『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』

面白く読ませてもらった。香港で暮らすタンザニア人商人の今をシェアリング経済や狩猟採集経済のシェアリングに関連させて捉えると同時にICTやSNSも駆使した彼らのその日暮らしぶりというかたくましさを描いてみせた。
私は狩猟採集経済のシェアリングを見聞したことがあって、むしろ、人類の互酬性の原点が彼らの暮らしなのではないかと思った。ICTとかSNSを駆使し、自国とは離れた香港でいわば生き馬の目を抜く生活をしているのだが、かれらの生活の場は確かに現代社会だけれど、人類の長い歴史のなかで狩猟採集社会のシェアリング感覚で培ってきたものが、ここにも現れるのか、とすら思えた。
思わずにやりとしたのは、著者の地理感覚、彼女は南半球で調査しているなとおもわせたのは、香港島の地名の方角についての記述。南と北があやしい。同時に西と東もあやしい。北半球で暮らすと太陽は真夏でも南の方にあみえるが、北半球は逆、真夏でも北の方にある。そうすると、東西もあやふやになってしまうのだ。南半球で暮らすようになると、感覚的になれてくる。しかし、北半球に戻ってくると少しの間、間隔が変なのだ。

