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物欲は枯れていいけれど…

2021年01月25日 | 読書
 この文庫も雑誌書評で見かけて購読した。毎度書くように、整理整頓下手を自認しているので、この手の本には目がいく。題名から、ある程度の結論は導きだせる気がする。つまり「老いたら、収納を減らせ」「老いたら、収納に気を配れ」のどちらか、もしくは両方ではないか。実際、読了したら、そうでもなかった。


 『老いと収納』(群ようこ  角川文庫)


 2021.1.25 今朝の太陽、よく晴れる

 おひとり様女性作家のマンション暮らし、溜まりに溜まったモノを処分する場面から始まったエッセイ。途中、選書を間違えたかなという気になった。やはり女性なので、衣類やキッチン、化粧品などの項目が並び、正直関心が湧かなかった。『欲と収納』という文庫も出しているようで、愛読者向けなのかもしれない。


 そして、これは「収納」というよりその前段階の「所有」の問題ではないかとも感じた。唯一、読み入ったのは「こんなふうに暮らしたい」という章で、著者が読んだ関連する本の紹介も入れながら、いわゆる「物とのつきあい方」について、あれこれ見つめ直している箇所だ。「断捨離」とは少し視点も異なるようだ。


 「物を持たない生活なのか、物はあるけれど、それらを楽しむ生活なのか」と、目指す方向を定めることを説く。確かに「老いたら、減らせ」は理にかなっているのかもしれないが、処分することによって生活が楽しめなくなるとしたら、悲しい。「物欲」は次第に枯れていいけれど、使う、楽しむ欲を持ち続けたいと思う。


 著者は「心の贅沢と物欲が、微妙に一致してしまっているところがあって、その塩梅が難しい」と正直に書く。物質的な豊かさと精神的な豊かさは違うけれど、モノと付き合い方は長年培われてきた個別の感覚と言える。「置いておく・傍にある」と安心が得られるモノ…確かにある。それが他人には不要に見えても…。