すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

それでもなお、伝えようとする

2006年07月02日 | 読書
かつて、地域の文集審査会の折に
詩人でもあった先輩教師よりこんなことを言われたことがある。

「詩は、対象をいかにホメルかだよ。」

子供たちの書く詩を審査する一本の軸のようなものを感じた。
しかし、大人の書く詩についてはそっくり当てはまるかという疑問もあった。
特に難解な現代詩にはどうもなじめない自分ではなおさらだ。

さて、ここに生きとし生けるものすべて、いやこの世に存在するすべてのものを
どう誉めようかと心を砕いている人がいる。

まど・みちお


あまりに有名なその詩人が出した文庫本
「いわずにおれない」(集英社be文庫)を読んだ。
編集者が、まどさんに繰り返しインタビューし書き起こした文章と
まどさんのいくつかの詩で構成されている。

「肩から力の抜けた」とか「達観した」とかいう形容では
表現しきれないひょうひょうとした語り口は
読み進むにつれて、「存在」ということの重さであり
同時に、軽さであることにも気づいた。

 どんな存在も見かけだけのものじゃないのに
 人間はその名前を読むことしかしたがらないですよね。
 本当に見ようとは、感じようとはしない。
 それは、じつにもったいないことだと思います。(P41)


その存在にしっかり向き合おうとして、
けれどなかなかそれができなくて、
受け止める自分の小ささに目がいく。 
結局は、わからない、理解しあえないけれど
それでもなお、わかり伝えようとする気持ちを正直に伝えようとしている。
そんな気持ちに正直に暮らしている。
まどさんの心底からの言葉にあふれている本だった