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「とりあえず」の先には…

2021年09月01日 | 雑記帳
 8月末日。夕食時にはNHKニュースを見るでもなく付けておくのが、高齢夫婦二人暮らしの定番になっている。長い期間、コロナコロナと続いているわけで、昨夜も夏休み中の子どもの家庭学習のことなのか、そんな内容が報じられていた。記者が子どもに「わからなかったら、どうするの?」と訊いたときだった。


「とりあえず、あきらめる」


 と淀みなく応えた。「えっ」と感じた。日本語として間違っているわけではないだろう。しかしこのニュアンスはあまり聞かない。いや自分の耳で意識したのは初めてかもしれない。「とりあえず」であれば、常套句としては「ビール」とか「片付けて」とか「落ち着こう」とか…行動を促すような場合が多い気がする。


 もちろん「とりあえず、やめよう」という制止的な言い方はある。ただ「あきらめる」が持つ否定的なニュアンスは、自分にはしっくりこないなあ。「とりあえず」とはこの場合「今のところ」という意味に置き換えられるだろう。しかし、「ほかはさしおいて。まず。なにはさておき」と言い替えると、違和感がある。



 私はそんなことを考えて一人で盛り上がっていたが、家人はごく普通のようにとらえていた。それが一般的な受け止め方なのかもしれない。そして今の時世にまさしくフィットする言い方なのだなと思い返した。今までやってきた様々な行事、活動が中止になる、制限をうける。計画したことが予定通りにいかない。


 言葉を補うと「とりあえず、今はあきらめる」。その「今」はいつまで続くのか。「あきらめる」ことで萎えていく心。「安全」と「自由」の選択において、果てしなく「安全」に傾斜していく社会…。「とりあえず」を言い訳にしながら沈んでいく世の中でいいのか。ならば「とりあえず、あきらめない」と言ってみようか。