地明察」の試写会を見た。「おくりびと」で話題をさらった滝田洋二郎監督と、昨年度の本屋大賞に輝いたベストセラー小説の原作、そして勢いと経験のある豊かな出演陣の組み合わせは話題性たっぷりだった。
「天地明察」とは、辞書的にいうと天地つまり地球、あるいは宇宙の事象についてはっきりとその真相を見抜くことである。映画は日本の江戸前期において、それまで中国で作られた暦を使ってきたため日本では大きなずれが生じたことから、日本独自の暦作りを担った天文学者・安井算哲という実在の人物の物語を映画化したものである。
出演者は、主演の安井算哲に岡田准一、その妻に宮崎あおいと勢いのある話題の俳優を配し、松本幸四郎、笠野高史、中井貴一、市川染五郎、市川猿之助、佐藤隆太などなど錚々たる出演者が二人の脇を固めるという布陣だった。
さらにはナレーターに真田広之、音楽担当が久石譲という超豪華なキャスト、スタッフで固められた映画だった。
さて、映画としての出来はどうだっただろうか?
私の率直な感想を言えば「いろいろ見どころもあり、よく創られた映画ではあるが大ヒットは難しいのではないか?」というのが見終えた後の率直な感想である。
その最大の要因は天文という素材の難しさにあったのではないか、と思う。さらには、艱難辛苦の上に安井が創った暦を朝廷に認めてもらうという政治的なことまで安井が負わなければならなかったところで主題がやや散漫になったキライを感じた。
私はこの映画に以前見た「剱岳 点の記」と同種のものを感じたが、「剱岳 点の記」では純粋に地図作りに精魂を傾けた男の物語に感動したのだが、この映画も暦作りの困難さとそれを克服した安井算哲の偉大さのみに焦点を当てて描いた方がより大きな感動を与えたのでは、と思うのだが…。そこには原作との兼ね合いという問題も当然横たわっていたとは思うが…。
原作との兼ね合いというと、映画の中で主人公・安井が自分の創った暦が朝廷に認められなかったときに、彼の後ろ盾的存在である水戸光圀公(副将軍)を激しく罵倒する場面がある。江戸時代にあって忠臣がはたして上様にそうした態度をとれるとは到底考えられないと思うのだが…。そのあたりは原作にあったところなのだろうか?
※ これは副将軍・水戸光圀公のお膳である。豪華な食事に少々驚いた。
私は残念ながら原作を読んではいない。
今日、友人と話をしていたら偶然にも友人も同じ試写会を見ていたという。
友人は原作を読んでいたということだったが、彼が言うには「原作を読んだ時のような感動は得られなかった」と語っていた。
小説の世界の面白さを映画で表現する難しさが横たわっているような気がする。
断わっておくが、この感想は大して映画通でもない私が感じたことであり、試写会を見た多くの人は全く別の感想をもたれたかもしれない。
ロードショーは9月15日からということだが、話題性は十分である。
多くの人が映画館に足を運ぶことを期待したい。