この古いSONY製トランジスタラジオ TR-710の修理履歴です。それぞれをクリックしてください。
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先日に引き続いてSONY製トランジスタラジオ TR-710の修理を続行しています。今回は、このトランジスタラジオに使われている能動素子(トランジスタ)を調査することにしました。このラジオは昭和初期に開発されたのでしょうか、トランジスタとして2Txx,2SDxx,2SBxxのものが使われていました。2TxxのものはJIS規格前のSONY独自の番号です。
基板が見えるように、裏蓋を開いたトランジスタラジオ TR-710
まず、基板ですが2枚構成でした。1枚は混合発信専用の基板でした。2枚目は中間周波増幅部と低周波増幅部です。混合発信部は異常発信を起こしやすい場所です。このため、このラジオの開発当初は混合発信部を別に製作したのでしょう。私が以前勤めていた日立のテレビ製造部門では、チューナーは岐阜高山で専用に製造し、本体は岐阜美濃加茂などで生産していました。高周波関連装置は、なかなか設計どおり製造するのが難しかったようです。
左半分は混合発信部 基板を裏返して素子や配線を調査
不思議だったのは、混合発信部に使われているトランジスタ 2T201です。基板の穴に差し込まれないで寝かせるように基板にじかに取り付けられていました。てっきり、トランジスタ交換時に穴を通さないで基板に直接半田付けしたのかと思っていました。
最初から寝かせて基板に取り付けられているトランジスタ 2T201
しかしよく調べると、最初からトランジスタ 2T201を寝かせてじかに取り付けたようです。そもそも、トランジスタの三本足を挿入する穴が基板に開いていません。昭和初期、高周波用トランジスタを安定して生産できなかったため、カット&トライで取り付けたのではないかと思われます。なお、混合発信用トランジスタ2T201の足一本がはずれていました。次回、このトランジスタの外れた足一本を半田付けします。中間周波数段に使われているトランジスタは2T76が2本でした。
足が一本外れたトランジスタ2T201 中間周波用トランジスタ2T76
なおトランジスタ 2T201はその後、JIS規格で2SA123へ、2T76は2SC76に改名されたようです。2SA123の遮断周波数は100MHZで、当時としては画期的に性能が良いトランジスタだったのではないかと思います。
JIS規格化で2Txxから2SXXXへ 2T201の規格値
次に、低周波増幅段は、1段目と2段目それぞれに2SD64が一本使われていました。P.P段には2SB383が使われていました。面白いことですが、SONYはNPN型とPNP型のトランジスタが混在して使われています。他社はほとんどPNP型だけが使われています。トランジスタの製造特許などに理由があったのではないでしょうか。
低周波増幅段の2SD64 2本 P.P段の2SB383 2本