近年、北海道内ではヒグマが人里近くに現れ、人身被害も増えている。つい先日も道南地方で悲惨な事故があった。人とヒグマの接点が近くなってしまった今、この問題にどう対処すべきなのか?関係者が集まったフォーラムに参加した。
11月11日(土)午後、札幌エルプラザにおいてヒグマの会が主催する「ヒグマフォーラム2013 in 札幌」に参加してみた。この問題に対する関心は高いようで関係者を中心として会場のエルプラザホールはほぼ満杯の状況でフォーラムは始まった。
フォーラムは道や市町村の行政関係者、現場でヒグマ対策に従事する方、研究者等々、様々な立場の方が登壇し、それぞれの立場から増えつつあるヒグマとどう向き合っていくべきかについて論じられた。
そこで本稿では、そうした方々のお話を聴いた私がトータルとしてまとめ、その現状と対策についての感想を述べてみたいと思う。
近年、ヒグマが私たちの住む住居圏近くに出没する例が増えていることは誰もが見聞きする状況となってしまった。今年は朱鞠内湖での釣り人、大千軒岳での登山者が相次いでヒグマに襲われ命を落とした。また、つい先日は釧路でやはりヒグマに襲われて100針以上も縫う大怪我を負ったニュースも伝えられるなど、人身被害が目立つようになってきた。人の被害ばかりではなく、農作物の被害も深刻度を増していると聞く。
研究者によると、北海道とヒグマの関係は次のような歴史を辿りながら今日を迎えているという。それは明治に入り本州からの開拓民が山野を開拓して畑地とする際に、ヒグマは開拓を妨げるものとして捕獲することが当たり前に行われてきた時代を第1のフェーズとしてきたが、昭和41(1966)年からは「春グマ駆除」を開始したことでヒグマの減少を進めた時代を第2フェーズと考え、平成元(1989)年に春グマ駆除を廃止したことによって、ヒグマの生息数と分布が回復して以前にも増して生息数が増えて現在に至る時期を第3フェーズと考えられているが、こうした現状をこまねいていてはますます被害の増大が予想される中、新たにヒグマとの関りを模索する第4のフェーズを迎えたということが言えるようだ。
今回のフォーラムでのキーワードは「ゾーニング」という言葉だった。つまり北海道において人間とヒグマが共生していくためには、それぞれが棲み分けをしていくことが重要ではないかという考え方である。札幌市では今般、そのゾーニングを4つの区域に分けて設定したという。それは
①「市街地ゾーン」(・多くの人の生活圏・人の安全性を最優先)
②「市街地周辺ゾーン」(・農業などで人が活動している又は居住している・ヒグマの侵入はあり得るができるだけ抑制、定着は防止)
③「都市近郊林ゾーン」(・市街地に近い森林で比較的人の利用が多い・ヒグマの侵入はある程度許容、定着は抑制)
④「森林ゾーン」(・市街地から遠い森林・ヒグマが定着、健全な個体数を維持していくべき場所)
の4つの地域に区分するという試みである。
問題は札幌市のように比較的狭い地域で人員も割ける地域は可能であるが、人が少なく面積が広大な地方の市町村にとっては現実的な話ではないという問題がある。
そこで議論されているのが「広域連携」という考え方である。北海道がその調整役を担い、近隣市町村毎にまとまり、連携を図りながら一貫性のあるヒグマ対策を講じる必要があるという提言である。
発表を聴き、議論を聴く中で、対する相手が獰猛な野獣である点が問題解決を難しくしている点であることだ。さらにむやみやたらの駆除という方法はコンセンサスを得られない。ただ、「ゾーニング」という考え方は、ヒグマが獣としては非常に賢い獣だという点である。もし、全道的に「ゾーニング」が徹底されるとすれば、あるいは賢いと言われるヒグマがそのことを本能的に察知して問題解決の方向に向かうかもしれない、と私は感じたのだが甘いだろうか??
新聞は先日、北海道がヒグマ対策のための人員を増加したと発表した。行政の方でもより本腰を入れた体制を取り組み始めたようだ。
以前(昭和の前半以前)なら、猟師がクマを見つけたら直ちに捕殺することで対処し、それで世間も納得していたのでしようが…。
今は世論がそうしたことを許さない世の中になっていることで関係者もとても慎重になっているということがあるように思います。
ここは関係者たちの叡智を集めて、なんとか共生できる道を探るしかないのかなぁ、というのが私の思いですね。
ただ、私たちとしては、いわゆるヒグマの生息地である「森林ゾーン」には近づかないということが肝心ですね。私も体力の衰えがありますが単独登山はもう卒業です。山菜取りももちろんしません。そうした個々人の対ヒグマ対策も必要だと思っています。
いくら対策をしても、ゾーニングしても、エゾシカのように中心部に入り込んでくる……ようなことは、ヒグマにはないと思いますが(あってほしくない)。
ゾーニングというもの、やや曖昧な概念でもあります。だんだんと開発が進んで都市部が広がったら?
またヒグマをある程度許容すると言っても、それを農村部は僻地に押し付けるだけではないか……とか。
ヒグマを駆除すると苦情が来る(ダジャレみたいな語呂だけど)のも困りものですね。
全国からどんぐりを集めて山にまけばヒグマは里に降りてこない、なんてオメデタイことを言う人もいたし。
駆除に関わる人を守るためにも、そういうノイズをシャットアウトする仕組みもほしいです。
あとこれは、ぼくの持論暴論なんですが、
「食うに困っているわけでもないなら、山菜採りはやめよう」というもの。
ヒグマに遭遇する危険もあるし、山の動物の食べ物を横取りするようなことはよくない、と思っています。
しかも食べきれないほど採って、ご近所の「おすそわけ」とかヨシなさい、と。