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驚くべき名著とM先生は書いた

2021年04月14日 | 絵本
 図書館ブログで続けている町広報の紹介(創刊から順に古い号のトピックスを取り上げている)のために、昭和53年頃の紙面を見ていたら、ある先輩教員が子育てに関する連載コーナーを書いていた。そこで、一つの本が薦められていた。文学や言語に関する造詣の深いM先生が、こんなふうに絶賛しているのだ。

「わずか44ページ。320円の薄い絵本で、読み終えるのに五分とかからないはずです。それでいて440ページ、3200円あたいもの本を読んだ気分にさせられるばかりか、50分も考えさせられてしまうという驚くべき名著です。」


『ものぐさトミー』(ベーン・デュボア文・絵 松岡享子 訳 岩波書店)


 俄然、興味が湧いた。検索してみると本館には2冊あり、古い方は閉架にあるが、第13刷は児童用の棚に収められていた。さっそく借りて読んでみた。



 「トミー・ナマケンボは、電気じかけの家に、すんでいます。」と始まる物語は、すべてがオートメーション化された家で過ごす、一人の子どもの様子が描かれる。初版が1966年であり、機械化文明への多分な皮肉が込められているのだろう。ある日、カミナリによって電柱が倒れ、電気が不通になり…という設定だ。


 M先生の意図は「家庭内の労働」「生産」に絡め、機械化が進むなかでの子育てに対する危惧だったに違いない。それから40年以上経った今でも十分に通用する警句でもある。当時に比べれば格段に機械化が進み、私たちが身体を使う機会は、かなり意識しないと益々減っていく。その心配は多くの人が口にするのだが…。


 もう一つ大きく見ると「身をまかせる」危険性も浮かび上がる。人間は願望や要求によって、様々なモノ・コトをこしらえてきたが、いつの間にかそれらに身をまかせ、あまり思考しなくなっているではないか。それは機械化だけでなく社会や制度、組織等にもあてはまる。このままでは…最終ページの結論を見よ!