すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

豊かな時代の教育論

2010年12月22日 | 読書
 『「家族」を考える』(田下昌明・野口芳宏 モラロジー研究所) 

 モラロジー研究所の主催した家庭教育シンポジウムの記録である。二人の講師の講演、そしてトークセッションという内容となっている。

 小児科医田下氏の論は実に明快。最初に「子育てには三つの育児方針が必要」とする。何気なく読み過ごしがちになりそうだが、育児に「方針」という確固とした言葉を組み合わせる意味をよく考えねばならない。
 三つの問いかけに対して、しっかり自分なりの答えを出しておくことと言う。
 
 一、子供は誰のものなのか。
 二、何のために子供を育てるのか。
 三、どんな大人になってほしいのか。
 

 漠然とではなく、明確な言葉として口に出してみることから始まる。

 胎教、インプリンディング(刷り込み)、アタッチメント(愛着行動)、そして「抱っこ」の大切さ、とどれも医師らしく説得力がある。
 
 そしてここまではっきり言い切られると気持ちがいいほどである。

 しつけとは「お母さんの言うとおりにしなさい」と言うことです。 

 母子関係の重要性をこれほど端的に表している言葉はなかなか見つからない。


 さて、トークセッションでの野口先生の発言に興味深いものがあった。(先生の場合、講演以上にこうした質疑応答に実に触発されることが多い…自称マニアの弁)

 「豊かな時代の教育論」とは何なのか、ということが未だに明示されていません。みんな貧しかった昔の教育論を、この時代にそのまま当てはめようとしています。 

 先生自ら「時間を無駄にするな」「勤勉であれ」と語ることを、「貧しい時代の教育論」であることを認め、それだけではいけないと、常に前進的な、未来志向の考え方をなさっている。
 もう、さすがとしか言いようがないではないか。

 そこで、先生なりの「豊かな時代の教育論の鉄則」を提示するわけだが、それは…。
 自分なりに消化してから、いろいろと考えてみたい。