すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

「ゆりかご」という比喩

2011年12月12日 | 読書
 先日,同人誌をいただいた。
 知人が執筆した小説の題名が「ゆりかごの唄」。
 直接ゆりかごが登場する場面もなく,何かの象徴なのだろうか,とあれこれ考えてみたがぼんやりしたままで見えてこない。
 小説は続編がある形なので,いずれどこかで発見できたらいいなあ
 と,そんなことを思っていて…

 北海道の石川晋さんが,以前紹介していた絵本(写真と文章)に興味が湧いて,注文していたものが,昨日届いた。
 (この写真が本の表紙になっています)
 http://www.ne.jp/asahi/photo/kodera/

 確か石川先生は,中学校の授業としてゲストにその著者の小寺卓矢さんという写真家を招いた活動もしていたはずだ。

 紹介された絵本の表紙が気に入って,「こんな写真を撮りたいんだよなあ」と単純に思ったので買ったのだった。どれどれと広げて見ていたら,連れ合いがそばから覗き込み,あるページのところで「これに似た写真撮ってたね」と,嬉しい一言を言ってくれた。

 さて,その『森のいのち』という絵本のなかに,次のような文があった。森の中の倒木に,キノコが生え,エゾマツが芽生えた写真に添えられた文の最後である。

 しんだきが
 あたらしい いのちの
 ゆりかごに なったのだ。

 ああ,いいと素直に思う。
 「いのちの ゆりかご」という表現が,たまらなく素敵だ。

 「ゆりかご」という比喩の力が最大限発揮されたように感じる。

 倒木は,けして揺らしたりはしないだろうけど,
 倒木は,囁きかけもしないだろうけど,
 ただ,そこに身体を横たえて,陽射しをうけ,雨を浴び
 そして風に運ばれるもの,土と一緒に流れるものを
 やさしく受けとめて,静かに見守るだけ…

 人もまた,いつか誰かのゆりかごになれるのだろうか。


 思わず,独白気分です。