すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

初冬の頃の読書メモ①

2010年12月06日 | 読書
 読書メモが滞っているが、本を読んでいないわけではない。
 なんか少し半端な(いや、ちょっとこの表現は違うなあ、「とらえどころのない」ような、とでも言えばいいだろうか)本を手にしているからだろうか。
 まあ、とりあえずは一言でも感想は残しておこうと思う。

 『オーロラマシーンに乗って』(明川哲也 河出書房新社) 

 知っている人は知っているドリアン助川である。
 雑誌ダカーポが休刊になってから、とんと御無沙汰だったが、奥付を見るとずいぶんと小説は書いているようだ。以前、何か一冊読んだような気もするが不確かだ。

 この本は短編が三つ。
 どういうジャンルといったらいいのか上手く表せないが、見方によってはファンタジーである。
 特に「草っ子と蜘蛛」は切ない。読み進むにつれて何か宮沢賢治の描くような世界を想像してしまった。
 空への空想を描く標題作も、ロボットが主人公の「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼの丘」も、それに近い印象を感ずる


 『鮮度のある人生』(邱永漢 PHP)
 
 およそ違う世界に住んでいるという印象の著者ではあるが、以前文庫本を読んで、斬新な発想に刺激をうけたことがある。
 今回はなんと言っても「鮮度」というタイトル。
 
 同じことを続けていても鮮度は維持できない。結局、自分の鮮度を保ちたかったら、対象となることに鮮度を感じなければならないわけで、その意味では新しさに対する向き合い方になるのかなあ。
 かつて自分のキーワードが「発見」であったことを、本当に久しぶりに思い出した。


 『むかつく二人』(三谷幸喜 清水ミチコ  幻冬舎)
 
 この個人的に好きな二人の、悪口雑言、お互いの貶し合いが楽しい。
 自分を開示して人を愉快にさせるのはやはり才能だと思うが、その面で秀でていることはすぐにわかるだろう。

 三谷の何冊かこの類の本を読んでいるが、初めて知ってなるほどと思ったことがある。
 「返却期限」や「進行ルート」に対して脅迫観念を持っているので、図書館から本を借りること、水族館へ行くことが苦手であるという。
 これは、閉ざされた空間や時間の中で人から強制されることに大きな嫌悪を感じているということではないか。
 だから逆に三谷の書く脚本は舞台が閉ざされていて、そこで作家自身のイマジネーションを十二分に発揮しようとしているのかな…そんなふうに予想してみる。