すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

赤めだかの存在感

2008年08月04日 | 読書
 『赤めだか』(立川談春著 扶桑社)を読んだ。

 恰好よさが際立つ随筆だ。
 談春の青春記ともいうべき内容は、もちろん貧乏あり煩悩あり挫折ありなのだが、それでもなお自分の心に強く問いかける姿が実に眩しい。
 噺家の自伝的な書きものはあまり読んだことはないが、文句なく面白い。

 特に、師匠立川談志の言葉は立ちあがってくるような言葉だ。あの独特の口調が頭の中で再現される。

 お前に嫉妬とは何かを教えてやる

 現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行動の起こせない奴を俺の基準で馬鹿という

 そしてその師匠と向き合う談春の言葉は、理不尽さを乗り越えた愛情がほとばしっているようにも見える。

 重ねて云うが、談志は揺らぐ人なのである。ならばその揺らぎを自分にプラスに利することはできないか。

 「赤めだか」というタイトルは、師匠立川談志が庭の水がめに飼っている金魚?を指している言葉である。「いくらエサをやってもちっとも育た」ずに「大きくならない」と書いてあるように、そんな意味合いを持たせているのだろう。
 
 けれど、談春というその赤めだかは確実に成長し、存在感を放ち続けている。